琴瑟相和



聖王都の一角、とあるケーキ屋の厨房は今日もまた甘い香りで満たされていた。
もっとも店のドアにはしっかりと「本日定休日」の札がぶら下がっており営業はしていない。
実質店内で動いているのはほんの数人だけである。
(さて・・・そろそろいいかな?)
褐色の肌をした少女が時計を仰ぎ見て動きだした。鼻歌交じりに四角い箱へと手をかける。
少女が箱を開けた事で密封されていた冷気が外に漏れる。召喚術を利用した一種の冷却装置で名も無き世界でいう冷蔵庫にその機能は似ていた。
「うん、いい感じいい感じ」
上出来といった顔で箱から生地とクリームの重ねられたものを取り出すと器に盛り、自身の肌の色に近い粉を塗してゆく。最後にいくつかに切り分けたケーキに香草を乗せた。
「できましたよ、店長」
「そうか」
「あら。いい具合にできましたねぇ・・・ティラミスですか?」
「パッフェルさん? 珍しいわね、貴方が休みの日に顔出すなんて」
ルゥの声を聞き厨房へと私服姿の店長とバスケットを持ったパッフェエルが入ってきた。
バスケットからは何かの小包がはみ出ている事からどうも別の配達の途中らしい。
「店長さんにルゥさんがケーキを焼いてる、って聞きましてね。それで味見がてら寄ってみたんですよ」
「バイトとはいえ、パッフェル君の舌は確かだからな」
いかつい顔に髭面の店長が顎をしゃくってみせる。初めてパッフェルから彼を紹介された時は実は元盗賊の親分か何かなのでは、等とルゥは疑ったものだが実際は気さくで面倒見の良い人物である事を彼の元で働いているうちに学んでいた。
「あら、これはこれは・・・」
「悪くないな。今度作る時はクリームを作るときオレンジの皮を混ぜてみるといい。風味が出る」
「はい、ありがとうございます。じゃあルゥはいく所がありますので」
二人から太鼓判を押されたルゥはてきぱきと出来たばかりのティラミス、そして他のケーキをバスケットに収めるとそそくさと店を出て行った。後には彼女の作ったティラミスを黙々と食べる二人のみが残り、ケーキを平らげ紅茶を一啜りした所でパッフェルが口を開いた。
「どうです? 彼女」
「最初は君が素人を連れてきたんで驚いたがな。多少世間知らずな所はあったが意欲もあり知識の吸収も早い。まだまだ荒削りだが腕は確かだな」
「そうですか。それを聞いて安心しましたよ」
「ふふん、ワシの言葉よりもこのケーキの味がルゥ君の上達の証だろう?」
「それもそうですね。でも一つ疑問が」
「何だね?」
「何で彼女・・・私と色違いの服なんですか?」
店長の横顔を見つめるパッフェル。店長は素知らぬ顔で紅茶を呷った。が、その後の沈黙に耐えかねたか軽く息をつき、一息に言った。
「身体のラインが良かったからな。君と同じで店の良い看板にもなるし目の保養にもなる」
「あはは。店長さんもスケベですね」
「ふふ・・・パッフェル君?」
「はい?」
「減俸」

「こんにちわ。はい、差し入れ」
「おお、ありがとうな。ルゥちゃん。今日もまた彼の所かい?」
「うん。じゃあ守衛さん達もお勤め頑張ってね?」
「おうよ」
守衛に手を振り、足早にルゥは蒼の派閥の施設内へと消えていった。
「しかしまあ、ここも昔に比べると変わったなー」
「まあな」
守衛達はルゥに手渡されたケーキを選り分けながら改めて呟いてみせる。
傀儡戦争での金の派閥との連携を含め、実に閉鎖的であった蒼の派閥は徐々にではあるが変わり始めていた。ルゥのような派閥外からの人間が割と簡単に出入りできるようになったのもそれが一つの要因である。
「まあお陰でこうして上手いモンが食えてるんだ。これもラウル師範のトコの眼鏡さまさまってな」
「ははは」

「うわあ・・・」
眼鏡―ネスティの部屋を訪ねて開口一番にルゥは驚嘆と呆れの混ざった声を上げた。
「うん・・・? 何だ、ルゥか」
「何だじゃないよ・・・何これ」
ネスティの部屋は足の踏み場も無いほど本が占領しており、その中心・・・もはや本の山が構築された机に向かったネスティはひたすらに本を読みふけっていた。
「いや何、僕がいない間に発行されてた書籍や文献を取り寄せてみたんだが・・・結構な量でね」
「結構どころかベットの上まで占領してるじゃないの」
「大丈夫だ。カイナが訪ねてきた関係上暫くマグナが部屋を開けるみたいだったからな。寝る場所には困らないさ」
再び本へと向き直ったネスティが懐から合鍵を取り出し、ぷらぷらと振って見せる。
「流石に怒るでしょ、マグナだって・・・そもそも樹から出てきて少しアバウトになったんじゃない?」
「柔軟性に優れた言ってくれ」
「はいはい。もう・・・せめてケーキが食べれるスペースくらいは確保しないと・・・」
「そうか・・・また焼いてきてくれたんだな?」
「まあね。ここの本、ちょっとどけるよ?」
「ああ・・・」
ネスティが戻ってきた時、涙目で喜ぶマグナにこんな事を言われた。
―俺以上にネスの帰りを待ってる人がいるんだからな?
ルゥの事なんだな、とネスティは何故か即座にそう思った。
マグナの話によると彼女もまた、彼が必ず帰ってくると信じ自らの道を歩んでいたらしい。
流石にケーキ屋で見習いをしているとは思いもしなかったのだが。
以来彼が戻ってきてからというもの、こうしてちょくちょく暇を見つけてはネスティの味覚に合わせたケーキを焼いて持ってきてくれるのだった。
「にしてもちょっと本が雑多ね・・・無作為に取り寄せ過ぎじゃない?」
ぶつぶつと言いながらも身を屈め、ルゥは本を選り分けてゆく。パッフェルとお揃いの服は黒と白を基調としている所為かその姿はケーキ屋というよりもどちらかと言えばメイドさんに近い。
(・・・・・・ふむ)
パッフェルの服はその可愛らしさ以上に裾の短さがネックである。身を屈め、本を片付ける今のルゥの姿勢だと服が上へと引っ張られる為パンツと形の良いお尻がばっちりとネスティの視線に捕らえられてしまっている。
甘美な花の香りに虫達が自然と誘われていくように彼の身体も揺れる尻へと吸い寄せられてゆく。
そしてその手が射程内に入った。
―今だ!
「ひゃあっ!?」
本を積み重ねていたルゥが急に身体を動かした事により雪崩の如く本が二人を直撃した。

「・・・で、何か言い訳はある?」
「触りたいという衝動がその先で起こる厄災を上回ったんだ・・・いや、すまなかった」
レヴァティーンでも呼び出しかねない勢いに負けたネスティの口から陳謝が漏れる。
更にゴチャゴチャになってしまった部屋を二人で綺麗にした後、向き合うようにしてベットで休憩を取っている。―結局の所必要な本だけを残して整理してみれば部屋はあっという間に片付いた。
「君は馬鹿か? ってルゥが言うよ・・・まったくもう。って・・・」
気付けばネスティが背後へ回り彼女の胸を揉みしだいていた。じんわりとした感覚が昇ってくるのを感じながらもルゥは考える。ここでネスティに調子を取られてはいけない、いけないのだ・・・
「ち、ちょっとネスティ・・・ルゥ、今は仕事着なんだけど」
しっかりと否定するはずだった声が上ずってしまっている。これでは説得力が足りない。
「だから何時もより興奮してるみたいでね。部屋も片付いた事だしお礼を兼ねて」
「お礼だったらもうちょっと別の形で・・・ふあっ」
耳にネスティの息がかかる。こんな時でも素直に反応する身体が少々恨めしい。
「・・・服、汚さないんだったらいいかな?」
結局の所同意してしまう自分に苦笑しつつも、ルゥは身体から力を抜く。
一旦その気になってしまえば後は早いものだった。

「はむ・・・ぴちゅ」
ルゥの舌がネスティのモノの絡みつくように動く。
柔らかい唇と熱を帯びた舌、生暖かく湿った吐息。
それらがネスティの剛直に触れる度、それは更に怒張し硬度を増してゆく。
「んふ・・・おっき」
一旦愛撫を止め剛直に声を掛けるルゥ。
「でも、こんなもんじゃないよね・・・?」
ネスティの上で身を捩りながらしなやかな頬を剛直に擦り付け、愛でる。
その動きに合わせるようにしてネスティの目の前で褐色の肌の間にある薄桃色の秘口が揺れる。
液の滴るそこにネスティはそっと口を付けた。
「ひゃあっ・・・ふ・・・あああっ」
驚きながらもそれはすぐさま鼻がかった嬌声へと変わる。
「はぁ・・・いいよ、ネスティ」
「ああ。僕も気持ちよいよ」
「そっか。じゃあもっと・・・ね? んぷっ・・・」
激しくなった口淫にネスティの腰をぞわりと快感が上ってゆく。だがそれを堪えながら丹念に目の前の秘裂へと舌を這わせる。
効果は如実に表れ更に秘裂が綻び、蜜を垂れ流し、淫らな形へと姿を変えてゆく。
「あっ・・・やだ、ネスティの舌の動き・・・やらしいよ」
「もっと、そう言ったのは君だろう?」
舌が彼女の内部へと侵入し、うねうねと動く。
「んふっ・・・!」
ルゥも負けてはいない。動きこそぎこちないが丹念に唇を使い、奉仕を続ける。
彼女の献身的な愛撫によってネスティの射精欲が高まってゆく。
「くっ・・・」
追い討ちをかけるように彼女の舌が動き、思わずネスティの口から声が漏れた。その昂ぶりを抑え少しでも長く感じる為にネスティはその顔を目の前の柔肉へと押し付ける。そして目の前のぷっくりと膨らんだ小さな突起へと舌を伸ばし、転がした。
「うああっ・・・ひゃあっ!」
陰核からの強い刺激にルゥは腰を震わせる。お尻を振り、逃げようとする腰をネスティはしっかりと掴み愛撫を続ける。
「んん・・・もう」
どうやら観念したのか、再びルゥは剛直へと没頭する。自然とお互いの動きはその早さを増し意識は性器へと集中してゆく。
「う・・・ルゥっ」
「んぷっ・・・んはあ・・・」
彼女の舌が雁首を撫ぜた所でネスティは限界に達し、白濁液を顔面へとぶちまけた。
それに呼応するかのようにルゥの膣が痙攣し、内部を弄っていた舌をキュっと締め上げる。
「あふ・・・汚さないっていったのに」
恍惚とした表情で肌に付いた精液を指で掬い上げ、口へと運ぶ。
彼女の肌と対照的な精液の色がネスティを興奮させその怒張もまた硬さを取り戻していた。
「やだ、また大きくなってる・・・元気ね」
「君だからこれだけ元気にもなるんだ」
「相変らず口は達者よね」
ネスティはルゥを四つんばいにさせるとゆっくりと腰を突き出した。
秘口にあてがわれていた先端が熱い肉の中へゆっくりと埋没してゆく。
「うあああっ・・・んっく・・・」
彼の動きに合わせてルゥが息を吐く。柔らかく狭い道がネスティのモノによってゆっくりと開かれる・・・。
「ああ・・・あああああっ!?」
ルゥの口から悲鳴とも付かない声が漏れ、と同時に剛直が最奥へと到達した。
性器全体を包み込み、締め上げられる感覚にネスティの身体が震える。
「達者なのは口だけじゃないっていうのを、しっかり感じてくれよ?」
そんな言葉と共にネスティは律動を開始した。
「んひゃっ、あっあっ・・・うあ・・・ネスティ・・・ネスっ」
動くその都度嬌声を上げ、反応するルゥ。その声に促されるかのようにネスティは一心不乱に彼女の中を行き来する。
「うはあああっ、もっと・・・もっと強くっ・・・」
片付け、綺麗にしたばかりのベットのシーツが二人の動きによって大きく乱れてゆく。だが既に二人の意識はお互いの動きに集中し、周囲とは隔絶されている。
「そこ・・・ああっ、ネスっ・・・ネスっ・・・」
いつしかルゥもまたネスティの動きに追いすがるかのようにその腰を動かしていた。
突き出し、密着させ、互いの意識は同調してゆく。
「ルゥ・・・ルゥっ」
ルゥを気遣うようにしていたネスティも、もはやがむしゃらに彼女を求めるだけとなっていた。
「あああっ、あああっ、は・・・ああああああああっ!」
そして意識が完全に白で多い尽くされた瞬間、全てをルゥの中に解き放った。

「ん・・・今ひとつだな、このケーキ・・・」
「ええっ!? ちょっと一口頂戴よ」
後始末を済ませ、ケーキを口にしたネスティの以外な一言に慌ててルゥはケーキを味わう。
「ちゃんと甘いし、ほろ苦いし・・・美味しいじゃないの」
―甘くてほろ苦い?
「しまったっ・・・!」
「どうしたんだ? 急に頭を抱え込んで・・・」
わなわなと手を震わせるルゥに動揺するネスティ。彼女の頬を汗が滴り落ちる。
「ケーキを配ってくる途中で、間違えてネスティ用のを渡しちゃったんだ・・・あんなケーキに見えて実際は酷く異なるもの、ネスティ以外が口にしちゃいけないのに」
「ちょっと待ってくれ。今まで僕はそんな面妖なモノを美味しいと思っていたのか?」
「戻ってきて味覚も普通になるかと思ってたけど、結局地だったみたいだしね。ともあれ問題は誰に渡したかなんだけど・・・」
「・・・そんなに僕の味覚はおかしいのか・・・?」

「いやーっ!」
同じ時分、屋敷のテラスにて白目を向いたギブソンの口から彼そっくりのポワソが出ているのを見たミモザが珍しく取り乱していた。・・・無理も無い話ではあるが。
そんなギブソンの手前には一口分だけかけたケーキが冷めた紅茶と共に残されていた。


End

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