アメル×トリス



雷がゴロゴロと不快な音を鈍く鳴らす夜、
アメルは寝付けずにベッドの中で気だるげに身を転がしていた。
最近はどうにも落ち着かなくて毎日よく眠れない。
今日もまたよく眠れないんだろうな、とぼんやりと思いながらも目を閉じていた。
ここ最近、彼女が眠れないのにはそれなりの理由があった。
――トリス。
名前が胸に浮かぶ。気が付けば彼女の事ばかり考えている自分がいる事に気付く。
悪魔との決戦で自分は一度彼女から離れている。
世界を浄化する大樹となり、二年もの間彼女と別れていた。
いや、正確には別れていたわけではないのだろう。
自分の意識はなかったから分からなかったが、彼女は毎日自分の元へ来て沢山の話をしてくれていたらしいのだから。
それを覚えていない自分が、知らなかった自分が、歯痒かった。
年頃の彼女にとっては貴重な二年を自分の為に潰してしまったのだと考えると申し訳なさが込み上げるが、それと同時にそれに歓喜していた自分もいてアメルは自分の身勝手さを嫌悪した。
彼女を二年もの間独占していたのだと、そうして今も独占しているのだと考えると確かな優越が湧いた。
彼女は今彼女があんなにも慕っていた兄弟子ではなく自分の側にいる。
そのことが嬉しかった。
でもそれを噛み締める度にアメルは自分はなんて浅ましいのだろうと、嫌悪にも襲われていた。
そうして最近は彼女の笑顔を見るだけでは満足できなくなっている自分がいるのにも気付いていた。
彼女に触れたい。他の人が知らないような表情が見たい。
そんな欲求が胸に湧く。同性にこんな事を思うなんておかしい。
いつから自分はこんな汚れた子になってしまったんだろう。
そう思っても想いは止まらなくて彼女は苦悩した。
彼女の指を想像して自分を慰めた。
体が快感を得る度に心が締め付けられた。
こんな浅ましい自分が天使なわけない。そして聖女にだってなれはしない。
じゃあ自分はなんなのだろう。天使アルミネでもなければ聖女アメルでもない。
そんな自分に価値なんてあるのだろうか。誰も必要としてなんてくれないんではないだろうか。
そんな事を考えて、彼女はトリスへの想いとの間で葛藤していた。
そうして今日も眠れない夜を過ごす。
時間だけが刻々とすぎ、雷の音だけが近く大きくなっていっていた。
今はもう近くに落ちそうな位にその音は大きい。そして今まで一番大きな雷が鳴った。
「ひゃあッ!」
獣の雄叫びの様な大きな雷音と微かな家の震えと共に自分の部屋の前で小さな悲鳴が上がった。
それに驚いてアメルは慌てて飛び起きた。
「トリス、大丈夫!?」
急いで部屋の戸を開ければシーツを頭から被り、床に座り込む少女の姿が目に入った。
その体は小刻みに震えている。
「あ、アメルごめんね…起こしちゃったかな?」
その手でシーツの端を握り締め、涙目でトリスはアメルを見上げてきた。
服は大きめのシャツを羽織っただけであり、身を包むシーツの隙間からは折れそうな位に細い手足が曝け出されていた。
それにアメルの心臓が大きく鳴った。
「えへへ…ごめんね。あたし、雷だけは昔っから駄目でさ…。だからね…その、もしよければ一緒に寝てもらえないかなって…。ほら、女の子同士じゃない?だからたまにはこういうのもいいかなって…」
トリスの声が段々と小さくなる。それでも目だけはアメルから逸らさずに言葉が続けられた。
「ごめん、アメルはやっぱり嫌かな? こういうの」
「ううん。そんな事ない! 嬉しい…あたし、こういう事ってした事なかったから…」
トリスの言葉をアメルは大きく首を振って否定し、そっと手を差し出した。それに躊躇いなくトリスの手が伸ばされる。
「何かちょっと恥ずかしいな。アメルとこういう事したことなかったから。ずっと一緒にいるのにね」
「うふふ…そうだね。でも、あたし嬉しいの。村にいた時はこういう風に親しい女友達っていなかったから…。ねえ、今日は沢山お喋りしましょ? 雷の音なんて聞こえなくなるくらい」
そう微笑んでアメルはトリスの手を取り部屋へと招き入れた。
綺麗に片付けられ、どことなく女らしさを感じさせるそこはとても彼女らしかった。
「何だか変な感じがするね。アメルの部屋なんて何回も入ってるのに…。夜だからかな?知らない所のような気がする。そういえばこうして同じベッドに横になるのも初めてだよね?」
「うん。でも、こうして手を繋いでれば不安になんてならないよね?あたし…トリスが隣にいてくれれば何でもできそうな気がしてくるの。ずっと…側にいたいな……」
同じベッドで横になって二人の少女は手を握り合って他愛無いことを話していた。
窓の外ではまだ雷鳴が轟いており、トリスの手が微かに震えていた。アメルはそれを強く握り返す。
「情けないよね…召喚師の癖に雷が苦手だなんて。だから実はファミィさんとかタケシーってちょっと苦手だったりするんだぁ。こういう雷が鳴る日はよくネスに一緒に寝てもらったな、昔は」
ネス。
その名前が彼女の口から出た途端アメルの胸が掻き毟られた。
その名前は自分以外で彼女が唯一大事にしている人のもの。彼女にとって誰よりも大切なもの。
そう考えると心臓が軋みをあげた。切なさに。
声を絞り出すようにアメルは口を開いた。
「ねえ、トリス。トリスはネスティの事、どう思ってるの?」
「え…?」
突然のアメルの問にトリスは声を詰らせた。顔には驚きが滲み、目は少し見開かれている。
アメルはそれに戸惑いながらも続けて問うた。
「本当は…ネスティが一度派閥に戻って機械遺跡を回る旅に出るって言った時、貴女も付いていきたかったんじゃないの?でもあたしがいたせいで…行けなかった…。違う?」
「ち、違うよ、アメル!」
アメルの言葉をトリスが慌てて否定した。
「ネスの事は大事だし…本当の家族みたいに思ってる。でもね、ネスに付いて行きたいとは思わなかった…。だって何時までもネスに甘えてるわけにはいかないもの。ネスはネスの思う通り自由に生きて欲しいって思ってる。あたしがそうしてるみたいに。家族みたいな存在であっても、何時までも甘えて依存し合ってたらそこから進めないもの。だからあたし、今度はネスに支えられるんじゃなくてネスを支えてあげられるような人間になりたいって思った。その為に何が出来るかって考えて今ここにいるの。アメルのせいなんかじゃないよ」
「トリス…」
トリスの言葉にアメルの胸が締め上げられる。
やっぱり彼女にとって彼はとても大切な存在なのだ。小さな頃から彼女を側で支えてきた彼。
まるで勝ち目がなくって思わず笑ってしまいそうになった。
「でもね」
トリスが不意に言葉を続けた。
「あたし…ネスとだったら離れても生きていけるって思ったけど、アメルとは離れたくないなって思った。どうしてだろうね…ほんと。アメルが初めてできた女の子の友達だからかな、こんなに大切なのは」
「え…?」
今度はアメルが言葉に詰った。トリスの口から出た予想外の言葉に、驚きが隠せない。
「あたしね…前にも話した事あったけど派閥にいる時は成り上がりって言われて馬鹿にされて、その前は人間扱いすらされなかったの…。あたしに味方してくれるのはネスと師範だけで…。だから女の子の友達っていなかったんだぁ。ネスや師範はあたしに優しくしてくれたけど、でもやっぱり男の人だったから話せない事も多かったし…。だからアメルに会えた時凄く嬉しかったんだよ。ようやく対等な友達ができたんだって」
「……」
トリスの言葉をアメルはただ黙って聞く。
その口から発せられる言葉は嬉しかったが、同時に申し訳なさもこみ上げた。
自分を純粋に慕ってくれている彼女に、自分は邪な想いを抱いているのだから。
「ネスもフォルテもケイナも…みんなあたしの事子供扱いして、それが悔しかった。同じ目線で話して貰いたかった。そんな時アメルに会ったんだよ。…ねえ、アメル、覚えてる?あたしたちが初めて出逢った時の事。あたし、あの時貴女に貰った言葉、今でも忘れてないよ。あの時あの言葉貰えてあたし、すーっごく嬉しかったんだぁ」
今度はトリスが手をぎゅっと握り返してアメルをじっと見つめてくる。それにアメルの心臓が高鳴る。
「今考えるとあたしはずっとアメルの優しさに支えられてきたんだね…ありがとう。あたし、アメルに会えて良かった」
「違う…」
「え?」
アメルの口から小さく出された否定の言葉をトリスは問い返す。
視線の先には泣きだしそうな、切なげな表情。
「あたし、優しくなんかないの…。あたし、トリスが思ってる程優しくなんかないし、綺麗でもない。だってね、あたし、貴女にもネスティにも嫉妬した事あるの。
だから、トリスにそんな風に言って貰える資格なんてない」
「アメル…?」
アメルの突然の告白にトリスは戸惑う。けれどそれに構わずにアメルは続ける。
「あたし…貴女が羨ましかった。みんなから愛されて純粋な気持ちで優しくできて特別な人がいる貴女が。そしてそんな貴女に大事に思われているネスティが。あたしが愛されてたのはレルムの村の聖女で天使アルミネだったから。だから貴女が大切な反面凄く嫉妬した事もあったの。貴女はたとえ調律者じゃなくとも皆に愛されるだけの存在だったから…」
「アメル…」
ほんの少しだけアメルの目に涙が滲んでいたような気がした。浮かぶ笑みは自嘲的だ。
「本当に自分勝手な女の子だよね、あたし…。貴女にそんな事思ったのに、それでも気が付けばそんな思い以上に貴女が好きになってた。貴女を独り占めできる今に喜んでた」
アメルは自ら握っていた手を離す。そしてそれに驚くトリスを見つめながらまた口を開いた。
「あたし、貴女が思ってる程綺麗な女の子じゃないの。とても自分勝手で…今だって本当はもっとトリスに触れたいって思ってる。恋人同士がするような事したいって思ってる。…あたしは女の子なのに同じ女の子の貴女にこんな事思うなんて変でしょ?気持ち悪いでしょ?こんな汚れたあたしはもう天使なんかじゃない。綺麗な聖女にもなれない。でも怖いの。そんなあたしはもう誰にも必要とされないんじゃないかって。生きてる価値なんてないんじゃないのかなって」
「それは違うよ、アメル!」
思わずトリスの声が大きくなった。そして小さく震えるアメルの体を抱き締めて優しく言う。
「天使じゃなくても、聖女じゃなくても、あたしにはアメルが必要だよ…。あたしね、アメルがいたからこんなに強くなれたんだって思ってる。それに今でも貴女の優しい心を守る為に強くなりたいって思ってる。だってね、あたし、アメルの言葉に何度も救われたんだよ?ご先祖様の犯した罪の意識に押し潰されそうな時そこから救ってくれたのはアメルの笑顔だった。あたしはそれを今でも守りたいって思ってる。たとえ貴女が天使や聖女じゃなくても、この想いは変わらない」
「トリス…」
アメルは自分の手でそっと涙を拭うとトリスを見上げた。
その幼い顔に浮かんでいる優しい笑みに安心した。
「本当にいいの? あたしなんて…汚くて自分勝手で矛盾だらけの女の子なんだよ?今でも貴女にキスしたいとか…そんな様な事思ってるような子なの…。それでもいいの?」
アメルの言葉にトリスは少し俯く。けれどすぐに顔を上げて力強い声で言った。
「いいよ、アメルとなら…」
その言葉に弾かれたようにアメルの唇がトリスの唇に触れた。
アメルの長い髪からほのかに甘い香りがして、男とは全く違う感覚に何故か胸が躍った。
「ん…はむ……」
「…ふ…んあ……」
アメルがトリスの顎に指を掛け、舌を押し入れてくる。
強引にではなく優しくトリスの歯列をなぞり、舌を絡ませる。
慣れない感覚に戸惑うかのように震えるトリスの体を空いた方の手で抱き締めて、その口内を貪った。
「ん…ぷはッ…ア、アメル……?」
「ふふ、トリス可愛い」
頬を染めて少し潤んだような目で見つめてくるトリスの唇をアメルは細くしなやかな指先でつつと撫でた。それだけでもその体は震える。
「ご、ごめんね…あたし、こういうの初めてだから…」
「あはは、実はあたしもなんだ。…こんな事しちゃって、あたしもう天使にはなれないね。天使は綺麗なままじゃなきゃいけないから。でもね、あたし後悔はないよ。もう天使になれなくても、綺麗なままでいられなくても、貴女が隣にいてくれるならそれでいい」
今度は軽く触れるだけのキスをしてアメルは優しく微笑む。
――もう戻れなくてもいい。
みんなに必要として貰えなくなっても、愛されなくなっても、彼女が隣にいてくれるならそれで。
今はもう自分はアルミネではない。そして彼女のようにもなれない。
クレスメントの一族に恋焦がれていてもその高潔さゆえ身を結ぶ事も想いを告げることもできなかったアルミネ。
彼女ができなかった事を今自分はしている。それで十分だった。
「トリス…あたし、トリスともっと色んな事したい。トリスの事全部知りたい。この意味…分かるよね?」
「…うん」
頬を染めながらトリスが小さく頷いた。それを見届けるとアメルは微笑んだまま言った。
「じゃあ見せ合いっ子しよっか?お互いに背中向け合ってせーのでこっち向くの。いい?」
「うん、分った…。いいって言うまでこっち見ちゃ嫌だよ?」
そう言ってお互いに背を向け合うと身に着けていた服を脱ぎだす。
全部脱ぎ終えて、全裸となった状態で声を掛けた。
「トリス、いい?」
「うん、大丈夫…」
「じゃあ、いくよ。せーの」
その言葉が終わると同時に振り返れば同じく全裸となった相手が視界に入る。
その頬は真っ赤に染まっていて心臓が発熱したかのような感覚がせり上がる。
「ア、アメル…やっぱり恥ずかしいよ…」
「トリス…凄く綺麗……」
その小さな体にそっと触れてアメルは囁く。それにトリスの頬がもっと赤く染まった。
「そんな事ない。アメルの方がもっと綺麗だよ。あたしなんて…胸小さいし、傷だって沢山あるし……」
「小さい方が可愛いよ。それに体の傷だってトリスが頑張って生きてきた証でしょう?恥ずかしがらなくても大丈夫だよ。あたし達は女の子同士なんだし」
そのままつつっと指を体に這わせる。
起伏に富まない胸へとそれが辿り着くとそれに反応するかのように体が震える。
「ごめんね…小さくて…。せめてアメルくらいには欲しかったな…」
「あたしもそんなに大きくないよ。それに、あたしは小さい方が好きだな…」
そっと優しく、手で包み込むようにして胸を揉む。
トリスのそこは小さく、それでも敏感であった。アメルが手を動かす度に甘い声が上がる。
「あ、あ…アメル、ダメ…ッ! そこ、何か、変な感じ…んッ!」
「トリス、気持ちいいんでしょ? 怖くないから大丈夫だよ。女の子の体は、女の子が一番よく分かってるから…。男の人みたいに乱暴に扱ったりはしないよ」
そのまま乳首を重点的に責める。指先で捏ね繰り回しながら口でちぅっと吸ってみた。
途端にトリスの体が跳ねる。
「あん、ああッ! アメ…それ、ダメ…ッ! 何か…何か、気持ち良くってあたし…んあッ!」
表情に怯えを滲ませても体は正直に反応した。アメルの指先に、唇に、トリスの体が踊る。
それに満足を覚えながらアメルはそのまま指先を下へと忍ばせる。
肉の薄い腹を通りお臍をなぞり、まだ誰も触れた事のない秘所を優しく弄った。
「ひあッ! アメ、ル…そこは…んふあッ!」
「大丈夫だよ…。トリスのここ、濡れちゃってるね…。あたしに感じてくれたんだ…嬉しい」
もう一度優しく微笑んでアメルはトリスの秘芯を指で愛撫する。
初めての快感にトリスは戸惑いながらそれに翻弄された。
「あ、ゃ、んふ…ッ! ん、あぁん! や…そこ、触られると変になっちゃ…う、んんッ!」
普段はどちらかといえば少年っぽさを醸し出すトリスから漏れる喘ぎは最早完全に女のものであった。
瞳を潤ませ、その体も頬も情欲に薄く染め、アメルを見上げる彼女は紛れもなく誰もが知らない姿だ。
それが優越と満足となり興奮へと変換され、アメルの息も次第に荒くなっていっていた。
そんな彼女に今までされるがままであったトリスもそっと手を伸ばしてくる。
たどたどしい様子でそんなに大きくはないアメルの乳房に触れてくる。
「アメルも気持ち良くなってくれなきゃやだ…」
そう言って初々しい動きでアメルの胸を揉み始める。
「あ、トリス…気持ちいい…! は、あん、そこ、感じちゃう…!」
トリスの手の動きに合わせてアメルの体が反る。
長い髪が揺れ、窓から差し込む月の光がそれを美しく彩る。
顔に快感を滲ませる彼女は聖女や天使なんて単語が似つかわしくない位に卑猥で、艶やかだ。
それにトリスは欲情した。相手は同性だというのに。
「トリス…あたしもっと気持ち良くなりたい…」
そっとトリスにキスを落として、アメルはトリスの濡れるそこに指を埋めた。
「あ――アメルっ!」
異物を受け入れるのは初めてなのかトリスの体が硬くなる。
そんな彼女の耳元でアメルは優しく囁いた。
「大丈夫。痛くはしないから。すぐ気持ちよくなるよ…」
そのままゆっくりと掻き混ぜるようにして動かせば、トリスの口から泣く様な声が漏れた。
「あ、アメ、あた、し…んく…ッ!」
「大丈夫…あたしはここにいるよ」
初めて感覚に怯えるトリスはアメルの体にぎゅっとしがみ付く。
アメルはそのまま本数を増やし中を弄った。
欲情の涙でそこを濡らし熱く絡みつくトリスの中に、アメルは興奮を煽られる。
気が付けば彼女と同じくらいに自分も濡れていた。
そのまま腰を絡めて、手を握って、吐息を混ぜ合わせて、剥き出しのままの一番敏感な場所を擦り合わせる。
触れ合う度に卑猥な水音が鳴る。痛みすら甘い快感に変えて。
「あ、あ、アメ、ル…アメル…ッ!あたし…ぁ、ぅ、んああッ!」
「はぁん!トリス…トリスぅッ!」
触れ合っているのがこの世で一番大切な人の体と考えるだけで思考が鎔ける。
体が甘美な快楽に酔いしれる。
お互いに貪欲に腰を振り、快感を与え合っていた。
こういった行為に慣れない少女達にはそれだけでも十分すぎる刺激で、上がる声は段々と甘く高くなる。
「ア、メル…ああぁぁッ!」
「んあ、あああッ!」
ぐっしょりとそこを愛液で濡らし、二人は荒い息のまま抱き締めあった。
――もう、戻れない。
自分は天使にはなれないし、友人として純粋な想いで彼女に接することも出来ない。
きっと今じゃ誰も彼もに平等に優しくする事だってできない。彼女が特別になってしまったから。
皆に愛される聖女にだってなれない。それは存在意義の消滅。それでも。
「あたし、貴女に会えて幸せだよ、トリス…」
自分の腕の中の小さな体が愛しいと思うから。
「もう、戻れなくてもいいや」
そう言って微笑んだ彼女の目に涙が滲む。
それは、彼女がアルミネではなく聖女でもなく一人の少女アメルとして生きると決意した証拠。
今彼女は完全に己の過去と訣別した。


おわり

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