キュウマ×アティ



「楽しかったですね…」
上気した自分の頬を両手で撫でながらアティは呟く。
「あ、でも、こうなっちゃったのは…多分キュウマさんの所為…かも…」
髪を掻き上げ、ちらりと上目遣いにキュウマを見やる。
「じ、自分の所為…ですかっ!す、済みませんっ!!」
風にたなびく白銀の髪を更に波立たせ、キュウマは慌てて謝罪する。
「…ふふっ、冗談です。……私、酔ってるんです」
くすくすと笑いながら、アティはキュウマの髪を撫でる。
「久し振りに皆と会えて…こうしてキュウマさんと二人っきりになれたから…つい」
「か…からかったんですか…」
はい、からかっちゃいました、とアティは微笑む。

暫しの沈黙。
夜風が白銀と深紅の髪を靡かせ、鳶色と菫の瞳が互いの姿だけを映し出し、漸くキュウマは口を開いた。
「ミスミ様が…その…」
そこまで言って頬を紅潮させ、押し黙る。
「ミスミ様が?」
二度三度瞳をしばたたせ、アティは繰り返す。
「いや、その…ですね。」
ごくり、とキュウマの喉が鳴る。
「はい」
促す様に返事をするアティの手を握り締め、耳まで赤くさせたキュウマは一気に言葉をまくし立てる。
「し、し式はいつでも挙げられるのだから、早う自分のモノにしてしまえと仰るのです!!」
そこまで言うと、キュウマは顔を伏せた。
「え〜と、それってつまり…。私と…」
アティの言葉をみなまで言わせずキュウマは詰め寄る。
「自分は、出来れば式を挙げてから…それが普通だと思うのです!貴女の気持ちも考えずにその様な事を…」
「いいですよ」
「えぇ、貴女は勿論、そう言うと……は?」
花の様に微笑んだアティの言葉に、てっきり否定すると思ったキュウマの目が点になる。
「えっ…あっ…そっ…」
「私、構いませんよ?」

「「…………」」
また、沈黙。
急に向きを変えた風に帽子を押さえ、アティは囁いた。
「…やっぱり、駄目、ですよね。私的にはミスミ様に賛成なんですけれど。」
御免なさい、とアティは俯く。

…この時、キュウマの頭の中ではリクトが、ハイネルが、ミスミが、この島に関わった全ての者が「女に恥をかかせるな」と大合唱をしていた。大合唱は既に罵詈雑言が混じり始めている。

時間にして数秒。しかしキュウマには数時間。罵る声に自分が混じり始めた時、腹を括った。

「じっ、自分も…自分もアティ殿と…アティ殿と…!」
ぐるぐると渦巻く思考は季節外れの弥生雪となって、掻き消えた。

「キュウマさ…キュウマ…」
アティの潤み始めた瞳がとろりと月光に揺れる。握られた手はそのままに、瞳は閉じられた。
「自分は…未熟者故、不手際を、御容赦下さい…」
握られた手が離され、キュウマの手がアティの肩に触れる。紅を差さずとも桜色の唇に、ゆっくりと自分の唇を重ねる。
何とも言えない感触。柔らかいアティの唇を食み、少し角度を変え更に深く、貪る様に口付けを繰り返す。
「ふっ…んんぅ…」
ちゅ、ちゅぴ、と卑猥な音が二人の間から出る度に、アティは小さく息を漏らす。
アティの腕がキュウマの首に回され、キュウマはアティの背を抱き、無意識に彼女の太ももにするりと手を這わせる。
熱を帯びた二つの視線が絡み合い、キュウマはアティの首筋に唇を寄せ、赤黒い花びらを散らせてゆく。

喘ぐ様な互いの吐息だけが響く中、ゆるゆるとキュウマの指がアティのブローチを外し、腰のベルトを緩ませる。
物々しい音を立て、彼女のベルトが剣ごと地面に落ちた。
互いに一瞬びくりと反応し、苦笑混じりに抱擁を繰り返す。

「こんな夜更けに出歩く人なんて、居ませんよね?」
「で、出歩かれては、その…困ります!」
キュウマの腕の中で身じろぎしながらアティが呟けば、キュウマはアティを隠す様に腕に力を込める。
苦しそうに喘いだ彼女に気付き、アティを解放したキュウマは彼女の服に震える手を掛け少しずつ、ずり上げていく。

アティの秘部を包むショーツ。引き締まった腰。形の良い豊満な乳房とそれを覆うブラジャー。
丁度乳房の上に服を引っ掛ける様に手を離し、コートも脱がせてしまう。

キュウマはここで思考を巡らせる。
(はて…これはどう脱がせば良いのか…?)
下履きは、分かる。腰巻きみたいなものだろう。
(しかし、この胸のコレは…?)
胸を隠す物?それだけにしてはやけに谷間がくっきりと…。
食い入る様に自分の胸元を見るキュウマを、アティは訝しげに見やる。
「あの…どうしたんですか?」
「えっ?あっ!いや、その!胸が、谷間で、胸当てがヒラヒラで!」
「……はい?」
支離滅裂なキュウマにアティはキョトンとしてしまう。
「ブラジャー、初めて見たんですか?」
「ぶ、ぶらじゃぁ…??」
キュウマは繰り返して、またまじまじとアティの胸元を見つめる。多分、外し方なんて分からないだろうな、と心の中で苦笑してアティは「ちょっと御免なさい」と草の上に座り込む。
キュウマも膝を立てアティと同じく座り込み、彼女の様子を伺う。
帽子を取り、服も脱ぐ。背中に手を回しもぞもぞと身じろぐと、たぷりと乳房が揺れ、薄桃の乳首が露わになる。

ブラジャーを服の上に置き、頬を赤らめるアティと、息を飲むキュウマ。
「ふ、触れても良い、ですか…?」
「あっ…ちょっ、待っ…」
アティの答えを待たず、キュウマは彼女の乳房を下から掬い上げる。
己が掌の中で形を変え、熱を持ち始めるアティの乳房を弄び、そろそろと乳首に唇を寄せる。
「んっ…!」
アティの身体がびくりと跳ねると、キュウマは更に彼女の乳房を貪る様に口に含む。
やがて彼女の乳房に玉の汗が滴ると、キュウマは己が纏う上着を煩わしそうに脱ぎ捨てた。
襟巻、肩甲、手甲、革帷子。素裸になり、ふと、自分も薄く汗をかいている事に気付く。
そして、改めてアティの喘ぐ吐息を嗅ぎ、濡れそぼった唇を割り舌を吸い、素裸の胸板に乳房を押し付けられる。
「あぁ…キュウマ…さん、キュウマさん…!」
夢現にキュウマの背に腕を回し、そっと耳元でアティが囁けば、ざぁっと肌に泡が立ち、ぐぐと男根に熱が走る。
耐え難い欲望に負け、下着越しにアティの秘部に指を這わせると、指にしとりと粘着く様な感触。

「濡れちゃって…ますよね」
上気した頬を更に赤くさせてアティが呟く。
すす…とショーツ越しに膣から上に指を動かせば、彼女は小さく悶えた。稚拙な自分の愛撫に反応してくれるアティをキュウマは今まで以上に愛おしく想った。

軽い口付けと共に、キュウマはアティを抱き倒す。
褐色の精悍な身体が、真白な柔らかい肌と重なり合う。
ゆるゆるとアティのショーツに手が掛けられ、彼女の一糸纏わぬ姿に嘆息を吐き、自身も帯を緩めいきり立った男根を薄桃の秘部にあてがう。
一息に突き入れたい衝動を抑えながら、それでも、ゆっくりと彼女の中に侵入していく。くちりと生々しい音だけが響き、アティは固く目を閉じる。
「ふっ…ん、うぅ…!」
挿入に僅かな抵抗はあったが、それでも受け入れてしまうのは、生娘では無い証拠。ばつが悪そうにアティは謝罪する。
「肝心なのは、最初の人より最後の人ですよね…?」
それは、自分にしか抱かれる事は無い、との意志表示なのだろうか?
少しだけ、アティが身体を委ねた見も知らぬ男に嫉妬をする。

どんな声を上げたのか?どんなふうに乱れたのだろう?相手はどの様に抱いたのか?貴女はどんな風に抱かれたのか?キュウマの動きはどんどん早まる。
「くっ…うぅ…んっ!…はっ、痛っ…」
突き入れられる度にずるずると後退してゆくアティの腰を、キュウマは逃がさない様にがっしりと掴み、そのまま強く揺さぶる。アティは息も絶え絶えになり悲鳴を上げた。

「くっ…!」
アティの声すら耳に入らない程に、行為に夢中になっていたキュウマは更に深く彼女の中に侵入する。内壁を擦り上げ、はちきれんばかりに膨れ上がった男根が、アティの膣内に精を注ぎ込み漸くキュウマは息を付いた。

真白に塗り潰されていた頭の中が覚醒し始め、くたりと四肢を投げ出しているアティを見てキュウマは絶句する。
「ア…アティ殿?!すっ、済みません!」
「はっ…はぁっ…………び」
「び…?」
「びっくり、しちゃいました…」
荒い息遣いと目尻にうっすらと涙を浮かべ、それでも微笑むアティにキュウマは申し訳無い気持ちが募り、
「…もう、止めましょう」
と呟く。赤く痕の残ってしまった腰から手を離し、ゆっくりと繋がった男根を引き抜き始める。

「あっ…駄目。駄目ですよ、抜いちゃ…」
目を潤ませたまま、アティはキュウマにしがみつく。
「し、しかし…!」
「だって、私、まだイッてませんよ…?」
「イッ…?!」
あ、落ちる、でしたっけ?と困惑するキュウマににっこりと笑い掛ける。
「で、ですが…。自分はまた、先程の様に貴女を…」
「じゃあ、ゆっくり、しましょう。ね?」
繋がったまま、アティはキュウマの肩に顔を埋め…かぷりと左肩に歯を立てる。思わぬアティの攻撃に呻くキュウマにお返しです、と舌を出し悪戯っぽく笑うと、
「は、ははは…」
とキュウマは破顔一笑した。

そして二人は月夜の下で、深く深く口付けを交わし…ゆっくり互いを溶かし合う様に交わり始めた。

−月が白く薄くなり、朝露が降りた頃。何度目かの絶頂にアティは意識を手放し、泡を喰って彼女を風雷の郷にキュウマが運んだ後。黄緑色の小さな影が草むらから軽やかな音を立てて、姿を消して行った−



「まったく、そなたは加減を知らぬのか?」
ほれ、と飯を山盛りによそいミスミは呟く。
「も、申し訳ありません…」
と茶碗を受け取りキュウマは身を縮こませる。
「確かに妾はモノにしろとは言うたが…失神するまで抱けとは言わなんだ…」
あの後。「必ず何かある」と踏んだミスミが、風呂と布団を用意していた頃。案の定キュウマはアティを背負って泣きついて来た。取り敢えずアティを寝かせ、おののくキュウマを説き伏せている間に朝を迎えてしまった。
「普通気付くじゃろ。大体そなたは…」
「母上〜!おいら今日学校に行くから、オニギリ作って欲しい!」
とたとたと床を走り、スバルがたん!と襖を開ける。二人の会話はそこで止まり、ミスミは朗らかに微笑み、キュウマは深々と礼をする。
「スバル様、お早う御座います」
「スバル。朝の挨拶はどうした?」
「あ、お早う!先生はまだ寝てるのか?」
「…昨日の疲れが残っておるのじゃろう。ぐっすり寝ておるよ」
チラリとミスミがキュウマを見やれば、キュウマは更に身を縮こませる。
「今日明日は学校は休みじゃろ?一体どうしたのじゃ?」
「へへ、ヤード先生と、おいらとマルルゥとパナシェで先生の授業の準備するんだ!」
照れ臭そうに鼻の下を擦るスバルに、「そうか、そうか」とミスミは微笑む。と、そこに「お早うございます」とマルルゥとパナシェが来た。
「あぁ〜〜〜〜〜っ!!」
マルルゥは、キュウマの姿を見ると甲高い声でびしりと指を指す。
「ど、どうしたのじゃ?」
「何だよマルルゥ?」
「ど、どうしたの?」
「な、何です?」
全員が異口同音に尋ねると、
「マルルゥ、マルルゥ…ニンニンさんに、言わなきゃいけない事があるですよぅ!」
ふるふると肩を震わせ、マルルゥはきっ、とキュウマを見据える。
「ニンニンさん、昨日、先生さんを虐めてたです!服を脱がせて先生さんを泣かせてたです!!」
どうしてそんな事するですかっ!と詰め寄るマルルゥに、キュウマは立ち眩みを起こす。
「キュウマ…先生を虐めたのか…?」
「な、泣かせたの…?」
「…………ぷっ!」
スバルは眉をしかめ、パナシェはうるうると目を潤ませ、ミスミは噴き出す。

−夜に出歩く人は居なかったが、朝露が降る頃に目を覚ます妖精は、居る−

シュッと音を立て、瞬時に消えたキュウマを見やり、ミスミは子供達に「早う準備をしてきやれ」と促し、キュウマの部屋へと駆け出した。

「キュウマ、キュウマ!気にするな!人の噂も七十五日じゃ!」
「七十五日も待てません!」
引きこもりを決めるキュウマの布団を引っ張りミスミは叫ぶ。
「何だ、それ位。儂の息子なんぞ儂と婆様のくんずほぐれつっぷりを見て…」
「御老、長くなりそうならば、また次の機会に…」
助け船にと呼んだ相手が悪かったか。ゲンジは煽るばかりで役に立たない。
「儂の初夜なぞ、赤紙の来た矢先で、子作りだけしか頭に無くて…」
「御老、向こうの話は今度…」
「自分の事は捨て置いて下さいっ!後生ですからっ!!」

−後日談として、キュウマをからかおうとしたヤッファやアルディラが、真剣な顔で「腹を斬りますから、介錯を御願い致します」と懐剣を取り出し、正座をし始めかなり引いた事を記しておく−


【終】

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