ナツミ×クラレット



窓から差し込む月明かりと蝋燭の細々とした照明が寝室を慎ましやかに照らし出していた。
静まり返った闇夜の世界で二つの影が触れ合っている。
ベッドに腰掛けた二人のシルエットはじっと動かず、時折甘美な吐息を漏らしていた。
「クラレット……」
呼吸が詰まったのか一旦口が離され、熱の入った息を吐きながらナツミは愛しい相手の名を口にする。
クラレットもまた、熱の篭った瞳でナツミを見つめる。
少し照れたような表情を浮かべながら、それでも視線が逸らされることはなかった。
やがて、どちらが求めたわけでもなく口づけが再開される。
柔らかな唇同士が重なり、甘い感触が二人の間を走り抜けていく。
熱い感情が心を焦がしてゆき、恋人同士が愛を確かめるように深い深いキスが施される。
遠慮がちにも互いを求め合うように唇は啄ばまれ、小さく出された舌がおずおずと絡み合う。
別の生き物のように絡む舌からは淫靡な濡れ音が響き、少女特有の甘い香りが相手の鼻腔をくすぐる。
初々しいその動き全てが、二人の緊張と甘美感を高めていった。
だが、艶かしい接吻にもやがて終りが訪れた。
長い長い口づけの余韻を残しながらも、二人の唇は名残惜しそうにゆっくりと離れていく。
口の周りをべとべとに濡らし、息を荒げながら頬を真っ赤に染めている。
まるでそれだけで達してしまったかのようだが、やおらクラレットの方から口が開いた。
「今更ですけど、女の子同士って何か変な感じがしますね」
「うん……でも、好きになっちゃったんだから仕方ないよ」
後ろめたいように呟く言葉を、ナツミは苦い笑いで返す。
実際にそれは仕方の無いことだった。
性別という垣根すら容易に越える、決して断ち切ることの出来ぬ固い絆。
クラレットを守ることが出来るのはナツミだけ。ナツミを守れるのはクラレットだけ。
いつの頃からか、二人を愛する事が出来るのは二人だけとなっていた。
そして、その想いが偶然にも今夜叶った。ただそれだけのこと。
「私もです。ナツミとだったら、私も……」
その言葉が聞きたかったとでも言うように囁き、クラレットはナツミへとしなだれかかる。
ナツミはしっかりと抱きとめ、彼女の服の裾へ手をかけた。
幾分の気恥ずかしさを覚えながらもクラレットは素直に従う。
一枚一枚丁寧に脱がされていき、ついには生まれたままの姿へとされてしまった。
クラレットの白い肌は美しく、同性のナツミから見ても思わず溜め息をつくほどだ。
全体的に柔らかな曲線を描く肢体と胸元を彩るたおやかな乳房。
彼女の身体は男でなくとも飛びつきたくなるような魅力を備えていた。
今すぐ襲い掛かりたいという誘惑をナツミは必死で押さえ込みながら、自らも裸になる。
こちらは幾分日に焼けた健康的な身体。野生動物を連想させるようなしなやかさを持っていた。
若さを前面に押し出したような躍動感が溢れ、やや小ぶりだが形の良い胸元が肉体とよくマッチしている。
対照的な性質を持った裸体は種類こそ違えど最上級の美しさを誇っていた。
そして自らに無い性質を持っているが故に、二人は相手の身体を美しいと思う。
「ナツミの身体って、綺麗ですよね……」
「それって嫌みかしら?」
思わず口に出てしまった言葉に反応し、ナツミは意地の悪い笑みを浮かべた。
そして触れれば壊れてしまいそうなクラレットの肌へと手を伸ばすと、大きな胸に触れる。
「ひゃっ!」
思いがけない刺激に身を竦めるが、責め手は止まらなかった。
少し指を沈ませるだけでもその通りに形を変え、ぷるぷると揺れ動いている。
誰にも触れられたことの無い乳肉だが、張りのある心地良い弾力でナツミの指を迎えていた。
「クラレットの方こそズルイよ……こんなに素敵なのに……」
胸への愛撫を酔いしれたように続けながら心底羨ましそうに呟く。
自らが持ち得ない物への憧れがナツミの加虐心を少々刺激しているようだ。
強弱をつけながら揉みしだき、丁寧にこね回す。
白い肌に赤みが差し始め、うっすらとした汗が纏わりついていく。
その間もクラレットは小さな喘ぎを繰り返し、ベッドの上で悶え狂っている。
快楽を甘んじて享受し続ける肉体はいつのまにか発情の兆しを見せ始めていた。
手の中に隠れている乳首は硬度を見せ、嫌でもはっきりと下半身の疼きを感じてしまう。
「はっ、ふぅっ! ああぁっ!! 駄目です、ナツミ……そんなにされたら私……っ!」
切なげに上がる嬌声が室内に響く。
手だけでは足りないというようにナツミは桜色の頂きに口をつけ、愛でるように優しい甘噛みを施した。
そのまま唇を離し一旦首筋を啄ばむと、ゆっくりと降下しておへそ、太腿の内側へと順に口づけをする。
「もう……クラレットってば……」
全身を丹念に舐っていく愛撫によって、クラレットの秘部からは何時しか甘い蜜が零れ出ていた。
もっともそれはナツミも同じことだ。
責める度に可愛らしい反応を見せるクラレットの痴態に本人も興奮し、身体が火照っている。
直接的な快感は比ではないのに、呼吸の乱れ方はナツミの方が大きいくらいなのだから。
「んんっ! は、ひぃっ!!」
だが呼吸を整えている暇も惜しいというのか、今度は秘部へと直接口をつけられた。
淫裂はじっとりと湿り気を帯びているため、すぐに口周りがベトベトになっていく。
しかし絡みつく蜜液もそのままに、ナツミは愛撫を続けていった。
無垢で慎ましやかな性器は、今は刺激に反応してゆっくりと割り開かれ微かに内側を覗かせている。
唇には陰唇の感触が伝わり、ムッとするほどの香りが鼻腔に広がっていく。
舌を覗かせそっと舐め上げると、微かな味と粘膜の柔らかさがこれまで以上に強く伝わってきた。
「んああああぁぁっ!!」
気持ち良さそうな呻き声と共に、クラレットの身体が固く強張った。
少女の胸に怪しいときめきが湧き上がり、股間の疼きが強くなる。彼女もこれ以上は我慢の限界だった。
「は、はぁ……えっ……?」
不意に舌の動きが止められ、気付けば快楽の波が止んでいた。
そして、寝そべったクラレットへとナツミは秘部を差し出している。
「ゴメンね、我慢しきれなくて……クラレット、お願いしていい……?」
返事の代わりに、クラレットも目の前で怪しく輝く秘裂へと舌を這わせた。
弱い力の優しげな舌遣いで奉仕していく。
「ひゃん! ク、クラレットぉ……」
秘裂を這う熱くざらついた感触は待ち望んでいたものだった。
たどたどしい舌の動きでも、ナツミにとっては十分すぎるほどの快楽。
激しく反応しながら甘い声を上げ、整った顔立ちは明らかな悦楽に彩られている。
しかしそうそう喜んでばかりもいられない。何しろ願ったのは自分自身なのだから。
快感に染まっていく身体を奮い立たせ、ナツミはクラレットへと責め手を再開した。
離してしまった接吻を再び行うと、秘部へ舌を割り込ませながら優しく吸い上げていく。
「ひぃっ!」
これには耐えられなかった。濡れそぼる秘穴を吸引される感触で、一気に昂ぶらされてしまう。
その反応に気を良くしたように、ナツミはさらに舌で舐りながら責め立てていった。
「あ、く……あぁ……」
快楽に気をもまれながらも、クラレットもまた責めの手は緩めない。
濡れ肉の花弁をなぞり上げ、固く勃起した陰核を包み込んで舐め転がす。
同性だからこそ分かる場所を的確に突きながら、二人は欲望の渦へと溺れていった。
女同士による、度が過ぎるほど賑やかな嬌声の合唱。
片方が責めれば、負けじともう片方がより激しく責めていく。
だが無限に高まろうかと思われた快感の螺旋にも、ついに終焉が訪れた。
絶頂間近の肉体は甘美な混乱をもたらされ、膣口がきつく収縮する。
濃厚な陰蜜が溢れ出し、二人とも一気に喜悦の頂点に舞い上がっていく。
「だ、ダメぇ!! い、く……ふぁぁぁぁっ!!」
「ナツミ、私も……あっ、あああぁぁっ!!」
絶頂の悲鳴と共に痙攣を起こす孔からは芳醇な蜜液が噴出し、二人の身体へと降り注いだ。
しかしナツミたちはそんなことに気を回す余裕もなく、相手の身体へとすがりついていた。
指先を動かすことも億劫なほどの疲労感に支配されながら、だがナツミは身体を動かしクラレットへ小さくキスをする。
触れ合わせる程度の軽い接吻を施すと、ナツミは照れながら小さく言葉を紡いだ。
「ありがと」
「ナツミ……?」
「ありがとクラレット。ずっと傍にいてくれて……あたしの隣にいてくれて……」
にっこりとそう言うと、クラレットは感極まったようにナツミへと抱きついた。
ナツミもまた、乱れて額へ張り付いた彼女の髪を掻き上げてやりながら愛しそうに抱き締める。
触れ合った肌からは、相手の鼓動が小さくも確かに届いていた。




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