ハヤト×リプレ3



 このまま、リプレを自分の思うがままに犯そうという考えも掠めたが、それだけはダメだと、殆ど削られている理性でそれを押さえ込む。
 それほどまでに、今、目の前にいる少女は魅力的で、全てを自分のものにしたいという欲望に駆られる。
 それでも、なんとかハヤトにとってリプレを強引に犯すという行動に出れなかったのは、やはり彼女に対する思いだった。
 大切な存在――、一言で言うならそれが一番適切だった。

 もし、このリィンバウムという異世界に喚ばれたとき、リプレが自分を受け入れてくれなかったらどうなっていただろうか、そう考えるだけでもぞっとする時がある。
 もちろん、それだけではない。
 普段から食事や衣服の洗濯など、世話になっている面はたくさんあるし、彼女が心の拠り所にいつしかなっていた。
 むろん、そうと自覚していたわけではなかったが、いつの間にか彼女はハヤトにとって切っても離れることのできない存在になっていたのだ。

 だから、己の下劣な欲望によって彼女を穢したくは無かった。
 もし、自己がコントロールできなくなって、本能に身をゆだねて彼女を壊してしまったら――そう考えるだけで彼女を失う恐怖に襲われる。
 だが、彼女とこういう行為に至って感じていたのは、その恐怖だけではない。
 もちろん、ハヤトとて多感な青年なのだから、興奮はする。
 だが、それ以上に彼女と気持ちが通じ合えたという喜びがそれをさらに上回っていた。

「リプレ…、いいかな?」
 そっとハヤトは躊躇いがちに、リプレの柔らかな太ももに指先を這わせて、ピンク色のショーツへと手をかける。未知の領域がこの向こうにあると思うと、自然と胸が高鳴ってくる。
「うん…」
 小さな声だがはっきりと、彼女は肯定の言葉を紡いだ。
 恥ずかしさで今にも逃げ出したくなってきたが、同時に興奮と期待もこみ上げてくる。
 はしたない女かもしれない、と心うちでは不安になりながらも、すでに彼女はハヤトに身をゆだねていた。
「それじゃあ、いくぜ…?」
 おそるおそると、ショーツの端に指を引っ掛けてゆっくりと引き下ろす。そして、徐々に秘裂の形が露わになる。
 そこはすでに水気を含んでおり、ショーツとの間に粘液の橋を作り上げていた。
「凄い…」
 何がとははっきりと言えないが、たしかにそこは未知の領域だった。可愛らしいリプレの容姿とは裏腹に、そこは淫靡に興奮にわなないていた。ごくりと無意識のうちにつばを飲み込むほど、ハヤトに強い印象を与えた。

 だが、そんな彼の声を聞いて、リプレは恥ずかしそうに身を捩る。
「やだぁ…ヘンなこと言わないでよ、ハヤトぉ…」
 言葉では拒否しているが、その声は鼻に掛かった甘い声色となっており瞳を潤ませる。
 その仕草がまた彼女の可愛らしさを引き出しており、ハヤトはたまらず彼女の肢体を抱き寄せた。
「きゃっ…!?」
「リプレ、本当に可愛いよ」
 淡く笑みを浮かべて、彼女のそこへ、指を這わせる。自分でも陳腐な言葉だな、と思いながらゆっくりと硝子細工に触れるようにくちゅりと水音を立てて指を侵入させる。
「ふぁっ…や、だめ、だよぉ…」
 ピクンと軽く震えながら、秘裂を弄ぶハヤトの指に手を重ね合わせる。
 しかし、そこに拒絶の意志はないらしく、ただ彼の手の甲を撫でるだけだ。そのくすぐったさが心地よく、ハヤトは気をよくして、控えめに蠢かしていた指の先を積極的に動かした。

「ひゃっ、ぁ、ああぅ…だめ、だってば…ぁ…。き、もちよくって…んぁっ!?」
 少しでもリプレに気持ちよくなってもらおう。その一心で内壁を擦ってみたり、緩急をつけて指を抜き差ししてみる。
 そのたびに、彼女は肢体を震えさせ、甘い喘ぎ声をあげた。
 その一挙一動が拍車をかけてハヤトを魅惑していき、より彼の指先が中をかき回す。
 リプレの秘裂から溢れる愛液の量も増えていく。

「は、ぁああっ…んぁ!」
 それを繰り返していくうちにリプレは軽く達してしまったらしく、はぁ…と艶のあるため息をつき、身体を弛緩させた。
「だから…らめ、って言ったのにぃ…」
 自分が感じているところを見られたのがとても恥ずかしかったのか、瞳に涙を浮かべながらぐっと下唇を噛んでハヤトに訴える。だが、そんな仕草さえ今のハヤトにとっては、可愛らしく見えてしまう。
「まあまあ…俺だって見られたんだし、お互い様だろ?」
 誤魔化すように曖昧な笑みを浮かべて、リプレをなだめる。
 変わらず彼女は顔を真っ赤にさせたまま彼を睨んでいたが、秘裂から指を抜いて付着した愛液をぺろっと舐める。
「は、はやと…っ!?」
 これには驚いたのか、恥ずかしいような気まずいような気持ちになってしまい困惑する。
「なんだよ? リプレだってしてくれたじゃないか…」
「そ、そういう問題じゃないのっ!」
 どうしてこの男は、こういうところが疎いのか。
 きょとんとするハヤトを睨みつけながら、リプレはぎゅっとベッドのシーツを握った。
 むろん、彼の愛撫は心地よかったし満更でもなかったのだが。

 暫らくの間そんなやりとりが交わされていたが、時間が経つにつれふたりの言葉にぎこちなさが表れてくる。
 それはこれからの行為を想定してのことだ。いよいよ、とふたりとも思っていたがいざとなるとどうしても不安が募る。
 しかし、このまま内容のないやりとりを繰り返していても埒があかない。
 そう考えたハヤトは彼女の裸体をゆっくりと抱きしめて肩に顎を乗せて耳元で囁く。

「その、さ……、そろそろ、いいかな」
 その言葉をささやいた瞬間、ぴくっと肩が微動したのを感じた。
(やっぱり、リプレ、怖いんだろうな…)
 高校の友人とのふざけた話や保健の授業では習ったことから、女性の『はじめて』というのは途轍もない苦痛を伴うということぐらいは知識として頭のなかにはあった。
 けれども、それがどれだけ痛いのか、どのように痛いのか、今までもこれからもハヤトは経験することができない。
 できることなら、痛みを代わってやりたいがそれは無理だ。だから、ハヤトはここでリプレが拒絶すればここで行為を終えようと思った。
 無理矢理にすることもない。ハヤト自身は彼女と気持ちが通じ合えただけでも嬉しかったし、それ以上のことも彼女はしてくれた。

 やっぱり、止めようか?
そう言葉にしようとしたそのとき、頬を赤らめたまま無言でリプレは頭を横に振った。
「怖いなら、ここで止めてもいいんだぜ?
俺だって、そんな無理にしたくはないし…」
「ううん…私、わたし…、ハヤトに初めてを貰って、欲しいの」
 小声だが、はっきりと言葉にしてハヤトの要求を受け入れた。
 そんな彼女の言葉にハヤトは嬉しく思い、彼女の身体を押し倒して覆いかぶさる。
 瞳と瞳が合い、今ならお互いの心が感じ取れた。ハヤトもリプレもお互いを求めていた。
「本当にいいのか、リプレ?」
「うん、もう、大丈夫だから…来て、ハヤト」
 愛しいヒトと今から一緒になれる。そう思うとリプレの心からは不安が自然と薄れていた。
 そして、彼女は嬉し涙を滲ませながら、にこりと笑みを溢し腕を広げてハヤトを受け入れる。
「分かった。リプレ、…俺は君のことが好きだ」
「うん、私もだよ…ハヤト」

 そして、ハヤトはついにその秘裂に力を取り戻した肉棒をゆっくりと沈み込ませる。
「んぁ…はっ、くぅ…」
 苦しげなリプレの息遣いがハヤトにも感じられたが、今更止めるわけにもいかない。
 それにハヤトにも余裕があるわけでもなかった。
 今まで他人に触れさせなかったそこはきつく侵入してくる異物を排除しようと絞めてくる。
「ん、くっ――…!」
 狭い道をなんとかこじ開けながら奥へ奥へと進めていく。
 そのたびに苦しげなリプレの悶える吐息が顔に吹きかかり、申し訳なく思ってしまう。だが―――

「――痛っ!!」
 今までひときわ大きい声で、苦痛を訴える。
 そして、その声が何を示しているのか理解したハヤトは今一度改めてリプレを見つめた。
「リプレ――…」
「うん、ハヤト…」
 リプレを安心させるようにハヤトは笑みを溢した。そしてお互い頷きあうと、彼は奥まで一気に貫いた。
「いっ――、あ、ぅあああぁっ!!」
 声にならない悲鳴をあげながら、苦痛に耐える。
 まるで身を引き裂かれそうな痛みにリプレの瞳からはぽろぽろと涙が零れる。
 だが、それでもきつくきつくハヤトの身体を抱きしめて離れようとはしなかった。

「ぅ、あ…くんぁ…っ、はぁ―――。これで、わたし、ハヤトと一緒になれたんだ…」
 痛みはなかなか治まらず、時折苦悶の息を吐くが、リプレは涙を流したまま、嬉しそうに微笑んで言葉を紡いだ。
「ああ…ゴメン、痛かったよな?」
「うん…、でもハヤトが一緒だから、私、頑張れるよ…」
 ハヤトもその言葉を聞いて、申し訳なさそうだった表情も柔らかくなりリプレに微笑み返した。
 もう言葉は何も要らない――こうして相手の温もりを感じているだけで、ふたりは幸福感に包まれていた。

 しばらくその幸福感を感じながら穏やかな雰囲気が築かれる。
「ハヤト…その、痛みも引いてきたから動いてもいいよ…?」
「そ、そう?」
 間抜けな声をあげながら、訊ね返した。実は先ほどから我慢していたのだ。
 彼女の中を感じれば感じるほど、興奮してしまい中に侵入している肉棒もより大きくなっていた。
 それをリプレも感じていたから、恥ずかしそうに口にしたのだろう。

 リプレに悟られたことは恥ずかしかったが、もう我慢する必要はないと考えてゆっくりと腰を動かし始めた。
「ん、くっ…ぁ、はっ――…ぁ」
 苦痛は治まった、とリプレは言葉にしていたが、やはり完全には引いていないようで腰を少し引くだけでも刺激されて表情を歪める。だが、ハヤトも自分の欲求を抑えることはできない。
 できるだけ乱暴にはしないようにとは思うものの、身体は我慢できずに自然とリプレの肉体を求めていた。
 だが、その表情を見て、少しでもその痛みを緩和させようと腰を動かしながらハヤトはふるふると震える乳房に手を這わせる。その柔らかさを感じながら双乳を優しく揉みしだいていく。

「やぁ…、ん、はぁ…」
 それが功を奏したのか、苦痛を訴えるだけだったリプレの吐息にも甘い嬌声が混じるようになってきた。
 そのリプレの吐息を感じて、ハヤトもよりペースをあげる…というよりもいよいよ自分の本能を制御することができなくなっていた。
「やだ、ぁ、へ、ヘンだよ…はやと…っ」
 先ほどまで感じていた苦痛が和らぎ、快楽が自分のうちから溢れてくる――その奇妙な感覚にリプレは戸惑う。

 だが、彼女の体からは力が抜けて、まるでもっと快楽を得ようとするかのように彼女は自分から腰を動かしていた。
「おかしいよぉ…んんぁっ…! はぁ、ふぁんっ」
 戸惑いながらも自分の身体を求めてくるリプレに、ハヤトはとうとう我慢できなくなってきていた。
 そして彼女も同様に、完全に蕩けるような嬌声をあげてしっかりと彼の身体を抱き返していた。
「ら、め…、なんだか、からだがふわふわして…はぅ、もう…ぁ、ぁあああああっ!!」
「リプレ、リプレ…!も、もう、俺―――…ダメだっ!」
 ふたりはお互いの身体を抱きしめると絶頂を迎えて、寸前にハヤトはリプレの膣内から肉棒を引き抜いて、白いリプレの肌へぼとぼとと精液を放った。
 白濁液に塗れたリプレの肢体はとても魅惑的で、ハヤトは、その姿に再び鼓動を早くさせていた。

「リプレ、俺、絶対に――」
 その後は何を紡ごうとしていたのか。そのときのリプレは絶頂の余韻で分からなかった。
 だが、ふたりとも満足感に充足して、お互いの微笑を見つめながら眠りへと落ちていった。

 ―――翌日、いつもの自分のベッドではなく、ハヤトのベッドから抜け出たリプレは昨夜の情事を思い出し気恥ずかしさを覚えた。
 傍らではハヤトが心地良さそうに寝息を立てていた。
 いつまでも彼の寝顔を見ていたかったが、今日も一日が始まる。そう、まずは朝食を作らなくては。
 着衣を済ませると、リプレはハヤトの顔に近づけた。

「ハヤト…、私、いつか貴方が元の世界に戻ってもずっと待っているからね。
 だって、貴方は戻ってきてくれるって約束してくれたんだから…」
 軽くハヤトの唇へと自分のそれを落として、うれしはずかしの表情を浮かべると彼の部屋から出て行った。

 朝食を作りにリビングへと向かうと、既にキールが起きてテーブルの椅子に座っていた。
「き、きーる! きょ、今日は、早いのね!?」
 ハヤトの部屋から出てきたことはばれてないだろうか、と不安になって思わず声が裏返ってしまったが、キールは気にした風でもなく片手を上げて挨拶をした。
「おはよう、リプレ。昨日ハヤトと話をしたみたいだけど、その様子だと上手くいったみたいだね」
 その言葉でビクッとリプレは全身を竦ませる。
 ハヤトのことについて、リプレは以前からキールに相談したので、その言葉におかしいところはない。
 おそらく、昨夜の「話をした」というのもハヤトが言葉にしていたのだろう。
 (実際は、キールがハヤトをリプレと話をするように仕向けたのだが)
 ただ昨夜のこともあり、何気ない彼の言葉ひとつにしても、ドキドキしてしまう。
「え、ええ、お陰さまで。ありがとう、キール」
 内心動揺しながらも、リプレは努めて笑顔を取り繕い謝礼をする。
「いいや、僕は何もしてないよ。それに、ハヤトもリプレも…もちろん他のフラットのメンバーも僕にとって大切な存在だから、君たちがうまく行くのは僕も嬉しいよ」
 そう言って、キールはテーブルから立ち上がる。
「それじゃ、僕は今日ラミちゃんたちに聞かせてあげる本を探しておかないといけないから、朝食ができたら呼んでくれるかい?」
 どうやら、バレてないみたいだ。リプレはほっと内心安堵する。そして返事をしようとしたら先を制して、キールがそうそう、と思い出したように言葉を紡いだ。

「まあ、仕向けたのは僕だし、年頃なんだから仕方ないのかもしれないけれど子どもたちに聴こえるかもしれないから控えめにね?」
「え゛……」
 トイレに起きて偶然ハヤトの部屋の前を通りかかってふたりの声が聞こえた、とは言わずそのまま何もなかったようにキールはその場を立ち去った。

「……嘘?」
 残されたのは呆然と皿を取り落とすリプレひとりだけだった。


おわり

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