『常夜』



 夜の来ない空を見上げると、目の前が曇って何も見えなくなる。
「はっ……はあっ……! んはああ……!」
 ユヅキがひっきりなしに漏らす、乱れた息が当たるせいだった。
 切れ長の眼元を彩る紅隈は、今は塗られておらず、代わりに喜悦の涙が頬を伝っている。しかし、隈取りがされていても目立たなかったかもしれない。
 なぜなら、ユヅキの満面は朱に染まり、とびきりの艶やかさで彩られていたからだ。
「ああっ……あああっ……♥! だめ、だめです……こ、こんな……だ……誰かに見られて……しまい……ます……! んん……んんんん ……♥!」
 ユヅキは胸当てを外して深緋色の着物をはだけている。だけでなく、窓に手を押し当て豊満な胸と尻を遠慮なく剥き出し、そのうえ股を大きく広げ、秘所の恥毛も菊門も丸見えという状態だった。
 常に居住まいを正し、凛然としている女サムライ・ユヅキ──その普段の姿がまるで嘘のような、どうしようもなく乱れたあられもない格好であった。
 その背後に誰かが立っている──着ているローブがゆったりとはだけているため、分かりにくかったが、ほっそりとした指が肉付きのよい臀部を掴み、ゆるやかなテンポで腰を前後に動かしている。そのためにユヅキの身体も揺すぶられ、ガタガタと窓枠を鳴らしていたのだ。
 その人物はユヅキほど肌を露出させていなかったが、ユヅキより細身で、剣気が漂う女サムライの容貌とは真逆に、慈みの籠もった眼差しが印象的であった。
 だが――腰から下を見下ろせば、左右に開いた裾から覗くすらりとした脚の付け根部分に、その華奢な容姿からはまったく想像のつかない代物が隆々と突き出ていた。

 ぬっちゅ、ぬっちゅ、ぬっちゅ、ぬっちゅ

 粘湿な響きが室内に満たされる。静かな部屋にはその音とユヅキの喘ぎ声しかなく、それが余計に淫猥さを際立たせていた。
「あッ、あッ、ああッ、ああッ♥!」
 ユヅキの体内にみっちりと埋(うず)まったモノが、ゆっくりと――だが一突き一突き、彼女の最奥まで確かに到達し、そしてまた入り口までずるずると後退する。
 すっかり充血した柔襞が、高々とエラを張る太カリに巻き込まれるように擦られると、
「んああああッ♥!」
 そのたびにユヅキは深い快感に全身を震わせ、膣肉をきゅんきゅんと締め付けながら、溶けそうになる足腰を必死に支え、正体を失ったような嬌声を発するのであった。
「そ、そんな奥まで……んひっ……んあぁっ……ああああっ……♥!」
 自らの熱い吐息で曇る窓の外を、ユヅキは見ていない。その眼はとっぷりと快楽(けらく)に堕ち、後ろから貫く人物に全てを支配され、自らも腰を振り、犯される悦びに浸っていた。
 他では絶対に見せることのない、想像することすらかなわない姿──
「フフフ……ユヅキのアソコは相変わらず良い締め付けですね……」
「あ、有り難き幸せです……!」
 ユヅキは心底嬉しそうな笑顔を浮かべ、後ろに首を曲げた。
 そこには、この世界で数多の人々から敬われる女性が柔和な笑みを浮かべ、穏やかな目で見つめ返していた。
 その視線がまた、ユヅキにはたまらない。言いようのない感動が胸の奥から満ち潮のようにこみ上げてくる。
(お慕い申し上げております……!)
「ああ……」優しげな面立ちが、快美感の溜め息をつく。「また……一段と締め付けてきましたよ……なんという心地よさでしょうか……」
 女サムライの熱い鞘に感嘆する「女性」。

 聖女キサナ。

 薔薇を象ったコルセットを外して衣をくつろがせたその隙間から、ありうべかざる「モノ」が生えていた。


 ここはユヅキにあてがわれた、白夜内の私室。
 カゲロウの里から取り寄せた畳や布団、箪笥、刀掛けといった一風変わった調度品が、石壁で囲まれた間に整然と置かれている。
 しかし今は、独特の趣がある雰囲気はどこかに消し飛び、二人の「女性」がまぐわる淫靡な空気に満ちていた。
 キサナの股間から伸びるペニスは、どうみても生々しい本物だった。キサナの母性的な顔とはまったく釣り合いの取れない、目を疑うばかりの異形なる存在。
 子どものそれのようにまったく色が沈んでいない、彼女の素肌と同じ絹のような艶めき。それが勃起し、熱く脈動しているのだ。
 陰嚢は無かったが、張り型ではない。正真正銘、彼女の身体と一体化している本物の肉体器官であった。
 キサナを「母」として慕う者は多い。その「母」が、このような男の象徴を持っていた。
 ユヅキの秘陰に遠慮なく埋(うず)められ、遠慮なく膣奥をつつき、蜜を溢れさせながら出入りを繰り返しているのである。

 ぬっちゅ、ぬっちゅ、ぬっちゅ、ぬっちゅ!

「ウンッ、ウンッ、ウンッ♥!!」
と、ユヅキは苦悶にも似た声を上げるが、それは紛れもない快楽の音階であった。
 女サムライは雌穴から愛液をまき散らし、この上ない歓喜を以てキサナのペニスを受け入れていた。男根を深く突き入れられて孔いっぱいにはめられるたびに、官能を刺激する甘い喘ぎ声で喉が震える。
 サムライとしての精進で鍛え上げられた肢体が、肉の悦びに紅く咲きほころび、女に匂い立つ。
 お腹の奥がずくずくと熱かった。そこが一個の熱源と化したように、気がおかしくなりそうなほどの甘美な波動を全身に伝わらせていた。
 そうして肉悦に悶えるユヅキとは正反対に、キサナは身体をあまり揺らさず、静かな動作と長い溜めで腰を打ち付けていた。ゆったりとした長衣もあって、見続けていると動いていないような錯覚に陥るようである。
 よく見れば頬に赤みが差し、目端にも淫蕩が漂っているが、一見して平静な表情のままであった。彼女と彼女の股間に付いているものの対比と同様に、ユヅキの乱れ具合とは対照的であった。
 荒々しさはないものの、膣深くまで往来し、秘奥の隅々まで擦り上げる動きは、ユヅキに堪えがたい淫悦を与えている。
「ああ……あああっ……♥ キ、キサナ様ああぁぁ……♥!」
「ユヅキ、少し声が大きいようですね」
 キサナは慈母のような笑みをこぼし、腰の振りを若干ゆるやかにした。
「この館の壁は厚いとはいえ、そんなに声を張り上げては、本当に外まで聞こえるかもしれませんよ?」
「はっ……はい…………も、申し訳御座いません……つい…………」
 ユヅキは畏(かしこ)まったように腰を止めた。顔から淫気を薄め、なんとか落ち着きを取り戻そうと深い息をつく。
 すると。
 突然、キサナのペニスがずにゅっ、と奥壁まで一気に深く入り、子宮近くで掻き回すようなノックを始めた。

「おっ、おひぃ――ッ♥!」
 もうすっかり出来上がっていたユヅキの生殖器が、ひと休みを予感した所への、いきなりの淫撃。
 ユヅキは全身の皮膚が粟立つほどの歓喜に染まり、赤い舌を突き出し、悲鳴のような嬌声を上げた。
「奥ぅあぁぁ……♥ お、お腹が掻き回されるうぅ……♥」
 双臀を震わしながら、今にも崩れ落ちそうな腰を震える膝で必死に支え、深々と貫くキサナのペニスを発情した柔肉で締め上げる。
「んああ……んんあああぁあぁぁ…………ッ♥!」
 甲高く囀り、ほとんど白目になるユヅキ。


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 ――茨は密やかに侵食していく。
 まずは身体。女を幾たびも肉欲に狂わせ、身も心も溶けているところで茨を植え込んでゆく。女は愛する者に愛される喜びに囚われきって、自分の肉体が徐々に蝕まれてゆくのに少しも気付く様子がなかった。
 万事そつがなく知覚も鋭い女だったが、『こちら』に警戒心を向けるはずもない。
 計画は実に上手く運んでいった。
 いつもならば、こんな面倒な事はしない。そのまま丸ごと奪い取ってしまえばそれで済むからだ。特にこの女はジヨウに富んでおり、無防備ななった魂に何度も食らいつきそうになった。その衝動を性欲へと転化させたが、これで正解だということが結果で判った。白濁にまみれた女は、ますます快楽の泥沼にはまり、茨はたやすくその身体奥深くまで植え込まれていったからだ。
 これは実験であった。成功すれば、すぐに逃げ回って姿を隠す小うるさい邪魔者どもに対する便利な手駒となるだろう。
 『放浪者』が何の疑いも持たないまま騙されて堕ちてゆくのも、極上の甘露であった。
(ククク……この女がうまく出来上がれば……我に抗う者どもは、今までとは逆に我を楽しませる格好の材料となろう……クククク…………)  それは、光なき海底にある闇の魂がさざ波たつような昏(くら)い感情であった。
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「ん"あ"ッ、あっ……あ"あっ……♥!」
 ユヅキのからだが一段と震えたかと思うと、女サムライは背を張りつめた弓のように反らし、窓ガラスいっぱいに指を押し拡げた。掌は汗で滑り、下の窓枠まで降りる。
「あぁ――ああああぁぁぁ…………♥♥!!」
 武人として致命的な部分である喉を仰け反らせ、か細い声を漏らしながら忘我の世界へ昇り詰める。
 ゆるやかな昂奮の上り坂から一気に絶頂まで駆け上がった生殖器が、ぐにぐにとポンプのように収縮していた。
「────ぁぁぁぁぁぁ……………………」
 絶頂に震える声はいつまでも続き、キサナも動きを止め、ユヅキの秘肉がオルガズムにのたうつ様を愉しんだ。

 ――ユヅキの状態が治まるのに、たっぷり1、2分はかかっただろうか。
「…………はあ…………はあ…………」
 ようやくからだが弛緩し、意識を混濁させながらも、肩で息をしながら絶頂の余韻に浸るユヅキを、聖女と謳われる女性は心底愉快そうな目で見下(おろ)した。
「フフ……可愛いらしくイキましたね、ユヅキ…………」
「キサナ様ぁ…………♥」
 上体をねじって振り向く。緩んだ笑顔。溶けたようになかば焦点を失った瞳で、ユヅキは聖女を見上げた。  天上にいるような心地であった。  今イッたばかりだというのに、ほぼ無意識に括約筋を締め、膣奥を叩くキサナの男根をキュウキュウッと甘く絞り上げる。奥に続く穴からはこんこんと蜜液が溢れ、愛しい存在と自分自身をねっとりと濡らしていた。  この上ない幸せ。お腹の奥が熱かった。どうしようもなく欲しかった。愛しい存在を欲しかった。  もっと奥まで、からだの芯に届くほど奥まで――――――  そんなユヅキに、キサナは微笑みを湛えた顔を横まで近づける。
「まだまだ……これからですよ。さあ、私にその唇を差し出しなさい……」
「あぁ……はい……キサナ様…………」
 進んで開かれるユヅキの唇に、キサナの唇が重なる。
 人々の間で名高い白夜。その組織を代表する二人の麗人のふっくらとした唇が――ためらわれることなく淫らに交わり、赤い舌が絡まり合う。
「んん……んんん…………♥」
 ユヅキはもう歓喜以外何も考えられなかった。絶頂にも似た甘いスパークが頭の中で幾輪も華咲き、戦いにおいては非情さも宿る眼が、涙を流しながらうっとりと蕩(とろ)ける。
 キサナの細い腕(かいな)が伸びてユヅキの成熟した乳を揉みしだき、いまだ繋がったままの腰をくゆらすように回す。
「んふ……くふうぅ……♥」
 ユヅキの眼の端に再び、抑えようのないほどの色情が浮かんでくる。彼女の腰もまた、キサナの動きに合わせるように揺れ始める。
(愛しき我が主よ――)
 あくまでもたおやかに動く聖女の指の、なんと心地よい感触だろうか。  我が身奥深くまで貫く
 その陶酔感がまた、淫らな気分を盛り上げてゆく。
 この尊いお方に身も心も支配されたい――たとえどんな事をされようが構わない――そして、もし、許されるならば……このかけがえのないひと時を――何もかも忘れて甘受したい――!
 キサナの唇がそっとわずかに離れた。
 舌と舌の間に紡がれる糸。瞼が開くか開かないか、情欲に絡まる目と目。
 聖女の目尻が下がる。
「貴女の気持ちはよく解ります……欲しいのですね? 私の慈悲が…………」
「あ……あ…………!」
 ユヅキの唇がわななく。
 ああ、それは――!
 その通りだった。欲しかった。欲しくて欲しくてたまらなかった。
 イッても、イッても、離したくない。この上ない繋がりで満たされていたい。
 あの液体を。聖なる慈悲を。
 からだの奥の奥まで、隅から隅まで、キサナ様の祝福で満たされたい……!
 包み隠さず言えば、ユヅキの心の奥底からグツグツと沸き立ち、サムライという“鍋蓋”から噴きこぼれるように、そんな劣情が溢れ出て来るのだった。
 だが、ギリギリの所で、それを言葉にすることを封じる“ユヅキ”がいた。何というはしたない要求をしようとするのか。
 臣下が卑しくも恩情をねだる――決してあってはならないことだ。
(拙者は――こんなにいやらしい女だったのか――――?)
 しかし、キサナの手によって開発されたからだが――そして心が――抑えきれるものではなかった。
 女サムライの双眸から愛慕と情欲が混じった感涙が、とめどもなく流れる。
「貴女のココが……欲しがっているのがわかります」
 キサナの柔らかな掌が、ユヅキの下腹部をさわさわと撫でる。
「――っ……ふうぅん…………♥!」
 そうされるだけでゾクゾクとした甘い痺れが生まれ、ユヅキのからだ中に染み渡ってゆく。
 秘陰の内部では、襞の一本一本がキサナのペニスに吸い付くように密着する。ぞわぞわと沸き、彼女たちは本能の到達点を希求するのだった。
「うふふ……からだは正直ですね……こんなに感じるようになって……ユヅキの大事なところが、とても悦んでいるのがわかりますよ……」
「もうし……わけ……ございません……」
「え?」
 顔を伏せ、恥じ入るように目を瞑るユヅキ。
「主君の御為に働くのが我が務めなのに……拙者ばかりがこのように……」
 聖女は不思議そうに、長い黒髪が分かれるうなじ越しにユヅキの顔を見つめたが、すぐに和やかに笑み崩れた。
「うふふ、まったく構わないのですよ……なぜなら、私も……ほら……」
 ユヅキの手がそっと取られた。
「あ……?」
 導かれるままに目で辿ると、腕が後ろへと──キサナの裾の内へと誘われてゆく──
(あ────)
 ユヅキの指先に、極上品の絹織物のような触り心地──
 聖女の貴き素肌の温もりが、指先から直に伝わってきたのだ。
(はああ……こんな風に、なんて…………)
 秘められた部分のわずか下──自らの内股の肌に、キサナは手を重ねてユヅキに直接示したのである。
 そして、そこはぬらぬらと濡れていた。あまつさえ火照りを帯び、蒸すような淫気にすら包まれていた。
(キサナ様……!)
 聖女もまた──ユヅキの劣情が狂おしく燃え立つ。
「わかりますか……? 私もこんなに濡れているのです……」
 そう言うと、さらに、握ったユヅキの手を、上に、上にと――滑らせる。
「ん……あ…………♥」
 聖女の吐息──そこは、その門の頂から男性のシンボルをそびえさせる、聖なる楽園の入り口であった。
 その禁域を、ユヅキは操られるままに撫で回してしまう。
 “くちゃ……”と、いやらしい音が立ち、
「ん、ふ…………」
 聖女はかすかに甘い鼻声を漏らした。
「どうですか私のココは……? もっと存分に弄くってもよいのですよ……?」
「ああ……!」
 ユヅキは感に入った声を震わせた。サムライとしての立志などどこかに吹き飛び、誘惑にあっさりと負ける。
 キサナに貫かれたまま、彼女の秘門の内を擦るように指を動かしはじめた。
 愛撫しているだけなのに、くちゅくちゅと卑猥な水音がたつほど、そこは潤みきっていた。クレバスはヒクヒクと蠢き、ユヅキの指をキュッと挟み込んで歓迎した。
 二人は知っている。この世界は魂の場であると。しかし、肉体という形をなすのもまた事実であった。聖女と謳われても、その例外ではなかったのだ。
「キ、キサナ様の御火処(みほと)は……愛の雫で満ち溢れております……熱く火照っておられます……!」
「あぁ……その通りですユヅキ……貴女の膣(なか)も、指も……とても気持いいですよ……ああ……私も充分に夢心地を味わわせて貰っているのです……」
 キサナは陶然と息を吐き、抽送を再開した。
「さあ、そのまま続けてください……ともにいきましょう。二人だけの世界へ…………」


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 茨は密やかに侵食していく。
 回は順調に重ねられた。

 隅々まで張り巡らされ、絡み取ってゆく。皮膚……肉……骨……内臓……血管……神経……脳。
 女は淫悦に震えるばかりで、騙されていることも知らないまま、自分の肉体が変わっていくことに屈服し、許容した。
 取り返しがつかないほどに至った時、罠だと告げれば、どういう反応をするだろうか。
 『彼』は昏(くら)くほくそ笑んだ。
 本能の要求を、「愛」などというしゃらくさい感情と履き違え、茨の棘の痛みをからだの疼きと勘違いしている。
 この女にはもう、輝かしい明日は来ない。
 『放浪者』の資格を失い、主人の願いも果たせず、転生することも、かなわない。
 後はもう、その誇り高い魂をどこまでも堕落していくだけだ。
 愚かな女にふさわしい末路として。

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 ぬちゅっ、ぬちゅっ、ぬちゅっ、ぬちゅっ!

「はあぁ……ああぁぁ……キサナ様……キサナ様……♥!」口から涎が垂れても、もう気にならない。ユヅキはほとばしるように声を上げる。「キサナ様……お慕い申し上げております……キサナ様ぁ……ッ♥♥!!」
「ああ、たまりませんよ……いいですよユヅキ……」
 抽送の速度が次第に早まり始めた。
 キサナ様が感じてくれている。
 この剣しか取り柄のない女で悦んでくれている。
 そう思うと、何よりも嬉しかった。快楽にも勝る喜びに、感激で胸が張り詰めそうになる。
 理性が溶ける。今まで抱いていた美徳観は、砂塔のように崩れ落ちてゆく。
 愛液が洪水のように溢れ、聖女の茂みをしとどに濡らし、脚の裏も股下の床もベトベトにした。
 キサナに出会う前は、剣の道に拘るあまり、男女の交わりなど不要不浄とさえ考えていた。
 しかし、聖女の愛に包まれて、自分は変わった。
(もう、何も思い煩わなくてもよいのだ……全てをキサナ様に委ねれば……キサナ様の言うとおりにすれば……キサナ様が微笑んでくれれば…………!)
 平時の意識は次々と沈み、性愛の権化が頭の中を席巻する。
(ああ……ああ……ああ……ッ♥!)
 何もかもが淫熱に炙(あぶ)られ、白夜のような茫漠とした光に包まれてゆく。
(ああ、あぁ……も、もうダメ……何も……考えられ、な……い…………♥♥!!)

 ぬ"ち"ゅっ、ぬ"ち"ゅっ、ぬ"ち"ゅっ、ぬ"ち"ゅっ!

(ああああ、からだ中がビリビリ痺れる……ッ♥! こ、このような極楽が、あ、あ──あ、あああ♥! あああぁああぁあ〜〜〜〜〜ッッッ♥♥!!)
 まるで全身が性感帯になったようであった。キサナが一突きするたびに体内を打ち乱れる圧倒的な快感。その奥――胎内からも、もはや堪えがたいほどに、身体の中から溶かされそうなほどの疼きが発していた。
(うああぁあぁ……♥! 拙者の子宮が……キサナ様の子種を欲しがってるうぅぅ……♥♥!!)
 増感する一方の快楽(けらく)。
 腕に力が入らずにずり落ちそうになり、必死に窓枠にしがみついて支える。
 光が間近まで迫っていた。
「ああッダメッ来るッ、イヤッ、ああ、あッ、ああぁああぁ……ッッ♥!!」
 意識に注ぎ込んでくる絶頂の奔流は、聖女の慈顔すら灼熱の彼方へ消し去ってしまう。

「――ッ来るゥうッう"う"ッう"ゥッ――――ウゥ〜〜〜〜〜ッッ♥♥!!!!」

 ユヅキは砕けそうなほどに背を反らし、全身を突っ張らせてつま先立った。喉奥からケダモノのような呻きを漏らす。壊れた機械人形さながらにガクガクとからだを震わせた。
 ギュウギュウと千切れるぐらいにきつく締まる肉襞全体を掻き分け、パンパンに張った亀頭が膣奥を叩く。
「ひぐぅぅ♥♥!!」
 その瞬間、聖女のペニスがひときわ膨らむのが感じられた。


 来る。


(キッキサナ様の精液せいえきッッッ♥♥!!!!)

 ユヅキの全身から発情した雌の淫気が爆発し、
「んン"〜〜〜ッッ♥♥!! ン"ン"ン"ン"ン"〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ♥♥♥!!!!!!」

 絶頂を迎えた雌穴の最奥に、この上なく熱いほとばしりが浴びせられた。
 サムライの全身に巡らされた“イバラ”がユヅキの官能をいやが上にも高める。ユヅキの肉体で発情していないところは、血肉のひとかけらもなかった。

 ビュッ! ビュッ! ビュッビュ! ビュビュッ!!

 聖女の男根が夥しい量の白く濁った体液を、ユヅキの胎内に注ぎ込んでゆく。
 しかしそれは、聖女の慈悲などというものではなかった。
 その正反対──志半ばで倒れた『放浪者』たちの憎悪、妬み、呪い――それらすべてが凝結した負の力が、闇の欲望に姿を変えたものであった。
 負の力が転化したそのエネルギーは途方もなく、正体を失うほどの催淫性を放散する濃濁精液と化す。
 それをユヅキは、これまでにもう何度となく体内に流し込まれているのだ。

「アアッ♥! アウゥアアァウアアアッッ♥! ンアアッ♥! ンアアアアッッッ♥♥!!!!」

 ユヅキの目が焦点を失い、白痴のような声を上げる。
(これェ♥! これコレこれエェェェ♥♥!!!!)
 “イバラ”の魔力を宿した催淫精子は、瞬く間にユヅキの蜜汁を巻き込み膣内に溢れかえる。すべての肉襞が想い人の到来に歓喜にうねる。  行き場を失ったザーメンが逆流し、結合部の隙間からぶちゅっ、ぶちゅっと噴き出してくるほどだった。

 彼らはユヅキの雌穴を悠々と征服すると、まるで意思を持っているかのように、我先に奥へと殺到する。
 子宮口は悦んで蹂躙された。狭い孔を、愛する者を擬態する精子らが次々と通っていく。
 そうしてユヅキの子宮の中へ押し入った不作法な訪問者たちは、だが、すぐに知ることになる。

 そこがすでに、彼らの失楽園と化していることに──

 子宮内部の膜という膜は、肉と同化した茨がびっしりと覆うほどに走っていた。淫気に澱み、その中で先兵たちが我が物顔で蠢いていた。
 周りに頭を巡らすと、楽しそうなことが行われていた。卵巣から卵子が無理矢理引きずり出され、茨に絡み取られてあちこちで陵辱を受けていたのである。
 負の感情が凝縮された快楽の魔力を浴びて、卵子もまた発情しているかのように、活発に動いていた。
 だが、彼女たちの前に表れるのは、愛しき者の精子ではなかった。
 闇の欲望に蠢く塊が、あっという間に一つの卵子に幾重にも群がっていく。
 邪魔するものはなかった。
 その丸々と成熟した卵細胞を、黒々とした尾っぽで貫いていくのだ。
 卵子に為す術はない。悲鳴のような震えが走るだけだった。

 それは見るも無惨な強制結合であった。

 針鼠になった哀れな卵子は茨に沈み、淫熱に悶えながら分裂を始める。しかしその細胞にさえどす黒い精子らは襲いかかった。人間同士の対ならば起こるはずもない現象が、想像を超える狂気の沙汰となって展開する。
 生命の誕生という神秘の瞬間は、酸鼻を極める光景に変わり果てた。
 このおぞましい姦淫劇の結果、ユヅキの卵子は何匹もの精子と一つになり、子宮膜に溶けるように張り付く。そして、その部分からは発散するようになる。
 これが子宮の澱みと疼きの正体であった。

 この様相を理解すると、新たに到着した闇の淫属たちは昂奮に沸き立つ。その姿が黒ずんでいく。
 そしてまた新しい贄が運ばれてくる。
 子宮にバラまかれる卵子に、さっそく黒い波濤が押し寄せていった。

 狂気に包まれた常夜──ここがユヅキという『ナエドコ』の中心であった。

「――――――ン"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ♥♥♥♥!!!!!!!!」

 子宮で太陽が燃えているようだった。まるでそこまで犯されているような気分になり、ユヅキの発情はとどまるところを知らなかった。
 キサナとの逢瀬を経るたびに、気持ちよさは深まっていくばかりであった。

(く"るっち"ゃうく"るっち"ゃうく"るっち"ゃうく"るっち"ゃううぅゥウぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッ♥♥♥!!!!!!)

 ユヅキのからだがビクンビクンと何回も跳ねる。
 このまま昇天してしまうのではないかというほどのイキようであった。
 サムライとしての誇りも。剣に懸けた命も。白夜の理想も。主君への敬愛も。
 すべてが絶頂に押し流され、







──────ユヅキは、光に溶けた────




 それはあるいは闇かもしれなかったが、今の彼女には感じようもなかった。

 光が薄らいでも、絶頂の残滓に浸かったまま、ユヅキは窓の下にくずおれた。
 ぬぶっと抜けた陰茎は淫液にまみれ、いまだ屹立した先から太い白滝が垂れ落ちてゆく。
「……んひゅっ……んはぁ……んん、んんんん…………♥」
 床についたユヅキの痙攣する尻の間から、白い泉が広がっていく。
 乱れた呼吸で揺れる髪で乳首を擦られると、せっかく落ち着きを取り戻してきた快楽の神経が震える。しかしそれがまた気持ちよく、止める気がしない。
 あまりの絶頂に声はかすれ、いまだ意識が天上を彷徨っているような心地。
 胎内もまだ熱い。
 震える手をそっと下腹に手を添えると、
(キサナ様の子種が、中にたくさん…………♥)
 言い知れない幸福感に、ユヅキはゆるゆると頬を緩めた。
「ユヅキ」
 優しく名前を呼ばれて振り返ると、聖女が慈愛に満ちた表情で見下ろしていた。
 ユヅキの眼前に白濁でまみれたペニスを突き出して。
「お願いします」
 ユヅキは笑みを浮かべて夢うつつな瞳で頷くと、キサナの下半身に取り付き、亀頭を口に含み、聖女の男根を汚す体液を舐め取り始めた。
(ああ、なんて美味しい…………♥)
 あれだけ大きな絶頂を味わってもいまだ体内に燻る快感。子宮の疼き。
 快楽に酔いしれ、剣を忘れた女がそこにいた。



 そして、ついに。
 ユヅキの身体は充分な“滋養”を持つ土壌となった。


おわり

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