Another Act1.『夢』



夢を見る

この隔壁された空間で

二人は夢を見る

これは過去の記憶か

それとも自らが求める欲望なのか

月が照らすこの小さな箱庭の中で

エイナは夢を見ていた



『エイナ・・・』
「(え、レオン・・・?)」
『レオン・・・』
「(ちょ、何・・コレ、勝手に口が・・・!)」
『好きだ、エイナ・・お前の・・全てが』
「(なっ・・・!?)」
突然の相棒からの告白、予想だにしていなかった展開に頭がパニック状態になる
「(いや、気持ちは嬉しいんだけど、ホラ私たち出会ってからまだそんなに経ってないわけだし・・、それに私たちには今はそれより大切な事が・・・!)」
『嬉しい・・レオン、私も同じ気持ちだよ』
「(んなっ!?)」
エイナが必死で言い訳をしているのに、自分の口は自然に言葉を発する
しかもその想いを受け止める言葉を
「(わ、私何言ってるの!?)」
慌てて両手で口を塞ごうとするが、手はピクリとも動かない
むしろ自分の意思とは全く別の意思によって動いてるようだった
『エイナ・・・』
「(!?)」
 パニックの続いているエイナを襲ったのは新たな衝撃だった
 自分の言う事を聞かない口が、レオンの口によって塞がれた
「(ちょっと・・これ、キス・・だよね?何で・・私レオンと・・・)」
 だがエイナには現状を解析する時間など微塵も与えられる事は無かった、永続的に続く波のように、次の衝撃は簡単にエイナを飲み込んだ
「(んむっ!?)」
 口付けを続ける二人、端から見れば何の変化も無かったが、当人たちの間では大きな変化が生じていた
『ん・・くちゅ、あぅ・・ん』
 エイナの瑞々しい唇から甘い吐息が漏れる
 二人の口付けは、ただ触れ合わせるものでは無く、互いが互いを求め合うものへと発展していた
「(あ・・ふ、ン・・ぁ)」
 普通の口付けさえ体験した記憶の無いエイナにとって、この口付けは少々レベルが高すぎる
 理解しきれない状況を必死で理解しようとする彼女の思考を一気に蕩けさせ、それぞれのエイナの意思を混同させる
『「ふ、ぁん・・・レオ・・ン」』
『エイナ、脱がすぞ・・?」
 言うと返答を待たずにレオンはエイナの服に手を掛けた
 既に何度か体験済みなのだろうか、慣れた手つきでエイナの衣を外し、一糸纏わぬ姿へと変えた
『何度見ても、ホント・・綺麗だ』
『「バカ・・そんなジロジロ見ないでよ・・」』
 自分の顔が真っ赤に染まるのが分かる
 照れている、なのに嬉しい
 人前で、生まれたままの姿を晒しているのに、彼に見つめられるだけで胸が熱くなる
『触るぞ・・』
 またもやエイナが答えるより早く、その肢体に手を伸ばす
 時には優しく、撫ぜるように
 繊細な宝物を扱うかのように
 時には激しく、荒々しく
 貪欲なまでにその想いを、その愛を伝えるために
 エイナの胸を、腹部を、臀部を、背中を、太腿を
 様々な部位に様々な愛し方でエイナを責める
『「あふ、あぅぅ・・・ひんっ!!」』
 そのレオンの一つの動作ごとにエイナの肉体には爆ぜるほどの快感が与えられる
『「ひぅ、だめ・・・私、おかしくなっちゃうよぉ!」』
 エイナの表情に満足そうにすると、レオンはエイナの深層、秘部に手を伸ばした
『もう・・こんなになってるぜ?』
 エイナの茂みに僅かに指を埋める
 それだけでエイナのそこからはその身に浴びた快楽を象徴するかのごとく、ドロリとした液体が溢れ出てきた
『「やだ・・レオンのエッチ・・・」』
『む・・・エッチなのはどっちだよ、こんなに蜜を垂らしてさ』
 僅かに埋めた指を更に深く沈める
『「ひぃぁっ!?」』
 ビクン、と体を跳ね上がらせ微かに身を震わせる
『どうして欲しい?言ってみろよエイナ』
 薄い笑みを浮かべながらレオンは問いかける
『「う・・ぁぅ」』
『言わないと、シテやらないぜ?』
『「・・イジワル」』
『なるほど、これで終わりにしていいんだな?』
『「わ、分かったわよ、言えばいいんでしょ!」』
『あぁ』
『「・・・よく・・・して」』
 少し視線を下げ、ボソボソと呟く
『何だって?聞こえないぞ、エイナ』
『「きもちよく・・して」』
 まるで茹蛸のように顔を真っ赤にして、言う
 しかしレオンは更に追い討ちを掛けた
『もっと大きい声で言えよ』
『「っ・・お願い、私を気持ちよくしてっ!!」』
 溜まった言葉を吐き出す
 目尻には恥ずかしさから涙すら滲んでいた
『分かった、望みどおりにしてやるよ』
 言うと同時にレオンは再びエイナの秘部に指を沈める
 しかし今度は軽く弄るだけでは無い、今度は深く、深く
 エイナの中をぐちゃぐちゃにする
『「ひっぃ!くぁんっ!」』
 せき止められていた快感と、今与えられる快感
 その二つが混ざり合い、“おあずけ”を喰らっていたエイナの肉体は容易く快楽に屈した
『「レオ・・わたし、も・・ダメ、いっちゃうッ!!!」』
 エイナの言葉にレオンは反応し、女性の性感帯の中でも最も敏感な点を指で強く摘んだ
『「ひ・・っ!ひあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」』
 先程とは比べ物にならないほどに体を跳ね上がらせ、身を振るわせる
 絶頂の余韻に浸るエイナの表情は満足げであり、同時に非常に淫猥なものだった
「(キモチ・・イイ)」
 レオンと交わったエイナの意識と感覚を共有していた彼女も、その快楽に溺れていた
 初めて浴びる快感、何よりも相手を愛しいと感じる想い
 エイナの意識は初めて感じたその感覚を抱きしめたまま、仮初めの肉体を離れていった


「ん・・ふぁ・・・」
 ゆっくりと目を開く
 周囲は薄暗く
 空には月と星が輝いていた
 確固たる“夜”の存在に、ここが隔壁されたあの世界なのだと理解した
「私がここにいるって事は、まだレオンは目覚めてないのかな」
 まだ数週間程度ではあるが、共に肉体を共有するようになってみて、少しはこの体の特製が掴めてきた
 肉体の所有権は基本的にはレオンに優先されるらしい
 つまり自分の意識が“常夜の石”によって誘われる世界にいるということは、レオンの意識がまだ目を覚ましていないか、目を覚ましてはいるが、まだ体を休ませている最中だという事になる
「にしても・・何て夢見ちゃったのよ・・・」
 思い返すだけで顔が真っ赤になる
 額から湯気でも出ているのでは、と思うほどだ
「まだ、会ってから数えるほどしか経ってないのに・・あんな夢」
 見た、いや・・体感した夢を思い返す、口付け、愛撫、絶頂・・・・
「あんな・・エッチな・・・、ぅん」
 自分の体の異変に気付き、手を忍ばせてみる
「・・・・・濡れてる」
 秘部に忍ばせた指には、ぬめり気のある愛液がへばり付いていた
「私って・・こんなにエッチな娘だったの・・・?」
 くちゅ、という音が気分を高めさせていく
「違う、違うよ・・・」
 頭を振り、自分の考えと、胸に沸いた欲望を否定する
「レオン・・」
 そうすると急に人恋しさを感じ、何処かで身を休めているであろう相棒を求め立ち上がった


「もう・・何処にいるのよ・・・」
 辺りを探してみるが、レオンの姿は無い
 この空間自体がそれほど広くないため、少し歩けば見つかる筈なのだが・・・
「何でこんな時に限って見つからないのよ・・」
 いくら探しても影一つ見えない
「不安に・・なるじゃない」
 はぁ、と溜め息を吐いてエイナは踵を返した
「もう、寝よう・・明日になれば、こんな不安消えてなくなるわよ」
 無理矢理自分を納得させ、先程夢を見た場所に戻る
 と、それなりの時間を費やして捜し求めた人物が眠りこけていたのに気づいた
「・・・居た」
 捜し人、レオンはエイナの眠っていた小屋の入り口にある柱に腰掛け、眠っていた
「灯台下暗し・・ってやつ?」
 また溜め息が出る、確かに目覚めて直ぐに慌てて出て行ったかもしれない
 だからと言って入り口にいる人物に気付かずに出て行くのだろうか
「はぁ・・もう、バカみたい・・・」
 そう思うとドッと疲れが襲い掛かってきた
「これも全部レオンのせいなんだからね!」
 と、言いがかりもはなただしい事まで口から出てくる
「・・・・・・」
 しかし、レオンは彼女の言葉に対して微かな反応すら示さず、穏かな寝息を立てていた
「・・もう、風邪引くよ?」
 聞こえていない事など覚悟の上で、レオンに語りかける
 無論反応は無い
 エイナは幾度目かも知れない溜め息の後、レオンの体を肩で支え、身を起こした
「相棒に風邪なんか引かれたら困るから・・ただそれだけなんだからね!」
 ブツブツと言い訳をする
 これも聞こえているはずは無いのだが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい
「よい・・しょっと」
 小屋の中、ベットが二つ並ぶ寝所に入る
 初めて見つけたとき、レオンが『男女が同じ部屋で寝る訳にはいかないだろッ!!』と真っ赤な顔で言ったため、片方のベットは一度も使用された事はないのだが
「ふぅ、やっぱり男の子だね・・重いよ」
 ベットに叩きつけられたレオンは少し身じろきするが、全く目 覚める気配は無い
「それにしても良く寝てるわね・・疲れてるのかな?」
 人差し指でレオンの頬を軽く突付く
「・・んん」
「ふふ、かーわい・・・ぁ」
 ふと気付くと自分が随分近くまで顔を近づけているのに気づいた
「・・・・・・」
 急激に体が熱くなった
 先程の夢が蘇る
 目の前の人物と愛を囁き合い、その手によって悶え狂わさせていた淫らな自分
「・・・ぁ」
 再び自分の内股、秘部が湿り気を帯びてきた事に気付く
「やだ・・」
 スカートの下から手を入れ、下着に指を這わす
 それだけで目覚めたとき以上に湿っている事が分かった
「何で・・おかしいよ」
「ぅ・・ぁ、エイ・・ナ」
 ベットの上で眠るレオンが微かに声を上げる
「レ、レオン!?」
 目を覚ましたのかとその顔を見るが、両の瞼は塞がったままだ
 しかし何か夢を見ているのか、その表情はただの睡眠とは違うように感じられた
「寝てるん・・だよね?」
 片手で眠るレオンの髪に優しく触れる
「私の夢を・・見てるのかな」
 口からふと出た言葉、しかしそれは妙にエイナの胸に響いた
「レオン・・私、おかしくなっちゃったのかなぁ・・・」
 まるで何者かに取り付かれたかのように体が勝手に動く
 気が付けばエイナはレオンの体の上に伸し掛かっていた
「ダメだよ・・女の子が、男の人襲っちゃうなんて・・・」
 口から出るのは否定の言葉、しかし肉体はまるで言うことなど聞いてはくれない
「でもこんなに、求めてるんだよ?レオン・・」
 エイナの口から熱を帯びた吐息が漏れる
「ねぇ、キスしてよ・・さっきみたいに、キモチ良くして?」
 言いながら、再び指を秘部に這わす
 そして夢の中のレオンの動きを反復するかのように動かし始める
「触ってよ・・感じさせてよぉ!」
 言いながらも指の動きは止めない
 その秘部から淫猥な音が出始めるまで僅かな時間も必要無かった
「は、あぁ・・あぅぁ、んく・・・」
 快楽から漏れる声を抑えようと、理性が努力する
 しかし本能は、更なる快楽を求める
「ひぃぅ!んぁぁ・・あふぅっ!!」
 堪えきれない嬌声が、二人きりの世界に響く
「レオン・・お願い、触って・・・」
 快感に震える手でレオンの手を取る
 激しい罪悪感に飲み込まれそうになりつつも、体は決して止まりはしない
「はうぅぅっ!!」
 自分の秘部へと触れるレオンの指は夢の中のように動きはしない、それでもエイナの肉体には凄まじい快楽が与えられていた
「いけないのに、ダメなのに・・なのに、キモチいいよぉ!!」
 高まる感情、体が焼けるほどに熱い
 背徳感、罪悪感、恐怖感・・・・数多の思いが、不安が、快感に飲み込まれる
 秘部を犯す指から与えられる快楽が全ての中心になる
「ゴメン、ごめんねレオン!私・・もぅ、ダメェ!!」
 既に高まっていたエイナの肉体が限界を迎えるのに時間は掛からなかった
「ああああぁぁぁ!レオンーーーッ!!」
 ガクガクと体を震わせ、エイナは絶頂に至った
 レオンの胸板に倒れこむ、その秘部からは愛液がドロリと流れ出た


「うっ・・えっ、ううっ・・・」
 エイナは膝を抱え蹲っていた
 頬を冷たい風が撫でる
 先程の行為の後、正気を取り戻したエイナは簡単な始末をした後、また小屋から飛び出して来てしまっていた
「う・・グス」
 先程から涙が止まらない
 自分の厭らしさが、レオンへの申し訳なさが
 その全てがエイナを責め立てていた
「レオン・・私、壊れちゃったよ・・・」
 自分で自分が『異常』と認識した
 その事実はエイナを強く打ちのめした
「ひっく・・・うぇ・・うぁぁぁぁん!」
 再び涙が溢れる
 止め処なく流れる涙と一緒に、全ての悩みや不安が消えてくれれば、それはどんなに幸せだろう
 それが不可能とも知りながらエイナは涙を流し続けた


 漆黒に包まれた部屋で、レオンは目を開いた
「・・・・・・」
 仰向けに寝転んだままで右手を上げる
 先程までエイナの秘部を犯していた指には愛液の類は全く付いていない
 ただ、エイナの温もりが、感触が、残っていた
「くそ・・・」
 開いた手を強く握り締める
 自分の意思でレオンはエイナに触れてやる事が出来なかった
 目を開くのが怖かった
 レオンもエイナと同じく、あの夢を見ていた
 エイナとは違い、最後まで
「っ・・・」
 下腹部に血液が集中するのが分かる
 熱くたぎったソレはレオンの意思を表している
「でも・・だからってどうしたらいいんだよ」
 手を出せば、目を開けば、求めてしまう
 互いに狂うほどに、襲ってしまう、犯してしまう
 夢の中の自分の様に、一挙一動に想いを込めてやる事も出来ないのに
 ただ欲しいから、ただ犯したいから
 それだけで彼女に手を出してしまう事がレオンは怖かった
「何で・・こんなに求めてしまうんだ」
 自分が情けなくて、握った手に力を加える
「『愛してる』の一言も・・言えないくせに」
 自分の非力に耐え切れず、レオンは目を閉じた
 想いを、悩みを先延ばしにするために



本能はお互いを求めながらも

意識がそれを認めない

記憶を持たない二人は

相手への想いを認識できない

大切な物が欠けた二人が、全てを思い出すのは

まだ・・先の話

<終>

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