混ぜるな危険 後編



「エイナおねえちゃん、なにやってるの?」

「………………」

エイナの体を使っての自慰の直後。
快感に酔いしれて混濁した意識に、無邪気な少女の声が届いた。
よりによって、ここでは絶対に聞いてはいけない人物の声を聞いてしまった気がする。
気のせいでありますようにと内心拝み倒しながら、首をマネキンのようにぎこちなく振り返らせると。
「エイナおねえちゃん?」
……全然気のせいじゃなかった。
そこには、大きな瞳でこちらを見つめる天使――ピアの姿。
いや、それだけならまだ何とか誤魔化しようもあったのだろうが。
「……コホン」
「あらぁ、エイナさん。お一人でずいぶん……激しくなさっていたのですね」
「うわあぁっ!?」
レオンの背後にいたのはピアだけではなかったらしい。
さきほどの光景を見られていたのか、そこには顔を赤らめるユヅキと、相変わらずの微笑を浮かべるキサナがいた。
エイナの肉体をむさぼることに夢中で、周囲の変化にまったく気づけなかったようだ。
二人の視線に絶望を感じながら、レオンは言葉を失う。
しかしこんな状況にも関わらず、二人のバスタオル越しに浮かび上がった豊満な肉体に目が釘付けになってしまったのが男として悲しかった。
「エ、エイナ殿。そ、その、公共の場でそういったことをされるのは、あまり感心せぬぞっ……」
「あ、う……」
「その場に居合わせたのが拙者たちだったから良かったものの……いや、かえって悪いか」
レオンの行為が理解できずに首をかしげているピアを視界の隅に置き、彼は狼狽しながらまくし立てる。
「ち、違うんだ……いや、違うんです!俺、じゃない!私はその、あのっ」
「何もおっしゃらなくていいのですよ」
すっ、と人差し指をレオンの口元に当てたのはキサナだった。
ユヅキとは違い、彼女はずいぶんと落ち着いた様子で接してくれている。
うろたえる様子を見たことはないが、こんな時でも聖母と呼ばれる彼女は冷静に対応できるらしい。
「ピアが、あなたを見かけたときにひどく落ち込んだ様子だったと聞いたのです」
「そのあとエイナおねえちゃんがお風呂に入るのを見たから、キサナさまに言ったの」
得意満面でピアが微笑むが、今のレオンには天使の少女の笑顔が悪魔の嘲笑に見えてしまう。
「風呂は人の心を開放的にしてくれるのでな。拙者たちも行って、女同士腹を割って話し合おうと思っていたのだが……余計なことをしてしまったか」
まさか、ついさっきまで気を落としていた人間が、風呂場で盛大に自慰行為でよがっているなど誰が想像できるだろう。
ユヅキの脳内でまたしても映像がリピートされたのか、彼女は再び頬を染めて黙り込む。
しかしユヅキの言葉にキサナは首を横に振った。
「いいえ。わたくしたちが来たことは無駄ではありませんよ。今からエイナさんの悩みの相談に乗ってあげられるんですもの」
「べ、別に相談に乗ってもらうような悩みなんてっ」
「ふふふ。隠さなくてもよいのですよ」
そう言うと、キサナは端正な顔をレオンの前に近づける。
細めた目で嬉しそうに微笑むと、彼女は言葉を続けた。
「レオンさんのことを、考えていたのでしょう?」
「……なっ!」
「ほら、赤くなった」
そんなことを言われては、中身がレオン自身だったとしても赤面してしまうのは当然のことだ。
日頃から彼女には二人の仲をからかわれているが、まさか、こんな行為にふけっている時まで言われてしまうなんて。
これではまるで、エイナが淫らな女のように思われてしまう。
「俺……私は、レオンのことを考えてたわけじゃないんです!」
「では、何を考えて?」
「キサナッ!……様。あの、もう許してもらえませんか?ほら、えっと……レオンが見てますし」
「まあ。レオンさんが見ているのを承知の上で、あんな大胆なことを……?」
思わずキサナが赤面し、口元を緩ませる。
……思い切り墓穴を掘ってしまったようだ。
なんとかこの場をやり過ごす方法はないものか。
レオンが思案に暮れていたとき、キサナは再び口を開いた。

「これだけ普段、エイナさんが大胆にアピールしているというのに……。レオンさんは平然としているというわけですか」

「うっ!?」
突然キサナに顔を両手で挟まれ、鋭い視線で覗き込まれる。
すべてを見透かすような瞳に、自分の正体まで知られてしまいそうな危機感さえ覚えた。
「わたくしの姿が見えていますか?レオンさん」
「あ、ああ」
「どうしてエイナさんが答えるのです」
「ま、間違えましたっ!」
唇が触れそうなほどの至近距離にキサナの顔が近づき、思わずレオンの鼓動が早鐘を打ち始める。
眼前に迫った絶世の美貌。
特別な感情はなくても、胸が無意識にときめきを感じてしまうのは仕方のないことだ。
「……レオンさん。あなたは女性のプライドを傷つけたのも同然ですよ。エイナさんがこれほど魅力的な姿を鏡の前で見せていたというのに、あなたはそれに応えようともしないなんて」
「こ、応えるっていっても、ほらっ、レオンは不器用な奴ですし」
「レオンさんも同様に、鏡の前で自慰を見せて差し上げればいいこと」
いや、それはさすがにエイナも見たくないだろう。
むしろ壮大なセクハラだ。
そんなツッコミを喉の手前で抑えながら、レオンはキサナの気迫に息を呑む。
彼の瞳を覗き込むキサナの表情が、ふっと妖しく微笑んだ。
「レオンさんがそのつもりなら、こちらにも考えがあります」
――何か嫌な予感がする。
レオンが謎の悪寒に背を丸めたとき、そこに何か柔らかいものが押しつけられた。
「少しの間、大人しくしていてくださいね?エイナさん」
「えぇっ!?」
いつの間に移動したのか、キサナはレオンの体を背後から抱きすくめていた。
とすると、背中に当たっているのはキサナの……。
「あらいやだ。エイナさんたら、そんなに喉を大きく鳴らして。男性みたいですよ」
「ご、誤解ですよ!私はそんな……うぁっ!?」
キサナのしなやかな手が、突然レオン――もといエイナの乳房を持ち上げた。
いったい何を始める気なのかと問う前に、今度は彼女の唇がレオンの首筋へ音を立てて降りる。
「んっ……な、なにをっ」
優しい口付けが首筋から耳の裏へと上り、やがて耳たぶを甘噛みされた。
ぞくぞくとした感覚が背筋を駆け抜け、レオンの体がわずかにこわばる。
初々しい反応にキサナは口元を緩めると、彼の耳へそっと唇を寄せた。
「レオンさんが反応するくらい、魅力的な姿を見せて差し上げるのですよ。――さあ」
「ちょ、それはどういう……お、おい!」
キサナが言うと同時に、彼女の細い腕はレオンの足を軽々と開いてみせた。
元がエイナの肉体な分、本来通りの力を出すことはできない。
しかしそれを抜きにしても、キサナは想像以上の力でレオンの体を押さえ込んでいる。
いったい華奢な彼女のどこに、これほどの力が眠っているのか。
何とか足を閉じようとするが、抵抗もむなしく秘所を解放する状態となってしまった。
「まあ……綺麗ですね」
おそらくまだ男性経験はないであろう、淡い赤みを帯びたエイナの女性器が花開くようにさらけ出される。
自慰行為の名残か、そこにはぬらぬらと光る粘液がまとわりついていた。
まだ興奮も治まりきっていなかったのか、ほころんだ膣口は外気に触れ、静かに蠢いている。
まるで行為の激しさを証明するかのようなその部分を見られ、レオンは紅潮しながら俯くしかなかった。
「こんなになるまで慰めて……よほどレオンさんが愛しいのですね」
「そ、そういうわけじゃ」
「ふふふ、エイナさんは嘘が苦手なのですね。でも、そういうところは凄く可愛いわ」
キサナの視線が開かれた足の間に注がれ、レオンの頬が火を灯したように熱くなる。
いくら自分の体ではないといっても、こんな場所を他人に見られるのは恥ずかしい。
まして、それがエイナのものとなると余計に辛く思えた。
「あなたもそう思うでしょう?ユヅキ」
「えっ!?……は、はぁ」
突然話を振られ、困惑した表情でユヅキが答える。
彼女の返答にキサナは頷くと――直後、その口からとんでもない言葉が発された。
「あなたがエイナさんを気持ちよくしてあげなさい?……レオンさんが、夢中になるくらいにいやらしく」


「エイナ殿……失礼、する」
「ぅ……っ」
ユヅキの控えめな言葉とともに、ふわりと黒髪が降りた。
その先は、キサナによってあられもなく開かれたレオンの足の間だ。
とはいっても、体自体はエイナのものなので、ユヅキの目の前にあるものは――。
「さあ。早くして差し上げなさい、ユヅキ」
ひくひくと疼くピンク色の膣口を間近にし、ユヅキに戸惑いの表情が浮かぶ。
いくらサムライが主君の命令に絶対だといっても、このようなことにはさすがに抵抗があるのだろう。
今にも泣きそうな瞳を伏せるユヅキが不憫に思え、レオンはキサナに振り返った。
「キサナ、……様。やっぱり、こういうことは……ユヅキさんも無理でしょうし」
「そうかしら。ユヅキはいつもわたくしと……」
「キ、キサナ様っ!!このような場所でそんな赤裸々な話はっ!!」
「それなら、早くエイナさんにご奉仕を」
「で、ですが、拙者はキサナ様以外の人間にはこのようなことっ」
「そうですか。では、わたくしがエイナさんを気持ちよく……」
「いえ!それなら拙者がいたします!!キサナ様が他の輩に触れるくらいなら拙者が!!」
……このサムライ、ただの主君コンプレックスなのだろうか。
思わずレオンが脱力するのもつかの間、その秘所を柔らかな舌の感触が包み込んだ。
「あっ……!」
ユヅキの指が陰唇を広げ、舌先がその谷間をなぞるように這う。
時折音を立ててついばみ、陰核をしゃぶられると、湧き上がる快楽に声を抑えることも叶わなかった。
……恋だの何だのといった話題はとことん苦手だと思っていたユヅキが、これほどの性技を兼ね備えていたことが意外だ。
もしかすると、これは主に対してのみ発揮されるものなのだろうか。
レオンの脳裏に、美女二人が艶かしく絡み合う光景が浮かび上がる。
あまりにも魅惑的な想像に、体が熱を増していくのが自分でも分かった。
「素敵な表情ですよ、エイナさん……」
「ふぁっ!?」
ふぅっと耳にキサナの吐息がかかり、レオンは小さな声を漏らす。
背後から乳房を愛撫される感触と、秘所をまさぐる舌の複雑な動きが波となって思考を溶かしていく。
もはや自分がレオンという男だったことなど忘れそうになるほどの快楽だ。
ぐらぐらと揺れる視界に、小さな影が姿をみせた。
「ねえ、エイナおねえちゃん?ピアも……なにかお手伝いできないの?」
「ぴあ……」
とろんとした瞳に、幼い少女の無垢な顔が映りこむ。
天使という存在が無邪気すぎるのか、それともキサナの元で過ごしてきたせいか、彼女はこの状況にもまったく動揺していないようだ。
これが少しでも前なら、「見ちゃ駄目だ」と必死で首を振ったかもしれない。
しかし。
「それではピアは、こちらをお口に含んであげて?」
背後からキサナが、愛撫していた乳房を持ち上げる。
硬く立ち上がった乳首を目にし、ピアは嬉しそうに頷いていた。
……ちゅぷ、とピアの小さな口が、それを赤子のように含む。
「んっ、ピアっ……あぁっ!」
二人の美女と、一人の愛らしい少女が同時に快楽を与えてくれる夢のような状況。
レオンの発する、エイナの嬌声が激しくなると当時にキサナの指使いは荒々しいものとなっていく。
ユヅキの舌は立ち上がった陰核を執拗なほど舐め上げ、その指は膣内をかき回していった。
「ひっ……はぁっ、あぅっ……!」
自身の口から、耳から、もはや誰の声とも分からない淫らなものが絶え間なく聞こえる。
「素敵ですわ、エイナさん……これだけ魅力的な姿を見れば、きっとレオンさんも振り向いてくれるはず」
「はぁっ、んっ、キサナ……様……!もう、これ以上は俺……私がおかしくなりそうだからっ……」
「あら、もう限界が来たのですか?」
潤んだ視界にキサナをとらえる。
聖母の顔は、その頬を赤く染め、妖しく微笑んでいた。
「……もったいないですよ。もう少し、みんなで楽しみましょう」
「でもっ……うんんっ……!」
これ以上続けられると頭がどうにかなってしまいそうだ。
乳房に、乳首に、性器に終わりなく与えられる感覚に、正気を失う前に……。
「もう、許してくださ――」

固く目を閉ざし、レオンが絶頂を迎えようとした瞬間――光が瞬いた。

「き、キサナ様ぁ……!駄目です、私、本当に……」
「…………え」
光が消えたとき、三人の愛撫はぴたりと動きを止めていた。
いまだ止まっていないのは、エイナとして淫らに喘ぐレオンのみ。
「あの……?」
「あのも何も、もう限界なんですっ……だから、やめ――って、え?」
目を開くと、レオンの眼前にはあっけに取られた表情で固まっているピアとユヅキの姿があった。
キサナはぱちくりと瞬きを繰り返しながら、こちらを覗き込んでいる。
ふと体に違和感をおぼえ、レオンが自身を見下ろすと――そこには懐かしいかつての肉体が。
「も……元に戻ったのか?俺」
鍛えられた逞しい腕。
戦いでつけた傷跡も、以前と同じ場所にある。
まさか、もう一度自分の体を取り戻せる日が来るなんて……。
「やった……やったぞ!元に戻れたんだ、俺は!!」
こみ上げる嬉しさに思わず口元を緩め、ガラにもなく拳を振り上げてはしゃぎだすレオン。
しかし――今の状況に気づき、その感情は一気に絶望へと塗り替えられていた。

「レオンさん……これはいったい?」

レオンのかつて乳房だった胸板に手を当てたまま、彼を見つめるキサナ。
「あっ、レオンおにいちゃんも仲間に入れて欲しかったの?一緒に遊ぼ!」
相変わらず無邪気に微笑むピア。
そして……。
「……な……あっ……!?」
レオンの股の間。
しゃがみ込むユヅキの鼻先で屹立した、脈打つ肉塊。
火照っていた彼女の顔が、みるみるうちに蒼白へと変色していく。
……ユヅキの凛々しい顔立ちが、瞬時に崩れさる時だった。
「このっ、痴れ者めがああぁっ!!」
「まっ、待ってくれユヅキ!これには深いわけがっ!!」
「深いも浅いもあるかっ!見損なったぞレオン殿!」
どこからともなく取り出してきた刀を振りかざし、ユヅキが絶叫する。
「風呂場でエイナ殿の自慰や乱交を堪能しただけでは飽き足らず、自ら下半身の一部をもたげて乱入とは!恥を知れっ、このケダモノ!!」
「ち、違う、誤解だ!」
何か対抗する手段を探そうと、レオンが浴場を見回す。
そのとき――今一番見たくないものが、彼の視界に飛び込んできた。

「と、常夜の石が……光ってる……」


「ずいぶんとまあ、ヒデェ顔してやがるな。蜂の大群にでも襲われたか?」
「むしろ若気の至りで女湯を覗こうとして見つかった、愚か者の末路といった感じでしょうか」
道中で偶然出会ったベクサーとリニア。
彼らの第一声がそれだった。
後者が正解に近かったが、レオンは口には出さない。
「色々大変なんだよ、この体は。人間としても、……男としても」
ファイファーによると、おそらくあの状態の異常はアイテムで治すことは不可能だが、敵によってもたらされたものである以上、もともと放っておけば回復する代物だったんじゃないかという話だった。
結局、骨折り損のくたびれ儲けだったというわけだ。
「まっ、顔の怪我には充分気をつけるこった。せっかくの色男が台無しだぜ?俺のような男を目指すなら、なおさらだな」
「マスターが色男?私のレンズは破損しているのでしょうか」
「……テメェ。そろそろ破壊すっぞ」
「ご自分の死期を早めたければどうぞ」
夫婦漫才のような二人のやりとりが、今はとてつもなくうらやましい。
ため息混じりにレオンは常夜の石を取り出すと、それに向けて小さく語りかけた。
「なぁ、エイナ……」


「………………」
星空の下、エイナは今もふくれっ面でレオンに背を向けていた。
もう表に出られる状態だというのに、彼女は一向に出ようとはしない。
「まだ……怒ってるよな?やっぱり」
レオンの問いかけにも、エイナは無言のままだ。
当然のことだろう。
彼女の姿で自慰行為し、しかも他の女性たちと乱交までおこなっていたのだから。
許されるとも思っていない。
しかし今後も彼女と旅を続ける以上、少しでも険悪な状況をよくしたかった。
「ねえ、レオン」
「なんだ?」
ぽつりとつぶやいたエイナに、慌ててレオンが歩み寄る。
振り返ったエイナの頬は、なぜか少し赤らんでいた。
「どうして、私の体で……そんなことしたの?」
「それはっ、キサナたちとは……強引な流れでそうなって」
「私の体で、一人エッチしちゃったのは?」
「う……」
その問いに言葉を詰まらせてしまう。
決して、単なる好奇心や欲望の解消としてあんなことをしてしまったわけではなかった。
そんな単純なものじゃなく、もっと……。
「レオン?」
こちらを見上げるエイナの瞳から、視線が逸らせない。
次第に熱を帯びていく頬を押さえながら、レオンは困ったように髪をかいた。
「なんとなく欲情したとか、そんな理由じゃないことは確かだ。でも、これ以上は……俺の口からは言えるようなことじゃない」
「キミの口からは言えないこと?」
「……最低だよな、俺。女の子の体にあんなことをしておいて」
こんな説明のしかたでは納得してもらえるはずもない。
そう思いながら肩を落とすが、エイナはなぜか口元に笑みを浮かべていた。
「いいよ。何となくだけど、分かった気がするから」
「え?」
「レオン、顔が真っ赤だよ」
指摘され、ますます紅潮していく頬に慌てふためくレオンを見つめながら、エイナは困ったように微笑んでいた。
「じゃあ罰として、しばらくはレオンがお風呂に入る間、私はキミの中でずっと目を開けちゃってるからね!もう見まくりだよ?レオンのあんな姿やこんな姿……」
「おいっ!?それはいくらなんでもっ」
「因果応報でしょー?あ〜、早くお風呂の時間にならないかな〜」
「こらっ、エイナーッ!?」
鼻歌交じりで歩き出すエイナを、レオンは必死の形相で追っていく。
正反対コンビの旅は、これからも仲良く続いていくようだ。
二人の中に秘められた想いが打ち明けられるのも……そう遠くはないかもしれない。


そしてその頃、白夜の食堂では。
「こ、これは……?」
ユヅキの前に用意された食事。
そこには皿へ山盛りにされたソーセージの姿があった。
「ユヅキおねえちゃんの分は、ピアがよそってあげたんだよ?」
「それは有難いがっ!こ、この量はいったいどういう意味が……!?」
なぜか頬を染めるユヅキに、ピアはにっこりと満面の笑顔を浮かべてみせる。
「だっておねえちゃん、さっきお部屋で『ソーセージが、ソーセージが』って寝言を繰り返してたんだもん。ソーセージが欲しかったんでしょ?」
「なっ、ななっ……!そのような汚らわしいモノ、拙者が欲しいわけなかろうがっ!?」
「……?」
隣に座るオーレルにソーセージを押し付け、ユヅキは鼻息荒く食堂を出て行った。
そんな彼女の姿を、スープをすすりつつ笑顔で眺めていたのはキサナだ。
「ふふっ、ユヅキったら。そんなに嫌なら、しばらくはソーセージプレイで楽しませて貰いましょうか」
「キサナさま、それってなぁに?」
「ピアも大人になれば分かりますよ」

「……皆さん。食事のときくらいは上品にしていて欲しいのです……」

押し付けられたソーセージを咥えながら、オーレルは一人虚しくつぶやいていた。


おわり

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