あなたとふたりで 〜You are my clolor〜 3



「それじゃあ…その、そろそろ―――」
「………はい」

 クラレットに抱きしめられたハヤトはそっと彼女の背中に手を回して、耳元で呟いた。
 何を、と言わなくてもクラレットにも彼がこれからしようとしていることは分かり、真っ赤になりながら頷きを返した。
 一度、彼女から離れると、ハヤトは邪魔な衣服を脱いでいく。
 クラレットに見られていると思うと、どうしようもなく恥ずかしかったがそれは彼女も同じようで、視線をそむけながらも、時折ちらりちらりと彼の身体を盗み見していた。

「うー…恥ずかしいな、やっぱり」
「今更何言っているんですか…あれだけ私の身体を触れておいて」

 照れをごまかすためか、ふいっと視線をそらした。
 クラレットの衣服は既にハヤトによって肌蹴させられており、磁器のような白い肌を見せている。
 それだけでも彼女は恥ずかしかったが、ここまで来てしまったら恥ずかしさなんて気にしていられない。

 恥ずかしさ、か―――。
 クラレットは苦笑を漏らした。ハヤトと出会う以前―――、道具≠ニして扱われていた時にはそんなもの感じることができなかった。
 虚しさと悲しみを誤魔化すために、敢えて自分から道具≠ニして努めるようにしていた。でなければ、既に自分は壊れていただろう。
 だがクラレット≠ニいうひとりの人間を棄てて、完全に魔王の器として完全な道具≠ノなろうとしていたあの召喚儀式のときに、初めて彼と出会った。
 皮肉なものだ。ひとりの人間として全てを諦めようとしたそのときに、それを救ってくれる存在と出会ってしまったのだから。
 ―――もっとも、その時はそんな感慨は浮かびはしなかったが。
 ここまで、ハヤトという異世界の青年に惹かれるとは思っていなかったし、自分がこれほどまでに変われるとは思っていなかった。

 自然に笑みがこぼれていたのか、全てを脱ぎ終えたハヤトが不思議そうに彼女の顔を覗き込んでいた。

「な、なんだよ、笑うことないじゃないか」
「は……?」

 何を勘違いしているのだろうか、別にハヤトを笑ったつもりはないのだが―――
 そう思って視線をふと下げた瞬間、彼女の顔はぼんっと真っ赤になってしまった。
 ハヤトの欲望は再び力を取り戻しており、心なしか先ほどよりも大きく見えてしまう。
 ハヤトが言っていたのはこのことか―――そう理解した瞬間、ぶんぶんと頭を振った。

「そ、そうではありませんっ……その、もう、こんなになっているのは、驚きましたけど…」
「ううっ、そう言われたら、なおさら恥ずかしいんだけど―――…」

 顔を赤らめたまま苦笑を浮かべて、ぎしっとベッドを軋ませて彼女の身体へと静かに覆いかぶさった。
 すっ、と彼は彼女の衣服に手をかけてゆっくりと脱がしていく。
 既に肌は見せているが、やはりハヤトに裸にされるというのは恥ずかしさが伴ってしまい、ふいっと視線を彼から逸らした。
 それでもハヤトは手を止めることは無く、すっかり彼女も同じように裸体を彼に晒されてしまった。

「…クラレット、綺麗だ」
「嬉しいですけど……ちょっぴり恥ずかしいです、やっぱり」

 まともに彼の顔を見ることが出来なかった。
 ハヤトに自分の裸体が見られていると思うと尚更だった。だが、それでも嬉しかった。
 ―――自分が大切だと思っている存在から、愛されるということは。

 ハヤトはぎこちなく、彼女の前髪を掻きあげると額に軽くキスし、
 頬を撫でて顎に触れ顔を気持ち持ち上げると、今度は唇へそれを落とした。
 今日で幾度目かになる口づけ。それでもふたりはそれが新鮮かつ魅力あるものに思えていた。
 意識しなければ、ずっとこのまま深く口付けを交わし続けそうになるほど、ふたりはその快楽に溶け込んでいた。
 先にその快楽から離れることができたのはクラレットだった。

「ん…、ふぁ……、は、ハヤト…」

 唾液の糸で繋がりながらも、彼女はまるで行為の先を促すように相手の名を呼んだ。
 彼はその意図を悟ったのか、軽く頷くと慣れない手つきで彼女の白い肌を撫でていく。
 するすると、なだらかな彼女の体の線に沿って指先を乳房、臍、腰、と身体を余すことなく滑らせて行く。
 そこに新たな刺激が加わる。ハヤトの舌先が指先と同じように細やかに彼女の身体を舐めていく。

「は、はや…とっ…!」
「んっ……」

 そこには技術や何もなかったが、ただクラレットを悦ばせたいという意志が伝わってくるほど彼の舌の愛撫は丹念で何より優しいものだった。
 以前、自分の身体を蹂躙した彼らとは全く異質のもの。同時に、クラレットの情欲を掻き立てる。
 この人になら身を委ねることができる。だからこそ、快楽を恐れることなくかみ締めることが出来る。
 もちろん、そこには恥ずかしさもあるが、彼なら自分のどんな姿を見せても受け入れてくれるだろう。
 クラレットは自惚れかもしれない、と思いながらも彼を信頼することを止まずにはいられなかった。

「ひゃうっ! は、ハヤト、そこは、だ、だめぇえっ!」

 甘い快楽の波に身を委ねていた彼女だったが、突如強い波が身体に走り驚いてハヤトの指先を見る。
 それはクラレットの女の部分に指を侵入させ、ゆっくりと内壁を擦っていた。
 少し、ハヤトの指先が動いただけでも、甘い刺激が与えられクラレットの身体はびくっと反応してしまう。
 その反応にハヤトは驚いた様子だったが、すぐに優しげな瞳になり、ますます指の動きを複雑かつ緩急をつけたものにしていく。

「ははっ…いつもは冷静なクラレットがこんなに反応してくれるなんて嬉しいぜ? それにとっても可愛い―――」

 可愛いといわれて、快楽以外の理由で彼女の頬は赤らんでしまう。

「ば、バカなことを言わないでくださ―――いぃっ!?」

 照れ隠しに抗議しようとしたクラレットだったが、ふいにかりっと内部を引っかかれて、裏返った声をあげてしまう。
 自分でも恥ずかしいと思っているのか、彼女はふいっと拗ねたように顔を横に向けてハヤトの視線から逃れた。

「クラレット、感じてくれてるんだな…ほら…」

 ハヤトがそこから指を引き抜くと、てらてらとクラレットの愛液が彼の指を光らせていた。

「は、はやとのばかぁ……」

 あまりの恥ずかしさに死ぬ、という表現はこういうときに使うのだろうかと思いながら、真っ赤になった顔を庇うように手で覆う。
 今の自分の顔はどうなっているんだろう―――、想像しただけでもこの場から逃げ出したい感情に駆られてしまう。
 と―――、そのとき熱を持った何かが彼女の下腹部に当たった。
 ちらりと視線を下げてみると、そこにはハヤトの欲望が息苦しそうに震えていた。

「――――――えっ!」
「いや、あの、そのさ…ちょっとそろそろガマンできないかな、って」

 クラレットを愛撫していたハヤトは結構理性の限界が来ていた。
 いくら、優しくしようとしても彼とて男だ。自分の手でこんなに反応している女性が目の前に居たら、興奮もしてしまう。
 彼女も心地のよさですっかり忘れていたが、ハヤトにとってはこれが初体験なのだ。
 むしろ今までクラレットを強引に犯そうとせずにいられたのが不思議なぐらいだ。
 ハヤトの告白に、クラレットも彼自身も恥ずかしさがこみあげてくるが、ふたりは視線を絡み合わせて、というよりはにらみ合いをしているような強張った表情で頷いた。

「は、ハヤトがそう仰るなら…その、私も…準備はできていますから…」

 顔から火が出るような思いだったが、これ以上永延とハヤトに愛撫されてしまっては自分がどうにかなってしまいそうだった。
 とろり、と秘所から愛液が零れていることに今更自覚したのか、増して赤面するクラレットの言葉に、ハヤトもたどたどしく頷く。

「あ、あのさ、俺、初めてだから―――…んッ!?」

 突然の不意打ち。
 クラレットはハヤトの頬を手のひらで挟み、軽く口付けをしていた。んっ、と軽く吐息を吐き出しながら、彼女は咎めるような視線で彼の腕を引っ張り抱え込んだ。

「……私だって、初めてです。大好きな貴方とこういうことをするのは。本当にこうしたいと思ってしたのは、初めてなんですから―――」

 それとも、身体を汚された女には興味がないのですか、と真剣なクラレットの言葉を受けて、慌ててハヤトは首を横に振った。

「ち、ちがうって! 最後まで聞いてくれよ! 俺はさ、経験がないけど…どうやったらクラレットが悦んでくれるか、一生懸命頑張るから!!」
「―――え?」

 あまりにも真面目にそう宣言するハヤトに面食らい、目を丸くしたままクラレットは彼の顔を見上げていた。

「過去の君に対しては何もしてあげられないけれど、これからは違う。今、そしてこれから―――…ずっとずっと、俺が君のことを守るから。過去のことが吹っ切れるぐらいに俺は君を幸せにしたいんだ。もう二度と、君を悲しませるようなことを誰にもさせない。もし、そんなヤツがいたら、俺がぶん殴ってやる。だから、さ―――、クラレットの『はじめて』を俺にくれないか?」

 昔の自分なら一笑に付せていただろう。もし、ハヤト以外の人間なら、それが青臭い言葉だと罵っただろう。
 だけれど―――、今の彼女にとってはその言葉が何よりも嬉しかった。
 彼は過去の自分を含めて愛してくれる、そう確信したから。未だ自分の過去の闇が完全に拭いきれたわけではない。
 だが、きっと彼と一緒ならそれすらも乗り越えていけるはずだ―――。
 自分が涙していることに気付かないまま、クラレットは微笑んで頷き、一言言った。


「はい―――。ありがとうございます、ハヤト…」


 クラレットのそこは既に蜜で濡れそぼっていた。
 それが自分をいやらしい人間だと証明しているようで恥ずかしい、と彼女はハヤトに言ったが、彼は笑って答えた。

「別にいいじゃん。今は俺と君しかいないんだし?」

 まるでいつものおどけた彼の口調だったが、表情がぎこちないところを見ているとやはり彼も緊張しているのだろう。
 少しでも彼のしやすいようにリードしてあげよう。
 そう考えたクラレットは横たわったハヤトの腰を跨ぎ、そっと猛々しい彼の肉棒に手を添えると己の秘裂にあてがった。
 自分からこのように動くのは初めてだったし、恥ずかしさもあったが、こうぎくしゃくしていても始まらない。
 とにかく動かなくては―――、そう考えたクラレットはいつの間にか自分の考え方がハヤトによって影響されているな、と苦笑した。
 そんなクラレットの考えを予想だにしてないハヤトは疑問符を頭に浮かべながら首を捻った。

「なに、どうしたんだよ?」
「いえ、私はいつの間にか、貴方に色々なものを貰っていたんだなと思いまして」

 そう、ハヤトやフラットのメンバーと付き合っていくうちに様々なものを得ることができた。
 ただ道具≠ニして生きてきて、何もなかった自分に彼らはあまり余るほどの素晴らしいものを与えてくれた。
 だけれど、そんなことを言葉にするにはなぜか恥ずかしい。曖昧に笑って誤魔化すと、クラレットはゆっくりと腰を沈めていった。

「ん、ふっ―――…!」

 無意識のうちに、甘い吐息が溢れてしまう。過去に何度か味わった陵辱がふっと脳裏をよぎったが、今はそんなことは関係なかった。
 目の前にいる人は苦悶とも快楽とも似つかわしい表情を浮かべながら、クラレットの身体を支えていた。
 ずぶり、ずぶりと、ハヤトの肉棒が彼女の中に侵入してくるたびに、ぞくっとした快感がクラレットの身体を走り抜ける。

「ふぁっ…ぁ、っ、んぁ…んぅっ!」

 目を細めて艶かしい表情を浮かべる彼女を下から眺めていたハヤトはますます興奮に駆られた。
 ただでさえ、愛する人との交わりのなかで、幾たびとも快感を味わっていて理性のたがが外れかけているというのに、普段の彼女とのギャップを見せ付けられて、彼女の中の自分はより大きさを増した。

「は、はやと…、私のなかで熱く…大きくなっています…」

 彼女も同じように快楽と興奮が増しているのか、うっとりと目元を蕩けさせた表情でぽつりと呟き、続けて腰を沈めていった。
 そこはまるで待ち焦がれていたかのように、貪欲にハヤトのそれに喰らいつく。

「ふぁ、く、―――っぁ!」
 ほんの少しでも気を抜いてしまったら、あまりの快楽に射精してしまいそうになるが、少しでも長くこの快感を味わうためにも、ハヤトは歯を噛んで堪えていた。
 だが、クラレットのそこは、そんなハヤトの思いも無視して、容赦なく締め付けていた。
 その締め付けが更に、彼の欲望を引きずり出して、本能をむき出しにさせていく。

「ふぁ…んっ…、はやと…、ほら、見てください…。最後まで入りましたよ…? ふふっ…、これで、私は、はやとのものになったんですね……?」

 クラレットは妖艶な笑みを浮かべて、途切れ途切れながら呟いてちらっと自分たちの結合部を見やった。
 そこは無理やりハヤトのものによって押し広げられた、という卑猥感と背徳感が漂っていた。
 そんな言い表せない別の快感にも耐えながら、新たな刺激が加わる。

「く、クラレットッ…!」
「ふふっ、気持ち良いですか、はやと…? ああっ! は、はやとのが、私のなかを…んぅっ!
抉ってて…っ、はあぁっ」

 クラレットは愛液と肉棒を絡ませるかのように腰をゆっくりと動かしていき、彼のものを扱きたてていく。
 彼女が腰を浮かし落とすたびに、ふくよかな乳房は淫靡に揺れ動き、視覚的にもハヤトの脳内を蕩かしていっているような感覚に陥った。

「クラレット、ちょっと、えっち、すぎる…!」
「いまさら、何を…んっ…言ってるんですか…ぁっ…! わ、私だってこんなこと、恥ずかしい、はずなのに…止まらなくなっちゃって…っ や、やだ―――、私、へ、へんになっちゃいま、すっ」

 クラレットも自分の興奮をコントロールしきれずに、困惑しているようだった。
 さっきから、言っていることがちぐはぐだ、とは頭のすみでは思っていたがハヤトもそれがどうであるかなどと探る余裕もなく、自然と彼の手は揺れるクラレットの乳房へと伸ばされていった。

「ひゃうぅっ!? は、はやと、だ、らめれすっ…! そ、そんなに、胸を、も、揉まないでくらさ…いぃっ!」

 どうやら、クラレットの性感帯は乳房のようだ。
 そう言葉にして確認したわけではないが、ハヤトも少しずつ彼女にあわせるように腰を突き上げながら、そっと乳房を揉みしだいていく。

「あっ―――ふっ…ぅ…! ひゃっ、は、はひゃと…ぉっ…! も、う、こんなにさ、れたら―――わ、わたしぃ、わたし、おかしくなっちゃうっ…!」
「い、いいんだよっ、おかしくなっても…っ! 俺が君を、まも、る、から―――…!」

 ふたりの腰を動かす動作は激しいものとなっていき、まるでお互いを貪りあうかのような本能的な交わりをしておきながらも、お互い離れることを恐れるかのようにふたりは手をつないだ。

「俺、もうダメ―――…! クラレットッ…! クラレット、クラレットッ!」

 ハヤトは飽きることなく何度も何度も彼女の名を呼び続けた。
 たしかにそこにいるのだという確認なのか、それとももう離さないという意思表示なのか、ハヤト自身も分からなかったが、彼の心のなかにはただの快楽のほかにも何か心を満たすような幸福感を感じていた。

「ハヤトぉっ…わ、私も…っ! 一緒に、一緒にっ…いって、下さいッ!」

 それはクラレットも同じらしく、ぎゅっと彼の存在を確かめるように強く彼の手を握ると、彼女の身体は戦慄いた。


「――――――ぁ、ふぁああああっんぅっ!」


その嬌声をきっかけに、ハヤトもクラレットも絶頂を迎えて、彼の肉棒からは夥しいほどの精液が吐き出され全て彼女のなかへと注がれた。

「ん…はぁ……ハヤトのが、なかに、入ってきます……」

 絶頂の余韻からか、うっとりとした声で自分の下腹部を撫でてそっと彼の上に倒れる。
 彼女の柔らかな乳房がハヤトの胸板によって押しつぶされた。

「あ、ご、ごめん、俺、中に――――――」

 はっと我に帰って、彼女のなかに射精してしまったことを誤ろうとするが、再び彼の唇はクラレットのそれによって塞がれて、言葉も飲み込まされてしまった。

「今日は別に大丈夫ですけど…私はハヤトの子どもなら孕んでしまってもいいと思っています…。というか、むしろ、貴方の子ども、欲しいかも…なんて、私たちにはちょっと早すぎるかもしれませんね」

 くすり、といつものように笑みを浮かべるクラレットを見て、かぁっとハヤトの頬は赤らんだ。

「うう…そりゃ、俺だって……。でも、俺はまだまだ子どもだしさ…それにやらなくちゃならないこともある」
「元の世界に戻ることですね? ―――…その時は私も連れて行ってくださいね? 約束してくださいますか?」

 すると、ハヤトは当然だと言わんばかりに首を縦に振った。

「言っただろ? 君のことを守るって―――…いつかになるかは分からないけどさ、きっと君を連れて…見て欲しいんだ、俺の生まれた世界を。―――約束だ」

 彼は満面の笑みで彼女の身体を抱きしめた。
 これが、自分の守るべき人―――、そういうには少し自分は未熟かもしれない。
 けれど、彼女と一緒なら、どんなものだって乗り越えていけるような気がした。
 たとえ、それが彼女の過去だとしても――――――


おわり

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