無色の檻



 めり込んだ瞬間に嫌な音が響いた。ブチブチと肉繊維が引き千切られていく音。
 実際にそんな音が聞える筈はない。錯覚だろう。だが、そんなように感じた。
 侵入する硬度と弾力を伴った棒状の物体。それが何で在るのかは明白である。
 男性自身の象徴である唯一無二の存在。それが挿入されていく。ずぶずぶと。膣奥まで。
「……っか…っは…か…ぁ……」
 声すら押しつぶされた。身に受ける強烈なまでの圧迫感。それが肺の動きさえ数瞬止める。
 酸素が不足した脳が再び機能を回復するまでも数瞬。その間に埋没した異物は着実に胎内を抉っていた。
 より深く。そしてより鋭く。脳が回復するやいなやそれまでに送られた刺激が一斉に襲い来る。
「ぁ……ぁぁあ……ぎあぁあぁああああああ!!!」
 刹那、口から飛び出たのは自分のものとは思えぬ断末魔の叫び。それのみが鼓膜を痛いほどに叩き続ける。



「んっ……んぶっ…んっ…ぅ……んむっ………」
 口腔内を肉根が暴れる。喉奥まで咥えさせられた肉の竿。それが口内の粘膜が擦り切れそうになるほど激しく摩擦を繰り返す。
 息を継ぐ猶予すらない。窒息しそうになるすんでのところでようやく解放される。おまけつきで。
「んがっ!んんっ…んごっ!…っぶ…げほっ…げほっ…ぷはっ…うぇ…う…はぁ……はぁ……」
 痰のように絡む粘液をむせ返りながら吐き出す。が、口内にはそれの苦味と臭いが残る。
 乳白色の液状のもの。口内を占拠した肉の棒から射精された精液である。
「あ〜あ。吐き出したな。また」
「これで何度目だろうね。いつのなったら学習するのやら」
 胃に直接流し込まれたスペルマにむせ返る中で非情な声がかけられる。何度聞いても嫌な響きだ。
 次にされる仕打ちを想像すると。
「すみま……せん……」
 涙を瞳から滲ませ小さく肩を震わせながら謝る。意味のないことだ。謝ったとしても許されはしない。
 彼らは決して止めないだろう。不始末をしでかした自分への仕置きを。
「そうかい。覚悟はいいようだね」
「まあ、これで何回目だったけか。いい加減しっかりしないと身体の方が持たないぜ」
 僅かばかりの憐憫の眼差しを向けて彼らは後方に目配せをする。
 不意に後ろからがしっと身体を捕まえられる。そのまま持ち上げられ身体が宙に浮く。
 ふわりと働く浮遊感。空を泳いだ身体はとある一点で固定させられる。
 菊座に楔のように打ち込まれる肉根によって。
「あがぁぁぁぁあああああ!!!!」
 太い。そして硬さをもった異物が菊門から身体を貫くように挿し込まれた。
 根元までめり込むペニスが腸内を占領する。痛い。猛烈に痛い。
 激痛のあまり悶え暴れるがガッシリと身体を捕まえる豪腕はビクともしない。
 それどころか立ったままの姿勢で強烈に腰を動かしてアナルを突いてくる。
「ぐあっ……あがぁぁっ!ぐひぃぃぃっ!ぎぇぇぇっ!」
 潰された蛙の様な悲鳴。次々と飛び出る。本当に蛙のごとく圧死してしまえればいっそ楽だっただろうに。
 そうすればこれ以上苦しまなくてもすむのだから。
「そのままの姿勢をそうだね。今度は一時間は維持してもらうよ。身にしみてもらわないと困るからね」
「案外そっちの方がクセになってたりしてな。身体が壊れないうちにどうにかした方がいいと思うがな」
「あぐぅぅぅ!!……っぐ……はっ……あっ……あぎぁぁぁあああ!!」
 襲い来る肛姦の衝撃に身体が押し潰される中で容赦ない彼らの声は響く。ただ淡々とした口調。
 ただ作業をこなしているという感覚でしかないのだろう。自分への調教。派閥の裏切り者に対する制裁措置を。
(ハ……ヤト・・・・・・ハヤト……・・・)
 破瓜のときにも匹敵する苦悶の中でクラレットの意識は堕ちる。もはや会うことすら叶わぬ想い人の名を胸中で呟きながら。

「あっ……ぁぁ……ぁぁぁ………」
 それを施されてクラレットの瞳からは涙がはらはらと流れ落ちていた。冷たい石床の上に一糸まとわぬ姿で放り出された体。
 局部的に存在する熱を伴う箇所。凶悪な肉獣に踏み荒らされた花弁。無惨に散らされた秘部には汚液が撒き散らされていた。
 もう二度とは落ちぬ穢れ。喪失した。何もかもを。
「ふむ、こちらの具合の方はなかなかに良好ではないか。親の言いつけも守れぬできそこないのクセにしては」
 辛らつな言葉が突き刺さる。それを口にしたのは自分の父。いや違う。自分という道具を生産した人物。
 そして自分という道具の担い手である彼。彼は道具が道具足るまい行いに及んだことを決して許さぬ。
 その制裁を身をもって思い知らされた。実の父の手による強姦。そこでの処女喪失という悪夢によって。
「本来貴様のような裏切り者を生かしておく道理はない。派閥の掟は厳格なものなのだ」
 口の端をつり上げて淡々とかたる。その口調には一片の情愛もない。ただ蔑みだけがそこにある。
「だが我とて人の親よ。愚かな娘にも慈悲をくれてやろう。使えない道具に使い道を与えてやろうというのだ」
 処分するのならいつでもできる。それならむしろ派閥の同胞や飼っている召喚獣達の性欲処理にでも再利用した方が合理的である。
 そう判断し、裏切り者への制裁も兼ねてオルドレイクはクラレットを犯した。処女肉を実の父によって引き裂かれ悲鳴をあげる彼女。
 裏切り者に相応しい末路に破顔する。そして犯した娘を見下ろす。贔屓目抜きで容姿はまあ上物の部類には入るであろう。
 実際の使い心地も確認した。十分に実用に足る。従順な兵にはなれぬ愚かな娘だがその代わり従順な雌奴隷にはなれるだろう。
 精々使い潰れるまでの間、飼ってやってもいい。そう思わせる程度には満足のいく身体ではあった。
「クラレットよ。愚かな娘よ。我は貴様に相応しい処遇を与えよう。」
 瞳から涙を、膣口から精液を垂らしながら放心するクラレットにオルドレイクは囁く。
「貴様にはこれからは我ら派閥の共有物となって貰おう。精々飢えた者どもの慰みになるような器に」
 告げられる宣告はクラレットから人としての生を奪う。これよりクラレットは家畜。いやそれ以下の存在となる。
「だが、何事も手始めというものがある。とりあえず今宵は我を満たして貰おうか」
 皮肉げな顔を覗かせながら迫る。既に心身ともにズタボロのクラレットを更に責めたてようと。
「い……や…ぁぁぁ……ぅ……ぁ……」
「何を恐れる?今後はこれが貴様の常となるのだ。この父が直々に慣れさせてやろうというのだ。有難く思え」
「い……嫌ぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」
 処女を奪われ間もない身体。それを幾度蹂躙されたのか定かではなかった。
 クラレットの記憶に残るのは自分自身のあげた悲鳴と、高らかな父の哄笑。
 そして胎内をかき乱す異物の感触と吐き出され続ける液汁の熱であった。

 夢を見た。嫌な夢だ。というより悪夢しかここの所は見ていない。忘れたい記憶を度々繰り返し。
「お目覚めかな?」
 起き抜けにかけられるのはいつもそんな言葉だ。これといった抑揚もなく淡々とした口調。
 見つめるのもこれまた冷淡な眼差し。ただ単純作業をこなしているだけといった退屈そうな顔が二つ。
 それを見やる。虚ろな眼で。彼らは溜息混じりに被りをふる。
「ぁ……っ…………」
 なにか言葉を紡ぐ気力さえ失せていた。全身を包む虚脱感。何もかもが無為に思える。
 何も変わりはしない。これが毎日続く。これが延々と続く。身体の方が持たなくなるまで。
 いっそのこと壊れてしまった方がよほど楽なのだろう。一欠けらの希望すらここには存在しない。
 そんな風に呆然とする矢先。
「……っ!……くぁっ!」
 痛みがはしる。下半身の肉を貫かれた痛みが。ジリジリと焼き付けるように。
 鋭利な痛みはさしずめ凶器。だが今襲い来るものの歩みは遅い。遅れてくる鈍痛。
 それは拷問である。いつまでも余韻を残して身を苛み続ける。
 ポロリポロリと涙が零れる。こうまでも嬲られ犯され続けていても、痛覚はいまだに磨耗しない。
 身に受けた苦痛。その一つ一つがこうして体の芯に響くように浸透する。
 痺れるような痛みに苛まれ。最早、足腰がたたぬほどに疲労し酷使された下半部。
 体の内側から溢れてくるような生暖かく不快な感触。
 ドロリ。そんな擬音が似合いそうな感じで液状の物質が臀部を伝う。
 とろとろと溶け出したチーズのように尻肉を伝う雫。そのなんとも惨めなことよ。
 これが今の自分。反逆の罪で肉奴隷の身へと堕とされた自分の姿。
 これが現状。変えようのない現実。
「……っ……ぅっ……ぅぁ……っく……ぅぅ……」
 堪えきれずにすすり泣きだす。もうこの繰り返しだ。
 正面の少年達はやれやれとばかりに肩をすくめる。
 それが無為であることを知りながらもすすり泣くことを止めない。
 ああ、泣き止んだらまた犯されるのだろうか。
 それとも間髪いれずにすぐに犯されるのだろうか。
 どちらも同じことだ。そう同じこと。何も変わりはしない。決してなにも変わることなどない。
 泣き腫らした目は瞼が重く圧し掛かっていた。目の周りが涙で蒸れている。
 あれからもまた犯された。当然、泣き止むのを待ってなど貰えずに。 
 犬のように四つんばいの姿勢で後ろから犯された。激しかった。痛かった。
 そしてまた少し削り取られた。心も。身体も。 
(ずっと続くんですね……これからも……ずっと……)
 虚無にとらわれる。心を支配するのは絶望と諦観。されど苦痛はそのままに感じる。
 調教という名の生き地獄。いまだその入り口に足を踏み入れたにすぎないというのに。
(こうしてずっと……慰み者にされ続けて……貴方のいない…世界で……)
 涙がまた滲み出す。ふいに脳裏に浮かんだ顔。もう会うことのないであろう思い人。
 忘れたい。彼の顔を思い出すたびに辛くなる。もう彼を愛する資格などないほどに汚れきったことが。
 いや、最初から存在しなかったのであろう。誰かを愛する資格など。
 ただの道具なのだから。生まれてきたときからそういうふうに定められた。
 壊れるまで酷使されつづけるだけの道具。派閥の尖兵として。あるいは魔王の生贄として。
 そして最近与えられた用途。性欲処理のための肉便器。
 そのためだけに生かされている。飼われている。使いつぶれるまでの間。
 
 カツン

 足音が響く。虚ろな一時の終わり。再開される調教の時間。
 次はいかにして嬲られるのであろうか。想像するだけで生気が失せる。
 少しずつ磨耗して壊れおちる。その過程のなんと長いことよ。
 早く終わりにしたい。早く終わりにして欲しい。だが、なかなかに叶うことがない。
 苦しい。狂おしい。本当にいっそのこと楽になってしまいたい。
 そんなふうに内で葛藤する間に。
「……!?…………あぁ……あ………」
 目を剥く。足音とともに現れた人影。そのあまりもの数に。十?二十?いや三十はくだらない。
 その面々も多様。先ほどまで自分を犯していた淫魔の類もいれば機械兵士、魔獣、鬼人。
 あるいは普通の人間もいる。その劣情の篭った視線が突き刺さった途端に言いようのない悪寒がはしりだす。
「やあ、クラレット」
 すると群集から一人だけすました顔をした者が抜け出る。多少の哀れみが篭る視線でクラレットを見やりながら。
「なかなかに効率があがらないんでね。それで考えたんだ」
 彼は淡々とした口ぶりでただ用件だけを。
「習うより慣れろ。今からここにいる人数全てを相手してもらう」
 吐き捨てるように告げる。
「そうそう、ひょっとしたら……」
 そして思い出すように。
「後で追加がくるかもね。今、ソルも集めに回ってる。それじゃあ」
 追い討ちをかけてそのまま去る。ポツリと残される。
「あ……あぁぁ……は………」
 震える声色。そして気づく。取り囲む群れが発する臭気。熱く滾る情念。その全てが自分へと向けられていることを。
「嫌ぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!!」
 場の空気を引き裂く悲鳴の中、滾る獣の群れはクラレットの元へと殺到する。
 ドスンと重く体重が圧し掛かる。壮健な鬼人の巨体がクラレットの身体に馬乗りになって激しく腰を打ち付ける。
「あぁっ!……あぐぅぅ……ぐっ……あぁぁぁっ!……あぎあぁぁぁ!!」
 子宮ごと押しつぶすかのように深く抉ってくる男根。それをクラレットは抗うことすら許されず受け入れねばならなかった。
 逃げようにも身体が強固に固定されている。腸壁にぴったりと密着する悪魔の肉槍によって。
「うぅ……んぐぅぅぅぅ……ぐぅ……うぁっ…」
 パンパンと盛況な肉根が膣肉を抉る。それとともにかけられる負荷が内臓を圧迫してくる。
 律動は力強さを増す。同時に菊座に埋没する男根もより激しく腸内をかき乱す。
 前後からクラレットの体を挟み潰すかのように。
「あぐっ…ぐぅ…ぐぁっ……んぐぁぁぁっ!!」
 胎内を掻き抉る棒は萎えることを知らずにクラレットを責めたて続ける。
 悶える。喘ぐ。だがこのような仕打ちさえもほんの序の口にすぎない。
「んぼごぉぉぉ……ごぼぉぉぉ………」
 口腔を支配する肉棒はクラレットから声さえも奪う。開かれた口に強引に詰め込まれるペニス。
 苦しみ喘ぐことさえ許されない。使用の可能な箇所はどこでも使われるのだ。
「ん〜〜〜っ!!んぅぅぅぅぅっ!!!」
 ぶぴゅ。嫌な破裂音。ともに流れ込むのは液汁。子宮に注がれる白濁。
 何度受けても実に気色が悪い。自分の身体が内側からなにか決定的に汚される気がして。
「ぷあっ!……あっ…はっ…ひゃぅっ!……うっ…ぁ……」
 膣内射精。それに少し遅れてようやく口内を開放される。その刹那、浴びせかけられるスペルマ。
 生暖かい白濁のシャワーが顔に降り注ぐ。粘液が目に入り込んで視界が不自由になる。
 そんな最中、ふいに体勢を変えられた。今度は後ろ向きに尻を突き出す形に。
「んっ…くっ…きひぃぃぃぃっ!!んひぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
 姿勢を変えられたことで内臓の位置がお腹の中でずれるそこへ間髪いれずに剛直はねじ込まれる。
 度重なる肛姦で十分にほぐされたクラレットのアナルへと。
「んぁぁぁああっ!!うぁぁああっ!!」
 ずんぱん。ずんぱん。単調なリズムは響く。尻肉を掻き分けるようにして腰を打ち付ける音が。
 こうして後ろ向きで犬のようにして犯されるときはいっそう惨めな気持ちにさせられる。
 自分が生きているのではなく生かされているだけの家畜なんだと認識させられて。
「あっ…はんっ……ひゃぁぁっ!!……いっ……ひっ…あ…あ……」 
 そしてそんな処遇の中で哀しくも肉体は悦びを感じ始めていること。それがクラレットの心をより悲しませてくれる。
 泣き叫ぶほど辛いのに、悶えるほど苦しいのに、忌まわしいことに身体は肉の悦びを覚え始めているのだ。
 それがどうしようもなく情けない。
(ハヤト……私はもう…貴方を想うことさえも……)
 直にできなくなるのだろう。ただ犯されることに悦びを見出す淫らな雌。性欲処理のためだけに存在意義のある肉便器。
 そんな代物に身も心も堕ちはてる。そのことを痛切に感じる。
(ごめんなさい……せめて心だけでも…貴方を愛して……いたかった……)
 泡のように掻き消えてゆく切なる願い。ああ、もうじきにこの身は堕ちはてる。いや既に堕ち果てている。
 愛した人の面影もおぼろ。ただ感じるは猛り狂うような粘膜の接触。
 また注がれた。今度は腸内に。逆流して肛門からゴポゴポ溢れてきている。
 もう休ませて。そう願った。叶えられることはない。群がる肉獣たちはいまだその腹を満たさず。
 後ろから抱えられるようにして持ち上げられる。そこから挿入。呻きが漏れる。
 そのまま腰を振ってくる。痛い。自分の体の重みで肉棒がより深くまで刺し込まれているのだ。
 その姿勢のまま前から近づく影。機械兵士。拷問用の機体。
 それは鋭利な肉棒を模したディルドーを携えにじり寄る。そして。
「あぎぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!ぎぁぁぁぁぁぁああああああ!!」
 ドリルのように回転しながら突き進んでくる擬似ペニスは膣肉を抉る。
 クラレットの発する絶叫は陵辱者の集う辺り一帯に延々と響き渡った。



 扉の外で一息を入れる。防音処理を施された厚い扉。その向こう側の様子を窺い知ることさえ閉ざす。
 とはいえ想像はつく。ありきたりの絵図であろう。獣の群れに哀れな贄がむさぼり尽くされる。
 哀れなことだ。とはいえ同情はしない。彼女自身が招いた結果であるのだから。
「もう始まってるのか?」
 するとぞろぞろと後続を引き連れてソルも戻ってきた。ざっと見て十数名。派閥の暗殺兵たちだ。
 薬物投与で理性もろくに残っていない使い捨ての手駒たち。それがここに集う。ほんの一時の宴のために。
「しかしちとやりすぎじゃないのか?あっさり潰れらたら俺達の責任にならないか」
「問題ないさ。それにクラレットにとってはあのままゆっくりと嬲られ続けるよりはマシだと思うよ。
 いっそのこと壊れてしまった方が楽になれる。せめてもの慈悲だよ」
 被りをふる。そうこうしているうちに暗殺兵たちは扉の向こう側へと姿を消していく。
 出入りのために開けられた入り口から中の惨憺たる様子が伝播するが気にも留めない。
「なあ……楽しいか?兄さん」
「いや、つまらない。実に退屈だ。そんな退屈が続くんだろうね。これからもずっと」
 溜息混じりに吐き出す。それにつられるようにしてソルも息を吐く。
 無色の派閥。この世に生を受けたときから既に存在していた自分達の世界。
 そこは存在自体が檻のようなものなのだろう。そこで生きるものにとっては。
 誰もがその檻の中で飼われ消費され、利用価値のなくなったものから消去されていく。
 そして今日も無為な時間が過ぎてゆく。自分達が消費されるまでの無為な時間が。
「どうしたらいいと思う。この退屈さを解消するには」
 なんとなしに呟く。ソルは興味がないのか何も応えずただぼけっとしている。
「まあ、それが分かれば苦労しないんだけどね」
 ただ苦笑しながらぼやく。空虚を満たすなにか。そんな何かがそうそう都合よく見つかるはずもないと諦めながら。



「んっ…ふ……んっぷ……んぶ……」
 しゃぶりつくように咥えた肉棒をクラレットは舌で舐め溶かす。
 既にその身は内も外も吐き出される白濁の液にまみれていた。
 どれだけの量の精を受け止めてきたのだろう。五周目以降は数えていない。
 膣もアナルもドロドロの精液が逆流して溢れかえっている。
 こうして奉仕している口の中とて前に出されたスペルマの味と臭いが残っている。
「はっ…はぅ……は………」
 肉体は限界を来たしていた。それを超えて繰り広げられる輪姦。
 それを紛らわしてくれたのは脳をとろけさせる悦楽。限りない苦痛を与え続けた無理矢理の性交。
 皮肉にもそれによってもたらされる快楽だけがクラレットを慰める。
「ど……どほ…か…もっほ…犯……ひて……淫らな……肉便……ひの…わたひ………」
 呂律の回らぬ舌で言うその瞳には一点の輝きもない。あるいはクラレットにとっては救いなのだろう。
 派閥の肉奴隷という己が処遇にみあった存在に身も心も堕ちはてるということは。
「犯ひ……て……もっほ……もっ……ほ……」
 白濁の精液にまみれる顔で、ただ一筋の涙を頬に垂らしながら。
 哀れな肉便器に成り下がったクラレットはひたすらに乞いつづける。


おわり

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