ずっと、仲良く。 〜Two Hearts and One Heart〜



 ある日の午後、リプレとクラレットは広間でお茶を啜りながら談笑していた。
「あはは…、ところでクラレット…前から聞きたかったことがあるんだけど」
 話を一区切りつけると、リプレは湯のみに手を伸ばしながらそう言葉を切り出してきた。
「はい? なんです?」
「クラレットってさ……ええと、その…うーん…」
 何かを言いかけようとして、戸惑った様子でクラレットから視線を逸らした。
 いつもなら何でも快活に話す彼女なのに、どうしても何か言い出せないように言葉を詰まらせる。
「どうしたんですか、リプレ?」
 それに対し、クラレットはあくまでも言葉を急かさずに柔和な笑顔を浮かべて彼女の言葉を待った。
「いえ、そのね…クラレットって……ハヤトのことどう思っているの?」
「……え?」
 ちらちらと此方の表情を窺うように顔を上目遣いで見て尋ねてくるリプレの質問に、クラレットは一瞬戸惑った。

 ハヤトへの思い―――。
 クラレットは今まで他人には吐露こそしなかったが、彼女にとってハヤトという存在は大きく大切なものになっていた。
 もちろん、出逢った当初こそはただの観察対象だったのかもしれない。
 だが、彼のあらゆる側面を発見していくうちにその人間性に惹かれていった。
 そして、それがハッキリとしたものになったのは、オルドレイクの娘だということを受け入れてくれたその時からだ。
 ―――ずっと彼の傍にいたい。それがクラレットの本心だった。

「それは―――……」
 クラレットはその思いを包み隠さず話した。
 多少の照れはあったが、クラレットにはある予感がしていた。
「…そう、そうなの」
 クラレットから全てを聞いて、リプレは伏し目がちに視線を下向かせた。
 クラレットはそんな彼女を見て、ふっと表情を綻ばせる。
「リプレ―――……あなたもハヤトのことが好きなんですね?」
「え…えっ、そ、そんなわたしは……!」
 クラレットの言葉に思わずリプレは湯のみをひっくり返してしまった。
 慌ててふきんを手にとってお茶を拭きながらリプレは顔を赤くして沈黙していた。
 仕方が無いなぁとクラレットは呟きつつ、その手伝いをした。
「態度を見れば分かりますよ。だって、あなたも私と同じなんですから…」
 苦笑がちにそう呟く。やはり、そうだった。彼女もまた自分と同じ人に対して好意を寄せている。
 だからといって、クラレットにリプレを妬む気持ちなんて一つもなかった。
 ただ嬉しかった。自分の好きな人と同じ人を好いてくれることが。

 それにリプレもまたクラレットにとって大切な存在だった。彼女は自分に様々なことを教えてくれて、友達のように接してくれた。

 ハヤトと同じく自分の正体を知ったときでさえも温かく受け入れてくれた。
 だから、ハヤトが自分かリプレか、どちらを選んでも後悔はしないと思う。
 もちろん、多少はショックかもしれないが他の女性を選ばれるよりは、とても嬉しいことだし、きっと祝福できると思う。

「クラレット……」
 そんな彼女の思いを感じ取ったかのように、リプレも表情を和らげた。
「ありがとう、クラレット…」
「けれど、ハヤトを譲るわけじゃないですよ?
ふふっ…一緒に頑張りましょうね?」
 いつになく強気の発言をするクラレットにリプレは一瞬面食らったがすぐに微笑を返した。
「…ええ、負けないからね、クラレットっ」



 一方その頃、話の主役であるハヤトはというと――――――
「はっ――――――っくしゅんっ!!」
「どうしたんですか? 風邪ですか、ハヤトさん?」
「んー…違うと思うんだけどなぁ。それよりも悪いな、スウォン。いつもいつもおすそ分けして貰ってさ」
「いえ、いいんですよ。僕もリプレさんの手作りのお弁当を貰ってるんですから」
 彼はリプレの使いでスウォンの小屋を訪れていた。
 その目的はスウォンが狩った獣肉や木々から採れた果実を分けて貰うためだった。
 だが、それだけではスウォンに悪いとハヤトが持たされたのがリプレの手作り弁当だ。
 これだけでもリプレは不相応だと考えているのだが、スウォンは独り身のためか、こうして誰かが料理を作ってくれるのはいたく感謝しており、こうして何か用事があるたびに彼へ弁当を届けることになっている。

「ああ、そうそう。今回は珍しい果実が採れたんですよ?」
 ちょっと待っててくださいね、と言うと奥のほうへ引っ込んで、今回分けて貰うものとは別に小さなカゴに何やら桃色をした果実を盛ってやってきた。
「ほら、コレです。ピンク色をしてて美味しそうでしょう? 実際食べてみたんですが、甘くて美味しかったですよ」
 そう言って手渡されたのは、ハヤトの世界でもよく見られる「桃」に近い果物だった。
「へぇ……それじゃあ午後のおやつに、リプレに切って貰おうかな」
「っと…今日はコレくらいでしょうか。それではリプレさんによろしくお伝えください」
「ああ、分かったよ。それじゃあ、またな」
 そしていつも通りそう別れを告げると、大きなカゴに山盛りになった獣肉や果実、そしてスウォンが見つけたという珍しい果実を中に入れたカゴを持って彼の小屋をあとにした。



 リプレはクラレットと語り合ったためか、少し気持ちが晴れ晴れとしながら台所で洗い物をしていた。
「ふぅん、そうなんだ。確かに美味しそうね、この果物」
 アジトに戻ると、早速リプレは物珍しそうに件の果物を掲げて観察する。
 料理に関してはペルゴを除いて右に出る者はいない彼女の知識でもその果物は見たことがないという。
 スウォンは動物たちに食べさせてみてから食べた、ということらしく、毒を含んだものではなさそうではある。
「それじゃあ早速切り分けて、子どもたちや他のみんなにも分けてあげようぜ?」
「ええ、そうね。あ……でも、今、クラレットと私以外は出払ってるのよね。子どもたちもジンガとガゼルと一緒に釣りに行っちゃったし…。みんなの分は残しておいて、三人で食べましょうか」
 仕方が無いわと苦笑すると、彼女は器用にその皮を剥いてさくさくと包丁を滑らせ、均等に切り分けていく。
 見た目はやはり桃にそっくりで、瑞々しくおいしそうに映る。

 3人分、全てを切り分け終えると、すぐにクラレットの部屋で食べることとなった。
「それじゃあ、いただきまーすっ!」
 そのハヤトの声を皮切りに、三人はそれぞれフォークで果物を突き刺し各々の口へと運んだ。
「うわぁ…美味しいです、これ…」
 その見た目の期待を裏切らず、三人の口内には確かに桃に似た甘みが広がった。
 その美味しさに思わずクラレットも感嘆の言葉をもらし、しゃりしゃりと小さい口でそれを頬張った。
「本当ね……。こんな美味しいの…スウォンどこで見つけたのかしら?」
「そうだよな…スウォンでさえも珍しいって言ってたし、案外、異世界の果物かもしれないな」

 果実の美味しさにそんな会話を交わしながら十数分後―――
「さて…全部食べ終わったし、食器を片付けようかしら?」
「ええ、そうですね。リプレ、私も手伝います―――…あ、れ…?」
 そう、ふたりが立ち上がろうとしたその瞬間、ふらっと脱力したかのように彼女たちは床に座り込んでしまった。
「おっ、おい、どうしたんだよ! ふたりとも!!」
 リプレとクラレットの異変に気付いたハヤトは慌ててふたりの傍に寄った。
 ふたりともぽーっと顔が赤くなっており、目もとろんと薄く瞼に閉じられている。
 だが、医療の知識を保健の授業で習った以上のことは知らないハヤトはただ戸惑うばかりで、
 ただおろおろとうろたえるしかなかった。

「だ、大丈夫よ、ハヤト……でも、何だか、ヘン……」
 声を上ずらせながら、安心させようと微笑むリプレ。だが、その表情はどこか妖艶で―――…。
「こ、れは……まるでドライアードに魅惑されたときのよう…です…まさか……!?」
 はぁ…と妙に艶かしい吐息をつくクラレットには何か心当たりがあるのか、記憶を辿るように瞼を閉じるとはっと顔を上げる。
「しまった……こ、これは……ドライアードの実らす果実です…」
「ドライアード…!?」
「ドライアードは……ご存知の通り、植物の精霊です…。精霊とはいえ、その実体はあり…死ぬ直前に、甘美な果実を実らせると聞いたことがあります。…ただ、メイトルパの獣人に好まれるその果実は、人間に対しては媚薬に近い効果を与えると…」
「び、びやくっ?」
 淡々と説明を続けるクラレットも、だんだん顔が赤く染まっていきだらしなく身体を弛緩させていた。
 ふとリプレに視線を向けてみると、彼女に至ってはエプロンを外し衣服をはだけ始めている。
 慌てて視線をクラレットに戻し、それを詳しく尋ねてみた。
「で、でも、俺はなんとも無いぜ?」
「二次性徴を迎えた…女性だけが効果があるらしい…んです…だから…スウォンもあなたも…効果がなかったのでしょう…んふぁっ!」
「や、やだぁ……、身体が火照ってぇ…熱い…よ…ぅ…」
 いよいよ、我慢が出来なくなってきたのか、二人とも嬌声を上げ始めてしまっていた。
 その声だけでもハヤトは緊張してしまうが、今はふたりを助けることだけを考えろと念じて邪念を振り払う。

「く、クラレット何か解決方法はないのか?」
「あ、あることには、ありますけど………ひとつは、時間が経てばこの効果も収まります…。ただ、んんっ…丸一日かかって……しまい……はぁっん…」
 丸一日。待ちきれないことはないが、その間ずっと彼女たちはこのままだということだ。
 そんな姿を子どもたちや他の男たちには見せることができないだろう。
 だからと言って、このまま放っておくことがハヤトには出来なかった。
「もう一つは…女性の、ち、膣内に……その…男性の精を注がれること…なんですっ…」
 流石にその言葉を紡ぐには恥じらいがあったのか、俯いて前髪で表情を隠しながらそう伝えた。
 と、説明を受けて顔を赤くしていたハヤトにリプレの声がかかる。思わず振り向いていると、もう既に彼女は衣服を肌蹴て、衣服の間から手を忍ばせて自分の乳房を撫で回していた。
「りっ、りぷれっ!?」
「……わ、わたしは、構わないよ……ハヤト…。は、ハヤトになら…わたし……えっちな姿見られてもいいよ……?」
 淫靡な姿で笑みを浮かべる彼女の言葉に、ハヤトは一気に劣情を催した。
 でも、だからこそ蕩けつつある理性でなんとか思い止めた。
「そ、そんな……」
 だが、リプレは言葉を続けた。

「わたし、ね……クラレットのことが羨ましかったの…」
「え……?」
 突然のリプレの告白に、当のクラレットも目を丸くさせて驚く。
 確かに彼女からはハヤトへの好意は確認できたが、自分が羨ましいとは思いもしなかった。
 クラレットのその様子を微笑んで頷きながら、リプレは更に言葉を募る。
「ほら…わたしとクラレットって同じぐらいの年齢なのに、いつもわたしはお留守番。なのに、クラレットはハヤトと一緒に戦って、ハヤトを支えることができる…悔しいの。クラレットに対してじゃなくて…何も出来ない自分に…。ひっくっ…みんなは…命がけで戦ってるっていうのに…」
「リプレ……」
 クラレットは快楽に蝕まれる身体に耐えながら、涙をこぼすリプレを眺めた。

 実はというと、クラレットもまたリプレのことが羨ましかった。
 クラレットは育ってきた環境のためか、女らしい魅力は皆無だと自分で思ってきた。
 だが、彼女は違った。どれだけ子どもの世話や家事に忙しくても、その母性や女らしさというものは欠けてはいなかった。
 お互いがお互いを羨ましく思うなんて。彼女はこういう状況にもありながらおかしく思えてしまった。

 さて、一方ハヤトはというと、目まぐるしい状況の変化に戸惑うだけだった。
 ふたりの痴態、リプレの告白―――…情けないことだが、ハヤトは自分がどのような行動をとればいいのか分からなかった。
 もちろん彼女らの痴態には興奮しており、胸はバクバクと鳴り続けている。

 だが、ここですんなり彼女らを襲えるほど、ハヤトは異性への免疫は高いとは言えなかったし、そんなことをすれば彼女たちが傷つくのではないのか―――そう、考えてしまうのだ。
 今は果実の効力によって、まともな思考ができていないだけかもしれない。
 だとすれば、彼女たちが正気に戻ったとき後悔してしまうかもしれない。

 ただおろおろとうろたえるハヤトだったが、そんな彼にクラレットからも声がかかる。
「ハヤト……私からもお願いします」
「えっ…?」
「これ以上、私たちに恥をかかせないで下さい……。私もリプレもあなたのことが好きなんですっ。好きだから、こんな恥ずかしいことを頼んでいるんです…っ!」

 彼女はぽろぽろと涙を流しながら、そう訴えていた。
 そうだ、彼女たちだって好きでこんな姿を見せているわけじゃないのに。
 それでも我慢しているのは、見られても仕方が無いと諦めているからではなくて、自分だから、我慢していてくれてるんだ。

 ハヤトは嬉しくなると同時に申し訳なくなってしまった。
 彼とて彼女たちに魅力を感じていないわけではない。リプレもクラレットもそれぞれに魅力があるし、こういってしまえば軽薄だと思われるかもしれないが、
 純粋にハヤトもまた彼女たちに、自分でも気付かないほどの淡い好意を抱いていた。
 だからこういう状況において告白されても嬉しくはあった。

 しかし、本当に自分でいいのか。今の今まで彼女たちの気持ちは気付くことができなかったし、今の自分の気持ちも状況に流されているだけかもしれない。
 そう考えると、彼女たちに触れることがとても恐ろしかった。
 だとしても―――…自分が望んでいることは、クラレットもリプレも大切な存在で彼女たちを助けたい。
 ただその一心だった。それだけは違いようのない本当の自分の気持ちだ。

「リプレ、クラレット―――…本当に俺でいいんだよな?」
 不安げに訊ねるも彼は微笑んで右手をクラレットに、左手をリプレに差し出す。
「バカね…そうじゃなかったら、とっくにあなたを追い出しているわよ…」
「そうですよ。……だから、私たちを助けてください、ハヤト」
 リプレもクラレットも微笑を返してその手をしっかりと握った。

 ―――――と、勇気を出して一歩を出してみたはいいけれども、ハヤトはこういう経験は何一つなかった。
 何をすれば良い、というのはなんとなくは知識にはある。
 その知識を信じてやるしかないか…そう緊張しながらもそっと手を伸ばそうとし、彼はハッとその手を押し止めた。

「……はぁ…はぁ…、ハヤト…? どうしたんですか?」
 ベッドにリプレと共に横たわらされたクラレットは不思議そうに彼の顔を見上げた。
「え、い、いや…そ、その……」
 曖昧に言葉を濁して明言を避けた。と、言うのもこうして改めてふたりの魅力ある表情に見蕩れていたからだ。
 ここで素直に「綺麗だ」と言うことはなんだか気恥ずかしく、できなかった。
 そんなハヤトの気持ちを見透かしたように、リプレは吹き出して笑う。
「ふふっ、ハヤト、いつまでわたしたちをこのままにしているつもりなの? …恥ずかしくて困っちゃうんだけどな?」
「え゛っ! あ、あぁ、ご、ごめん……」

 リプレのそんな言葉に、ハヤトは思わず彼女へと視線を向け―――硬直した。
 いつものピンク色の衣服は殆ど肌蹴られており、胸元から覗く彼女の肌がしっかりと目に焼き付けられる。
 普段はそれほど意識したことはないが、改めてこうしてみるとリプレの肌は白く、肌蹴られた衣服の間から覗く乳房もふくよかに実っている。まるで、それこそ白桃を思わせるような瑞々しさも窺い知れた。
 ここまで魅力的な肌や乳房を見せつけらては、吸い付きたくなる感情に身を任せたくなるが、なんとか理性を保たせて我に返る。

「わぁっ、わっわっ!? ご、ごめんっ!?」
 再度思わず謝ってしまった。ハヤトのその謝罪の意味に気付き、リプレもクラレットも顔を見合わせて苦笑した。
「まったくもう……そんなことでどうするんですか、ハヤト?」
「そうよ、女のわたしたちがここまで覚悟しているっていうのに…」

 仕方が無いわね、と笑うとふたりは彼の腕を取るとベッドへと引き込んだ。
 スペースに余裕があるとは言えないがその分彼女らとの密接感は増し、ハヤトはますます顔を赤くさせた。
「…キスぐらいはハヤトからしてね?」
 目を細めて、穏やかな笑みを浮かべるリプレに思わずハヤトも首を縦に動かしてしまう。
「あ、あぁ…わ、分かったよ……」
 そう言葉を返すと、おそるおそると唇をリプレのそれへと近づけていく。
(あ……、柔らかい……)
 ぷるっとした感触が唇に伝わり思わずそのまま唇を押し付けた。
 彼女もそれに応じるかのように少しずつゆっくりと唇を離しては重ね合わせていく。

「ん…ふ………」
「あっ……」
 先にキスを取られてしまったと呆気に取られるクラレットはと言うと、少しだけふくれっ面になり彼の手を取ると自分の乳房へと押し付けさせた。その感触に思わずハヤトも顔を離して動揺する。
「く、クラレットっ!?」
「もう…ずるいです、リプレだけ…私も気持ちよくさせてください」
 自分からねだるというのは恥ずかしいのか、不機嫌そうに視線を彼から外しながらその膨らみを更に押し付けた。
「ん…ふぁっ……ハヤトの手…温かい…」
 衣服の上からとはいえ、その柔らかさと弾力は伝わりそのままクラレットによって衣服のなかへと導かれていく。
「うわっ…やわらか……」
 そんなハヤトの呟きを聞いて、クラレットは赤面し押し黙ってしまう。
 しかし確かに衣服の上からでは全く違い、まるで指が吸い込まれてしまいそうな感覚を覚えるほど彼女の実らせている果肉は柔らかく、そのまま思考を奪われそうになるぐらいに魅力的だった。
 普段は何事も冷静に対処する彼女の性格とこの魅力ある乳房とのギャップに、ハヤトも夢中に彼女の胸を揉みしだいた。
「はぅっ…ぁあっ…!! は、はやとぉ…!」
 ハヤトの指先はまるでツタのようにクラレットの乳房に絡み付いて、程よい力加減で胸の形を変形させる。
 その淫らに歪む乳房さえもハヤトの視覚に快感を訴え興奮を呼び起こしていった。

 一方リプレも負けじとハヤトの頭を抱え込んで、半ば無理やり唇を重ね合わせる。
「んっ…ちゅっ……。ふぁ、ご、ごめんね、ハヤト…? でも…我慢ができなくって……」
「り、リプレ……」
 とろんと蕩けた瞳を向けながら謝るがそれでも彼女の欲情は抑えきれることはなく、再度ハヤトの唇を啄ばんでいく。
「んふっ…ちゅっ……」
 何度も何度も唇を重ね合わせ、徐々にハヤトも照れが薄れてきたのか、ようやく自分から唇を吸い更には唇を割って舌を潜り込ませていく。
 その積極さに驚いたのか、多少目を見開きながら彼女も舌をおずおずと彼の舌へと差し出した。
 舌と舌、唾液と唾液が交ざりあい、お互いこういうことは未経験だというのに、いやらしく舌を絡ませお互いを貪りつくす。

「んはぁっ…はぁ…リプレ…息苦しいよ…」
 とうとう息苦しくなったのか、先に唇を離したのはハヤトだった。
 唾液の糸を引きながら、それはぽたぽたとリプレの口元に垂れ落ちる。
 それすらもリプレは舌を伸ばして、くちゅっと口内へと引き込ませ味わった。
 濃厚な唇の交じり合いのためか、リプレもハヤトも唇の周りはお互いの交じり合った唾液でどろどろになっていた。
「ハヤトだって……」
 お互い蕩けきったような表情を浮かべながらも、どこか満足しているかのように微笑を漏らした。
 それを羨ましそうに眺めていたクラレットはすっと手を伸ばし、ハヤトの頬へと滑らせ彼女も笑みを浮かべる。
「ハヤト…私にも……」
 クラレットの言葉を聞き終わる前に、彼はテレながらもニコリと笑みを浮かべて唇を寄せていった。 


おわり

目次

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