狂恋



「ん…あ…んんぅ…」
夜中、古い木造によって仕切られた小さな暗闇の空間、その合間からでも響く小さな物音。
部屋の中で大きく響き渡る声、喘ぎ声といったほうが相応しいだろう、いや喘ぎ声といわずにこの言葉を何と言えばいいのだろうか、そのようなものは見つからない、ハヤトが撫で回すことによってクラレットは敏感に、そして過剰にその肢体は反応してしまう。
ここまで反応が激しいと、媚薬でも塗りたくったかと思ってしまうが、そんな事は一度も無い
そしてこのフラットの中にそのようなものを置いているわけが無い
つまりこれはクラレット本人の体の中で反応していると言うわけである
それでも彼女がここまで大きく反応してしまうと彼とて男だ、欲情しないわけが無い。
撫で回す手はそのまま彼女の乳房へと添えられやさしく揉みしだき始める。
揉むことによって彼女の乳房は柔らかく形を変え続け、原型がとどめられなくなる、
「はぁ…!!あぁぁ!!、は、ハヤトぉ…!!」
涙を浮かべているわけではないのだけれども、強くその双眸を閉じる。その快楽を噛締める為にも。
こねくり回し、揉み立て、指から乳肉がはみ出てくる
彼を受け入れる為に回された腕は快楽のしみこみの激しさによって爪を激しく掻き立て彼に傷を帯びさせる。
痛みに気がついていないのか、それとも知っていてわざとなのかわかっている人そう多くはいないことだろう、ハヤトは乳房を攻める手をやめず、むしろ大胆な手つきに変幻していく
その大胆な行動は手だけにとどまらず、口唇へと注がれて、先端を含んみはじめる
新しい感覚、そしてまた快楽に強く閉じていた双眸は今度は大きく開放され、体に変化が及び始めていく。
「あ、あぁ、んあぁ…あぁ!!」
含んだまま、先端を舌で撫で回し、そしてそのまま吸い付き始めていく。
赤子の様な、それでいて大胆に襲ってくる快楽の波をクラレット一心に受け止め続ける。
「あぁぁ…あぁぁぁぁ………!!」
そのまま―――部屋の中にその声が響かない事は無かった―――



朝を迎え、時間は早々と昼への時刻を迎える、まるで何事も無かったような風景がこの緑につつまれた世界を迎え始める。
暗闇の中で起きた出来事を誰も知らない―――いや分っていて知らないふりをしているのだろうか、不明ながらも世界は彩る。
ハヤトは何事も無かったかのように片手に釣竿を持ち、いつもの様に台所で家事をしているリプレに一言、
「それじゃ、俺釣り行って来るよ」
晩御飯の内容に魚料理が出来るのか、それとも失敗して普段買い物で調達した材料で出来る代物が出来るのか、命運の世界。
リプレの返事も聞かぬまま、ハヤトはそのまま歩き出した。
失敗なら失敗で、成功なら成功でどちらでもリプレの手に掛かれば何でもおいしくいただけるものなのだが。
出発への出路に立ち、玄関から外の空気が風に送られ、その清潔感を味わうところで、後ろから少女の声が聞こえてきた。
他でもないクラレットの声である、リプレは家事に従事していてそう直に移動できるような状況ではなかったし、子供達も今は部屋に篭っている。
「釣りへ行くんですか?」
片手にバケツ、片手に釣竿という状況を見れば誰にでも釣りに行く事はわかるのだけれども、確認の為に彼女は問うた。
まだ早い昼の時間帯といっても、「もしも」の可能性がある、例えば川に先客がいたなど…それは実際にあまりあるわけではないのだけれども。
「あぁ、そうだけど…クラレットも来る?」
子供のように笑顔を浮かべてクラレットに問いかけてくる、昨日の行為の面影など微塵も感じられなかった。
「はい、じゃあ―――失礼致しますね」
誘いに彼女は乗った、理由なんて相応しいものなど必要ないだろう、ただ、彼女が彼の傍を望んだだけの事、玄関に背中を見せて歩く姿は一つの影ではなく二つの影を残して去っていった。
互いにアルク川へと続く道を二人は他愛も無い雑談を交わし続けながら、特には笑い、時には真剣に語っていた。
道は徐々に緑を催すようになり、さらに水のせせらぎの音が木霊するようになる、もうすぐだ、目的の場所は。
近くにくるとなるとハヤトは大分気合が入っており、大物を釣るぞ、と雄たけび…ではないが叫んでいた。
そんな彼をクラレットは横で微笑を含んで眺めていた、只、彼の背中に滲んだ紅の色を気にしながら―――ハヤトはいつもの場所に立つと、釣竿に餌をくくりつける作業をして、思いっきり川へと放り込んだ―――
数時間の間、二人は単純に釣りを楽しんでいた、
時間が経つことにそれなりな大物も釣れたり、つまみに相応しい様な小さな小魚、たまにニャン魚が釣れたりと大量である。
隣には魚が大量に溜まったバケツ、そして反対の隣にはクラレットがいた
ふと、彼女の目に、彼の背中が見えた。
彼がまた一匹魚を釣って、それをバケツにしまう寸前、彼女に完全に背中を見せる体系になるから、よく見てみなければわからないが、彼の背中は紅に滲んでいる部分が映っていた。

「ハヤト…少しいいですか…?」
そういってクラレットは再び餌を川に浮かべた彼の背中に体を寄せる、その紅に染まった彩りに体を預けて。
その瞬間に彼の体が一瞬だけびくりと反応したことをクラレットも気付いていたのだけれども、そんなことは関係なかった、
そのまま彼の上着、下のシャツも少しだけずらして一部の彼の背中を露出させる、そこは紅に染まっていた部分だった
8つ、数字で例えるとその数だけ大きい模様が記されてあった、その模様は紅で色が出来ている。
紅は既に凝固しているようだがきっと彼の衣服にこびりついた紅は凝固される前までに染色された後だろう。
それはまさに傷痕だった。切り傷のようにも見える八つの痕。
まさにあの行為の時に彼女が無意識に、彼は気付いたのかもわからないような時に出来たそれだったのだ。
「あの時の…」
衣服を元のままに戻し、傷を隠す、けれども染色され、滲んで生まれた紅の色は元に戻るように消えうせない。
ハヤトが釣りをしているのにも関わらず、彼女はそのまま体をハヤトに傾ける。
背中に顔を埋め、ぽつぽつと言葉を漏らし続けていく。
「ごめんなさい…ハヤト…」
ハヤトは何も語らない、語ることが無いからなのだろうか、それとも語ることがあっても口に出せないのだろうか、答えは彼の心の中だけでしか解明できない、いわば完全に不明な要素として封印されている。
クラレットが体を預けていると言うのに、そのまま手に持った釣竿を離さないのはもったいなさからなのだろうか。
「あの時は…本当に夢中になっていて…気がつかなかった、こんなにも酷い痕が残っているなんて…」
ハヤトは魚のかからない釣竿を川の水面から起こし、自分の下へと手繰り寄せながら言葉を返してきた、 今日始めて、アルク川で発言した言葉となるのであった。
「俺も…全く気付いていなかったんだけどね…」
普段のとは全く違ったような明るみの無い親権の様な風格を覚えさせる、言ってしまえばハヤトらしさがない。
釣竿をバケツの後ろに置いたまま、彼は彼女にそう答えたのだった。

まだ明るみが感じられ、そして日の暖かさは何とか体に染み込む程の日暮れの川、前に位置されていた釣竿はまだ同じ位置に滞在し、魚はバケツを定住地に泳ぎ続ける。
川のせせらぎも耳に響き、先ほどの青年の張り切った様な明るみのある声は全く響いていなかった。
そして隣の少女の控えめでまっさらとした穏やかに響く声も、今あるのは二人が倒れているということ、 お互いに唇を重ね合わせて、深く深くへと侵入させ続ける、そのまま溶け込むかのように延々と二人してその味を味わっていた
幾度も唇を離しては、また幾度も嫌がるかのように唇を重ね合わせ続けていく。
このまま夜まで融けこんでしまうかのようにその柔らかさを楽しんでいた。
快楽を味わい続けながらも、先にその快楽から抜け出したのはハヤトだった、唇を離して銀色の橋を絡めとりだす。
再び唇に重ねたと思えば、それは勘違いへの第一歩だった。ハヤトのそれはそのままクラレットの線をそりながら首筋へと辿りだす
ずっと味わっていた快楽に身をゆだねていたクラレットは不意に別所を襲った快楽に大きく身震いを起こし、首筋を振るわせ始める、
「ん…んぅ…」
自然とそういった声が響いてしまう、それもきっと無意識に声を出してしまうのだろう、普段に会話をしている時には想像も出来ないような艶かしさをもった声で嬌声をあげる。
その嬌声をきっかけにハヤトは首筋を辿った唇を首筋から開放して、肌を重ね合わせ、線をそるように撫で始める
優しさが伝わってきて、彼女を蹂躙するような態度が無いのに彼の欲情的な態度、矛盾しながらもそれが伝わってくる
彼だからこそそれが伝わってくるのだろう、只の思い込みで、都合のいい事なのかもしれないけれどそう思えて仕方が無かった。
「…ぁ…んぅ…ハヤト…」
彼女は声を上げながら目の前にいる彼の名前を呼ぶ、それもやはり艶かしさを色させて、指に沿わせた線の上を順に舌をつかって愛撫を繰り返す。その愛撫の度に小さくクラレットは小さく体を振るわせる
そんな小さな反応が余りに可愛らしく、更に感じてもらいたくて、そのまま乳房へと手が添えられる、
緩く揉む手つきは次第に大胆を増し、いつかあった時のように乳肉が指の間からはみ出る。
「や…!!あ、んぅ…!!」
ここが外だからだろうか、それとも自分の勘違いの話だろうか、クラレットの喘ぐ声は部屋の時よりも小さかった。
跳ね返す壁がない為に跳ね返った言葉を聞こえないからきっとそれが感じられない。
それでも、彼女から響く喘ぐ声に興奮を隠せることは無い、ただ、声が響かないだけ
あの時の様な同じような攻め方で乳房に口を這わせて、その突起からそれを吸い上げはじめる。
その急な反応に、また小刻みに彼女は体をふるわせる
自分の行為でここまで反応が愛しくて更にクラレットを弄る、時に耐えられなくなった喘ぎが、次第に激しくなってくる。
「ひっ…!!ぁ…!!」
突如大きく反応するような事態が発生した、ハヤトが慣らす為に秘所に指を差込、動かし始めた
ハヤトによって何度も体験した事はあるけれどもやはり慣れるようなものではない、いや、慣れるようなくらいな淫らな存在ではない。
内部を擦って彼女から響く声に耳を傾ける、彼女に艶かしさが発生したかの為に、
「う…んぅ…」
快楽へと変貌したところを確認したところでハヤトが蠢かした指を水分の溜まったまま引き抜く
これから起こること位はクラレットにも予想は出来る、その為にいま慣らしの指が自分を擦ったのだから。
「…クラレット…」
下部から声が聞こえたかと思うと、そのままハヤトは腰を押し進め始める。声にもならないような苦痛と快楽がクラレットの内部を一気に襲い始めてくる、
激しい痛みの方がまだ内部を襲っているためかクラレットは小さく悲鳴を上げる。その反応にやや心配、そして不安を与えたのかハヤトの動きが一瞬硬直する。
「…大丈夫か?」
不安が心を締め付け、そう聞きたくてそうとしか言えなかった。
クラレットはそれでも彼にだけは不安にさせたくないと思ったのだろうか、苦痛がありながらも無理して声を響かせる、
「平、気で…す…だから…んぅ!!」
平気と言う言葉は正直言ってしまえば彼女からして言えば全くそんなものではなかった。
痛くて、苦しくて今でも逃げ出してしまいたいような痛さが走って、辛いものがあった
ただの肉体的な苦痛だけでとってしまえばのことである、今の彼女には肉体的な苦痛よりもま、ハヤトを受け入れることを望んでいたから、自分の苦痛などよりもまず、彼への愛しさが明らかに心の中で勝っているからこそ、精神的なものが勝っている証明だった。
だから耐える、いや耐えられた。
「あぁ…あぁぁ……ぁ・・・!!」
そんなことを考えていたのか、時間は既に大きく過ぎ、内面を擦る痛みはもはや快楽への一歩を踏み出していた
重なる全てが融けて一つにまとめられて、そのままどこかへ行きそうな気持ちにもなってきた
「く、られっと…」
最後にそのような声が響いたのはきっと空耳ではなく彼からの言葉、ハヤトは彼女を強く抱きしめる。
直後に愛情が体を覆ってきたから、
「――――ぁぁ…―――――」
意識は一度、途切れる



「こんな大物、今日も良く釣ってきたわねぇ〜…」
バケツの中をたくさん泳ぐ魚たちを眺めて歓喜の声を上げる、歓喜と言うよりも驚きだろうか、ハヤトから渡された魚を一匹一匹取り出すと、それを調理する為に包丁を取り出す
「それじゃ、邪魔になりそうだし、失礼するよ。」
空になったバケツを取って、倉庫へと足を動かし始める。
そこでリプレが感づいたかのようにハヤトを呼び止めた。
「ねぇ…ハヤト、今日はいつもより遅かったじゃない?何かあったの?」
一瞬彼の体がびくりと肩を震わす、彼女に気付かれませんようにと一瞬願って、リプレに振り返る
いつもの様な微笑を浮かべて彼は口にした。普段どおりに、そういつもの様に
―――そう思わせるような芝居だったということはきっと知らないだろう―――

「何にも無いよ、リプレ」

さすがにあの行為のことを教えるわけには行かない。
これは彼女と自分だけの秘密なのだから、
気がつけば、これはフラットの仲間達への初めての隠し事だったかもしれない。


おわり

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