『此処』にいるから



「――ス、トリス。起きるんだ」
「・・・んむぅ?・・・」

肩を揺さぶられ、視界がぐらぐらした。
トリスは上体をゆっくりと起こして、寝ぼけ眼をごしごしと擦る。

ここは自分の部屋だ。
机に突っ伏していたのだろう。

だんだん視界がはっきりしてくると、こちらをじっと見つめる蒼い瞳があった。


「おはよう」




目が合って数秒。

トリスは青ざめた表情でハッとする。
現状と、これから起きるであろう未来を瞬時に把握した。



「ち、ちちちち違うの!これにはハルシェ湖よりも深い訳が・・・!」
「ただの居眠りにそんな深い訳があるとでも?」


持っていた分厚い本を閉じると、ネスティは
はぁ、と溜息をひとつ吐いた。


「僕がほんの少し君から目を離すとこれだ」


うっ、と言葉に詰まる。


「いやあー!反省文は勘弁してくださいネス様メガネ様世界の大樹様」
「駄目だ。これは約束だろう」


必死のシルターン式の祈りも虚しく、
ネスティは眉間に皺を寄せ、トリスの背後に移動する。

上から見下ろすと、質素な机の上には
先程まで読んでいた召喚術の・・・よだれつきの本が開かれていた。

呆れを通り越してもはや感心する。
朝――勉強を始めたときから、全くページが変わっていなかったからだ。



今日トリスが居眠りをしたのはこれで3回目。

1度目も2度目も反省文を書くように言った。
しかし「次!次寝たら絶対書くから!」と言われ・・・

さすがに今度は大目に見ることは出来ない。



(『もう居眠りはしません』1000回だな)


ネスティが口を開く。
しかしその言葉が音になる前に、


「だって・・・・こんなに気持ちいい日差しが燦々と入ってくるのよ」
「?・・・だからなんだ」


「これでお昼寝しないほうが!おかしいってもんよおおお!とりゃあーっ!」


隙をみてトリスは椅子から転げ落ち、
そのまま前転しながら自分のベットへ飛び込んだ。


そこへ潜り込むと、頭だけを出してキッとこちらを睨んでくる。

ついに開き直った。

ネスティはただ深く深く溜息を吐くしかなかった。
そして今日一番の怒鳴り声をトリスに浴びせたのだった。


「君は馬鹿か!」


「馬鹿でいいもん」


即答。


「なっ・・・!こら!トリス!」


言って、頭も潜り込ませる。
トリスの身体は完全に白い布団に覆われてしまった。


そこで諦めてなるものかとドカドカとベッドに近付き、
力の限りに剥がしてやろうとトリスの頭のほうの布団に手を掛ける元・融機人(ベイガー)。

だが調律者(ロウラー)も剥がされてたまるかと言わんばかりに
中からそれを引っ張って応戦する。

双方とも顔が真っ赤になるほど必死だった。


「こんな真昼間から本格的に寝るんじゃない!」
「なによぉ、眠いときに寝とかないと健康に悪いの・・・よ・・・って?」


ネスティの布団を握る力がふっと弱まった。
もう、危うく後ろの壁に後頭部をぶつける所だったじゃない。

それから何の反応もしないネスティを、トリスは怪しみながらそーっと覗き見る。



「・・・そんなに眠いのか」


溜息混じりに呟いてる。

ついに諦めてくれたようだ。
勝った!という優越感がこみ上げて自然と口元が緩む。


「えへへ、それじゃあおやすみな・・・」

「僕も寝る」


言って、ネスティはベッドにギシリと体重を乗せた。


「な!なんでネスまで・・・!」
「眠くなったんだ」


ぽかんと口を開けるトリスをよそに、
ネスティは眼鏡を外し枕元において潜り込んで来た。


「ついさっきまで「寝るな!」って怒ってたのに?」


「変なの」と笑う君。

その笑顔が愛しくてたまらなくて。
胸を締め付けられる思いで――・・・




「きゃっ」



動けないように。
逃げられないように。


抱きしめた。



何故だか、とても寂しくなって。
君が何処かへ行ってしまう気さえ、した。




ふいに時間が止まった。


窓の外で風に揺れる木の葉の音も、
せわしなく歌を口ずさむ小鳥たちの声すら。

耳に届かない。




「離れたくない」


腕の中のか弱い存在は、抵抗することを忘れていた。

拒否の素振りはない。



「ネ、ネス?・・・っ」



少し頬が紅潮している。
上目遣いに僕を見る君に口付けをした。

初めは触れるだけ。


でも足りない。

だから、震える唇を包むようにして――愛しい人の舌を絡めとる。


その時間はとても長かったと思う。

僕が求めすぎたから。
君の吐く息が熱を帯びていたから。



トリスの腰の辺りに回していた手を動かし、スカートをたくし上げる。
辿り着いた先の、柔らかな桃のような果実を優しく撫でた。

腕の中のひとが身体をビクンと強張らせる。


「・・・嫌か?」


聞くと、トリスはもにょもにょと小声で訴えた。


「そっちじゃなくて・・・胸、さわって」


上気した頬と、恥ずかしそうに伏せる瞳。
とても、愛しい。


ネスティはトリスを押し倒すような格好になる。


服越しに、乳房に触れた。
決して大きくはないけれど、小さくもない。

僕の手に収まるくらいだ。


ゆっくりとトリスの肌を覆う布を取り去っていく。
僕が少し手間取ると、彼女は自分から身体を浮かせてくれた。

今は彼女を隠すものは何もない。
そしてそれは、僕も同じだ。


張りのある肌。
柔らかだが弾力のあるふたつのふくらみ。

ツンと自己主張をしている頂の片方に舌を這わせ、もう片方を撫ぜる。
じれったくちろちろと舐めるのと同じように、指先で転がして。


「ん・・・」


美しい身体をくゆらせる姿は、なんとも艶かしかった。
すかさず頂を口に含み吸い上げる。


「ひぁっ・・・あうう!」


急な刺激に、堪らず声を上げてしまう。

時間を掛けてゆっくりと責められて硬くなったそれは、
ネスティの唾液でてらてらと光っていた。

熱を帯びた息をもう一度吐くと、
ネスティはトリスの腹部、太ももを撫ぜたあと、秘部へと手を進める。

茂みを避けて辿り着いた先はもう湿り気を帯びて、男を誘っていた。


「胸だけで?」
「〜〜〜・・・っネスのばか」


ぷいと顔を逸らしてしまう。
もったいない。



「見たいな。
 君が感じる表情を」


耳元で囁かれたのと
秘部の花弁を指先で弄られたのは同時だった。


「あ・・あ・・っ!やぁああん!んぁっ!」
「とても可愛いよ」


くすくすと笑いながら、また気持ちの良い刺激を送られる。


「は・・・・っあん・・・あん・・・はぁ・・・あああん!」


軽く上り詰めると、
仰け反った身体から力が抜けた。

ネスが割れ目に指を入れるとくちゅくちゅと音がして、
恥ずかしいけど、ネスが欲しいってそこが言ってるみたい。


「大丈夫か?トリス・・・」
「うん・・・いいよ、きて」


彼は自身のものを取り出して私の割れ目へと添える。

そこから溢れる雫を自らにつけると、
ネスはゆっくりとそれを私の中へ沈めていく。


「あぁん・・・んあっ・・」


ネスが腰を動かすたびに、ベッドが揺れる。
私が声を出すたびに、彼を締め付ける。


「ふっ・・・あぁ、ネ、ネスっ・・・」


上ずった声で愛しい名前を呼ぶ。
その声を聞くと彼は、もう一度トリスの唇に口付けし、奥を突く。


「ん・・・あ・・・あああ・・・いい、んっ、そこぉ・・・!」


緩急をつけて行われる動きに、
私は酔ったようにふわふわとした気分にさせられた。

ネスは私を突きながら抱き締めて、囁く。


「トリス・・愛してる」
「私も・・・はぁ、んっ、ネスのこと・・・大好きだよ」


そこからネスのスピードが徐々に早くなってきた。

私は急に絶頂に辿り着いてしまう気がして、
堪らずネスの腰に手を回し、力を込める。

そしてがくがくと身体を震わせて、私は快感を味わった。


「あぁああぁん!ネス!ネスっ――――!」


私から力が抜けたことを確認すると、
彼は私の中から自身を引き抜き、精を放った。


抱き合って、行為の後の余韻に浸る。


「ネスは寂しがり屋だね」

「・・・・」


こんなこと言われるとは思わなかった。
トリスは笑っていた。


「泣きそうな顔、してるから」


言って、僕の頭を抱きしめてくれる。

温かい体温と
心臓の音が心地いい。


「でもネスだけじゃないんだよ?
 季節がふたつも巡るあいだ、私も寂しかったんだから」


寂しすぎて、苦しすぎて、死んじゃう。
そんなくらいに。


「・・・すまない」

「でーも!今は私もネスも『此処』にいるでしょ。
 もう見えない存在じゃないんだよ。こうして、ぎゅってできる」




離れないから

ずっと、傍にいるから
寂しくないよ





「ね?」




触れた身体から、そう、じんわりと伝わってきたんだ。




それからの話。


「さーて、お昼寝はどうしようかな。
 どこかのメガネさんが激しくするから疲れちゃった」

「軽い運動をした後だから、よく眠れるぞ」


ふふ、と笑う。

その顔が妙にいやらしくて、
私は真っ赤になってネスの顔にビンタした。


「ねすのえっち!」






おわり・つづく

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