『侵触』



暁の丘。
そこでは今、無色の派閥と島の住人たちの激戦が繰り広げられていた。
「みんな、一時撤退して!」
アルディラは声を張り上げて叫ぶ。
状況は絶望的だった。死をも辞さない派閥兵の攻撃に、ツェリーヌの召喚術、そして最も脅威なのは…
「はははっ。君たちの力はその程度かい?」
無色の軍勢の先頭に立っているのは、『紅の暴君』キルスレスを抜剣したイスラだ。
「早く森の中へ!」言いつつ、アルディラもじりじりと後退していく。イスラの力を防ぎきれるのは皆の中では彼女の魔障壁とレックスの『碧の賢帝』シャルトスだけだが、彼がこれ以上抜剣するのは危険と判断し、アルディラがしんがりを守っている。
仲間の姿が森に消えたのを確認し、彼女も駆け出そうとして…
「隙だらけだよ!!」
イスラに一瞬の油断を突かれた。
鈍い音と共に視界が揺らいでいく。
「くっ…しまった…」
イスラの笑い声が聞こえるなか、アルディラの意識は落ちていく…


薄暗い光の中、アルディラは目を覚ました。
「……っ…ここは…」
ぼやけた視点が少しずつはっきりしてくる。周りを見ると、どうやら幅6〜7メートルほどの部屋らしい。金属製の壁や床を見る限り、ロレイラルの技術が使われているようだ。
「それじゃあ遺跡の中なのかしら…」

部屋の隅にコンピュータ端末が一つ置いてあり、その向かい側に扉がある殺風景な部屋だ。
部屋の中央には、床から突き出るように50センチほどの高さの金属製の台が備え付けられている。台は人一人が横になることができるほどの大きさだ。アルディラはそこに跨るような姿勢で座っている。
両腕は手錠を掛けられ、天井から延びる鎖に繋がれている。自由な両足を動かそうとして、なぜか動かない。
「そんなっ、どうして!?」
「僕がそう設定したからだよ」
扉の開く音と共にイスラの声が聞こえた。
「こんなことして、どういうつもり!?」
強い口調でアルディラは聞く。
「君を僕の物にするんだよ」
対するイスラは部屋の隅にある端末を操作しながらいつもの微笑みで言葉を返す。
「誰があなたの物なんかに……ああんっ!」
彼女の科白は快感によって遮られた。
イスラが端末のキーボードを叩く度に全身を快感が電流のように流れる。
「ああっ、な、に、これっ」
強烈な感覚に悶えつつ、必死で言葉を作る。
「ああ、これかい?寝ている間に君の脳にプログラムをインストールしたんだ。この端末で思い通りに操作できるようにね。融機人っていうのは便利だね」
イスラはそう言うと端末から離れ、こちらに歩いてくる。
目の前まで来て、こちらが何か言おうとすると、
「…ッ」
口付けで黙らせられた。
伸ばしてきた舌を噛みちぎってやろうとするが、なぜか動かない。力の入らない口は、容易にイスラの舌を受け入れてしまう。
「んっ…ちゅ…む……ん…ぷはっ」
「…はっ…だから最初に『設定した』って言っただろ?感覚だけじゃない。行動も僕の思い通りにできるんだ。僕に攻撃するのはもちろん、ここから逃げることも君には許可されていないんだ」
「そんな…」
「これから時間をかけて、ゆっくり調教してあげるよ、アルディラ」
たっぷりと彼女の口腔内を犯したあと、イスラは歪んだ笑みを浮かべた。


つづく

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