ポム子な日々 1



 今日、久しぶりにお母さんの夢をみました。夢の中でお母さんはとてもわたくしに優しかった。
 お母さんと一緒にいたころのわたくしはそれはもう幸せで、貧しい暮らしでしたがわたくしはお母さんが側にいてくれる。それだけで十分でした。お母さん、大好きです。
 ですが、お母さん。貴女のことを愛しいと思えば思うほどわたくしの心は苦しくなります。
 大好きな貴女を苦しめた自分が、大好きな貴女の命を奪ってしまった自分が許せなくなるからです。
 わたくしは望まれた生まれた命じゃない。お母さんが悪魔に酷いことをされて結果として生み出された穢れた命。
 忌み子であるわたくしの存在がどれほど貴女にとって重荷であったのかは想像に難くありません。
 わたくしが成長するに従って、わたくしの身体には悪魔の血を引く証が現れて、それを隠すために一所には安住することもできなかった。ようやく落ち着けると思った場所。そこでも対には正体がバレて、そして力を暴走させたわたくしは多くの人の命を吸い尽くしました。お母さん。誰よりも大切だった貴女の命も。
 ごめんなさい。ごめんなさいお母さん。わたくしなんかがこの世に生まれてきてごめんなさい。
 貴女の命を吸い尽くしてしまったあの日から、わたくしはずっとこうして貴女に謝り続けてきました。
 いくら謝ったところで消せない罪。決して償うことの叶わぬ過去の過ち。
 どうしてわたくしのようなバケモノがこの世に生まれてきてしまったのでしょうか。
 わたくしなんて最初からこの世になかったことになってくれればどんなによかったか。
 そんな風にわたくしはずっと思い続けてきました。でもね、お母さん。いつからでしょうか。
 貴女に産んでもらえたことをわたくしが心から感謝できるようになったのは。

『リシェル、ルシアン。こっちにきなさい』

 今となっては遠い日の記憶。わたくしがお屋敷に召し出された日のこと。

『今日からこの娘がオマエたちの世話をすることになった。彼女の言いつけをきちんと守っていい子にするのだぞ』

 そう言って旦那様はまだ幼い二人のお子様にわたくしを紹介してくださいました。まだ幼い、本当に幼い姉弟に。

『ねえ、アンタのおなまえは?』
『えっ、あっ……ポ、ポムニットと申します』

 その小さなおじょうさまはわたくしに名前を尋ねてこられました。わたくしは強張りながら答えます。

『そうかあ。じゃあ、ポムニットはきょうからあたしのけらいだぁ〜』

 子供らしい無邪気な笑顔を見せておじょうさまはそうおっしゃられました。思えばそれがはじまりでした。
 いくつになってもわたくしの手を焼かせる悪ガキおじょうさまと、それにお仕えするわたくしの全ての物語のはじまり。


「おじょうさま。お背中を流しに参りました」
 笑顔をはずませながらわたくしはお風呂場へと入ります。そこでは既にリシェルおじょうさまが湯船につかっておいででした。
 水面からはみ出した、おじょうさまの肩。なんともそそられる肩甲骨のあたり。(*´Д`)ハァハァ。もう辛抱たまりません。
「さあさあ。おじょうさま。今日もこのわたくしめがおじょうさまのその珠のようなお肌を隅々までお洗いいたしましょう。(*´Д`)ハァハァ あら、いけませんね。わたくしとしたことが。ちょっと息を切らしたもので。(*´Д`)ハァハァあら、また。(*´Д`)ハァハァ それというのも(*´Д`)ハァハァ おじょうさまと一緒にお風呂と(*´Д`)ハァハァというだけで(*´Д`)ハァハァ わたくしなにやら(*´Д`)ハァハァいけない気持ちに(*´Д`)ハァハァ」
「ハァハァハァハァうっさいっ!!!あんたは発情期の犬かぁぁぁああああ!!!」
 チュイーン!!ガリガリガリ!
「ぎやぁぁぁああああ!!!!」
 わたくしとしたことが(*´Д`)ハァハァのしすぎのようでした。ボーナス極振りのおじょうさまのMATから繰り出されるレベル3ベズソウのギアメタル限界ダメージ192をモロに喰らってしまいました。
「な、何をなさるのですか!おじょうさま、お風呂場にサモナイト石を持ち込みになってはいけませんとあれほど申したではないですかっ!」
「うっさい!うっさい!あんたが事あるごとにそうやってハアハア言いながら迫って来るからでしょ!!」
 えぅぅぅ。そりゃ悪ふざけが過ぎたとは思いますがいくらなんでもあんまりではありませんか。
 わたくし、これでも日夜、四六時中おじょうさまのためにお休み返上で働いてるんですよ。お店のほうのお手伝いとか。
 おじょうさまが御自分でお慰めになった後のシーツのお洗濯とか。これ、全部時間外労働ですよ。
 いいじゃないですか。たまにはこのぐらいハメを外しても。
「よくない。だいたいあんた前科持ちじゃない。前にお風呂場であんたにされたこと忘れてないんだかんね!」
 あれはおじょうさまのために心を悪魔にしてやったことですよ。おかげでおじょうさまはめでたくライさんと結ばれたことですし
「そういうのが余計なお世話だって言ってんの!だいたい、いつまでたっても人を子ども扱いしてっ!」
 事実、わたくしの目から見ればおじょうさまはまだ子どもです。そう、ほんといつになっても手間のかかるやんちゃさんで……
「ポムニットのバカっ!!」
 ゴチッ! イタタ おじょうさまは手に持っていたサモナイト石をわたくしに投げつけます。ものの見事に命中です。
「そういうことをなさるのが子どもの証拠じゃありませんか!」
「何よっ!そうやって都合のいいときだけ保護者ヅラして!あんた何様ァっ!」
「わたくしはリシェルおじょうさまの教育係です。これまでも。これからも」
「必要ないわよ!そんなのもう!あたしのことなんていい加減ほっときなさいよっ!」
 ザバン! おじょうさまはそうおっしゃると湯船からお上がりになってお風呂場を後になさいました。
 やれやれ。どうやら地雷をおもいっきり踏んじゃったようです。失敗です。まあいいでしょう。
 おじょうさまも落ち着けば頭が冷えるでしょうし。しかし今日のわたくしはなんかおかしいですね。
 妙に感情的になってしまいました。少し悪ふざけもすぎましたし。これではどっちが子どもなのだか。
 どうしてでしょうかね。久しぶりに貴女のことを夢にみたからでしょうか。ねえ、お母さん。
 

 ハァ……おじょうさまと喧嘩しちゃいました。まあ、こんなのは別に今にはじまったことではないのですが。
「子ども扱いしないで……ですか……」
 休憩室でひとりごちながらポツリと呟きます。少しだけ胸に寂しさを覚えながら。
「本当はわたくしの方がそうしたがってるだけなんですよね。おじょうさまのこと……」
 あの事件の後、おじょうさまはご立派に成長なされました。あれだけ反発なさっていた旦那様とも仲直りし、家名を継ぐためのご勉強も熱心になられて、以前のような人様を困らせる悪戯もなりを潜めてしまいました。
 そのことをわたくしは嬉しく思う反面で、なんだか寂しく思ってもいます。
 あれほどに悪童だったおじょうさまが急に手のかからない子になってしまったことが本当に寂しい。
 長く患っておられた恋の病も、先だって色々とはっぱをかけたのが効を奏して無事成就なされました。
 ライさんと初めて結ばれたときのおじょうさまの幸せなお姿。思い出すだけで心が温まります。
 おじょうさまの幸せはわたくしの幸せ。なのに、どうしてでしょう。今、わたくしの胸の中にあるこの寂しさは。
「単にわたくしがおじょうさま離れできてないだけ……なんですよねえ」
 このお屋敷に引き取られてからというもの、リシェルおじょうさまとルシアンぼっちゃま。
 お二人のお世話をするのはわたくしの仕事であると同時に生きがいにもなっていました。
 とりわけ絵に描いたような模範生だったルシアンぼっちゃまに対して、リシェルおじょうさまは典型的な問題児でした。
 おじょうさまが悪戯をなさる度に、どれだけ他所様に頭を下げさせられたことか。どれだけ旦那様のお叱りを受けたことか。
 あまりにも多すぎて数え切れません。けれどそんな忙しない日々がわたくしにとってはありがたかった。
 忌まわしい過去も、呪われた生い立ちも全て忘れてわたくしがヒトとしていられることのできた日々。
「あんなおじょうさまにつき合わされていたら暇もありませんよね。昔のことをグチグチ思い返す暇も」
 おじょうさまの世話をして、おじょうさまに引っ張りまわされて、ご迷惑をかけたところへの謝罪行脚。
 耳にタコが出きるほどの旦那様のお小言。寝る暇も削られる時間外労働。監督不行き届きで課される減給。
 うぅ、いけません。おもいだしたら涙がでてきちゃいました。けれどあの頃のわたくしにとってそんな日々が何よりも愛しかった。
 ですから手放したくなかった。いつまでも続けばいいと思っておりました。けれど現実はそんなに甘くありません。
 その時はやがて訪れました。わたくしが本当の自分と再び向き合うことになる時が。
 

『イヤぁぁぁ!!近寄らないでよぉぉ!このバケモノぉぉぉ!!』
 わたくしの正体がおじょうさまにバレたあの日、おじょうさまのその言葉は容赦なくわたくしの胸を抉りました。
 あまりのショックに気が動転しておられたのでしょう。事実、そのときのわたくしの姿はバケモノ以外の何者でもありませんでした。
 おじょうさまは何も悪くはございません。悪いのはこのわたくし。大切なおじょうさまを怖がらせてしまったわたくしです。
 でも、お母さん。あのときわたくしは少しだけ貴女のことを恨んでしまいました。
 この世で一番大好きな人からバケモノと呼ばれなきゃいけないこんな身体に産んでくれた貴女のことを。
 あの日、おじょうさまに拒絶されて、ヒトとしてのわたくしは終わってしまったと思いました。
 半魔の力を制御できないわたくしはそこに存在するだけで誰かの命を吸い取ってしまう。お母さん。貴女のように。
 耐えられなかった。リシェルおじょうさま。ルシアンぼっちゃま。旦那様。そしてライさんをはじめとするわたくしの大切な人々。
 その人たちの命まで奪ってしまったら今度こそわたくしは狂ってしまうから。人知れず皆様のもとから抜け出そうとするわたくし。
 それをひきとめてくださったのはライさんでした。ですがライさんの説得にもわたくしの決意に変わりありませんでした。
 けれど……
『だから、そうやって尻尾を撒いて逃げ出すってわけ……』
 そこに現れたのはおじょうさまでした。おじょうさまはわたくしにどこへもいくなとご命令なさいました。
 けれど、そんなご命令はもう聞けません。こんな姿のわたくしじゃおじょうさまもお嫌いになられて……
『勝手に決め付けんな!あたし、あんたに面と向かってそんなこと言った覚えないわよ!』
『確かにあたし……そう取られても仕方がないぐらい……酷いことあんたに言ったわ』
『気が動転してたからってだけじゃ済まされない……許して欲しいなんて言えない……だけど!』
『あんたを絶対に手放したくないんだもん!!』
 おじょうさまの言葉の一つ一つがわたくしの心に染み込みます。けれどおじょうさま。もう貴女の側にいることはできないんです。
 だって、わたくしは近くにいるだけでそんな貴女のお命を……
 すると、おじょうさまはおもむろにわたくしに近づきます。御自分の想いが決してうわべだけの言葉ではないと証明するために。
『いけません!おじょうさま!今のわたくしに近づいては』
『駄目よ!これはあたしにできる、あんたへの唯一のつぐないなんだから』
 おじょうさまがわたくしに接近します。わたくしの命を吸う力の届く範囲にまで。わたくしは逃げ出そうとします。
 それをお止めになられたのはルシアンぼっちゃまでした。どうしたらよいか戸惑うわたくし。そんなうちにおじょうさまの手がわたくしに触れて
『嫌だ。嫌だよぉぉ!おじょうさまの命を吸い取るなんてそんなのやだよう』
『だったら自分でなんとかしなさい。あたしを死なせたくないんだったらポムニット。あんたが自分でその半魔の力を押さえ込んじゃいなさい』
 力の制御。そんなことが自分にできるとは露ほどにも思いませんでした。ですがおじょうさまはそんなわたくしに。
『安心して。それでほんとに死んじゃったとしてもあたしはあんたのことを嫌いになんてなったりしないわ』
『ポムニット、大好きだよ』
 わたくしの身体をきつく抱きしめておじょうさまはそうおっしゃいました。そして次の瞬間、わたくしは。
『戻れた……わたくし……自分の力を制御できた……』
『ポムニット……よかった……よかったよぅ』
 そこにいたのは元の姿に戻れたわたくし。そんなわたくしにリシェルおじょうさまは泣いて抱きつきます。
『ごめんねえ……ごめん…ポムニットぉ』
 そう言っておじょうさまはわたくしに謝罪します。謝らないでください。おじょうさま。謝るのはわたくしのほうです。
 ごめんなさい。貴女にこんな悲しい想いをさせて。それにありがとうございます。わたしに自分自身に立ち向かう勇気をくれて。
 いつだったかライさんのお父様にいわれた言葉。命を懸けて守りたいと思う自分だけの宝物。その日、わたくしは気づくことができました。
 リシェルおじょうさま。それは貴女です。大好きな貴女と貴女を取り巻くこれまた大好きな人々。
 本当に大切なものに気づけたあの日から、ずっと閉ざされていたわたくしの本当の心にも光がふりそそいだのです。


「なんだか今日はいろんなことを思い返しちゃいますね」
 ほんとうに今日のわたくしはどうかしています。けれどおじょうさまとの思い出。その一つひとつを思い返しているうちにわたくしの心はなんだかポカポカになってしまいました。辛いこともありました。それこそ死にたくなるぐらい哀しいことも。
 どの思い出を振り返っても感じることはいつもいっしょ。おじょうさま、あなたのことがとても愛おしい。
「はぁ……おじょうさま……おじょうさま……」
 ですからおじょうさま。貴女が少しずつわたくしの手を離れていくここ最近は嬉しく思う反面、寂しいのです。
 だからでしょうか。わたくし、寂しさを紛らわすためにこんなことを……
「あふっ……はふっ……おじょう……さまぁ……」
 くにくにとわたくしは自分の指でアソコを弄り始めます。これじゃあ少し前のおじょうさまのこととやかく言えませんねえ。
「はふっ…おじょうさま…あうぅ…おじょうさま……」
 指はもう根元近くまで膣の中に入って、わたくしは自分の膣肉を弄びます。身体に感じる性の悦び。
 そんな刹那的な快楽だけがわたくしの心の隙間を埋め合わせてくれる。
「あぁっ!おじょうさま……リシェルおじょうさまっ!!」
 物足りないのかわたくしはクリトリスまで弄ることにしました。コリコリとした肉のお豆。それを自分の指ですり潰します。
 瞬間、身体をはしり抜ける強烈な刺激。おもわず声が大きくなってしまいます。
「おじょうさまぁぁ……ぁぁ……おじょうさまぁ……」
 こうなってしまうともう止まれません。本当に発情した動物さんのようにひたすらわたくしは自慰にふけります。
 リシェルおじょうさま。あなたのことを想いながら。おじょうさま。貴女もこうして御自分を慰めていらっしゃいましたね。
 ライさん。あなたの一番大切な人のことを思い浮かべながら。
「うっ……っく……はぁ……はふっ……あふっ……」
 おじょうさま。貴女がライさんのことを想いになっているのと同じように、わたくしはおじょうさまのことを想っているのですよ。
 ちょっぴり切ないです。大好きな貴女の幸せな姿を見るのが好き。けれど貴女がわたくしだけのものでないのはやっぱりヤキモチです。
「あっ!……っは……ひあっ!!あっ……おじょうさまぁぁ!!」
 こうして、わたくし今日もいっちゃいました。おじょうさまのことを存分にオカズにしながら。許してくださいましね。おじょうさま。
 もう、このところ自分ではどうしようもなくて。
「なにやってんのよ……あんたは……」
 そうですね。なにをやっているのでしょうか。わたくしは。ごめんなさいね。おじょうさま。わたくし自身にもお答えすることは…・・・
「……って、おじょうさま!!いったいいつからここにっ!」
 はいお約束です。ひたすら休憩室で自慰にいそしんでいたわたくしの目の前にリシェルおじょうさま、ご本人のお姿がそこにあったのでした。


次回に続く

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