シンゲン×フェア



満天の星空の下、一軒の宿屋の扉に鍵がかけられる。
ここは忘れじの面影亭。『ミュランスの星』に認められた当初に比べ、最近は客足も少しは落ち着いてきた。
…ちなみに宿泊客は、悲しいかな以前と変わらない。
それでも目の回るような忙しさだったのだが、ここで店主は急遽休みを取る事になった。
三日間の休暇である。

「三日ですか…。御主人は、ひと月くらい休んでもバチは当たらないと思うんですがねぇ」
シンゲンは、後片付けが終わった静かな店内に緑茶をすする音を響かせる。
「ひと月も休むなんて何していいか分かんないよ。三日でも少し困ってるのに…」
フェアはシンゲンの向かいに座り、乳白色のティーカップを両手に包んで苦笑した。
フェアは店を休む事に抵抗があるようだが、端から見るに彼女の働き過ぎは明らかだった。
宿のオーナーもそう感じたらしい。強制的に三日間の休暇を与えられたのが、数日前のこと。
しかし明日から休みだというのに忙しさも手伝って、フェアには珍しく、まだ休暇の予定を決められずにいた。
「休めって言われても、何もしないで一日中家に居るのは、かえって疲れちゃう気がするんだよね…」
フェアは小さく息を吐き、少し温くなった緑茶に口をつける。
「休暇なのに体を休ませなくてどうするんです御主人。ご自愛下さいな。どうしても何かしたいと言うのなら、この宿で朝から晩まで二人で愛をむさぼ…ぐあっ!」
クリティカル。これで何度目だろうか。フェアの拳がシンゲンの肩に見舞われた。
フェアと気持ちを確かめ合ってからというもの、シンゲンは今まで以上に押しが強くなった。
未だこの手の話題に耐性がないフェアは、正直困っている。
しかしそんなフェアにはお構いなく、シンゲンは二杯目をカップに注ぐ。
「まぁ冗談はさておき、では御主人。明日二人で買い物に行きません?『でーと』ってやつですよ。で・え・と」
「でっ…でででデートぉ!?」
緑茶を飲み込む寸前だったフェアは、思わずむせてしまった。
「今、町の方じゃ期間限定で青空市をやってましてね。シルターン自治区からの商人も出店してるんです」
召喚獣と言えども、自治区の住人なら市に出る許可も下りるらしい。通常の場所代に、ある程度の金銭を上乗せする…という条件つきではあるが。
シンゲンは湯気の立ち上るカップをフェアの目の前に持ち上げた。

「今は『てぃーかっぷ』で飲んでますが、本来緑茶は湯呑みで飲むものでござんしょ?白米・味噌汁と一緒に、湯呑みで緑茶なんて最高だと思うんですが、いかがです?」
目を輝かせるシンゲンに、フェアも身を乗り出す。
「なるほど…。お茶碗はあるけど、湯呑みまで手が回らなかったのよね。…確かにいいかも。お客さんも喜んでくれそうだし、今なら食器揃える余裕もあるし!」
――という訳で休暇初日は、シンゲン的には『でーと』、フェア的には『買い付け』に行く事が決定した。
今更だが、二人きりで出掛けるのは初めてである。

暖かな陽射し、雲一つない空。絶好の買い物日和の中、威勢の良い声が飛び交う。
町の広場の両脇には白い布が敷かれ、その上に食べ物、衣類、玩具に骨董品…様々な商品が並べられていた。布の上が商人達の店なのだ。
通路には人が、布の上には売り物が、それぞれ色とりどりに溢れかえり、賑わいをみせる。
そんな広場に、市の様子を遠巻きから眺める少女と侍がいた。
「…うちの店もすごいと思ったけど、段違いね…」
口をぽかんと開けるフェア。対照的にシンゲンは、年甲斐もなく浮かれていた。
「ささっ!御主人、お手をどうぞ」
シンゲンは笑顔でフェアに手を差し出すが、フェアは誘いに乗らない。
照れるなんて何を今更、と思いながらも、痛い思いはしたくないので敢えて言わず、シンゲンは代わりの言葉を口にした。
「この賑わいじゃ、はぐれちゃいますって。…御主人、人混みを歩くのに慣れてないでしょう?」
それを言われると何も返せなくなってしまう。フェアは嫌な予感をさせながらも、仕方なくシンゲンの手を取った。
「いや〜。御主人の手は柔らかくて気持ち良いですなぁ」
予 感 的 中 。
フェアの手が触れるや否や、シンゲンはその細い手を自分の頬に擦り寄せて、ひたすらさすった。
さすが『好きなように生きて、好きなように死ぬ』を人生の目標に掲げる男。このサムライに武士道はない。
「ひ、人が見てるとこでやめてよ!それにわたしの手、料理やらトレーニングやらでガサガサだしっ!」
フェアは真っ赤になって手を離そうとするが、シンゲンの手はがっちりくっついて振りほどけない。
「人目がないなら良いんですか?いやはや御主人も結構大胆に…ごほぁっ!」
フェアは繋がれた手にありったけの力を込めて握った。骨の軋む音がしたが、それでもシンゲンは手を離さなかった。
「お気になさらずとも、御主人の手は充分柔らかくてお綺麗ですよ?ほら、ごつい自分の手と比べたら一目瞭然」
シンゲンはそう言って唇をフェアの耳に近付ける。先ほどのダメージはまったく感じさせない動きである。
「…とても可愛らしい手ですよ、フェア」
低い声でそう囁くと、フェアの顔が一瞬で赤く染まった。
「…っ…シンゲンってずるい!」
フェアは耳を押さえて睨むが、それすらシンゲンには喜びの材料でしかなかった。
シンゲンはただ笑って、ゆっくり歩きだす。フェアは口を尖らせた。
(結局、わたしの方が主導権握られてる気がする…)
不満ながらも、手を引かれるままシンゲンについていくフェア。
フェアを引っ張るシンゲンの手はフェアの一回り以上大きく、刀のせいか三味線のせいか、タコだらけで固かった。
シンゲンは笑っているが、きっとこの手はたくさんの苦労を乗り越えて来たのだろう、とフェアは思う。
更に注意してシンゲンを見れば、出来るだけ人が少ない場所を選び、フェアの歩幅に合わせて歩いてくれていた。
(わたしにさりげなく合わせてくれてるあたりは、やっぱりシンゲンて大人だ…)
少し悔しいが、子供っぽかった自分を反省して息を一つ吐くと、フェアはシンゲンの手を今度は優しく握り返した。
一方。シンゲンは、にやける顔を抑えるのに必死だった。
召喚されてからというもの、自分も含め人間の汚い部分を見続けてきたシンゲンにとって、フェアの純粋さは安らぎである。
良くも悪くも真っ直ぐなフェアの行動は、信じられるし興味深い。
いつも飄飄としているので周りにはちゃんと伝わっていないかも知れないが、シンゲンは本気でこの少女を大切に思っていた。
手から伝わるフェアの温もりからお互いの想いが通じ合っているのを実感し、シンゲンは幸せを噛み締める。
フェア達は賑やかな店に挟まれた通路をゆっくり歩く。
シンゲンの着物姿が目立つのか、二人はよく自治区の商人に声をかけられた。
安く珍しい食材に目を輝かせ、商人と楽しげに会話したり値切ったりと忙しい二人。
目的の湯呑みも無事手に入れ、気付けば二人の両手は戦利品で埋まっていた。
日も傾き、帰宅した二人は簡単な夕食を済ませた後、早速湯呑みで緑茶を味わう。
「湯呑みで飲むと気分違うね〜!楽しかったぁ!今日はありがとうシンゲン」
「いえいえ、こちらこそ。…そうそう、御主人に渡したい物が」
そう言ってシンゲンは懐から一つの包みを取り出した。
「御主人に似合いそうだなと思いまして、さっき買ったんです。まったく御主人てば、食材に夢中で全然『でーと』らしくなくて…。まぁそこが御主人の素敵なところなんですけど…」
シンゲンは、ぶつくさ言いながら袋の中身を見せる。シンゲンの手の上で転がるそれは、玉虫色の金属で出来た、かんざしだった。
長さはフェアの人差し指二本分。全体に細かく模様が彫られ、頂上に付いた翡翠色の玉が鈍く光を反射している。
「…きれい」と漏らすフェア。シンゲンは満足そうに微笑む。
「どれ、つけた姿を見せて下さいな」
シンゲンはフェアの後ろに回り、手際よく銀髪を結った。
「やっぱり!とてもお似合いです!…そしてこれを羽織れば…」
シンゲンは更に大きめな包みから艶やかな布を取りだして、フェアの肩に掛ける。それは、白い大輪の花咲く、紅色の着物だった。
「どこに出しても恥ずかしくない幼妻の出来上がりですな」
うっとりとフェアを眺めるシンゲン。一方、フェアは目を白黒させながらシンゲンに尋ねる。
「シ…シンゲン?どうしたの、これ…言いにくいんだけど、その…高かったんじゃ…」
「本当は白無垢…結婚衣装でも用意出来れば良かったんですけどね。甲斐性なしで申し訳ない。単に自分が御主人の艶姿を見たかっただですよ。お気になさいますな」
値段の話には答えず、穏やかな口調でシンゲンはそう言った。
シンゲンは僅かな稼ぎの殆んどをフェアに渡し、残りをこの為に貯めていた。
体裁や見栄を気にしないシンゲンだが、求婚しておきながらフェアに良い思いをさせていない事は気掛かりだったのだ。
シンゲンはフェアの額に自分の額を当てて、子供をあやすように囁く。
「…こらこら。可愛らしいお顔が台無しですよ、奥さん」
「…だっ…てぇ…っ嬉しくって…。ありがとシンゲン…っく」
フェアの目からは涙がとめどなく流れていた。シンゲンは唇で涙を拭い、フェアの頭を撫でる。
「さぁ涙を拭いて。着物姿、見せて下さいな。そうそう本来女性は着物の時、下着は付けないものでしてね…」
着物のウンチクを語りながら、シンゲンはフェアの洋服に手をかける。
「シンゲン…?わたし服くらい自分で着――」
フェアは言いかけて気付いた。
着物の着方をフェアは知らなかったのだ。

してやられた。やはりシンゲンは食えない男である。
なんとなく食卓の側で服を脱ぐのが嫌だったフェアは、自分の部屋で着付けをしてもらう事にした。
恥ずかしさで倒れそうになりながら、生まれたままの姿でシンゲンの前に立つフェア。
小ぶりな二つの膨らみと薄い茂みを両手で隠す少女の体は、先ほど買った着物くらい紅かった。
フェアの裸体は何度か見たが、やはりシンゲンは見とれてしまう。
いつもならばここでフェアにかぶりつくシンゲンだったが、ふと思い立ち、本日は趣向を変えてみる事にした。
「御主人、背中曲げないで下さいな」
肌じゅばんを手に、シンゲンはフェアの背筋を指でなぞる。
びくん、とフェアの体がしなった。
シンゲンと体を重ねるようになってから、フェアの体は敏感になっていた。しかしシンゲンは、そ知らぬ顔でフェアを注意する。
「動くと着付け出来ませんよ。ほら、袖に腕を通しますから手を上げて」
シンゲンは後ろからフェアの耳に囁く。相変わらずフェアは耳に弱いらしく、感じているのが揺れる銀髪で分かった。
シンゲンは、胸を隠すフェアの手の隙間に指を、フェアの足の間に自分の太腿を割り込ませた。
「んぁっ」
熱っぽい声をあげ、フェアの両手が宙に浮いた。
シンゲンはすかさずフェアの腕を肌じゅばんに通し、長じゅばん、着物、そして帯を結び、着付けが完了した。
「…へ…?」
てっきりそのまま行為に及ぶのかと思っていたフェアは、拍子抜けしてしまった。
「どうかされましたか御主人?」
シンゲンは何事もなかったかのようにフェアに言い放つ。どう見ても分かっててやっている。
「や…着付けありがとシンゲン。…えっと…」
フェアの火照りは治まっていない。フェアは、うずく秘所をどうにか鎮めようと太腿を擦り合わせる。
「…その…」
本当に言いたい事は言えぬまま、フェアの火照りは治まるどころか加速する。
フェアの体は、もうシンゲン無しではどうにもならない体にされてしまったのだ。
シンゲンはフェアを見つめる。フェアの一言を待っているのだろう。
フェアは観念して、シンゲンの手を引っ張った。
そのまま自分と紅い着物の隙間にシンゲンの手を滑りこませるフェア。シンゲンの少し冷たい手が、フェアの熱い乳房に触れる。
「……もっと、触って…?」
切なそうにシンゲンを見つめるフェア。シンゲンは満足そうに微笑むと、フェアを引き寄せて深く口付けた。
「んぅ、シン…ゲン…っ」
二つの舌が絡み合う。フェアの小さな唇からは飲み込み損ねた唾液が溢れた。
じらされたせいか、フェアは口付けだけで全身の力が抜けてしまいそうになる。
せっかく結った髪も着付けた着物も、シンゲンの手によって乱されてしまった。
はだけた着物の隙間から現れるフェアの太腿と胸元。
うっすら汗をかいてシンゲンを見上げるフェアは、少女とは言えないほど悩ましい。
シンゲンは息を飲んで、フェアをベッドに組み敷く。
「なんか、せっかく…っ…綺麗に着付けてくれたのに…っぁ…ごめんね…」
首筋にいくつも唇を落とされながら、フェアは荒い息でシンゲンを見上げた。
シンゲンは口を綻ばせながらフェアの着物を剥いでいく。
「謝る必要なんてございません。…自分は着付けるより脱がす方が好きですから」
シンゲンは、わざと水音を立てて耳を吸った。その後シンゲンの舌は耳から首筋…と、どんどん下降する。
「はぁっ…シンゲン…あぅっ!」
桜色をした乳輪の形に沿って舌を這わす。乳首を一度強く吸った後に甘噛みすると、フェアは声を上げて体をねじった。
シンゲンは唇で乳房を責めつつ、既に蜜が溢れている割れ目の奥に指を潜りこませる。
気まぐれに、少しいつもと違う場所をくすぐると、フェアの声が高く上がる。
「ひゃうっ!…何か今日は…激しっ…」
僅かな動きの違いにも反応してくるフェア。少女を自分の色に染めて女にした達成感に、シンゲンは震えた。
シンゲンの舌は胸から下り、腹を通って下腹部まで辿り着いた。
欲望に突き動かされるまま、シンゲンはフェアの汗ばんだ太腿を開かせて間に顔を埋める。
「え…?そんな…とこ…舐める、なんてっ」
フェアは必死に足を閉じようとするが、シンゲンの舌が侵入してきた瞬間、動きを止めた。
「あぁああっ!んぅ!っふぁ、あぅぅっ!」
指とも肉棒とも違うものがフェアの中を這いずりまわる。弾力があり、ねっとり動くシンゲンの舌はフェアに新しい快感を覚え込ませる。
「あ…ああっ!…シンゲン…っ」
ぴちゃり、と音を立てて舌を引き抜く。桜色の秘所とシンゲンの唇は細い糸で繋がれたままだった。
フェアのそこは様々な体液で犯されており、ひくつきながらシンゲンを求めていた。
「シン…ゲン…」
フェアは、よろよろと起き上がると膝で立っていたシンゲンに抱きついて口付けた。
柔らかい胸がシンゲンの胸板に押し当てられる。
フェアはシンゲンの膝にまたがって腰をゆっくり動かし、シンゲンの耳に熱い吐息を吹きかけながら囁いた。
「…はやく…およめさんの、証…ちょうだい…?」
その言葉と仕草にシンゲンの体はドクンと反応する。
たった一言で自分をここまで昂らせる事を、この少女は分かっているのだろうか。
まだ幼さが残る蕾の状態でこれなのだ。数年後、フェアが花開く時の事を思うとシンゲンは眩暈を覚えた。
シンゲンは再びフェアを押し倒すと、フェアの足の間に体を割り入れて赤くぬめる欲望をフェアに押し込んだ。
もう最初の時のような、苦痛に顔を歪ませる様子はフェアには無い。しかしシンゲンを締め付ける強さは変わらないままだった。
「はぁ…んぅっ…ああぁっ!んんっ!シン、ゲン…っ」
体を震わせるフェアの声には、確かに悦びが感じとれた。
シンゲンは、淫らな水音をさせて肉棒を引き抜いては押し込む。シンゲンの腰の動きに合わせ、フェアも腰を上下させた。
シンゲンはフェアの足を持ち上げて更に奥を突く。
腰を動かす速度を時には緩やかに、時には激しくしてフェアを翻弄した。何度もそうする間にシンゲンは限界が近い事を悟る。
「シン、ゲンっ…」
「…フェア…っ」
お互いに名前を呼び合い、口付けを交わす。
真っ白な光の中、シンゲンはフェアの中で全てを吐き出した。

行為を終えて抱き合った後、二人は体を離して横並びになった。
しかしそれが寂しいのか、フェアはシンゲンの肩へ頭を擦り寄せてくる。
「…あのねシンゲン、さっきの着物の事なんだけどさ…その…」
仔猫のようなフェアの仕草に、シンゲンの口元は思わず緩んでしまう。
今ならどんな我儘も聞いてしまいそうだ。
「どうしました?言ってごらんなさい」
フェアは色々考えた後、大きく息を吸って先ほどの続きを口にした。
「着付けとか髪を結ったりとか手際良かったけど…女の人にそういう事するの慣れてるの?」
ぴしゃーん。
今までで一番のクリティカルダメージがシンゲンを襲った。
「……い…きなり何言うんですか御主人…?」
淫行変態侍は引きつった笑顔を見せた後、フェアに背を向ける。
ここは笑って「こりゃ手厳しい!でも今は貴方だけですよ?安心して下さいな」と開き直るべきなのか。
それとも「まさかまさか。前に話した姉に着付けを教えてもらって…」と嘘で安心させるべきなのか。
シンゲンは、もっと無器用に着付けるべきだったと激しく後悔した。
「…まぁ、シンゲンは大人だし色んな経験もしただろうから、しょうがないんだけどさ…」
フェアの声は暗い。こんなところで幸せが終わってしまうのだろうか。
…というか今そんな事言わなくても!でも好きだ畜生!と混乱気味なシンゲンの首筋に、妙な感覚が走る。
「へ…!?御主人!?」
妙な感覚の正体はフェアの唇だった。シンゲンの首筋にフェアが吸い付いているのだ。
フェアは唇を首筋から離すと正座をして、強い力でシンゲンの頭を自分の膝に乗せた。
いわゆる膝枕状態でシンゲンを見下ろすフェア。
本来なら幸せな場面の筈なのに、シンゲンは下から微乳を眺められた喜び半分、これから何をされるのかという恐怖半分で動けない。
「今、シンゲンはわたしのものだって印つけたからね!…だからこれからは…着付けも髪結うのも、何でも全部…わたしだけにしてよ…?」
フェアは拗ねたようにそう言って、シンゲンの額に口付ける。
フェアの唇が触れた部分に手を当て、シンゲンは年甲斐もなく顔を朱に染めた。
――多分、自分は一生フェアには敵わない。
フェアへ贈った着物と同じ、紅色の印を首筋に残されたシンゲンは、そう悟った。
最終的には自分が主導権を握っているのだという事を、フェアはまだ知らない。


おわり

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