ハヤト女体化



繁華街の灯りも、わずかばかりが残る真夜中。覗き小屋の中では、壮絶な乱交が行われていた。
「あ…ああ……はふ……ひい……」
二本の陰茎を両手でしごき、すり合わせた亀頭をぺちゃぺちゃ舐めるハヤト。
「もう二本じゃ足りないかな…」
満足そうなキール。
すぐ下ではモナティが秘貝に吸い付いて愛撫し、バックからガウムバイブを秘口にくわえたアカネに腸内を犯される。
キモチイイ。キモチイイ…モットシテ、モット……
「人間てのは、化けるモンだな」
既にベトベトになったハヤトの髪にまた射精して、呟くローカス。
「………生きていく為には変わらなくてはならない事もありますから…くっ」
続いてハヤトの顔にぶっかけ、擦りつけるキール。
ドロドロになった愛くるしい童顔を、何度も何度も、ゆっくりとなぜる。
「……おまえ………いや、なんでもねえ。そろそろお開きにするか。大枚はたいた野郎共に、最後のサービスだ」
ハヤトを後ろから抱きかかえ、力の入らない体を無理矢理ベッドに立たせるローカス。
「あ……ふぁ……うう……」
悦楽の涙を流し、とどまる事を知らない性欲に翻弄されるハヤト。
「はやく……ひて……もっと……はや……くぅ……」
突然の静寂に堪えきれず、陵辱を懇願する。
「ハヤト。人に物を頼む時は、どうするんだい?」
キールは低く囁く。
いきなりそんな事を言われても、今のハヤトに思考能力は殆どない。
「………」
答えられず、自分で秘部をいじって慰めるハヤト。
「お願いします、でしょぉ?」
「お願い、します……」
俯いたまま真っ赤な顔で呟くハヤト。
「何をお願いするんだ?」
「………」
「外の人達にも聞こえる様に大きな声で、ね……」

「……お……れ…あううっ!!!」
いきなり乳房に爪を立てられる。
痕から、じわりと血がにじみ出した。
「おとこのこが、どこにいるの〜?」
「う‥うぁ‥」
「『私』でしょ?」
「う……わ、わたひぃ……」
「私がどうしたんだ?」
「わたひ……もう…がまん…できな…」
「何を?」
「こ…ここが…もう……ッ」
「どうして欲しいんだい?」
「い……れ……て……」
続きを促す声が途絶える。
こらえきれず、体を大きく仰け反らせ自ら秘部を広げ周囲に晒す。
冷たい瞳で見守る3人。
「ここに…ッ!わたしのオマ〇コにッ…!!チムポを入れてくださいいいいい!!!!」
振り絞られた声を合図に、再び宴が始まる。
「あああああああ!!!」
いきなり熱を持った真鍮の様なローカスが腸壁を焼く。
前に倒れる肢体をアカネが受け止めて、ガウムをくわえた下口でハヤトの秘貝を割って肉壺へはめ込む。
モナティは自分を慰めながら血と汗と男のミルクで汚れた乳房を舐めてきれいにする。
「ん……もご……」
首をぐりっと捻られ、キールのペニスが口内に押し込まれる。
「……楽しい商売だな。ちょっとクセになりそうだ」
「次は……アンタたちが女に……なれ、ばぁ?んんぅ…」
「ごめんこうむるぜ。客が来やしねえ」
「………全くだ」
「もなひぃはますたーがいちばんかわいいとおもいまふのぉ〜」
「きゅっ、きゅ――!!」
肉と肉が激しい音をたてて絡み合い、宵闇に妖しく蠢く。
むせかえる汗と精液の匂いの中で、
ハヤトはこの世で最高の悦楽に酔いしれる。
(あ…あひぃ……いい……いいよ…ずっと……このまま……)
淫魔の光を宿した瞳が悦びを映す。
「あっ!あっ!ああああ〜!!!」
「んむ……むひゅ……ふにゃあああああ!!!」
「イクぞ……ッ!おおおおお!!」
「ハヤト……ッ」
「ん!んう!ふあああああああ〜〜〜ッ!!!!!」
一斉に痙攣し絶頂を迎える5人。
女優・ハヤトの初舞台はついにフィナーレを迎える。

その時。小屋全体がミシ、という音を立てた。
「!?」ハッとするキールとローカス。
ミシ、ミシミシミシ………
「お、おい!?」

バキッ、バキバキバキズダァァァァァァン!!!!

1ミリでも近くで見たい、と殺到した観客の重みで、ボロ小屋は大音響と共に盛大にブッつぶれた。
ホコリと砂煙が激しく舞う。
「う……ケホッ、ケホッ……な、なんなのよう!……はッ!!」
事態を察知したアカネが、前の見えないガウムをくわえたままサルトビの術で脱出する。
こんな時でも逃げ足の速さは天下一だ。
「お、おい大丈夫か………、!!!」
目の前の光景に青ざめたローカスが咄嗟にモナティを抱き込む。
「う、ううん……。!!!」
顔をあげたハヤトの目に映るのは――
チ〇ポを放り出したまま口を開けて固まっている観客、ざっと五十名。
明らかに最初より増えている。
そして、次第にそのケダモノの様な目が爛々と輝き始め、一頭の獲物を捕らえる。
「あ……ああ……。!」
精液でドロドロになった汚い手が一斉にハヤトめがけて殺到する。
「うわああああああああ!!!!!!」
まるで「ご神体」に触るように、ハヤトの四肢をなで回す手、手、手。
「や、やわらけえ〜〜!!!」
「俺にも揉ませろ!!」
「うひょひょ〜〜!!!」
ハヤトの体は完全に男達の手で覆い尽くされてしまった。
「あっ、あっ、いやああああ!!」
無理矢理手にペニスを握らせ、シゴかせて発射する者。
足のうらに擦りつけてイク者。ネバった白濁が指の間に染みこんで、ぬかるみをふんだ様な気持ち悪さに襲われる。
近づけず、遠くから賽銭を投げる様に分身を飛ばす者。
「あああああああああ!!!!」
キールが召喚術で男達を眠らせるまで、ハヤトはその餌食になった。

深夜のフラットにて。
ローカスは子供部屋で5人の帰りを待っていたリプレに、黙って売り上げ金を差し出した。大金に驚きたじろぐリプレに、何も聞かずにとっとけ、とだけ言って自室に戻った。
同じ頃、風呂場。
「いやいや、これぞ裸のつき合いだな、わはははは」
「デケェ声だすんじゃねーよ。チビ共はとっくに寝てるんだぞ」
「む……ふご……んん…あふ……」
エドスとガゼルの肉棒を交互にしゃぶるハヤト。
彼に取り憑いた淫魔は、未だ満足していないのだ。
「……別に君たちにまわすつもりじゃないんだ……」
体に湯を浴びせながら、憮然とした表情で呟くキール。
「ケチケチすんなよ。どうせもう元に戻すんだろ?みんなには黙っといてやるからよ…」
「そうそう。うまい物はみんなで分けた方がよりうまいんだぞ。わはははは!」
熊の様な手でハヤトの頭を撫でるエドス。
その巨根をくわえきれず、亀頭だけでも、と必死にほおばるハヤト。
「………ハヤト、こっちへおいで」
キールの声でピタリと動きを止め、名残惜しそうに二本の陰茎を手離す。
誓約によって呼び出された召喚獣は、主には絶対服従する。
ハヤトに巣くう淫魔も例外ではなかった。
「チエッ!ケチんぼめ」
子供じみた捨てゼリフを残し、ガゼルはエドスと共に風呂場を後にする。

「きれいにしてくれるかい?」
ボンヤリとキールを見つめるハヤトに奉仕を促す。
「……ふぁい……」
気のぬけた返事をして、石けんを体に塗り始めるハヤト。
腰掛けに座るキールの股に顔を埋め、乳房でペニスを挟んでしごきだす。
「あ……あは……ふふ……」
キールのモノをくるむにはまだ少し足りない胸で、懸命に奉仕するハヤト。
乳首を寄せあげた胸の間から顔を出す亀頭を、たっぷりと唾液をのせた舌で舐めてきれいにする。
ときおり悪戯っぽい笑みでキールを見上げ、楽しそうにレロレロと舐め回す。
「……ハヤト……」
おもむろにペニスを離し、キールの太股にまたがる。
首の後ろに両手をまわし、体を押しつけて上下に大きくスライドし始める。
「あああ……くぅん……はぁぁ……」
胸と陰部から突き出した赤い突起を擦りつけ、主の体を洗っていく。
首筋に舌を這わせ、両手で尻を撫でるキール。
(……すまないハヤト………でも、僕は……)

「好きだねぇ〜!いつまでヤッてんだか」
その様子を、窓から覗いてあきれるアカネ。
この後、勝手に薬を持ち出した罪で師匠からお仕置きフルコースを喰らう事になる。
こうして、悲劇の一日が終わった。


翌朝。
フラットの食卓に一人また一人と眠い目をこすりながら集まってきた。
勿論、ローカスやモナティの姿も見える。
「モナティ、きのうはとってもふしぎなユメをみました。ますたーがおんなのこになるんですの〜」
それはユメじゃない、と心中でつっこむガゼル。
(あいつら、………………)
固い表情のローカスの後ろから、スットンキョウな声がした。
「ア、アニキっ、寝ぼけてんのか?!ズボン、履き忘れてるぜ?」
皆が驚くジンガの後方を見る。
そこに立つのは、いつもの格好でズボンだけ履いていないハヤト。
「やだハヤトにいちゃん、カッコ悪い――!!」
指さしてゲラゲラ笑うフィズ。だが……
「これで、いいんだ。お……私、今日から……女の子、だから……。ズボンは、はかないの…」
「はあ!??」
固まる一同。
「ほら……」
両手でコートの裾をまくる。パンツを、はいてない。しかも――

つ る つ る。

見事に陰毛をそり落とされた恥丘から、ピョコンと肉芽が飛び出している。
「☆◆?!↓◎〒♀⇔♂□※Ω???ァ――――???」

「ゆうべ、おふろできれいにしてもらったの……」
少し恥ずかしそうに笑いながら言うハヤト。
みんなに見られている。その視線を感じて、内股につぅっと愛液が流れる。
「は、は、はぁ……」
呆然とする一同の前に、キールが現れた。
「そういう事だから、あらためて宜しく……」
ハヤトの代わりに挨拶する。
「…………………」
しばらくしても言葉の出ない一同。
その沈黙を、リプレが破る。
「……どういう事なの……二人とも、こっちへ来て……」

パァン!庭の片隅で乾いた音が響いた。
叩かれた頬を押さえもせず、堅く目を瞑るキール。
振り上げた手を握りしめ、震える体を堪えながらリプレは口火を切る。
「どうして!どうして!!どうしてなの!?どうして私の代わりをハヤトがしなくちゃいけないの?誰もそんな事頼んでないじゃない!なんでハヤトだけこんな目にあわせるの??ひどい!ひどいよ!!貴方なんてもう、仲間じゃない!!!」
めいっぱいの力でボコボコとキールを殴るリプレ。既に涙で前が見えていない。
ゆうべ渡された、謎の大金。その答えが、こんな痛ましいものだったとは。
「ひどいよ……ひどい……。……出ていって。貴方なんてもう見たくもない。出ていってよぉ!!!」
最後におもいきり力をこめて殴ろうとした手を、ハヤトが止める。
「いいんだ……リプレ……いいんだ。だから、怒らないで……」
柔らかく微笑むハヤト。
「ハヤト…目を覚まして!貴方は操られてるだけなんだよ!!今の貴方が本当の貴方なわけないじゃない!!」
「ううん……私、いま幸せだから……。元に戻れなくても、いいの……。私が働けば、みんなたくさんご飯が食べれる。それに、今の体、ダイスキだし……。キールのこと、おこらないで……」
「うそ……うそだよ。ねえ!早く元に戻して!!戻してよ!!」
尚も叫び続けるリプレ。
「すまない。それはできない」
冷たく言い放つキール。
「!?」
「……だけど、僕達はもうここに居てはならないようだ。出ていくよ。今まで本当に世話になった。…ありがとう」
ハヤトの手を引いて立ち去ろうとするキール。
「待って!ハヤトを連れて行く事ないでしょ!?貴方だけ出ていけばいいじゃない!」
追いすがるリプレ。
「……ううん、私はキールと一緒に行く。どこまでも一緒なの……。お金、また持ってくるね……」
呆然と立ちすくむリプレをおいて、二人はフラットを出ていった。
「あいつ……どうする気なんだ……」
ひとりで罪をかぶって。
ローカスは静まりかえった居間から、その姿を見ていた。

その後、サイジェントの各地にハヤトは現れた。
ある時は裸にコート一枚で羞恥に耐えながら町中を歩き、男達の卑猥な視線に耐えきれず市民広場で自慰ショーを披露した。
またある時は剣も持たずに荒野へ出て、砂糖に群がる蟻の様に現れた野党たちに輪姦された。
しかし、噂を聞いた騎士団が駆けつけた頃にはハヤトの姿はそこになく、陰茎を放り出したまま白目をむいて男達は息絶えていた。皆一様にどこか幸せそうな笑みを浮かべ、その男根には一滴の精も残っていなかった。
しばらくして、ハヤトは客商売を始めた。すごい女がいる、という噂が地下で広まり、貴族や富豪からもお呼びがかかるようになった。手コキ一回、二万バーム。それでも客は絶えず、いつしか「サイジェント一高い女」と呼ばれる様になった。
ある時、ハヤトは数え切れない程の大金を持って、フラリとリプレの前に現れた。
茶色の細い髪は肩まで伸び、毛先をすいてふわりとカールしていた。
大きな瞳の愛くるしい顔は少し眉が細くなってる以外はそのままだったが、童顔に不釣り合いなバスト(ミモザ位はあるだろうか、)が大きく胸元のあいたスリップドレスから覗いていた。今にも先端がこぼれそうな程だった。
襟元と裾にファーのついた足首までのロングコートに厚底のロングブーツを履いて、首には黒曜石がちりばめられた美しいネックレスをしていた。
誰なのか分からないくらい、ハヤトは女性として綺麗になっていた。
妖艶な微笑みを浮かべ、リプレにお金を渡すハヤト。
だが、リプレは受け取れなかった。第二の人生に成功したかの様な明るいハヤトを見て、その心中は複雑だった。大金を地べたに置いて、ハヤトは立ち去った。

高級住宅街の片隅にある、キールとハヤトの新居。
大理石の床に豪華な彫刻の並ぶ部屋。
しかし、その家の主であるキールにとっては、どんな贅沢品も意味を持たなかった。
温かなあのぬくもりのある場所を思い出し、ため息をつく。
ベッドに横たわると、猫の様にハヤトがすり寄ってきた。一糸まとわぬ姿で、勝手にキールのズボンから肉棒をとり出し、しばらく口で味わった後、上にまたがって下の口で吸い始める。
「あ……ふう……んひぃ……キモチ……いいぃ……」
両手で乳首を刺激しながら腰を上下させる。半目でキールを見下ろすと、自分も体を横たえてしがみつく。
「……キモチ……いいな……毎日……毎日……ホント、幸せ……アナタには……感謝、しきれないくらい……ふふふ……これだけいっぱいしてたら、コドモ、できるかな……コドモ、ほしいな……世界ではじめて、コドモを産んだオトコになるの……今はオンナだけど……ふふ」
「コドモ、できたら、寂しくないよね……。私が、仕事に行ってるあいだ、寂しいでしょ? だから……いっぱい、欲しいな……たくさん、コドモ、はべらかして……うふふ……みんなで、ずっと、一緒にいるの……」
「はや……と……」
キールの目から、一筋の涙が流れる。
「僕は…」
ハヤトを抱きしめたまま、天井を見つめるキール。
「……すまない。もうおわりにしよう……」
キールの右手が空を切って、ハヤトの中の淫魔を送喚する。
小さな躯から抜け出た淫魔は、ニヤリと意味ありげな瞳でキールを一瞥して、元の世界へ帰って行った。
ぱたりと倒れるハヤト。

(…………………おれ…………………)
(…………おれは、どうしたんだ…………)
(なんか、ゆめ、みてたのかな………)
そして、少年は目を醒ます。
「………ッ……う、うう、腰が……体が痛い………あ……ぐ……」
「済まなかった、ハヤト。本当に、済まなかった……」
静かに語りかけるキール。
「キー…ル?そうだ、俺……ッ!!!」
ハヤトの顔がみるみるうちにこわばり、目の前のキールを睨み付ける。
「どういうことなんだよッッッ!!!!!」響く怒声。
「ローカスさんが冗談半分で言ったんだ……『覗き小屋なら、てっとり早く儲かるぜ』って……」
「だけど、『女がいないんじゃ仕方ないな』って言われて、ひらめいたんだ……」
「ハヤトなら周りを暗くして上だけ服を着せておけば女に見えますよ、って僕は提案した……」
「『でも、せめて胸がないとツライな』と言われて魔がさしたんだ……」
「それがなんでこうなるんだよ?!!」
「リプレが売春しなくてはいけない位お金が無い、と聞いて僕は酷く動揺した…。僕の存在が彼等の幸せを脅かしているのだと思うといてもたっても居られなかった。何の役にも立たない、僕が‥。いつか、あの場所を出て行かなくては、と思った!だけど……」
「僕には本当に、何も無いんだ!!」
「何だよ?!意味が分からないよ!!ちゃんと説明しろよ!!」
「君を失ったら、僕には何も残らない!!生きる意味を失うんだ!!」
「!……え……?」
「君にしがみついている事でしか、僕はあの場所にいられない!だけど君は、いつか必ず自分の世界に帰るだろう!!」
「!!……それは……でも、それまでにはきっと、お前だって自分の道を見つけられるハズだろう!?何で今頃からそんな心配……」
「見つからないんだッッッ!!!僕には無理なんだ、僕には……」
「キール……?」
「いくら考えても分からないんだ……自分の価値が!自由なんて、僕にはすぎた物なんだ……」
涙の雫が止めどなく落ちる。
「だから、君を縛ろうと思った。本当に独りに戻る前に……」
「………君を壊してでも………」
崩れ落ちるキール。
「僕は、呪縛から永遠に逃れられないんだ……」
呪縛?それは何を意味するのか。ハヤトには分からなかった。でも……
「キール……もう、いいよ」
「……え…?」
「頼りない相棒を独りにして、帰るワケないだろ?お前が望むなら、ずっとここにいるよ。だからもう、泣くなよ。な?」
「ハヤト……僕を許すのか?」
信じられない、という表情でじっと見つめるキール。
「ああ………」
俯くハヤト。
「……ハヤト…ありがとう……僕が、愚かすぎたんだ……」
手にした召喚石を見る。
「もうこれは封印するよ……」
「……なあ、それ、ちょっと見せてくれないか?綺麗だな……」
アメジスト色に妖しく煌めく、大きなサプレスの召喚石。
この石にどれだけの召喚師が魅せられ、その手に収めたのだろう。
この淫魔は石にまで残り香を漂わせ、人を虜にする。
そして、飽きる事なく精を吸い寄せ魔力を高めていくのだ……。
「…………」
宝玉を右手でかざし、無言で見つめるハヤト。そして。
「………誓約者たるハヤトが汝を望む……」
「!?」
再び硝煙と共に宙に飛来する淫魔。
「……ッあああああ!!!」
そのまま、――キールの中へと、吸い込まれて姿を隠す。
「は……はや……と……ッ」

瞬く間に女の体に変身するキール。
ハヤトの怒りは、まだ消えてはいなかった。
キールは魔法に対してかなりの耐性を誇る為、意識を無くすことはなかった。
「………へえ。キレイじゃないか。もともと細いし、色白だし、背は高いし……モデル系ってトコかな」
「ハヤト……僕は……」
折れそうな華奢な腕で体を支え、起きあがろうとするキール。
「正直、俺より手足の長い女はタイプじゃないんだけど……」
瞬きもせずキールを睨みながら、一歩前に出る。
「………ッ……」
逃げようとするも、激しい威圧で体が動かない。
「勝手は、勝手だからな……」
騙された事は何度もあったが、騙すのはこれが初めて。深い悲しみも、怒りに変わる。
「俺と同じ痛みを受けろよ!!」
のしかかり、乱暴に押さえつけ、濡らしもせずにキールの秘部に甦った自身をブチ込む。
「うああああああああ!!!!」
仰け反って悲鳴をあげるキール。しかし……
「……?!」
自分の時にはあった、処女膜をうち破る感覚が無い。
何の引っかかりもなく、キールはハヤトを最奥まで受け入れたのである。
「…………おい………」
動揺するハヤト。
「どういうことだよ!??」
痛みを堪え、歯を食いしばるキールに問いつめる。
「…………この、淫魔は……」
はあはあと息をきらしながら声を振り絞る。
「父上が……僕の母上に降ろして、僕を産ませた後……」
額から大粒の汗が流れる。
「…………………………僕に、使われたんだ…………」
またひとつ、涙の粒がこぼれる。
「なッ………なんだって!?!!」
「僕の母上は……僕が魔王召喚の器に選ばれた後………」
「僕を逃がそうとして、父上に斬り殺された………僕の、目の前でね………」
「…………!!!」

「要らなくなった者は、殺される………。必要とされた者は、絶対に逆らう意志を持たない完全な道具にされる………。それが、あの派閥の掟なんだ」
「その為に、この魔法はずっと大事にされてきたんだ……父上の手でね」
「そ……そんな…ッ。それじゃ………」
「父上が必要としたのは、この体だけだ…。人間らしいプライドなんて邪魔なだけ…。人形に、夢も誇りもいらない……」
うっすらと笑みを浮かべ、続ける。
「男でも…ましてや女である必要も、ない………。ただの肉の塊であれば、それで………。だから」
「この魔法の力で、僕のすべてを引き裂いた。物心ついた時から、僕は……キールという肉人形だった………」
大きなハヤトの瞳から、ボタボタと大粒の涙が落ちる。それはキールの頬に落ちて、彼の涙とひとつになって、白い肌を流れてゆく。
「毎日奴隷として調教を受けた……。召喚術の勉強をするときだけは、元に戻された。何一つ人としての感情を持たない代わりに、普通の人らしく振る舞う訓練を受けた………」
「人に合わせて笑ったり……たまには冗談をこぼしてみたり……正義感をちらつかせてみたり…」
「き……るッ………」
いつも少しずれた言動をしていたキール。それが彼の個性なのだと、誰もが信じていた。
「だけど……君たちの側にいて、君たちの真似をしているうちに………」
「…………『僕』は死んでいないんだって気がついた………!!!」
けして豊かではない、上を向いた乳房が大きく息をする。

「僕はまだ、生きている………自分の意志で、動く事が出来る………それを君たちが気づかせてくれた…」
「…だけど……どうしても……夢を見つける事だけは、できそうになかった……いくら考えても駄目だった……。 僕はもう、誰かの支えがなくては……指示を与えてくれる人がいなくては、歩く事さえ出来ないんだと悟ったんだ」
「自由を手にしても……僕には使いこなす事が出来ないんだ………」
「う……ううっ……う う う………ひぐっ………」
言葉を口に出来ず、嗚咽を漏らすハヤト。
「そんな僕にあてがう食べ物の為に………リプレが苦しんでいた………」
キールの瞳から、光が消えていく。
「………どうせ、いつか出て行かなくてはいけないのなら……君を失って、また独りになってしまうなら、僕は……君を使って、出来るだけの感謝を形にして彼等に送って……」
「………そして、消えようと思った………」
「………ばか………ばかやろッ………みんなが、お前を追い出すワケないだろぉ!!!」
「………そうだね………彼等は、優しいから……でも、」
僕は、自分を許せないんだ。自分を愛せないんだ………
キールは静かに目を閉じる。
「君を連れてどこかで静かに暮らせるなら、それもいいと思った……でも、やっぱり出来なかったよ………」
僕は、誰よりも、君が大切だから。

「う……う………うッ、」
「うわあああああああああああ!!!!!」
外向きにはねた暗紫色の髪を指で鷲掴みにして、ハヤトは号泣する。
「なんで………ッなんで………ッ!何で言わなかったんだよ………ッ!隠し事はもうナシだって……何でも話すって………俺にだけは話すって…………ッ!」
「………話して何になるんだい…………」
胸元に顔を埋めてむせび泣くハヤトの頭を抱きしめる。
「………優しい君が、また傷つくだけだよ………僕の代わりに……泣くんだよ…………」
自分は、この無口な相棒の何を理解していたというのか。
命だけ救って、分かった気になって、親友気取りでいたのだ。
永遠に消えそうもない、心の傷に気づかずに…………。
悔しさと悲しみと怒りが、ハヤトの全神経をたぎらせる。
「きー……るゥッ………!!!」

泣かないでくれ、ハヤト。だから、話したくなかったんだ。
だけど、君が僕を許してくれると知っていて取り返しのつかない過ちをまた犯したのだから、僕はやっぱり、生きる価値のない、最低の人形なんだよ……………。

そして、ハヤトはフラットに帰ってきた。まっすぐな瞳の、凛々しい顔で。
皆は温かく彼を迎えた。あらためて二人、居候が増えたワケだが、リプレは笑って許してくれた。
「ハヤトが稼いでくれたお金がたくさんあるから、ね」
実際ハヤトが娼婦をして稼いだ金額は、フラット全員がゆうに半年以上は食べていける額だった。
すべての稼ぎから半分を街の資金に寄付してもその位のお金が残った。
ガゼルとエドスは共犯罪として、丸二日の断食に処された。
バツが悪そうに謝るローカスを、ハヤトは責めもせず当分パシリの刑に任命した。

久しぶりに戻った自室で、机に向かってハヤトは物思いに耽っていた。
やっぱ、自分の体がいちばんだな。徐々にたくましさを取り戻しつつある腕を掴んで、ふと笑う。
当分、外にはでれそうもない。人々の記憶からあの女の姿が薄れるまでは。
しかしハヤトのしたことは、意外な経済効果をもたらしていた。
ハヤトと一発でもヤリたいと、男達が寝る間も惜しんで働く様になったお陰で、戦いで傷ついた街の復興が速さを増し、特産品であるキルカの織物の生産率も上がり、サイジェントは他の都市にひけを取らない豊かさを手に入れた、と、「お得意様」の一人だったキムラン・マーンは語った。
それだけ娼婦だったハヤトが人々を惹きつけたということである。
むろん、あの淫魔の力なのだが……。
「俺って、やっぱり素質あったのかな……」
複雑な表情で鏡を見る。
認めたくはないのだが。思い出すと、体が熱くなる。
身も凍るような強姦の恐怖、一身に受けた卑猥な視姦、そして、知ってしまった、禁断の快楽。
体はちがえど、脳は「あの味」を鮮明に記憶している。女にしか分からない悦び。
無理矢理押さえつけられ、激しく男根を突き立てられる事。大きな手で体中をいじり回される事。
気持ち悪い物でしかないはずの他人のペニスを、味覚と嗅覚で味わう事…。
「見られている」という快感。

「マゾ、なのか俺……」
火照る体を持て余し、股間へ手を伸ばす。そこへ。
「ますた――!!おちゃ、おもちしましたですの―――!!」
ノックもせずにモナティが入ってきた。
「!モ、モナティ……サンキュ―……そこに置いといてくれよ」
「分かりましたですの―!!あ、キールさんの分は………」
「………キールはいらないって。……たぶん」
「じゃ、しつれいしますですの――!!」
ぱたん、とドアが閉まったのを確認して、ふう、とため息をついた。
もう一度股ぐらに手を伸ばし、股間に埋まった頭をふさふさと撫でる。
「俺のがあるから、いらないだろ?」
ちゅばちゅばと音をたて、とろんとした瞳でハヤトを味わう―――キール。
裸にマント一枚はおって、やや平らな乳房を露出したまま奉仕を繰り返す。
「シオンさんから買い占めた薬もたんまり残ってるし……」
「ん……んん……はや……と………」
細く掠れた女の声。
十数年かけて鍛えられた手技と舌技はあまりにも巧みで。
「……う……ッ、でる………ッ」
絶頂の瞬間、思い出すのは……訓練と称してひたすらこの男に犯され続けた日々。
この世の物とは思えない淫らな時間。
「あ……ッ」
ハヤトが放った熱い精を、キールは全て飲み干し、尿道口を舐めてきれいにする。
安心しきった様にハヤトの股に顔を預け、愛おしげにそのペニスを愛撫する。
今は彼女、な彼にとっては、この狭い空間こそが世界で最も安らげる場所なのだろう。
「俺が恥掻いた分は、働いてもらうからな………」
また、頭を撫でてやる。
「でも………」
少し頬を紅く染めて。
「…………………………………それが終わったら、交代してやっても、イイ………」
その空間だけに聞こえる様に、小さな、小さな声で囁いた。
「……おれ、ホントいつ帰れるんだろ……」
大きく屈んで、相棒の額にごつん、と額をぶつけた。


おわり

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