奴隷な彼女 お嬢様な彼女



CASE1 深崎君とカシスちゃんの場合

「はくぅ……くぅぅ……くっ…ひ…ぃ……」
 みちみちと軋む音を立てながら縄目は肉に食い込んでいた。
 ギリギリと締め付ける荒縄。敏感な筋目に沿っている。
「はひっ……はひぃ……ひはぁぁ……はひっ!ひぅぅぅ!!」
 その荒縄によって天上から吊るされた身体。ぶらりと垂れ下がるロープは振り子の動きをする。
 吊るされる身肉もつられて揺れる。そのほんの僅かな揺れさえも致命的であった。
 縄は揺れるごとにグリグリと肉に擦れる。その都度、襲う刺激。それだけでも意識が飛ぶ。
「んふぅぅぅ!んぐっ!んぐひぃぃぃ!むひぃぃぃぃぃ!!」
 ブルブルブル 締め付けられるその身を機械の音が更に嬲る。取り付けられたローター。
 異世界式の淫具。ニプルとクリトリスの箇所に貼られたそれは不規則に振動する。
 右に来たかと思えば次も右。今度は下かと思えば左右同時。ランダムに発生する振動。
 敏感な性感帯を強く責めつけられて、ついでに縄も擦れる。ほとんど拷問だった。
 ブーンと鳴り響くモーター音。その音だけでもう身体が反応してしまう。
「あひぃ……ひぃ……ひふ……ふぁ……もう……許ひ……てぇ……」
 あまりの責め苦にカシスは哀願する。目の前の調教者へと。
「おね……がいぃ……トウ……ヤぁ……」
 涙目ですがる。なんともそそる乙女の涙であった。その効果ももちろん抜群。
「ははは。駄目だよ。カシス。勝手に家出したお仕置きはきちんと受けないとね」
「嫌ぁぁぁぁぁあああ!!籐矢の悪魔ぁぁぁあああ!鬼畜外道ぉぉぉおおお!!」
 それは無論、この魔王誓約者の嗜虐心を昂ぶらせるという意味においてである。
「はひぃぃぃぃいい!んぐっ……んぐっ……んぐぅぅぅぅぅううううう!」
 すると、おもむろに一本。籐矢の攻め手は数を増やす。強化ゴム仕様の極太バイブレーター。
 カシスの膣に挿入されたそれは一気に奥まで届く。
「んぐぅ!くひっ!んぐひぃぃ!!やぁぁぁっ!ひあっ!ひきぁぁぁぁああ!!」
 当然、挿入してそれで終わりなどという筈も無い。籐矢は手に持ったそれをぐりぐり動かす。
 カシスの膣奥。その上部の肉を鋭利なゴムでゴリゴリと抉る。
「あぎひっ!はぎひぃぃぃいいい!はぐぅぅぅぅぅうう!!」
 弄られるカシスはひたすら喘ぐ。ギリギリと肌に食い込む縄の感触。乳頭と肉豆を襲う振動。
 胎内を掻きだす硬いゴム棒。それらの責めが相まってより強い刺激がカシスの脳を焼く。
 飛ばされる。朦朧とする意識。その中でゾクゾクと沸き立つ感覚。
(ら……めぇ……あたし……おかしく……なってるぅ……こんなこと……されてるのに……)
 激しく責められることで覚える快感。生まれ持ったマゾヒズムの気質。
 それをカシスは否定できなかった。現に、こうして今。こんな酷い仕打ちを為されているのに。
(もっとして欲しいって思ってるぅぅうう!メチャクチャにされたいって思ってるぅぅぅうう!!)
 芽生えた肉の情念は理性を容易くも裏切ってくれた。欲しい。たまらなく欲しい。
 そんな欲求がカシスの中で膨れ上がっていく頃合で籐矢は囁く。
「さあ、カシス。おねだりをするんだ。いつものようにね」
「……っ!?……ぅ……」
 寝耳に水。囁かれカシスは一瞬、躊躇う。脳裏によぎるいつものトウヤとの性生活。
 一方的に自分が嬲られ役の上下関係。そこから抜け出すために家出をしたというのにあっさり連れ戻されてこのザマではカシスの矜持に関わる。 
(ダメぇぇ!負けちゃダメぇぇ!!誓ったじゃない!もう弄られ役からは卒業するんだって!)
 必死に言い聞かせる。ここで強い心を見せななければ自分はずっと愛奴隷のままだ。
 鬼畜な相方の気まぐれに嬲られ続けて一生、弄ばれ続ける。それだけはご免……だというのに。
(で……でもぉ……欲しい……やっぱトウヤにして欲しいよぉ……うああ!あたしの馬鹿っ!馬鹿っ!!)
 それ以上にカシスの身体も心もトウヤを激しく求めていた。こんな風に一方的に嬲られる。
 そのことを含めてもトウヤが欲しい。トウヤの所有物(モノ)になりたい。奴隷であっても構わない。そんな気持ちが擡げてくる。鬩ぎあう。随分と長く感じる一瞬。その果てに。
「……ひ……ひてぇ……」
 容易くも折れた心は搾り出す。カシスの内からその真なる想いを。
「ひてぇぇ……もっほひてぇぇぇ!もっと犯してぇぇぇ!!お願ぁあぃいい!欲しいのぉぉ!トウヤぁぁ!!」
 恥も外聞もなく、カシスは淫らな雌と化していた。愛するトウヤ。ただ彼のためだけの雌奴隷として。
 喘ぎ狂いながら求めてくるカシス。籐矢はフッと微笑む。満面の笑みでもって愛しき愛畜を迎える。
「今日もいい声だねえ。うんうん。可愛いよ。カシス」
 そう言って籐矢は吊るされたカシスをくるりと回す。反転する向き。愛らしくも引き締まったカシスの美尻が籐矢のほうを向く。すると籐矢は取り出す。精悍なる自身をおもむろに。
「ひあぁっ!……そ…そこは……やっ!ひゃうぅぅ!!」
 ぷすり。籐矢の指先はカシスの菊穴に入る。そしてそのまま直腸をくちゃくちゃと掻き乱す。
 尻穴を嬲られカシスは喘ぐ。その締め付け具合。今日もまずまずだ。にこやかに魔王は微笑む。
「さあ、今日もたっぷり可愛がってあげるよ。カシス」
「ふぁぁぁぁあ……トウヤ……トウヤぁぁ……」
 ずぷり。指を引き抜いてすぐに籐矢は宛がう。見事なまでに活かった剛直を、愛らしく窄まったカシスのアナルに。肛姦。それは魔性の快楽。
「いくよ。カシス」
「んっ!ひっ……んぐひっ!」
 単刀直入。名刀はぐいっと一気に飲み込まれる。刀を納めるカシスの尻鞘。衝撃は一瞬遅れて伝わる。
「あひぃぃぃいい!!いひぃぃぃぃいい!!んひぁぁぁぁあああああ!!!」
 ずぶずぶずぶ。肉ひだを掻き分ける逞しいペニス。内臓を犯されるこの感触。たまらなかった。
 アナルセックス。最早、嫌になるぐらい身体に馴染まされた臓器への蹂躙にカシスは狂い喘ぐ。
 そんなカシスの様子に満悦してか、籐矢も調子よくズンパンズンパンと腰を振るう。
「おやおや。アナルはもう嫌じゃなかったのかな?カシス」
 そして腰を振るいながら意地悪く訊いてくる。悪魔め。尻肉を抉られながらカシスはそう思う。
 やっぱり彼は鬼畜外道だ。それ以外の何者でもない。確かにそうなのだけれども、
「嫌……じゃ……らひ……」
 呂律の回らぬ舌をカシスは動かす。本当の気持ちをトウヤに伝えるために。
「嫌じゃなひ!トウヤにだったら何されたって平気ぃ!トウヤっ!!あたしを一生キミの奴隷にしてぇぇっ!!」
 どれだけ嬲られても、その相手がトウヤであるならカシスは本望だった。
 愛しい。骨の髄まで愛しく想う人。そんなトウヤに愛してもらえるのなら、
「うぁっ……あひぃっ!はふっ……トウヤ……トウヤぁぁ!!」
 形はどうだっていい。ただ感じていたい。愛しい人とともに分かち合う悦びをずっと。
 尻肉を抉るトウヤの肉槍。硬く逞しいそれに突き乱される腸は苦しかった。
 けれどその苦痛さえもが快楽。脳髄までも蕩けてしまいそう。至上の快楽。
 縛られ、嬲られ放題の身体でカシスはそんな境地に達していた。
「ああ、今日も最高だよ。カシス」
 そんなカシスを籐矢はいとしく愛でる。腰を突き動かしながらカシスの小柄の身体を後ろから抱く。
 一方の手で下腹部をさする。もう一方の手はカシスの特徴的なクセ毛を撫ぜる。
 決して離さない。だから今日も彼女の中に刻印を刻む。例え界を隔てたとしても互いが結びつくように。
「くっ……どうやら堪えきれなくなってきみたいだ。そろそろいくよ。カシス」
「うぁあああ!来てぇっ!来て来てぇぇぇええ!!トウヤぁぁぁぁあああ!!」 
 昂ぶりゆく情動。その一つの頂を二人は迎える。深く根元まで突き刺したところで投擲は放たれる。
 熱き情念の具現。解き放たれたそれをカシスの腸内を逆流する。
「うあぁぁぁぁぁあああああ!!熱いぃぃぃいい!熱いの来てるぅぅぅぅ!!トウヤぁぁぁぁああ!!」
 逆流してくるその熱に身を芯まで焼かれながら悶えるカシス。ひたすらによがった。
 ビュクビュクと音を響かせながら続く長めの射精。白濁の浣腸をカシスは施される。
 ギュルギュルとお腹の中が蠢く。得も知れない感覚。射精が終わるころにはカシスは身も心も骨抜きになる。
「んくぅぅ!……あっ……ひっ…はひっ…ひっ…ふぁひ……ふぁ……はひ……トウ…ヤ……」
 ドロリ。肉棒が引き抜かれると尻穴から精液をだらしなく垂れ流すカシス。
 尻穴だけではない。垂れ流す涙と涎でカシスの顔もベトベトに塗れていた。
「おやおや。いけない。可愛い顔が台無しだよ」
 籐矢は手持ちの布でカシスの顔を拭う。キレイに吹き終わると、現れる愛くるしい顔にキスを与える。
「んっ……むっ……」
 激しい性交の後に交わす接吻。それは適度なクールダウン。更なるステップに踏み込むための。
「もうこれは必要ないかな」
 そう言って籐矢はカシスを縄から解き放つ。取り付けた淫具も全て取り外す。
 ここからが本当の二人の時間。なんの小道具も必要としない二人だけの。
「今夜もまだまだ寝かさないよ。カシス」
「うん……トウヤ……」
 微笑む籐矢に頷くカシス。魔王な彼氏と奴隷な彼女の営みも今宵もまだまだ終わりそうに無い。



CASE2 ライ君とリシェルちゃんの場合
 
「あんっ!……ふぁぁあんっ!……ふぁぁああっ!!」
 部屋いっぱいに嬌声を響かせて、騎乗位の姿勢でリシェルはよがる。仰向けになったライの身体。
 そこに突き出た肉の杭をリシェルは自身で包む。ぐにゅり。膣肉の歪む感触だった。
 肉蓑をズルズル引きずりながら膣奥まで滑るそれをリシェルは受け止める。駆け巡る刺激。
 その刺激の虜にリシェルはなっていた。もっと味わいたい。もっと感じていたい。
 だから自然に腰が上下に動く。身体全体を使ったピストン。リシェルは夢中で続ける。
「くっ……ぅぅ……リシェルぅ……」
 悶えるような快楽にライの顔も歪む。ぴっちりと自分の肉とフィットして絡みつくリシェルの膣肉。
 ぐいぐいと竿を締め付けながら腰を落としてくる。するとカリ首が絶妙な感じで擦られる。
 最高に気持ちが良かった。まさに筆舌に尽くし難し。
(ヤッ…べぇ……やっぱ……すっげぇ気持ちいい……)
 リシェルと交わす営みは今宵もライを深く酔わせる。最初は緩やかに始めた今日のセックス。
 けれど昂ぶりゆくお互いを抑えきれず結局は激しく求め合った。ケダモノのようにライもリシェルを犯した。
 リシェルもこうして情を滾らせ腰を振るってくれる。そんな二人の若さが織り成すセックス。
 その魔性の魅力に二人ともに心の底まで蕩けていた。
「くぅぅう!いくぞっ!リシェルっ!」
「うあぁぁっ!来てぇっ!来てぇぇっ!ライっ!!ふぁぁぁあああ!!」
 そうする内になされる膣内射精。けれど快楽の化身の憑依した二人にとってはそれさえも序章にすぎず、
「くぉぉぉっ!リシェルっ!リシェルっ!リシェルぅぅぅ!!」
「ふぁぁぁああ!ライっ!ライぃぃいいっ!!」
 白濁を吐き出しながら掻き立てる肉棒。メレンゲのような白濁の泡は二人の脳も同時に包み込む。
 溶け合っていた。粘膜に濡れた肉と肉の交わりの中で。二人の意識は甘く。
「好きっ!大好きぃいっ!ライっ!ライぃっ!」
「オレもだ。リシェル。リシェルぅぅ!」
 そうして互いにしがみ付きあいながら動かしあう身体と身体。混じり合うのは心と心。
 身も心も深く繋がったままの状態でライとリシェルはお互いの温もりを感じあうのであった。


「……はふっ……はひっ……はひっ……はぁ……はぁ……」
 もはや馴染んだ寝心地のベッドの上。横たえられたリシェルは肩で息をしていた。
 今日も激しかったライとのセックス。膣肉がめくれそうなまでに求めあった。
 受け止め続けた白濁。リシェルの子宮からトロリと膣を伝って溢れてくる。
 愛液と精液にまみれた身体。いたるところが白濁の粘液でドロドロである。
 とろとろの愛蜜まみれの雌ウサギが今日もその愛らしい姿をそこに晒していた。
(毎度のことながらとんでもねえなあ……オレ……)
 自分がリシェルに注いだ白濁の量。そのあまりもの絶倫ぶりにライは呆れかえる。
 シーツにできた大きな染みは物語る。その行為のあまりの激しさを。
 今日も飽きることなくリシェルを犯した。正上位で、後背位で、体位は様々。
 そしてリシェルの子宮に存分に注いだ。何度も。何度も。飽きることなく。
 無尽蔵なまでの己の精力。自分事ながらライは末恐ろしくなる。
(重症だ……とことん重症すぎるぞ……オレ……)
 溜息混じりにライはひとりごちる。自身の陥った中毒。そのあまりもの深刻さに。
 思い返す。リシェルの膣肉の感触。交わったときのその絶品さはもうなんともいえない。
 それに加えて可愛く喘ぐリシェル。その喘ぎ声が理性の糸をなにもかも断ち切ってくれる。
 そしてなによりもリシェルに愛されているという実感がライの心をこの上なく満たしてくれた。
 誰よりも自分のことを想ってくれる人。誰よりも自分を愛してくれる存在。
 それが今、こんなにも自分のすぐ傍にいる。肌と肌がぶつかりあうほどすぐ近くに。
(本当に良かったよ……お前がオレの幼馴染で……お前がオレのこと好きになってくれて……リシェル……)
 仰向けに寝転がるリシェルに微笑みかけながら、ライはほころんでいた。手に掴んだ幸せの種。   
 その確かな感触をぎゅっと握り締めながら。
「んっ……うぅ……」
「おいおい。無理するな。そのまま寝てろって……」
 するとふいにリシェルが身を起こそうとする。気遣ってライは声をかける。
 それでもリシェルは起き上がろうと踏ん張ったがすぐにくたりと力尽きる。
「はふ……やっぱ駄目……もう限界……」
「そうだな……実際、オレも結構キツイし……」
 包み込むような疲労感。激しさ溢れるセックスは二人からスタミナを奪い取っていた。
 まあ、あれだけしたのだから無理も無い。時折、手淫やフェラも混ぜ込みながら、休み無くぶっつづけでやり通したのだから。
「まったく……相変らずあんたってケダモノなんだから……」
「はいはい……」
 最早、常套となったいつもの文句にライは適当に相槌を打つ。こうして一合戦終えた後、二人でまどろむ憩いの時間。こんな時間も大切であることはよく知っている。
「ねえねえ。どうだった?その……今日のあたし……ちゃんと気持ち良かった?」
 そしてまたお決まりのことをリシェルは聞いてくる。そのお約束ぶりにライは苦笑する。
(答えなんていつも決まりきってるのにな……)
 それでもリシェルは答えて欲しいのだろう。ライの口からちゃんと直接聞きたいのだ。
 ハアとライは大きく息を吐く。そしてその台詞をライは口にする。 
「いつも最高だって言ってるだろ」
「えへへ♪」
 それももう定番の言葉なのに最高に締まりのない顔をリシェルは見せる。いかにもデレデレの表情。
 普段のツンツンぶりとは対極に。この典型的ツンデレ娘め。目を細めながらライは見やる。
 ああ、もうそんな嬉しそうな顔をするんじゃない。見てるこっちが恥ずかしくなってくる。
「うわぁ。あんたったら耳まで真っ赤……」
「うるせぇ……」
 指摘どおりに赤面した顔に手を当てながら、ライは決まり悪そうに視線を泳がす。
「うふふ♪……でも良かった……今日もあんたに満足して貰えて……」
 そんなライを他所にリシェルは饒舌になる。それはおそらく彼女流の照れ隠しなのだろうが。
「あたしだけの特権なんだからね。こんな風にアンタを気持ちよくしてあげられるのって……」
 はっきり言って惚気だった。それに気づいてか気づかないでか、構わずリシェルは惚気続ける、
「だってあたしがあんたの一番なんだし……あんたは永遠にあたしの家来なんだから」
「分かった。分かったからその辺で止めろ。オレが悶え死ぬ……」
 そろそろ止めないとこっちがヤバイ。調子づくリシェルをライは制止する。
 最もその惚気を嬉しく想いながら聞いている自分自身も否定できないのではあるが。
「それじゃあ家来のあんたにご主人様のあたしから命令」
「はいはい。いったいなんだよ。まったく……」
 そうして下される我がままお嬢様直々の命令。その内容に傅く家臣は薄々感づいてはいる。
「あの……さ……その……」
 お嬢様は照れくさそうに目を伏せる。しもべのライは息を吐く。まったくもっていつものことだ。
「なんだよ。ちゃんと言えよ。応えてやるからよ」
「うん……その……ね……その……もう…一回……」
 そこまで言って口ごもる。まあ言わんとすることは分かるのだが意地悪くライは聞き返す。
「ああん?なんだって?」
「……っ!……だぁぁぁあああ!!もう一回して欲しいって言ってんのよ!少しは察しなさいよ!この馬鹿っ!」
 するとキンと耳に響く喚き声。ライは思わず耳に手を当てる。けれどその顔はどこかニヤついていた。
 それでこそリシェルだ。期待通りの反応が実に心地よい。それでもとりあえず釘は刺す。
「……程ほどにしとかないと身体壊すぞ」
「うっさい!あんたが言えた義理か!何よ!さっきまでずっとケダモノのようにあたしのこと犯してたくせに!」
 予想通りにリシェルは噛み付く。少しだけ膨れたその表情。苦笑いしながらライはリシェルの頭に手を置く。
 ポンポンとあやすように軽く叩く。優しく髪を手ですく。何度かそうした後、柔らかな表情で声をかける。
「もう一回だけだぞ……」
「うん……」
 リシェルは素直に頷く。撫でられる髪。その下にある顔はほんのりと桃色に染まっていた。
 なんとも愛らしいその頬にライは手を当てる。くいっと傾ける顎先。突き出された唇に触れるのは。
「んっ…………」
 それも柔らかな唇である。口唇で確かめる愛情。それは人に乳幼児の頃から伝わる初歩的な愛の感じ方。
 触れあう互いの唇。その感触がなんとも愛おしい。赤子の頃に含んでいた母の乳房よりもずっと。 
「やっぱり……すごく甘い…………」
「そうだな……」
 蕩けた眼でリシェルは呟き、ライも同意する。本当に蕩けるような甘さだった。この甘さをいつまでも。
 ずっと一緒に感じていたい。それがライとリシェル、二人に共通した想い。だからこそ交わる。
 その想いをもっと確かなものにするために。

「最後だからゆっくり……するぞ……」
「うん……あたしもそっちの方がいい……」
 交わす約束事。ライはゆっくりと動き出す。取り出す肉竿。まだ繋がるだけの余力はある。
 仰向けでじっくりと待つリシェル。蜜の滲む女陰はじんわりと疼く。ほんのりと熱の残る花弁。
 ミツバチの針の先端はじっくりと近づく。そして触れ合うほどの近く。互いの粘膜を擦り付ける仕草。
 こそばゆかった。けれど心地よかった。こんな花と虫の戯れも悪くない。そうして整う互いの準備。
 後は繋がるだけだ。言葉は要らなかった。視線だけでライは促しリシェルも応える。
「んっ……あふっ……」
 くちゅり。先端は埋没した。粘液まみれの肉同士。その交流の最初のステップ。
「はぁ……はふっ……あふっ……んぅ……んぅぅ……」
 そこから徐々に上ってくる。濡れほそる膣肉を掻き分ける肉の棒。その感触がリシェルに伝わる。
(入ってる……あたしの中に……ライが入ってる……)
 ゆっくり、ゆっくりと膣奥へと押し込まれていく男根。膣肉でキュッと締め付けながらリシェルは感じる。
 自分の中へと入るライの存在を。一つになれる。誰よりも大好きな人と。この上ない幸せを噛締める。
「んっ……んぅぅ……はふっ……はぁっ……ふっ……」
 ずるずると膣肉を引きずられながらリシェルは喘ぐ。この上なき愛しさ。粘膜を介して伝わってくる。
 気持ちいい。温かい。それは自分だけが感じていることではない。感じさせている。それも分かる。
(ちゃんと……気持ちいいって思ってくれてる……温かいって思ってくれてる……)
 大好きなライを悦ばせられる。自分の身体で。自分の存在で。こんなに嬉しいことは他にない。
 それをライも分かってくれている。例えばこんな風に。
「リシェル……」
「な、なによぉ……」
「やっぱお前……すっげぇ気持ちいい……」
「……っ!い、いちいち言わなくてもいいわよ!この馬鹿……」
 言って欲しい言葉をちゃんと言ってくれる。いつも我侭で素直になれない自分を優しく包んでくれる。
 だからこっちも包んであげたい。こうしてぴったりくっついたままで。いつまでもずっと。
 だからたまには自分の気持ちに素直に。リシェルはギュッとライにしがみ付く。
「繋がっちゃってるね……あたしたち……」
「ああ……」
「このままでいさせてね……ずっと……」
「分かってるって……」
「命令なんだかんね!一生の……」
「ちゃんと分かってるから念を押すな」
 繋がったままで交わす言葉はいつもお約束。それがなによりも掛け替えのない。二人だけの軌跡。
「大好きだよ。ライ」
「オレもだ。リシェル」
 変わらないままの心。変わらないままの想い。それはいつまでも朽ち果てぬ宝石の記憶。
 永遠の契約をその身に刻みながら、二人の穏やかな時間は今日も緩やかに流れていく。


〜fin〜

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