世界を救うより難しいこと



暖かな春の昼下がり
フラットの広間では、陽気な天気と裏腹に深刻な顔をした少女たちが集まり、なにやら密談を交わしていた
「また失敗かー」
「はい…」
「じゃあ、今度は化粧してみるとかどう?セシルさん辺りに指南してもらって…」
「でもさ、化粧したくらいじゃその変化に気付かない可能性もあるよね」
上から順にフィズ、アヤ、リプレ、カシス。4人は額を突き合わせ、アヤの恋を成就させるために作戦を練っているのだ。過酷な戦いの日々も終わり、平穏になった生活では些細なことも大事件なのである
「多分、気付いてはもらえるけれど…」
「似合っとるなあで終わり…かな」
アヤとリプレは顔を見合わせ溜め息をつく
「だいたいエドスが鈍感すぎるのよっ」
フィズは頬をぷくっと膨らませ文句を云った
「お弁当大作戦も失敗だったし、押してダメなら引いてみろは…」
「アヤが我慢できなかったもんね」
「やっぱり直接云っちゃうべきじゃない?」
「ぐずぐずしてたらとられちゃうかもよ?」
「と、とられる…」
不穏な発言にアヤは青ざめた。普段男だらけの職場で働くエドスの周りに女性の影がないことは明白であるが、引っ込みがちなアヤを焚き付けようと皆で云い募る
「そうそう!エドスって結構優しいからね」
「しかもライバルは女の子だけとは限らないよ」
「そんな…」
「どうする?早くしないと…」
「ねね、アタシに良い案があるんだけど!」
「え?」
アヤへと向けたフィズの発言に返事をしたのは、いつのまに入ってきたのか、好奇心を隠しもせず爛々と目を輝かせたアカネだった。くのいちという特性上気配を消すのは朝飯前であり、こういうことは日常茶飯事なので皆あまり驚かない
「話は聞かせてもらったよ。告白なら良い方法があるんだよね〜」
「どーいうこと?」
皆の視線が一様にアカネに向き、アカネは得意気に話し始めた
「前にお師匠から教えてもらったんだけどね、すごく開放的で大胆になれる薬があるんだよ。それ使ったら…」
「それ…危ない薬なんじゃないの?」
リプレが心配そうに云う
「習慣性はないから大丈夫!それに本来の用量よりずっと少なく使うし、体の心配はないよ」
告白の弾みになるんじゃないかなと思って、とアカネは付け加えた。確かに内気なアヤに面と向かって告白は難しい話だ
「だからって…」
リプレは難色を示し、カシスもまた腕を組みなにやら思案している。フィズはきょろきょろ周りの反応を見渡す。少しして、アヤは立ち上がりアカネへ強い視線を向けた
「お願いします!」
「ちょっとアヤ!?」
先ほどの焚き付けが妙な具合に効いたのか、アヤはぎらぎらした目でアカネの手を握る
「まあ、なんにしろキッカケは大事かもね」
カシスは結局賛成のようだ
「ラブラブ告白計画ね!」
俄かに活気づく広間で、ほんとに大丈夫かなあ…とリプレは溜め息をついた

ラブラブ告白計画(命名フィズ)の内容は、エドスの仕事がない日に薪拾いに誘い、2人きりになったところで隙を見て薬を飲んで告白というシンプルなものだ。
実際、誘うところまで上手くいき、今のところ順調である
「向こうの方へ取りに行ってきますね」
「おお、気をつけろよ」
エドスと別れ、木の影まで来たところでアヤは深呼吸をした。
手にはアカネからもらった薬の小瓶が握られている
「本来なら1回10mlなんだけど、勇気出すだけなら1滴で十分だから。くれぐれも飲み過ぎないように!」
アカネの説明を思い出し、小瓶の蓋を開きながら大事なところを復唱する
「一滴で充分で、飲み過ぎないように…」
蓋へ薄紫の液体を流しこもうとして、中から立ち上るツンとする奇妙な香りに一瞬怯む。
―…苦そう
アヤは顔をしかめ恐る恐る小瓶を傾けた。蓋に満ちた液体に舌を差し入れれば、それで大丈夫なハズ。アヤは目を瞑り意を決して舌先を液体に浸した
「やっぱり不味い…」
痺れる舌を口に含み、なんとか薬を飲み込んで息を吐く。瞬間、どくんと全身が脈打った。膝に力が入らなくなり思わず膝をつく。
―な、なにこれは…。
手の先から足の指の先までかっかと火照り、息が苦しい。暑いのに全身が総毛立つ
「…はっ」
アヤはうずくまり浅く何度も息を吐いた。頭がぼんやりして、泣きたいような、何かに縋りたいような切なさに体が震える。よくわからない感情の高ぶりに意識が流されてしまいそうでアヤは歯を食いしばった

「アヤ!?」
なかなか戻ってこないのを不安に思い様子を見に来たら、アヤが倒れていてエドスは心底驚いた。森といってもはぐれが出るほど深くまではきていないし、アヤならたいていの敵は1人でやっつけてしまえるから尚更だ
「大丈夫か!?」
急いで傍に膝をつき肩を抱く。
―…熱い?
違和感を覚えながらも上半身を起こし、エドスはアヤの様子に目を見張った。アヤの頬は紅潮し眉は苦しげに歪められていて、まるで毒に犯されたような状態なのだ。アヤはゆっくり瞼を上げた。焦点の合わない瞳が揺れ、エドスを見つけ止まる
「すぐ戻ってカシスに…」
エドスが云い終えるより先に、アヤはこの細い体のいったいどこからという程の力でエドスを引き寄せキスをした。唇を押し付けるだけの稚拙なキス
「なっ、アヤ!」
顔を背け離そうとするが、相手はアヤなので手荒にする訳にもいかず引き剥がすまでには至らない。しかし、アヤの方は容赦なく力を込め何度も角度を変えて啄むようなキスを繰り返す。
―これはヤバいぞ…。
エドスは冷や汗をかいた。
アヤはおそらく何かの毒でおかしくなっている。エドスに何が原因かわからない以上、本来なら気絶させてでも引き離すべき状況なのだが、そうできないのはひとえに柔らかい唇や押し付けられる胸に、エドスの体が正直に反応していたからだ。
小さな体で懸命にしがみついてくるアヤをこのまま押し倒したくなる衝動をこらえ、エドスはギリギリの淵で耐えていた。


ふと我に返ったとき、アヤは自分がエドスにキスしていることを理解し、愕然となるでなく、陶然となった。
我に返ったといっても体にくすぶる熱はそのままで、薬の効能は未だ切れていない。
アヤは間近にある愛しい人の名を呼んだ
「エ…エドス、さん…」
「アヤ!意識が…」
エドスのほっとした声の意味を考える余裕もなく、アヤは自分の想いを告白した
「好き、です」
瞬間、エドスの目が見開かれ突っ張っていた腕から力が抜ける。
けれど、表情に表れた戸惑いを感じとって、アヤはそれ以上どうすることもできずに固まった。体は熱いのに頭の芯が冷えてしまって、悲しくて仕方がなかった。
わたしに魅力がないんだ。だからエドスさんはわたしを抱こうとしてくれない。
アヤは目を瞑り、瞼の裏に涙を閉じ込めた。
リプレのように家庭的であれば
カシスのように明るければ
モナティのように素直であれば
ミモザやセシルのように大人の魅力があれば。
エドスは自分を見てくれたかもしれない。けれど、たとえ見てもらえないとしてもこの気持ちを抑えられないことを、アヤ自身が痛いほど分かっていた
すき、すき、すき
熱にうかされたように繰り返し、エドスの逞しい体にぎゅっと抱きつく。
カノンさんに追い掛けられてもうダメだと思った時も、エドスさんは体を張ってわたしを守ってくれた。
命を賭した戦いの中、躊躇なく仲間を守れる貴方が好き。花見のような明るいイベントを考えて、屈託なく楽しめる貴方が好き。
せき止めていた筈の瞼から一筋涙が流れ落ち、次いでぼろぼろと零れ出でた。
大好きです、エドスさん。どうか、少しでもわたしに好意を持ってくれているなら
「抱いてください…っ」

耳元で、熱い吐息とともに流し込まれた告白を、エドスは信じられない気持ちで聞いていたが、最後の一言でプツンと理性が切れた。
アヤの顎を捉え、本能の赴くままにキスをする。
アヤからのものとは違う、舌を絡ませる深いキス。
―たとえさっきの告白が毒で混乱しているが故の発言でも構わない。
エドスはアヤの目尻に浮かぶ涙を掬った。
アヤを他のみんなとは違う意味で守りたいと思うようになったのはいつからだったろう。
何かキッカケがあった訳じゃない。
いつも一生懸命で、他人を傷付けることで自分まで傷付いちまうお前さんを、いつの間にか自然と愛しいと思うようになっていた。
唇を離すと、アヤはとろんとした濡れた瞳でエドスを見上げた。
いくら欲に流されるといってもアヤを傷付けることだけは絶対にしたくない。
エドスは念入りに体中を愛撫していった。
ついでにワンピースのようになっている服を取り去り、下に敷いた。
アヤは着やせするタイプなのか服越しに見るより膨らみのある胸と、しなやかな脚が眩しい。
一糸纏わぬその姿にエドスは思わず生唾をのんだ


「ふ…」
耳たぶ、項、鎖骨とキスを落とされ、心地よさに体からくたりと力が抜ける。
それを見計らったように入り口を指で何度か擦られ、アヤは甘い喘ぎを漏らした。
薬より好きな人に触れてもらえる悦びで、蜜壷からは絶え間なく愛液があふれ出で、エドスの指を濡らす。
まだ誰にも侵されていないその場所は、ぴたりと閉じられ何物の侵入も拒んでいるように見えた
「ちょいと痛いかもしれんが…」
つぷ、と小さな音がして、節くれだった指がゆっくり入り込んでくる。
細心の注意を払った動きのおかげか、はたまた薬のおかげなのか痛みは殆どなく、アヤはふるりと体を震わせた
「あ…なんだか…」
自分の中で何かが蠢く奇妙な感覚。身をよじるアヤを抱き上げ、エドスは深く指を挿入した
「んっ…」
アヤは未知の感覚に耐えようと胸元にあるエドスの頭に縋りつく
「ひゃっ…あ」
エドスに押し付けるような形になっていた胸の突起を舐められ、アヤは高い声をあげた。
生暖かい舌で転がされ、吸われ、柔らかく潰される。その度にアヤの体は敏感に跳ねた
「あっ、や…おかしく、な…」
知らないうちに2本になっていた指が激しく動き、アヤにとって初めての強い快感が襲う
「あんっ」
弱いところをこすられ、思わずアヤは鼻にぬける甘い声をもらした。
それに気付き、エドスはそこを重点的に攻めてくる
「やっ…だめ、そこ…あっ、あ、ああっ…!」
頭の中で白い光が弾ける。
アヤはびくびく痙攣したのち、ぐったりとエドスに体を預けた

弛緩しきった体の重みを愛しく感じながら、エドスはアヤの体を優しく服の上に横たえた。
桜色に染まった裸体は美しく、神聖にすら感じる。
未だ余韻に浸るぼんやりした表情のアヤの頬に口付ける。
―…このまま、止めるべきか。
辛うじて残る理性は否を主張する。
毒である以上すぐにでも戻って治療すべきだし、アヤの気持ちが本気だとしても正常な判断力が鈍っている状態で犯すのは本意ではない。
だが、エドスも男だ。ここで止めるのは正直きついものがある。
動けなくなったエドスに気付き、アヤは手を伸ばした。そっと手を重ね、微かに微笑む。
その表情と仕草に、自分を肯定されたように感じて、エドスは痛いくらいに張り詰めた己の怒張を取り出し、アヤの秘肉に押し当てた。
「挿れる…ぞ?」
アヤが緩慢な動作で頷くのを確認して、ゆっくり中へと押し進める。
「…っぐ」
痛みからか、アヤは夢から醒めたように悲痛な表情で、顔を逸らした。
けれど思わず腰をひこうとしたエドスの手を掴んで引き寄せる
「だ…いじょうぶ、大丈夫ですから…」
額に汗をにじませながら気丈に笑ってみせるアヤの健気さに胸が詰まる。
エドスはもう一度深いキスをし、ゆっくり己を沈めていった。
胸の突起に触れ、快感で気を散らしながら慎重に。
全部入ったところでアヤは潤んだ瞳でエドスを見上げた
「ああ…うれしい…」
全身が熱くなり愛しさから強く抱きしめる。が、まだ腰は動かさず、髪を撫でて首筋にキスをした。
暫く動かないまま愛撫を続け、膣が自分のものに慣れた頃、エドスは腰を緩く動かした。
既にアヤに痛みは殆どないらしく、エドスに抱きつき喘ぎをもらす
「はっ…、あっ、ん」
次第に声に甘さが含まれてくるのを感じ、動きを激しくするとアヤは無意識にエドスの背に爪をたてすがりついた。
「あっ、や、あんっ」
かわいらしい声で鳴かれ興奮しない訳がない。エドスは目の前の体を貪ることしか頭になかった。
ちょうど手に収まるサイズの胸を揉みしだき、乳頭を口に含む。
何かする度に敏感に反応する体が愛しく、エドスは行為に没頭した
「あぁっ、やん、だめ、なにか…あああっ」
アヤが更に強くエドスに抱きつき、びくびく全身を痙攣させる。
膣の中が蠢き、それに合わせるようにエドスも射精した。
その後も、長く、長く2人は抱き合っていた

エドスがアヤをおんぶして帰ったのち、あの薬が100倍に希釈して使うものだったことと、無断で薬を使用したことが露呈し、アカネがシオンにお仕置きされることになるのはまた別の話

おわり

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