機界の新星、海を行く 2



「さーて、まず手始めに、っと♪」
「ん……っ……!?」
 あたしの露出した背中と首筋、太ももを女海賊が――ソノラがさわさわとひととおり撫ぜる。
 肌の表面を滑るように、優しいようないやらしいような触り方だ。
 くすぐったいような感覚に抵抗したかったが、両手両足が固定されてて動かない。ベッドにうつぶせ大の字で寝かせられ、両手両足を縄で固定されたあたしに、抵抗なんて出来るはずもなかった。
「ふむふむ、なるほどねぇ」
 ソノラはにやにやしながらそうつぶやく。あたしの姿勢からじゃ顔は見えないけど、声を聞いただけでむこうの機嫌はわかった。
「リシェルちゃん、だっけ。あんた、この辺が弱いんだ?」
「!? っく……!」
 家紋の下に刻まれたあたしの名前を――いやそんなことはどうでもいい。その手をあたしの脇の下に添え、ソノラがあたしの顔を覗き込んできた。
 思わず顔をそらすが、直後あたしのこめかみを冷や汗がつたう。
「そっかー、図星なんだ♪」
 嬉しそうにソノラはあたしの脇の下をなでまわす。力を入れ過ぎずじっくりと、あたしの肌の上をソノラの指の腹が滑る。
「ん……くふっ……!」
「お、効いてる効いてる」
 くすぐったいだけのはずが、妙に体が反応する。こんな所くすぐられるだけならまだしも、人に撫でられたことなんて――
「っ、ぐ!?」
 突然、息の詰まるような刺激が走る。ソノラの指先が、あたしの肌を深く押し突いてきたのだ。
「案外この辺って痛いんだよねー、うりうり」
「や、め……っ、痛……!」
 指先があたしの脇腹をぐりぐりとこねくり回す。痛みに耐えかねて抵抗しようとするが、縛られた手足はろくに動かず、痛みからは逃れられない。
「んふふー、苦しんでる顔も可愛いもんだよね」
 あたしの表情を見下ろしながらかソノラが呟き、すっと指から力を抜く。耐えがたい痛みから解放され、全身からぐったりと力が抜ける。
「はぁ……はぁ……」
「――あ、もしかして泣いてる?そんなに痛かった?」
「っく……!」
 悪びれた感じじゃなく、小悪魔のように尋ねてくる。思いっきり見下された感じだ。
「ふーん、まだそんな目が出来るんだ。もうちょっとお仕置きが必要かなー」
 おもむろに枕を掴むソノラ。そしてあたしの髪を掴んでぐいっと顔を上げさせると、その枕の角を強引にあたしの口の中に押し込んできた。
「んぐ……っ!?」
「騒がれたらイラっとしちゃうからさ。ちょっとの我慢だからね」
 それだけ言うと、即座にソノラは指先をあたしの脇腹に押し込め、力を入れた。
「ん゛……っ!?」
 今度の力の入れようは、さっきの比じゃなかった。暴力的な力が、脇腹をえぐるようにぐりゅぐりゅとかき回す。
「ん゛ーっ! んぐーっ……っ!」
「ほらほら、暴れないの。どうせ暴れたってムダなんだから」
 あまりの苦痛に、手足に縄がくい込んで痛いのも気にせず暴れる。ベッドがギシギシと揺れ、体を何往復もひねり、無駄だとわかってても足掻けずにはいられなかった。だけどソノラの指先は容赦なくあたしの脇腹を攻撃し、倉庫には、口をふさがれたあたしの響かない悲鳴だけがこだましていた。
 ――どれだけ長いことそうされていたのだろう。やっとソノラの指先から力が抜ける。
「ふふーん、これで懲りたでしょ」
「んっ……ぐ……」
 力なくベッドに横たわるあたしと、その背中にまたがって笑うソノラ。さすがのあたしも、覆せない力関係がここにあることを認めさせられた。
「うーん、でもちょっとやりすぎたかな?」
「ぷ、はっ……はあっ……はぁ……っ」
 ソノラが、あたしの口の中に押し込んでた枕を引き抜く。よだれと涙でぐしゅぐしゅになった枕をひょいっと放り投げ、ソノラはあたしの顔色をうかがう。
「あ、よかった。まだそういう顔は出来るんだ」
 にらみ返してやったつもりでも、涙目じゃ説得力ないのかソノラはにんまりするばかり。
「ほーんと強気だよね。ま、そうでもなきゃつまんないけどさ」
 にししっとソノラは楽しそうに微笑み、またあたしの前から顔を消す。胸で息をするのが精一杯のあたしには、この後何をされるにしても、心構えをする余裕はなかった。
「さて、そろそろ始めようかな」
 ひたりと背中に、鋭く冷たい金属の感触が触れた。ぴくっとあたしが反応するより早く、それは動いてあたしの衣服に引っかかる。
 直後、あたしの上着が真っ二つに引き裂かれた。金属がびりびりとあたしの衣服をひきはがし、あたしの上半身が生まれたままの姿にさらされる。やがてソノラの片方の手の平が、あたしの胸にすうっと伸びてきた。
「っう……!?」
「大丈夫だよ、もう痛いことはしないから♪」
 ふにふにとあたしの胸を軽く揉みながら、ソノラが金属をあたしのハーフパンツに当てる。
 その金属が小さなナイフであるとあたしが気付いた直後、その鋭い切っ先が下着ごと一気に衣服を切り裂いた。
「あははっ、いい格好じゃん」
 丸裸にされたあたしの股の間にソノラがもう片方の手を伸ばす。動かないとわかってても、思わず手足を縮めて拒絶しそうになってしまう。
「んー、そっか。リシェルちゃん、処女なんだ?」
「ん……っ、ふ!?」
 驚くヒマもなく、あたしの局部を指先でくりくりと弄られる。気を抜いたら情けない声を出してしまいそうで、言い返してやることが出来ない。
「この程度でそんな反応するなんてさ。かわいー♪」
 胸元と太ももの間、女の子の部分を同時に攻められ、あたしは歯を食いしばる。こんな形で気持ちよくなんてならないし、なるわけが――
「ふふっ、あたしの指なんかじゃ気持ちよくなんかならない、って顔かな?」
「く……!?」
 考えていたことを見透かされて表情の強張ったあたしを見て、満足そうな顔でソノラは腰を上げる。そして倉庫の奥から小瓶を取り出し、中の液体を手につけ――
「一人でやってるだけじゃ経験できない気持ちよさ、ってのもあるんだよ?」
「……っ、ひゃ!?」
 ソノラの手から垂れた液体の冷たさに思わず声が上がった。液体はあたしの背中をつたったが、その背中をソノラが撫でると、そのぬるぬるとした液体はあたしの背中いっぱいに拡がる。
「その年じゃ、ローションなんて使ったことないでしょ♪」
 そのぬるっとした液体を携えたソノラの手が、あたしの全身をはいずり回る。痛いとも、くすぐったいとも違う感触が、ぬるぬるとあたしの全身を包み込んだ。
「んあ……っ……!?」
 その手でソノラが、またあたしの胸に手を伸ばす。思わず声を出してしまったのは、爪先を軽く乳首に突き立てられたからだ。
 間髪入れずにソノラの手が動き始める。絶妙な力加減であたしの胸を揉みしだき、片方の手は常に胸元から離れず、もう一方の手はあたしの脇腹やお腹を舐めまわす。
「ん……っ、く……んうっ……!?」
「どう?これだけでだいぶ感じ違うよね♪」
「うく……っ……!」
 ぬるぬるした指先があたしの体をなでるたび、耐えられずに体が跳ねる。のどの奥から思わず出てきそうな声をかみ殺すけど、本当に一瞬でも気を抜けば、ソノラにだらしのない声を聞かせてしまいそうだ。
「んふふ、もっと可愛い声聞かせてくれてもいいのに」
 ソノラが耳元にふーっと息を吹きかけてくる。
「っひ……!? だ……っ、誰がそんなこと……んっ、く……!」
「よしよし、頑張って。すぐギブアップされちゃつまんないしさ」
 あたしの挙動のすべてを見透かすような余裕が、ソノラの方から漂ってくる。される事をただ耐えるだけのあたしの上に腰を下ろし、その手でひたすらあたしを嬲ってくる。
「でも実際、我慢したってムダかもね。時間ならたっぷりあるんだしさ」
「は……んんっ……! あっ……く、んぅ……っ!」
 手を止めず、あたしの体じゅうを攻め嬲るソノラ。時に舌先で耳の裏を撫ぜられ、時に指先で乳首をつままれ――全身を攻められるだけでもギリギリだっていうのに、時々はさまれる強烈な刺激になんて耐えらるはずがない。身動きとれないままあたしの体はじわじわと熱くされ、その様子を楽しむソノラの気持ちが、楽しそうにあたしをいたぶる手の平から伝わってくる。
「どうしたの?まだまだこんなもんじゃないよ?」
 こっちの頭の中が手いっぱいになった途端にそういうことを言われる。躍起になって睨み返そうとするが、それだってソノラの中じゃ、きっと手の平の上。
「あたしにもそれなりに楽しませてもらわなきゃ割に合わないんだよねー」
 ソノラがそう言った途端、あたしの背中がローションでずぶ濡れになる。さっきまでのように垂らす程度じゃなく、瓶を逆さまにしたってぐらい、一気に――
「っ……!?」
 直後、温かくて柔らかい何かがあたしの腰の上に乗る。それが何かわかるよりも早く、背中にまた柔らかい何かが、二つむにゅりと張り付いた。
「っひー、冷たぁ……」
 ソノラの腕があたしの胸の周りに伸びてきて、きゅっとあたしを抱きしめる。そこでようやく、あたしの上にあるのは、いつの間にか服を脱いだソノラであることに気付いた。
「さーってと、覚悟しなよ?」
「う……!?」
 あたしの背中に裸体を押しつけて、ソノラが動き始めた。
「っくぅ……!? ん、は……あ……!? あっ……ひ……!」
「どう?こういうの、一人じゃ体験できないでしょ♪」
 背中をソノラの体がぬるぬると這いずり、その両手があたしの体のありとあらゆる部分を舐めまわす。ソノラの口元が、時たまさっきのような悪戯に走るにつれ、あたしの我慢のリミッターはたびたびはずれそうになる。
「もっかい言うけどさ……んっ……我慢してれば、そのうち終わるとか思ってる?」
「あく……っ、あ……ふっ!」
 お尻を撫ぜ回されて体が震えた。息を止めて耐えていた声が、吐息とともに溢れる。
「時間は、っ……いっぱいあるんだからね?それこそ、一日中でも♪」
「うあ……っ!? あく……あ、あっ……!」
 乳首をこねくり回され、喘ぐ口を閉じられない。自分からベッドに顔をうずめて、後一歩のところで踏みとどまる。
「早くラクになっちゃいなって。こういう形になってる時点であんたの負けなんだから」
「あう……っ、うっ……あ、っ……!」
 髪をつかまれ顔を上げさせられる。息苦しい姿勢のせいで喘ぎ声は露骨に出なかったけど、うなじに唇を当てられた刺激で、胸の奥から空気を絞り出された。
 シーツを握って耐え、足がつりそうなぐらい全身が強張ってる。対照的に柔らかいソノラの肌があたしの体を愛でるたび、全身の力を吸い取られてしまいそうな感覚に陥った。
「別にいいけどね。あたしはじ〜っくりとやるだけだしさ♪」
「はあ、あ……っ! っは、ん……んん……っ!」
 まるで飴でも溶かすかのように、じわじわとあたしをしゃぶり尽くすソノラの体。人肌の温かさがあたしの全身を優しく包み、同時に海賊の刃のような鋭い攻めが体中を嬲ってくる。
 あたしの頭は耐えるばかりでほとんど真っ白、何を考えることもできずに相手のペースにただただ呑まれるばかりだった。
 ふと、ソノラの片手があたしの下腹部に触れた。
「ふふっ、これは我慢できるかな?」
「んう……っ……!?」
 ソノラの手が、ゆっくりとあたしの股の間に向かって滑る。さっきまで全身を刺激されてはいたけど、そこだけは最初に弄られただけで――
「や……っ、やめなさいよっ……この……!」
 思わず口を開いて抗った。が、ソノラは妙に嬉しそうに指先を踊らせ、
「ふーん、そっかぁ♪やめないとヤバいんだ?」
「何言っ……あひ……っ!?」
 もう片方の手が、胸元の突き出た一点を荒々しく攻める。言い返そうとした口が止まり、代わりに出そうになった声を封じるために、口元が固まる。
「んふふー、ここ攻めても我慢してられたらたいしたもんだけどねー」
「ん……っ!んくぅ……っ……!」
 声を殺しつつ、必死に足を閉じようとする。だけど縄に邪魔をされるばかりで、ソノラの指先はゆっくりと、無防備なあたしの局部へと這い寄っていく。
「っ!? ひあっ……! く……は……っ!?」
 そこにソノラの指が届いた瞬間はすぐにわかった。痺れるような強烈な感覚があたしの下半身を襲い、一気に丸裸の腰が浮きあがった。
「ふふっ、効いたんじゃない?まだまだこれからだよ?」
 くちゅくちゅと指先であたしの中をかきまわすソノラ。ゆっくりと舐るように、じっくり丹念に肉壁をなでまわされ、そこ以外の感覚に意識がいかなくなる。実際、さっきまで固まっていたあたしの全身はもう脱力し、ふるふると震えソノラの動きに身を任せているだけだった。
(だ、駄目……もう、これ以上は……)
 強引に食いしばっていた口元に力が入らなくなってくる。はーはーと息が漏れる一方で、さっきまで肺の奥まで封じ込んでいた声が――
「あ、あ、あ……っ……」
 ソノラのもう一方の手が、あたしのクリトリスをくいっとつまみ上げる。
「あふぁっ!? ふああああんっ!!」
 我慢が一気に吐き出された。シーツを握りしめていたはずの手は力なく寝そべり、さっきまで伸ばしていた足も膝を立て、お尻を突き上げる形のまま硬直していた。
「はーい、あたしの勝ち。案外あっけなかったね」
「あはぁっ、ああ、っ……へあっ……」
 ソノラに屈辱的な言葉を投げつけられても、もう反抗する気力も残ってない。びくびくとあたしの体を痙攣させるその快楽に、身を任せるまま横たわるだけだった。
「くすっ、だらしない顔♪」
 そう言って、あたしの口元から垂れるよだれを指ですくい取るソノラ。この上ないほど情けない姿を晒しつつ、それでもあたしは身動き一つとれなかった。
「ふふっ、かわいー。もうちょっと遊んであげよっと」
「っ!? あひぁっ!?」
 ソノラが指先をまた動かし始める。今度はさっきより激しく、強い力であたしの中をかき回してくる。
「っは……! や、やめ……んああっ! い、ひゃ……あふぁぁぁっ!」
 強烈な快感に耐えられず悲鳴をあげるが、ソノラの指は止まらない。お尻を下げればそれを防げるかもしれないのに、求める体が言うことを聞いてくれず、突き上げた腰は悦ぶように震えるばかり。
「んふふー、ほら、はやくイっちゃいなよ。ほら、ほら♪」
「あんっ! ひあぁぁぁっ! あひぃぃっ!」
 あたしが必死で何をこらえてるのか、ソノラにはお見通しだった。体はもう思うようにすら動かせないし、あまりに屈辱的な姿も晒したけど、これ以上の恥辱はもう耐えられない。
 女海賊に捕まって、いいように嬲られて、その上イかされたなんてことになったら――
「もうどうしようもないってば。楽になっちゃいなって」
「いひぁあぁぁっ! ああんっ! んあっ! んああぁぁっ!」
 おかしくなりそうな感覚だった。今にもあたしの下半身は吹き出しそうなのに、最後の理性でそれはギリギリ食い止められてる。意地だけは守り通そうとする心の意志と、早く果てて楽になりたいという体の意志が交錯し、あたしの頭はもう何が何だかわからなくなっていた。
「何度も言うけど、時間ならた〜っぷりあるんだからね♪」
「あふぁぁぁっ! んひあぁぁっ! ああんっ、ああああっ!」
 うつぶせのまま喘がされっぱなしのあたしと、その上にまたがってあたしを弄ぶソノラ。
 どう考えてもあたしが下で、それを覆す力もあたしには残ってない。あたしの頭の中には、終始楽しそうにあたしを見下すソノラの姿が渦巻くばかりだった。
「ん〜、粘るじゃん。ま、そうこなくっちゃね」
 ふとそう言って、ソノラが指を抜く。
「あ……っ、ひあ……っ!」
 断末魔に近い声が出て、あたしの全身から一切の力が抜ける。本当に、助かったと思った。
 あと10秒――いや、あと5秒攻められただけでも、もう終わりだったかもしれない。
「はぁっ……はぁ、っ……あ……っ」
「そーとーヤバかったみたいだね♪ ほーんと情けない顔」
 意識を保つので精一杯のあたし。言葉は耳に入ったけど、内容は頭に入ってない。
「でもまさか、これで終わりだなんて思ってないよねぇ?」
 ブツッ
 にわかに両手と両足を縛っていた縄が切られた。身動きのとれないあたしが、そのことを察するまで少し時間はかかったけど――
「おーっと、逃げないで。まだ続きがあるんだからさ」
 一瞬自由になっても、ソノラが元気いっぱいの力で動きを制してくる。弱りきったあたしの力じゃどうしようもなく、再び新しい縄で拘束される。

「さーてと、第2ラウンドといこっか」
「はー……はー……」
 抵抗する間もなく、あたしの両手はベッドの枕もとに固定され、両手を上げて仰向けの体勢に落ち着かされた。身動きのとれない、あたしのうつろな目の前で、ソノラが何やらごそごそと準備を始める。
「小さめのにしといてあげる。処女なのにムチャしちゃ可哀想だしね」
 ぼやけた視界の中に、ソノラが股間に黒くそそり立つ何かを装着する姿が見えた。それが何なのか理解するより早く、ソノラがあたしの股を開き、お尻のすぐそばに膝をつい……
 にゅぷうううううっ
「!? あ……っ、あああ……っ……!?」
 一気に意識と感覚が舞い戻る。腰回りどころか、全身を電撃が襲った。
 口を開いて痙攣するあたしを、正面から抱き寄せてソノラが妖しく笑う。視界の焦点すら定まらない中、両腕が固定されてもう逃げ場はどこにもない状況だけが理解できた。
「ふふっ、これ我慢できるかなぁ?処女の子にはキツすぎるかもね♪」
「っひ……!? ひあっ、あっ、あああっ!?」
 その言葉をきっかけに、ソノラが腰を動かし始めた。きっちりとソノラの体に固定された"それ"は、乱暴にあたしの中をかき回し始める。
「そらっ、そらっ、そらっ……!」
「あひっ!? はひいぃぃぃ!? あはああぁぁぁっ!?」
 経験したこともない突き抜けた快感に、あたしの意識は吹き飛びそうになる。だけどあまりに強烈な快楽が意識を引きとめ、言いようもない感覚の中にもがくしかない。
「どう……っ、これなら……って、聞こえてないか、これじゃ」
「あはっ! はっ! ふあぁぁっ! やっ、ひゃめへっ……!」
 ソノラの声があたしの頭上をかすめていったことなど気にも止まらず、がくがくと揺らされるあたしの体にはまるで糸の切れた人形のようだった。どうこうする力もなく、されるがまま。
 だけど腰を中心に拡がる、強すぎる刺激を求めて体はそれを受け入れ、残る意識に従うのはあたしの無力な口だけだった。
「素直になったら……っ、かわいいじゃん、リシェルちゃん――んちゅっ――」
「あ……っ!? ん、むっ……!?」
 腰の動きを止めず、ソノラの唇があたしの口さえも塞ぐ。攻め手が二つになり――さらにソノラの両手があたしの脇腹とお尻を同時に這いずりまわる。腰の動きに連動してソノラの柔らかい体があたしのお腹を、胸を滑る。大きくはないけど柔らかいソノラの胸が、あたしの胸をすっぽり包み込み、そのわずかな乳房が動くたび、あたしの胸にある二つの弱点をこすり上げていった。
「んん゛〜っ!ん゛っ!んふっ!ん、んんん゛……っ!」
 悲鳴をあげて声に意識を逃がすことも許されず、がっちりとソノラの全身に捕まったあたしの体。手で突き離そうにもその手は縄でしっかり固定され、足で蹴り離そうにも近すぎるソノラを蹴ることは出来ず、足は空を切る。逃げ道も容赦もない攻めがあたしを追い詰め、あたしは悶えるばかりでどんどん深みにはまっていくばかり。
「ふふっ、もいっちょスパート♪」
「んひぁああっ!? ふあぁぁっ!? あふぁぁぁぁぁっ!?」
 ソノラの腰の動きが加速する。唇を口から離し、舌をあたしの首元を滑らせて――胸で、両手で、吐息で、腰の動きで、体すべての動きであたしの全身をしゃぶり尽くす。
 かすれた意識の中だけど、あたしのすべてが完全にソノラに支配されてしまったことを受け入れるしかなかった。
「やっ! ら、らめぇっ! も……っ、あひぁっ! んふああぁぁぁっ!」
「あれ……? もう終わっちゃう? もうイっちゃうの?」
 強引に押さえつけていたあたしのリミッターは、もはや消えた理性の向こう側。今のこの全身を包み込む攻め手に身を任せ、あたしの心はもう完全に屈服していた。
「ふーん、頑張ったわりにはそんなもんなんだぁ?」
「あひぁっ! んああぁぁぁっ! あふぁああぁぁっ!」
 耳が働かない。口の動きも自制できない。はしたなく口から垂れるよだれを止めることもできない。出来るすべてを奪われ、代わりに与えられる屈辱と快感。拒むことも出来ず、頭の中はもうそれだけでいっぱいになる。
「いいよ……っ! そんならあたしの目の前で……イっちゃえっ!」
「んふぁああぁぁっ! や……っ! っひゃ……らっ! んひあっ!」
 ソノラがその手を腰元に添え、掌で思いっきりあたしのクリトリスをこすり上げた。
「らっ! ひゃめっ! らめええええええええええええええええっ!」
 ぷしゃあっ
 溜めこんでいたものが一気に噴き出した。ソノラは腰の動きを止めず、あたしの全身の性感帯という性感帯を刺激し続ける。絶頂を迎えた反動で大きく浮き上がったあたしの腰がゆっくりと下がっていく頃、ようやくソノラの動きが止まった。
「あらら〜、挑発したけどさすがに我慢できなかったか」
 じゅぽっとあたしの中に入っていたそれを引き抜くソノラ。最後の一度の強烈な刺激に、腰がもう一度だけビクンと跳ね上がった。
「あ……ひ……っ、あ……」
 ソノラがあたしの唇にちゅっとキスをする。それが、今日最後に感じた感触だった。
「ま、よく頑張った方だよね。ありがと、付き合ってくれて♪」
 その言葉を最後に、あたしの意識はふっと彼方へ消えた。
 ――上の方から聞こえる声。
「よお! 今日こそお目当ての品は頂くぜ!」
 ソノラに好き放題攻め嬲られてから丸一日。海賊の船と派閥の船が再び接触したようだ。
「姉さんをどこにやった!?」
「心配すんな、無事捕えてある。目当ての品を頂いてから解放してやるよ!」
 海賊の船長の豪快な声、ルシアンのやや高い声がかすかに聞こえる。向こうの声が大きいのか、壁が薄いのか――ってか、あたしの昨夜の声も筒抜けだったんだろうか……。
 とりあえず話の前後から考えると、別に、あたしと目当ての品を交換だとか、そういうこすい取引を持ちかけてるわけではなさそう。気質はいい人っぽいよね、ここの船長。
(ま、関係ないけど……)
 どっちでもいい。昨夜恥かかされたぶん、今日は大暴れしてやる。倉庫なんかにあたしを閉じ込めたこと、思いっきり後悔させてやるんだから。

ドーン!

「な、何だ!?」
 手始めに床下から甲板まで大穴を開けてやる。穴が開いて、船長の声がよく聞こえた。
 そのまま召喚したビットガンマーに乗って、一気に甲板まで登る。うろたえた様子の海賊たちと、驚いた様子のルシアン達が遠くに見えた。
「ね、姉さ……ぶっ!?」
「ルシア……!? こっ、こっち見んなあぁっ!」
 ルシアンの方にギルビット一閃。倉庫にあった包帯でサラシのように胸を隠し、下半身も同じレベルで隠してる。コートだけ上に羽織ってるけど、これ着てなかったらマジ捕まる。
「な……っ、ソノラ! ちゃんと武器取り上げとけっつっただろ!」
「と、取り上げたよ! 銃もサモナイト石も――コートだけは可哀想だから置いといたけど」
 倉庫の中に、機の召喚石もアクセサリーもいっぱいあったのがラッキーだった。ソノラは多分、まさかあたしが"誓約の儀式"を行える召喚師だとは思わなかったんだろう。昨日はたまたま杖じゃなく銃で戦ってたのが幸いしたかな。
 おかげで、召喚石は一晩でたんまり用意できた。倉庫の扉も簡単に壊せたし、甲板で騒いでる間に自分の銃や短剣もちゃんと探して取り返せたし。
「いっちょいくわよーっ……覚悟しなさい!」
 海賊たちに向けて、本場のエレキメデスを召喚する。ボルツフラッシュの強力な電撃が敵を惑わしてる間に、あたしは派閥の船にひょいと飛び乗る。
「リシェル! 無事でよかった!」
「あったりまえよ! あとこっち見んな!」
 駆け寄るアルバの腹を銃口で突く。アルバがせき込むのはスルーして、海賊の船をにらむ。
 相手の船からは、ソノラがこっちを見通してた。
「どうする? あそこまで強力な召喚師がいるようじゃ、立てた作戦も通用しないわよ」
「仕方ありません、ここは素直に撤退するべきでしょう」
「だろうな。撤退だ、ソノラ! あんまり乗り出すな!」
 そんな会話が聞こえてくる。だけどソノラは、身を引かずにじっとこっちを見つめてる。
「おい、ソノラ! 聞こえ――」
「ねえ、ちょっと!」
 ふと、ソノラがあたしに声をかけてきた。あたしは片手に召喚石を握り、いつでも詠唱出来るように心構えをする。
「――あんた達が船で運んでるその武器、何だかわかってる?悪魔が人の知識を奪うために作った、すごく邪悪な短剣なんだよ?」
 不意にそんな話をし始めるソノラ。あたしも思わず、石を握る手が下がりかけた。
「あたし達は、そういう邪悪な武器に翻弄されて、凄くつらい思いをした人を知ってる。――あんた達がお金儲けのためだけにそんな武器を扱うっていうのなら、あたし達は何度だってあんた達の邪魔をしに行くよ?」
 強い目でソノラがそう言った。――多分、ウソついてるわけじゃないだろう。
 あたしも知らないわけじゃない、派閥の船で運んでる秘宝"アヴィス"は、霊界サプレスの大悪魔が、人の血から知識を奪い取るために作った魔剣と言われてる。それを研究資料の一つとして、聖王国のファナンからトレイユまで運ぶのが今回の仕事だったんだ。
 ソノラの脇にいたのは霊界の召喚師だ。見識も深そうだし、知っててもおかしくはない。
 でも――だからって、潔くうんだなんて言うわけがない。
「言っとくけど、あたし達は生半可な気持ちで召喚術と付き合ってるわけじゃないわよ。呪われた魔剣だろうがなんだろうが、金の派閥の名にかけて、間違った使い方はしない。お金儲けのことばっか考えてる奴ばっかだと思わないでよね」
 そんな奴はパパだけで充分。――あたしはその辺、パパとは違うんだから。
「今度会ったら、そん時は本気でぶっ飛ばしてやるんだから!」
 あたしがいーっと舌を出すと、ソノラがふいっと身を後ろに下げた。
「……そっか。じゃ、また会うことがあったらよろしくしようかな」
「ふんっ、結構よ!」
 あたしも踵を返し、不機嫌に船室に向か――
「今度会ったら昨日よりもっと激しいこと教えてあげるから、楽しみにしてなさいよ♪」
「んな……っ!?」
 つまづきそうになって、思わず振り返る。目線の先には、にやにや顔のソノラが一人。
「そんな怖い顔しないでってば。大丈夫、ああいうのは、処女喪失とは言わないから♪」
「な……」
「ね、姉さん……?」
 アルバとルシアンの呼応に準じて派閥のいっぱいにどよめきが広がる。みんなの視線が一斉にあたしに注がれ――あたしの格好を見て何を想像したのかふっと目をそらした。
「……マジぶっ飛ばす」
 出来たてホヤホヤの召喚石から機神ゼルガノンを召喚する。
「え、ちょ……」
「ぶっ壊せえええええええっ!」
 あたしの指示とともにバカでかい機械兵の腕が海賊船に飛んでいく。霊界召喚師の作った召喚術バリアがかろうじて防いだが、すぐさま二発目を発射する。
「ちょっと、何やってんの! 船をあいつらの船につけて! 粉々にしてやるんだから!」
「だ、駄目だよリシェル! 落ち着いて!」
「す、すいません、急いで撤退の方向でお願いします!」
 ルシアンの言葉を聞いて、操舵手が船の先を回す。向こうの船も、動きが撤退ベクトルだ。
「何逃げてんのよー! あいつらぶっ飛ばしてやんないと!」
「ま、まあまあ、リシェル……」
「うがーっ! 恥かかせやがってーっ!」
 アルバにいさめられるあたしの船は想いをよそに、船はトレイユに向かう。水平線の彼方に消えていくあいつらをにらみつけるあたしの表情を見て、あの勇敢なアルバが、鬼神でも見たかのような表情でドン引きしてた。

 その後しばらく、あたしの前では"海賊"という言葉が禁句になった。

おわり

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