未来の義賊、とある街道にて



「離せ、離せえっ! やめなさいよぉっ!」
 無法者たちの無数の手に捕らえられて死に物狂いでもがくあたし。しかし両手両足をがっちりつかまれたあたしはろくに抵抗もできず危機感だけが高まっていく。
「この……やだぁ……! アル、バぁ……っ!」
「く、フィズ……!」
 助けに来てくれた家族に手を伸ばす。近く、だけど手の届かないはるか遠くのように感じる二人の距離。目と鼻の先で多数の無法者に羽交い絞めにされるアルバは、今にも唇を噛み切りそうな顔で足掻いていた。
 こんな人気のない街道にはもう誰も助けに来ない。ここはそういう場所だと直感でわかったあたしの心は絶望でいっぱいだった。

 一人前の騎士になったみたいだからこの町まで会いに来たのに…
『どーせあたしは、あんたと違って不良娘ですよーだっ!!』
 つまんないことでケンカして別れて――むしゃくしゃした帰り道の不覚。人通りの少ない街道にたくさんの無法者。あたし一人の力じゃどうしようもなくて。
 見送ろうとしてくれたのか、それとも駈け出したあたしを探しにきてくれたのか、こんな人気のない場所へ駆けつけてくれたアルバ。あたしを助けようと、勇敢に何人もの無法者を相手に立ち回って――凄く嬉しかった、けど……

「がはっ……!」
「アルバ! アルバぁ!」
 20人にも届きそうな数の連中の前には、あたしの勇者様も敵わなかった。肺の奥から絞り出されたような声とともに、アルバの体がぐらりと傾く。
 すかさず徒党を組んだ連中が飛びかかり、アルバの体をがんじがらめに捕える。
 邪魔者を押さえつけ、痛めつけ、やがてその矛先がまたあたしの方へ向く。
「嫌っ、いやっ……! アルバぁ、助けてぇ! アルバぁ!」
「や、めろぉ……っ、フィズ……!」
 必死で泣き叫ぶあたしとアルバの目が合う。諦めが悪く頼もしいはずのその目が歪み、希望がより遠ざかる気がしたその瞬間、無法者の魔手があたしの胸ぐらを掴む。
「やだぁっ! やめなさいよ……っ、ああっ!」
 胸元から皮をはぐように服を破り捨てられた。胸元が風にさらされ思わず手で覆うが、次の瞬間には手首を握られ手を広げさせられる。次の瞬間には他の手があたしの下着を引き裂いていた。黒く頑丈なタイツに遮られて一度では破りきれず、お尻だけがあらわになった。
 身をよじり、これ以上はと必死に抵抗する。抵抗というにはあまりにも粗末な動き、ろくに身動きもとれず、加わる力に自分の無力さばかりを思い知らされるばかり。
 そして文字どおり紐一本でつながっていたようなあたしの下着を太い指が引きちぎる。
 数多の手が、体にわずかに残った布きれを取り払いながら、あたしの足を力まかせに開かせた。
「やめてよぉっ! こんなの……っ、やだあっ!」
 アルバが思わずあたしの方からは顔をそらしてる。だけどアルバを押さえつける男の嗜虐的な目が――そしてその手がアルバの髪をつかみ、その顔をまっすぐあたしの方に向けていた。アルバにだけはこんな姿を見られたくない――そんなあたしの心の奥を見透かすかのように。
「嫌あああああぁっ! やめてえっ! お願いだからあっ!」
 丸裸で泣きながら懇願するあたし、目をぎゅっとつぶって唇から血を流すアルバ。
 大切な人を守れない無力さ、諦めたなくて抗う自分、だけど少しも変わらない現実――無我夢中で獣のように吠えたけってあがくアルバに、それをがっちりと押さえつける無法者たちの嘲笑の目は、アルバの絶望とも言える苦悩をあたしに届けた。
「やめろ、やめてくれぇっ! フィズぅ!」
「いやあああっ! アルバぁ! 助けてよぉっ!」
 アルバの悔し涙だけが儚げに飛んでくる。絶望と恐怖の渦中にあたしが身を置く前で、アルバも自責の地獄の中にいるのがわかって、胸が引き裂かれそうになる。
 やがて男の一人がベルトに手をかけ、ズボンを下ろすといきり立った真っ黒な悪魔が頭を出した。
「っひ……!? や、いや……やだ……!」
 ぞっとする光景に言葉を失い、のどの奥からかすれた声が出てくる。最悪の展開に必死で抵抗する少女達だったが、逃げることも助けることも叶わず、その巨大な悪魔がゆっくりとあたしの秘部ににじり寄る。
「だめ……やだ、やだ……あ、あたし、初めてなのに……こんな、こんなの……」
 震えた泣き声で訴える。いつか出来る大切な人に捧げるために、生まれた日からずっと守ってきた純潔。それだけは、それだけは――
「!? あぐ……っ!? いぎ、あ……!?」
 それがわずかにあたしの入口の門をくぐった瞬間、想いも吹き飛ぶ強烈な電撃が全身を駆け抜けた。指先まで硬直し、背骨が逆方向に折れそうなぐらいにのけ反る。
「は……あ、が……っ!? あ、あ゛っ……!?」
 乱暴に奪われた処女。痛いなんて言葉で済まされるもんじゃない――体の中で一番敏感な所を切り裂かれた――その激痛に、声にならない悲鳴と胸の奥の空気が全部口から洩れる。
 今までの人生で最大の痛み。これが、まだ序の口。男がその悪魔を、さらにひと押し奥にねじ込む。
「あ゛、っぎあああああっ!? ひぎいぃぃいいっ!?」
 ぶちぶちと、次々に体の中を引き裂かれるような感覚。進めば進むだけ新しい痛みが生まれ、太ももまで血みどろになった自分の姿が頭に浮かぶ。
 硬直してた体にやっと感覚が戻り、痛覚に思わず、体が最大限の抵抗を始める。
 さっきまでどれだけ足掻いても涼しい顔をしてた連中も、より力をこめてくる。全力の中の全力の抵抗。だけど解放はしてもらえなくて。
「痛い、痛いいいいっ!? いやあああああっ! 助け、っ、助けてええええっ!」
 処女膜をズタズタに削り荒らした爪痕を竿が擦り、その頭がさらにその先を突き破る。
 体の奥からえぐられる感覚に、悲鳴をあげずにはいられない。がっしがっしと乾いた傷をすり切る苦痛、前後するそれが動けば動くだけ、あたしの"女"は悲鳴をあげる。
 真っ赤に傷ついたあたしの胎内を残虐にかき荒らして悦ぶそれが震えるたび、その苦しみはあたしの脳髄を焼き焦がした。
「あが、あ……っ……、ひぐ、っ、ぎ……」
 泣きわめくのにも限界があった。痛みはまったく遠ざかることはないけれど、やがてパニックもおさまってきて、痛みから伝わる現実が克明に頭に描かれる。
「痛い、痛いぃ……っ……、やめて……やめて、よぉ……」
 体はもう抵抗出来てなかった。マネキンのように無法者たちに体を預け、涙目と枯れた声で許しを乞う。それが無駄なことだという現実を受け入れられずに――
「アルバぁ……えぐっ……見ないでぇ、っ……お願いぃ……」
 今すぐにでもこの世から消えてしまいたかった。好きな人にこんな姿を――そう、どれだけひどいケンカをしたって一度だって嫌いにならなかったアルバ。自分が好きな人は、とっくの昔からわかっていた。もし仮にアルバの方から好きだと言ってくれたら――そんなことを真剣に思い描いた淡い思い出。闇の向こうにその純粋な想いが消えていくのがおぼろげに見え、堕ちていく自分の姿が明確に見えた。
 こんな形で気づくなんて――そう思った矢先、体の奥深くで大きな躍動が生まれる。
「っ!? っひ、あ……!?」
 胎内の魔物が熱く膨らみ、びくびくと踊る。前後しながらでもわかるその震えに、この後何が起こるのかが直観的に伝わってくる。
「駄目、っ……! それ、それだけは……っ、いやあっ!」
 枯れ切ったはずの声を絞り出して拒絶の意思を示す。最後の、せめてもの抵抗だった。
 びゅくっ
「っひ、あああああっ!? いやっ、いやあああああっ! だめええええっ!」
 お臍の内側に熱いものを感じた。すべては手遅れ。どくっ、どくっ、どくっ――それは絶え間なく注ぎ込まれ、あたしのお腹の中を生温かく満たす。
「あ、あああ……いやあ……いやあ、っ……」
 全身から力が抜け、ただただ奥まで差し込まれた男根が吐き出す汚れを受け入れさせられるあたし。体の芯から汚された、何ともいえない気持ち悪さが全身を包んだ。
「ひどいぃ……ひどいよぉ……っ……」
 むせび泣くあたしをせせら笑いながら、すべてを吐き出した黒い悪魔は引き抜かれた。
「ん、ぶっ……!?」
 さらに口に太い別の何かを押し込まれる。生臭くて黒光りするそれを一気に喉の奥まで押し込まれて、胃の中の空気が逆流するような感覚に襲われる。
「んぐ、はぁ……っ!? あぶっ……んあ゛あ゛っ!」
 口いっぱいに不快な匂いが広がる。だけどろくに空気を逃がすこともできず、思わず視界が真っ暗になる。
 ずぷ――っ
「ん、っぐうううううう!?」
 視界の外で別の太い何かがあたしの下半身を貫いた。腫れあがった局部に再び鋭い痛みが走る。詰まった喉から悲鳴が漏れるが、間髪入れずにそいつが動き出す。
「おご、あああっ!? あが、っ、あああああああっ……!」
 痛みよりも窒息しそうだった。口元でぐぷぐぷと音を立てて前後する肉棒、気を散らすように子宮を突くもう一本。最初の一度で吐き出された精液のせいで滑るのか、股下を包むのは痛みよりも不快感だけが先立った。
 びゅるるっ
「がは……!? あぐ、ああっ……! っ、げほっ、げほっ……!」
 喉の奥に焼ける様な精液が噴き出される。吐き出す暇もなく胃の奥まで流し込まれて、ペニスが引き抜かれる頃には口から唾液だけが溢れた。
「はぁ……はぁ……あ、ああ……」
 もはや無抵抗のあたしの姿勢を起こし、別の男が――
「っひ、ぎ……!? やめ……そこ、違……!」
 メリ――メリメリ――ッ
「あ゛……っ、あがああああっ……!」
 お尻を貫く凶刃。入るはずのない大きさのものが力任せにねじこまれた。そして前後に差し込まれた二本の悪魔が乱雑なリズムで動く。
「んああああああっ! あひあああああああっ! 」
 お腹の中、しかし交わりあわないはずの二つの管が同時にこすられる。今まで感じたことのない感覚に、よくわからない絶叫をあげずにいられなかった。
「あああっ!? ひゃめへえええええっ!」
 またも胎内に吐き出される大量のスペルマ。二人ぶんの精液なんて納まりきらず、溢れたぶんが太ももをつたう。そして時間差でお尻の奥にも生温かい躍動が生まれた。
「いひ、ああああっ……! もう、もう……やめ、へ……っぐ……!?」
 代わる代わる口を犯され、反発することすら出来ない。育ちかけの胸を揉みしだかれ、糸の切れた人形のようなあたしの体は、丸裸のまま弄ばれる。
 時には口の中に、時には口の外に吐き出される大量のザーメン。全身どろどろになったあたしの体は、もはや正常な感覚を成していなかった
「あは、っ……あ、あああっ……ん、ああああっ……」
 前を後ろを突き犯され、ぬるぬるでいっぱいになった体の中で前後する無法者の竿。
 痛みはもう感じなかった。代わりにあったのは、もう好きにしてという諦めの気持ち。
 ただ――
「んああっ……ア、アル、バ……見な、いで……っ、んあああああっ!」
 堕ちていく自分の姿だけは――泣きはらしたような目のアルバにそんな想いで訴える。
 アルバは目を閉じて――だけど今のあたしの声はきっと耳に届いてしまってる。
「んひっ……あはあっ、あん……っ、ひああああっ……!」
 情けなくよがるあたし。下半身を支配する不可解な感覚。イヤなのに――やめてほしいのに……体がうまく反発できない。どうしちゃったの、あたし――どうし……
「あはっ、あっ、はぁあああっ……! いああっ!? んひいぃぃぃっ!」
 心が拒絶する半面で、お腹の中が躍るような感覚が理解できた。うそ――こんな、こんな連中ので、あたしの体――あたしの体って……
「はひ、いいいいいいっ……!? いひゃああああああっ!」
 体を包む強烈な感覚に思考がまとまらない。性感帯を凶悪に刺激される感覚にやがて身を任せている自分、このままじゃ――ア、アルバの目の前で……っ……!
「らめっ、らめっ……も、もう、っ……あた、ひ……んあああああっ!」
 どくっ――お尻の奥とお腹の奥で同時に、再び熱いスペルマが爆ぜた。
「あひゃ、っ……!? ひゃめえええええええええっ!」
 アルバの目の前で、ぷしゃあっと吹き出されるあたしの愛液。いつかこの処女を捧げたいと無意識に想っていた人の前で――あたしの体は意に反して絶頂を迎えた。
「は……っ、は……っ……、は、ひ……っ……」
 凌辱はまだ続くようだった。だけど、あたしの中ではもう、全部が終わった。今までの人生、そしてこれからの希望も――全部――
「ア、ルバ……あたし……あた、し……」
 体に力が入らないまま、アルバの方を見つめる。涙でゆらゆらとゆらめく光景の向こうに、悔しさでいっぱいの目をしたアルバの瞳が見えた。
「ごめん……あた、し……汚れ、ちゃっ……た……」 
 力のゆるんだ股下、だらしなく失禁するあたし。口いっぱいに広がる汚れた匂いに魂を削り取られるように、あたしの意識は闇へと呑みこまれていった。


「にゃははは〜、毎度あり〜♪」
 ぐったりと絶望の渦中で思い巡らせるあたしを、細い腕が抱き起こした。涙で揺らめく視界の向こうに、チャイナ服の小さな女の子のシルエット。
「だ……れ……?」
「あ、ひどーい。今日のお昼にお店にいらしてたじゃない?」
「街、角……?」
「そうよ。今朝、占ってあげたでしょう?」

『――ふむふむ。あなたは想い人に会いに来たはいいけど、なんだかあまり素直に接せる自信がないと』
『ちょ、ちょっと、そういう言い方されると恥ずかしいじゃない』
『あら、違うの?』
『違うっていうか……正直よくわかんないよ。ずっと一緒に暮らしてきた家族だし……』
『ああ、なるほどねぇ。――よし、まかせなさい♪よく効くおまじないがあるの』
『おまじない?』
『ええ、きっと次にその殿方に会った時、その方への気持ちがはっきりするわ』

「ね、素直になれたでしょ?やっぱりあなた、その殿方のことが好きなのよ♪」
 少女が指を鳴らすと無法者たちが――その無法者に押さえつけられていたアルバまでが一枚ずつのお札のようなものに変わる。白濁まみれになっていたあたしの体もいつの間にかきれいになって、破かれた服も元通りになっていた。
「安心しなさいってば、あなたを攻め立てたのは、あくまでヒトカタの符を使った幻。操を奪ったわけじゃないから、お気になさらずに♪」

(…………)

 あたしは自分を抱き起した手から離れるようにすくっと立ち上がり――
「? あー、お姉さま?もしかして、怒っ……」
 小さなメガネが粉々になる勢いで、顔面に拳をめり込ませてやった。

おわり

目次

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