One day with pretty rabbit



「う、ううん……」
 薄闇の中で目を開く。そこに見えるのは見慣れた部屋。自分の部屋だ。
 なにも普段とかわらない。いつも通りの目覚め。
 まだぼんやりしている起きぬけの頭。徐々にはっきりしていく身体の感覚。
 その中で最初に感じるもの。ズシリ。重みだ。人の一人分の重み。
 これまたいつも通りのその重さにひとりごちて曰く。
(またか……)
 フッと息を吐く。案の定だった。自分を枕に眠りこける誰かさん。
 ほんとにスヤスヤと気持ちよさそう。実にいいご身分なことだ。
 まあ、その誰かさんに言わせればこっちが家来なんだからそれも当然なのだろうが。
(あんま人のこと言えねえし……)
 もたれかかってくるその華奢な身体。気づけばギュッと強く抱いていた。
 ピタリと接する肌と肌からは温もりが直に伝わっている。それは幸せの温もり。
 抱き心地もまた最高である。許されるのならばこのままずっと抱いていたい。
 自分の胸元ですうすうと寝息をたてているこの愛らしい雌ウサギを。
「ハッ……」
 息を吐く。目を細める。そして愛しく髪を撫ぜる。
 普段は帽子を被りっぱなしの頭。こうして撫ぜてみると被り癖がよく分かる。
 少し広めのおでこ。前髪の分け目を掻きながら親指で触れる。
 そして一方の手で髪を撫でながら、頬に触れるもう一方の手。
 少し名残惜しいが仕方ない。そろそろ起こす時間だ。
「ほら、そろそろ起きろ……」
 そう呟いてツンツン。柔らかな頬っぺたを指先で突く。
「んっ……んぅぅ……」
 するとウサギは顔をしかめて呻く。しかしすぐにまた寝入ってすうすう。
「朝・だ・ぞ・お・き・ろ・」
「んぅぅ……んっ……んぅぅ……ぅぅ……」
 そうしてまた指先でほっぺを何度か突く。けれどウサギも中々に手ごわかった。
 また顔をしかめて唸りながらも一向に目を開けようとしない。
 意地でも起きないつもりらしい。おのれ強情なやつめ。
 そっちがその気ならこうしてくれる。
「っ!?」
 すると刹那、指先はウサギの唇をなぞる。ウサギはビクッと反応する。
 期待通りの反応だった。唇をなぞった指はそのままウサギの顎先を捉える。
 それと同時に起こす半身。髪を撫ぜていたもう一方の手でウサギの背を支えて。
 ギュッと抱き合った姿勢のまま。向かい合うのは雄と雌。緊張に震える雌ウサギ。
 さあ、くれてやる。ずうずうしくも狸眠りをかます雌ウサギに対して。
 それはもう飛び切りの目覚まし効果のある熱い一発を。
「んむっ……んっ……」
 チュッ。塞いでやった。柔らかなウサギの唇を自分のそれで。
 それはもう慣れ親しんだ感触。慣れ親しんでそれでなお、やみつきにさせる感触。
 キス。吹きかかるお互いの鼻息。こそばゆい。けれど止められない。
「んっ……んむっ……んぅ……んっ……あっ……んちゅ……」
 口の中で触れあう舌と舌は絶妙。互いの唾液を塗りたくりながら甘く解け合う。
 蕩けるように濃厚な甘さ。それは極上の甘味。どんなデザートでも表現できはしない。
 触れ合う。抱き合う。キスをする。そうするだけで互いの存在が混じり合う。
「んむっ……あむっ……んちゅ……んぅ……」
 むしゃぶるように唇を吸い続けた。こんがらがるぐらい舌ベロを絡ませ続けた。
 息が苦しくなるまで。苦しくなったら息継ぎをして、また直にチュウチュウ。
 何度も何度もチュウチュウチュウ。ネズミじゃあるまいしと心の中で苦笑い。
 けれどもチュウチュウ。やめられない。まだまだチュウチュウ。やみつきになる。
「んっ……ぷはっ……はふっ……」
 そうして何度目かの息継ぎに顔を離す。そして気づく。口元を濡らすお互いの唾液。
 濡れてベトベトな自分達の顔。
「ふっ……あははっ♪」
 そんな涎まみれの顔を見合わせて互いにほころぶ。
 少しだけ寝ぼけ眼。けれど直に覚める。なんとも効き目抜群の目覚めのキス。
「いい加減、目が覚めたか。この寝坊助」
 そう言ってライはニヤリとする。するとぷくっと膨れた頬をほんのり染めてリシェルは呟く。
「もうちょっと、マシな起こしかたをしなさいよ……」
 照れくさそうにそう呟くリシェルにライはニヤニヤと微笑む。そうして間を置くこと数秒。
 仕切りなおしのお目覚めのキスをライとリシェルは再び堪能するのだった。




「本当にこれ全部、オマエ一人で作ったのか?」
 食卓を指差しながらライは感嘆する。そこには朝食の品々が並べられていた。
 こんがりキツネ色のトースト。丁度いいぐらいの半熟加減のベーコンエッグ。
 サラダの盛り付けも一応、様にはなっている。パッと見ただけで美味しそう。
 以前のものとは格段の進歩を遂げたリシェル作の朝ごはんがそこにはあった。
「ふふん♪どうよ。これがこのリシェル様の実力ってもんよ」
 予想外の出来栄えの朝食に呆然とするライにリシェルは得意ぶる。
「本当にオマエ一人で作ったんだよな。実はひそかにポムニットさんが来てこっそり手伝ってたりとかはしてないよな」
「なによそれっ!疑う気っ!?それに今、あたししかいないじゃない!」
「いや、知らないうちに隠密とか身につけてそうだ。あの人は」
「確かにそうね。あの娘ならそれぐらいは……ってんなわけあるかぁっ!いい加減怒るわよっ!」
「冗談だ。冗談。悪かったな。リシェル」
「まったく、もう」
 とまあそんな感じにお約束なやり取りをリシェルとしながらライはテーブルにつく。
 本当はライも知っている。おおよそ水仕事には無縁であろうリシェルの手。
 その手にいくつかの包丁のタコがいつのまにか出来ていたことぐらいは。
 多分、家で猛特訓したのだろう。次は期待していると自分がいったあの日から。
「さっさと食べなさいよ。自信作なんだから」
「あ、ああ」
 手を見つめて少し物思いに耽っていると急かされた。やれやれ。ならば賞味させてもらおうか。
 その自信作とやらを。ベーコンエッグを適当なサイズに切ってトーストの上に載せる。
 そしてパクリ。その味の程は。
「う……」
 口に運ぶと香ばしいトーストの香りが鼻腔をくすぐった。
 半熟の黄身。口の中でつぶれる。すると濃厚な黄身のエキスが溢れ出す。
 トロトロの卵黄。それがさくりとした触感のトーストと混じる。
 そして後口に残るベーコン。その三者が絶妙なハーモニーを生み出して。
「美味い……」
 気がつくとライはそう呟いていた。その呟きを聞いてぱあっと明るくなるリシェル。
 してやったりとばかりに軽く拳を握り締めてガッツポーズをしている。
 よっしゃと呟いてからさあ、もっと食べてとおかわりの皿を出してくる。
 おい、こらちょっと待て。オマエいったい何人分作ったんだよ。
 なんかところどころ失敗作も混じってるぞ。そいつら。
(まあ、いいか……)
 そう突っ込むのも忘れてライは幸せに浸っていた。
 ただ美味い朝食なら自分でいくらでも作れる。この朝食のン百倍は美味いヤツを。
 だけど敵わない。自分がどれだけ天才料理人であったとしても。
 この朝食以上に満たされるものを作ることは決してできはしない。
 リシェルが作ってくれた朝食。愛する彼女が自分だけのために作ってくれた手料理。
 それは誰にでも作れる簡単な料理だ。味自体は極普通。平々凡々な普通の朝食。
 けれど愛情という名のスパイスはそんな並の料理さえ筆舌に尽くしがたい美味に変えてくれる。
 ミュランスの星なんていくつあっても足りないぐらいに。心から本当にそう思う。
 少し焦げ目のつきすぎた二枚目のトーストをかじりながら、嬉しそうに微笑むリシェルを見つめてライはそうひとりごちた。
 

 
「んっ……んむっ……ちゅっ……」
 そうして、またキスをしていた。今日も慌しかった営業時間を終えて。
 思えば今日はキスばかりしている。朝も昼も夕方も飽きることなく。
 空いた時間があれば顔を合わせてチュウチュウチュウ。
 バカップルにも程がある。でもそれでいい。いや、それがいい。
 少しでも長くこんな幸せな時間を味わっていたいから。
「んはぁ……はふっ……んふっ♪」
 キスを終えて、ほんのりピンクに染まった互いの顔を見るのが好きだ。
 なんだか照れくさい。けれどすごく嬉しくなる。
 何度もキスして、抱き合って。それで互いの”好き”を確認できるから。
 見つめあったままでしばらく余韻に浸る。顔が自然とほころんでくる。
 そんな風にして幾分が時計の針が進んだ頃合で、はにかみながらリシェルは呟く。
「お風呂……先に入ってくるね……」
「あ、ああ」
 今日も一日中働いて、流石に汗をかいていた。仕事で流した汗の臭い。
 キスしている間は気にしなかったけれど。続きはそれをサッパリさせてから。
 そう心の中でライが納得していると去り際にリシェルが耳元でポソリと呟いた。
「待ってるから……」
「っ!?」
 そう呟くとリシェルはそのままスタスタと風呂場へと歩き出した。ライはドギマギしていた。
『待ってるから……』
 心の中で反芻する先程のリシェルの呟き。
(やっぱ……そういうことだよな……?)
 軽く自問する。答えなんて分かりきっているのだけれども。
 唐突に指定された待ち合わせの場所。それはお風呂場。
 当然、リシェルと二人っきりなわけで。
(うわ、ヤベえ……)
 ドキドキドキ。この期に及んで心臓がバクついている。鼻はスピスピと音を立てている。
 ええい。なんだ今更。これまでだってもっとスゴイことしてきたじゃねえか。
 けれどドキドキドキ。ああ、もう分かっている。それは経験の問題なんかじゃない。
 どれだけ経験を積み重ねたとしても。この胸のトキメキは一生覚え続けるものなのだから。
(本当に重症だな……オレ……)
 患ってしまった恋の病。つける薬なんてない。仮にあったとしても、そんなものは要らない。
 どうせならこのままずっと一生かかっていたい。もう既に手遅れなこの”リシェル大好き病”に。
 そんな風にひとりごちながらライも足を進めた。愛しの雌ウサギが待つ風呂場へと。



「はふっ……」
 脱衣所。ドキドキと高鳴る胸を押さえながら辿りついたそこでライは息を吐く。
 傍らにある脱衣篭。見慣れたコートとウサギの帽子が乗っかっている。
 帽子の鍔にちょこんと座るはこれまたお馴染みの不気味な顔をした三匹のウサギ。
 なんとなく睨めっこをしてみる。むむむむむ。どうやら勝てそうにない。
 それにしても相変わらず変ちくりんな顔をしている。なんだか突然喋ったりとかしそう。
 そんなわけあるかと自分で突っ込みを入れてウサギ達にクルリと背を向けて服を脱ぐ。
 汗まみれの衣服を脱いで向かうは浴室。そこには生まれたままの姿のリシェルが。

『やーい。スケベ。スケベ』
『このケダモノ。ケダモノ』
『バカップル。バカップル』

「………………………………」
 なんだか後ろから声が聞こえたような気がした。空耳だろう。きっと。
 気にしない。気にしない。気にしてはいけない。
 そう結論づけてライは腰にタオルだけ巻きつけて浴室の入り口の前に立つ。
「おーい。リシェル。そろそろ入るぞ」
 引き戸を開ける前にそう一言断りをいれるライ。するとリシェルは「いいわよー」とすぐに返事する。
 どうやら向こうの準備はOKのようだ。こちらも出撃前の状態確認。
 ドクドクドク。ううむ。興奮状態。スピスピスピ。うわ、既に発情しちゃってるよオレ。
 そんな風に冷静に自分の状態を確かめてライはなんだかおかしくなってきた。フッと軽く笑う。
 火照るような熱が身体にも脳にも回った状態。これが多分ベストテンションなのだろう。
 愛しい相手と睦まじい時間を過ごす場合においての。さあ、準備は万端。いざ出陣。
 ガラガラガラ。音をたてて引き戸は開く。
「おぅ…………」
「あっ…………」  
 そうして中に入って早々にリシェルと目があう。石鹸の泡塗れのリシェル。
 どうやら先に身体を洗っているらしい。リシェルの身体で泡立つシャボン。
 その泡がところどころ部分を隠す。うーん。惜しい。いや、これはこれで美味しいのかも。
 丸出しよりもチラリ見える方がそそられるもので。
「なにジロジロ見てんのよ」
 するとリシェルに早速つっこまれた。これもまあ、お約束。
「また鼻スピスピ言ってるし……なんか前屈みになってるし……」
 しょうがないだろう。生理的現象だ。鼻頭を押さえて首筋をとんとん叩きながらライはそうひとりごちる。
「むぅぅ……」
 そんなライをリシェルはしばらく顰めた顔で見つめるがハッと息を吐いて
「本当にしょうもないわよねえ。あんたって……」
 そう呟くリシェルの顔がなんだか火照って見えるのは多分、湯気だけのせいではないのだろう。
 少し赤面してたじろぐライ。そんなライにリシェルははにかみながらポソリと言葉をかける。
「あのさ、あんたもちゃんと洗うわよね。その……身体……」
「あ、ああ……も、勿論……」
「じゃあ……さ……あ、あんたが良かったら……なんだけど……」
「な、なんでもいいぞ……今ならなんだって……OKだ……」
「そ、そう……よかった……だったら……あたし……」
「う、うん……?」
「あたしが……」
 互いに緊張しまくりの受け答え。もう何を言っているのか自分でも定かでない。
 だが大体のことは飲み込める。用はリシェルが身体を洗ってくれるということだ。
 泡まみれのお嬢様がお風呂で御奉仕してくれる。それってなんてプレイ?
 想像しただけで。想像しただけでヤバイ。うげえ。マトモに前見れねえ。
 テンパりまくりでライは視線をキョロキョロさせる。うわ、周りの景色がこんがらがった。
 床のタイルやら染みってらな天井やらでもうわけわかんねえ。落ち着け。スーハー。落ち着け。
 落ち着いて前を見るんだ。そこに何が見える。リシェルだ。すっぽんぽんで泡塗れのリシェル。
 気がつけばすぐ目の前にいるじゃないか。ああ、可愛いなあ。こんなに可愛いリシェルが。
 もう自分と触れあうほどすぐ近くに。…………え?触れあうほどすぐ近く?
「のわぁぁぁああああっ!」
「キャッ!」
 いつのまにかピタリくっつくぐらい近くに寄っていたリシェル。ライは驚き大きく仰け反る。
 ドクン。やばい。また心臓バクついてきた。ドキドキドキ。止まんねえ。
「な、なによ……いきなり驚いたりして……こっちがビックリしちゃうじゃない……」
「い、いや……だってオマエ……そんないきなり……」
「うぅぅ……やっぱり……こういうの……あんた……嫌……?」
「い、嫌じゃないぞ!むしろしてくれ!頼むっ!」
「う……そういう風に頼み込まれると……ちょっと引く……」
 そんな風に戯れることしばし。ようやくテンパってきたライの頭が落ち着き始めた頃合でリシェルが曰く。
「あ、あんたがして欲しいって言ったんだからね……」
「あ、ああ……」
「あたしは……別に……こんな恥ずかしい事……仕方なくなんだからね……仕方なく……」 
「わ、わかってるって……」
「………………………………」
「………………………………」
 そうリシェルが念を押すとしばらく二人無言だった。けれど体勢はちゃっかりと整えていた。
 タイルの床を背に仰向けに寝転がるライ。そんなライに対し石鹸の泡を更に泡立てながらリシェルは
「っ…………」
「うぉ…………」
 ペッタリ。泡塗れのリシェルの身体はライにぴたりとくっつく。身体を洗うためのスポンジがわりに。
 いわゆる泡姫プレイ。する方もされる方もすごく恥ずかしくなる。
「キ……キレイにしてあげるんだから……」
「うっ……キレイに……してくれ……うぉっ……おふっ……」
 そうしてリシェルは泡塗れの自分の身体を擦り付ける。下になったライの身体に対して。
 ゴシゴシ。ゴシゴシ。身体全体を使っての御奉仕。ゴシゴシ。ゴシゴシ。いい気持ち。
「ふっ……はっ……はふっ……んっ……」
「くぅ……あはっ……あふっ……うくっ……」
 アルカリ性の滑りを擦り付けるごとにリシェルは吐息を漏らす。それにつられてライも喘ぐ。
 なんとも言えぬ気持ちよさだった。石鹸の泡に包まれたリシェルの身体。
 それがスポンジがわりにライの身体を擦っている。密着して擦れあう肌と肌。
 にゅるり。にゅるり。すごくよく滑る。塗りつけられる滑りはさながら潤滑油。
 むにゅっ。胸板でつぶれるリシェルの控えめな膨らみ。ああ、柔らかい。
 潰れながらスリスリ動いてくれる。なんて幸せ。気持ちよさのあまり乳首が勃ってきた。
 すると乳首同士が軽く擦れる。くぅぅぅ。ヤ、ヤバイ。クセになりそう。
「はぁっ……ふっ……あふっ……んっ……はっ……どう?……気持ち……いい?」
 一心に身体を擦りつけながらリシェルは尋ねてくるがそんなもの気持ちいいに決まっている。
 というか天国だった。願わくばこのままずっと堪能していたい。スピスピ。ライの鼻息は荒くなる。
 そんなライの様子に満足したのかリシェルは微笑んでより丹念に自分の身体でライを擦る。
 ゴシゴシ。ゴシゴシ。ライ専用のリシェルタワシ。ゴシゴシ。ゴシゴシ。心まで洗われてしまいそう。
「はふっ……あふっ……んっ……ふっ……あふっ……ライ……」
「うっ……くぅっ……あっ……くぁっ……リシェ……ル……」
 ぬりゅっ。ぬりゅっ。ヌメヌメした泡に身も心も二人は包まれていた。粘膜が織り成す官能。
 触れあう肌と肌。ニュルニュルと擦れる。胸と胸が、お腹とお腹が、そして割れ目と根元が擦れあっていた。
 トロトロの愛蜜の垂らすリシェルの秘部。それが優しくす股でライの根元をマッサージしてくれる。
 するとムクッ。ムクッ。たちまち元気になってしまうライのシンボル。今日も絶好調だった。
 快感に悶えるライ。構わずにリシェルは奉仕を続ける。もっと、もっと気持ちよくなって欲しい。
 そしてもっと、もっとあたしを好きになって欲しい。だからこんな恥ずかしいことだってできてしまう。
 本当に恥ずかしくて死んじゃいそうだけど。特別なんだからね。アンタにだけは。
「くっ……はっ……ふぁぁぁぁああっ!」
「くぉっ……うっ……リシェルっ!」
 そうして達するのは二人同時であった。プシュッ。リシェルの割れ目から噴き出た愛液はライの竿を濡らす。
 ドピュッ。ライの放った白濁はリシェルの尻肉を濡らす。ヌルヌルの肌と肌を擦り付けあうコミュニケーション。
 その果てにあるのはお互いの体液に塗れあう恍惚の瞬間。ポタ。ポタリ。ああ、垂れている。
 トロ。トロリ。こんなにも熱い雫が。これが幸せ。なんて幸せな気持ち。
「んちゅ……んっ……むちゅ……んむっ……」
「んっ……んぢゅっ……んちゅ……んっ……」
 そんな幸せなの名残を楽しむように二人はまたキスをする。絡み合う唾液にまみれた舌と舌。
 そこにまた生まれるヌルヌルの幸せ。そんな幸せをずっと二人で感じていたかった。



「……ふふっ……えへっ♪」
 下から見上げるリシェルの笑顔。随分と無邪気なものにライには感じられた。
 あれからまた飽きるまでずっとキスをして、気がつくとこんな感じの姿勢になっていた。
 いまだ仰向けのままのライ。その上に跨るリシェル。いわゆる騎乗位の姿勢。
 そうとくれば行うことは一つ。ビンビンに勃起したライの肉竿。微笑みながらリシェルは指で突く。
「くぉっ……」
 するとライは呻く。そんなライにリシェルは小悪魔のような笑みを見せてニンマリとする。
(こんにゃろめ……)
 心の中でライは毒づく。どうにもこのお風呂場ではリシェルに主導権を取られがちだ。
 これがベッドの上だったら即座に押し倒して今頃ヒイヒイ言わせちゃるのに。
 けれどこんな風にリシェルのするがままにされるのもこれはこれで悪くなかった。
 実際、気持ちいいし。クニュ。クニュ。クニュ。おい、こら。勝手に先っぽ指で弄くるな。
 クチュ。クチュ。うわ、やめろ。お口ではむはむするんじゃない。まったく。
「んっ……はふっ……んふっ♪」
 トロトロと滲み出るライのカウパー。それに口元を濡らしながらリシェルは微笑む。
 するとリシェルは腰を浮かす。ギンギンにおったったライのペニスに自分の割れ目をあてがって。
「……いい?」
 照れくさそうにポソリと尋ねてくる。いいに決まっている。つうかしてくれ。頼む。
「……そう。それじゃあ……んっ……」
 グニュッ。刹那、重力の方向に従ってリシェルの身体は沈みこんだ。直立するライの肉竿めがけて。
 グニュ。グニュ。グニュ。包み込む肉蓑。滑り落ちながらリシェルの肉はライの肉をとらえて。
「ふぁぁぁぁぁあああああああっ!!」
「くぁぁぁぁぁぁああああああっ!!」
 挿入と同時にライもリシェルもともに喘いでいた。重なる瞬間。目覚める快楽。
 激しい肉の悦びが刺激となって二人の脳を貫く。
「あうぅ……すご……ひっ……深……ひっ……刺さって……る……」
 根元まですっぽり膣内におさまったライの肉棒。膣肉でギュッと締め付けながらリシェルは悶える。
 ギュムッ。ギュムッ。肉根は揉まれるようにしてピッチリと膣肉にフィットしていた。
 感じることのできる一体感。一つになっている。大好きなライと一つに。それだけでリシェルは満たされる。
 ピクッ。ピクッ。あはっ♪ピクピクしてる。ライがあたしの膣内で。
 ビクンッ。ビクンッ。こんなにも正直に気持ちいいって言ってくれてる。ねえ、ライ。あたし今、すごく幸せ。
 大好きなあんたとこうして一つに繋がる事ができて。大好きなあんたをこうして悦ばせてあげられる。
 大好きだよ。ライ。もっと、もっと気持ちよくしてあげるからね。だからもっと、もっと好きになってね。
 あたしのこと。もう骨の髄まであんたをあたしの虜にしてあげちゃうんだから。
「んっ……あふっ……う……動くね……」
「くぅぅ……ああ……頼む……」
 互いに快感に悶えながらの手短なやり取り。悦楽の涙を目じりに滲ませながらリシェルは腰を動かし始める。
 すっぽりとライを包みこむリシェルの膣肉。ニュルリとまとわりつくように絡みつきながら肉竿を扱く。
 ズリリリリ。滑った肉と肉が激しく擦れた。なんとも卑猥な摩擦。
「はぁぁぁぁああああっ!!」
「くぅぅぅぅうううううゅ!!」
 するとまた二人同時に喘ぐ。たまらなかった。トロトロに滲む愛液が先っぽから漏れるカウパーが。
 より濃密にライとリシェルの肉と心を繋ぐ。クニュ。クニュ。グニュッ。グニュッ。
 そうして行う逆ピストン。気持ちいい。
「ふぁっ……あふぁぁぁっ……あひっ……んぅぅぅ……くふぅぁぁ……」
「おっ……くおっ……あっ……くぁぁぁっ……あくぅぅぅ……」
 肉根が膣内から完全に抜け出す寸でのところでリシェルはまた腰を落とす。根元まで刺さると腰を浮かす。
 何度も何度も騎乗位の姿勢でそれを繰り返す。リシェルの腰使いは慣れたものだった。
 どのように動けばライがもっと悦んでくれるのか。リシェルにはもう手に取るように分かる。
 竿全体を扱く。膣肉をめいいいっぱいに使って。かと思えば今度はカリ首を重点的に責める。膣口に力を入れて。
 ライの敏感な箇所に自分の肉襞を這わせる。あひっ。はひっ。らめぇぇ。あたひ、おかひくなる。
 ライを悦ばせると同時にリシェルも快楽を味わう。んふっ。あふっ。あくぅぅ。ヤミツキになっちゃう。
 気がつけばリシェルの方がライの虜にされていた。これじゃミイラ取りがミイラだ。でもそれでいい。
 自分で感じて素直に喘いでくれるライ。喘ぎながらリシェル、リシェルと何度も名前を呼んでくれるライ。
 愛しかった。愛しくて愛しくてたまらない。だからもっと、もっと気持ちよくなって。
 そしてもっと、もっといっぱい幸せになろうね。あたし達。
「んっ……んむっ……んむちゅ……んっ……」
「っ……むっ……んぢゅ……んちゅ……」
 腰の動きは緩めずに上半身だけをかがめてリシェルはライにキスをする。するとライはリシェルを抱きとめる。
 交わす接吻。交接はその間も続いた。ジュップ。ジュップ。下の唇は肉の棒と盛んに擦れあって。
 ジュルリ。ジュルリ。上の唇はその中で舌と舌を濃厚に絡ませあう。ヌチュヌチュ。ジュルジュル。
 響く卑猥な水音。身体の中で。心の中で。今ひとつに溶け合っている。そう一つに。
「ふぁ……あふぁぁ……ライぃ……」
「くぅぅ……うっ……リシェルぅ……」
 キスを終えて見合わすは快楽に打ち震えて涙目のお互いの顔。リシェルの中でライは臨界に達していた。
 切なく見つめてライは訴えかける。するとリシェルはコクコクと頷く。それが二人の間の合図。
 刹那、ライは脱力する。そしてビュクッ。
「くぁぁぁあああああっ!くぉぉぉぉぉぉおっ!リシェルぅぅぅうううっ!!!」
「ふぁぁぁああああああああっ!熱いっ!熱いぃぃぃいいいいいいいっ!!!」
 勢いよく射出されるライの精液。子宮で受け止めながらリシェルは大きく仰け反る。
「あぁぁっ……射精(で)てるぅ……いっぱい……射精(で)てるぅ……」
 射精はしばらく続いた。ビュッ。ビュッ。ありったけの精子を存分にリシェルの胎内にふりかけるようにして。
「あたしの中で……いっぱい……ライが……いっぱい……あっ……」
 そうしてライの射精を全部受け止めてクタリ。そのままリシェルはライの身体の上に崩れ落ちる。
「大丈夫か。リシェル」
 そんなリシェルをしっかり受け止めながら優しい声音でライはささやく。するとチュッ。
 ライの頬っぺたにキスをしてリシェルは返事する。
「えへへっ♪」
「ははっ」
 一合戦終えて合わせる顔は二人ともに見事な惚気面だった。互いが互いの虜になったことを示す。
 それはもうデレデレのバカップルそのものとしかいいようのない。
 そんな幸せに蕩けきった二人が顔を合わせてすること。本当によくもまあ飽きもせずに。
 バカップル二人はまたも互いの唇を仲睦まじくチュウチュウ吸いあったのである。
 そしてキスを終えると射精したばかりのライのモノはリシェルの膣内でムクムクに元気になっていた。
 ライは苦笑し、リシェルも頬を染めながら『このケダモノ』といつものごとく呟いてみせた。
 そこからまた延長戦。お風呂場だけではし足りずに部屋に戻ってからもベッドの上で二人は交わり続けた。
 ケダモノになってリシェルを押し倒して行為に及ぶライ。リシェルも望んでそれを受け入れる。
 そこからまた改めてお風呂に入りなおさなければいけないほどのドログチョの愛欲まみれの大乱交。
 そんな激しい営みの中、最も多く交わしたのはやはりキスだった。キスを交えることで互いを癒し。
 キスを通じてお互いがお互いをより密に感じとることができた。そんなキスで始まりキスで終わる一日。
 とことんまでバカップルなこの二人にはそんな一日がふさわしいのかもしれない。


 〜fin〜

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