翡翠の夜



「やべえやべえ! すっかり遅くなっちまった!」
 店を閉め、家を飛び出す少年が一人。夜も遅くに重箱片手、いささか不思議な振舞いながら、彼は彼なりに必死だった。
「はぁ、はぁ……くそ、もう寝ちまったかな……」
 本来なら日が沈むと同時に早めに店を閉め、想い人の元へ走ろうと思っていたのに。
 この日ばかりは客商売の好きなライも、繁盛した我が店をちょっと恨んだ。
 街灯も際立つ夜闇に、想い人の家はいつもとほんの少し違う雰囲気に包まれていた。
 この家に来るのはいつでも朝早く。あの人の元気なパートナーが畑を元気に見回り、扉を叩けば早起きな家主がきれいな瞳で顔を出す。
「――ねーちゃん、オレだよ。開けてくんねえか……?」
 草木も眠るこの時間帯、ライも思わず忍び声だ。予想通り返事はなく、畑の緑が風にざわめく音だけが克明に耳に残る。
「やっぱ遅かったのかな……ん?」
 ダメ元で訪れていたライが踵を返して帰ろうとした矢先のことだった。ちょっとした気まぐれでドアノブに手をかけた瞬間、予想とは違う手応えにぞわっとする。
「カギかけずに寝てんのか? ねーちゃんにしては不用心だな……」
 頭はいいけど、ほんの少し抜けたところのあるあの人のことだ。全く無い話ではない。
 ライはため息をついて、ちょっと悪いと思いつつも靴を脱いで敷居をまたぐ。さすがにこのまま放って帰るわけにはいかないだろうし。

「ぐ……な、なんだ?この匂い――」
 家の中は、ほんのりふらつく不思議な匂いでいっぱいだった。そう広くもない家だが、ここまで充満してるとさすがにすぐわかる。
 その香りの正体は、家主の姿を探すうちにすぐにわかった。
「!? ね、ねーちゃん……?」
「んあ……? あぁ――ライ、君……?」
 居間の机に力なく突っ伏すミントの姿を見て、ライは思わず何事かと固まった。人の心配も知ってか知らずか、家主は赤らめた顔色でぼんやりとライの方を向く。
 かける言葉を失ったライの意識を舞い戻したのは、その足元で眠りこけたオヤカタの大きないびきだった。ヒゲに似合った豪快ないびきで、声をかけても絶対起きないだろうとすぐに確信できる。
「う……ねーちゃん、酒くせぇ……」
 机の上にはまだ底の赤らんだワイングラスと、うっすら中身が少なくなったことを確認できる酒瓶が並んで立っている。その酒瓶というのが一本ではなく、3本か4本もあるんだから、ライもびっくりだ。
「あぁ、ライ君、来てくれてたんら……待っててね――今、お茶……っ?」
「! ねーちゃん、危な――」
 ふらりと席を立つミント。しかしほぼ同時に両足を絡め、ぐらりとその体が倒れる。
 とっさにミントの体を受け止め、冷や汗をぬぐうライ。
「ご、ごめんね。大丈夫だから――すぐにお茶、出すから……」
「い、いや、いいよ。もう遅いし、もう帰るしさ」
「そう……」
 舌足らずのミントはしゅんとなってライに体重を預ける。酒臭いその吐息でくらっとする一方で、好きな人の柔らかい体に密着するこの状況を意識するにつれ、別の意味でライはめまいを起こしそうな気分だった。

 なんとか寝室までその重い体を運びきるライ。ひとまずミントをベッドに横たわらせ、腰を上げ……
「っ、おわっ!?」
「え〜、ライ君、もう帰っちゃうの〜?」
 無邪気な声でミントがライの腰回りを抱きしめる。立ち上がろうとしたライは思わずベッドに尻もちをついた。勢いにまかせて背中ごとベッドに体重を預けては、後ろに寝そべるミントを下敷きにしてしまうので、なんとか座ったままの姿勢でこらえる。
「いや、だってこんな時間だし、そんなに長くは――」
「やぁ〜らぁ〜っ。もうちょっとお話しようよぉ……っ」
 ふと後ろを振り向けば、子犬のような眼で自分を見つめるミントの瞳。好きな人にこんな目をされては、ライの心はがっちがちに固まるばかりだ。
「ねぇ……お願い……?」
「わ、わかった、わかったよ……」
 思わず顔を真っ赤にして目をそらすライ。似通った顔色の二人だが、明らかに両者の心中は別色だ。
「んふ〜、ありがとう♪ ライ君、だ〜い好き♪」
「んな……っ」
 酒に任せた発言とはいえ、ライの心臓は口から飛び出しそうになった。お酒など飲んだこともないのに、酔った感覚に目の前の景色がぐるめく。
「もう〜、聞いてよ、ライ君。今朝ね――」
 気が気でないライを尻目にうだうだと今日の愚痴をこぼすミント。朝から派閥からの仕事が相次いで畑仕事もろくに出来なかったとか、庭先に野鳥が入って野菜が少し食べ散らかされてしまったとか、主に今日の出来事だ。もちろん、片思いの人に寄り添われてカチコチのライの頭には内容の半分も入ってないのだが。
「どうして今日に限ってさぁ……せっかくのバレンタインデーなのに嫌になっちゃうよ、ほんと……」
 言うだけ言うと、ミントの腕から力が抜ける。同時に、バレンタインデーという言葉を聞いて、ライの胸がちくりと痛んだ。
「ね、ねーちゃん、誰かにチョコあげたんだ……?」
 ほんの少し震えた声。片思いのライには存外勇気のいる質問だったはずだが、思わず口をついて出てしまった。
「あげてないよぉ〜。今日は忙しかったって言ってるじゃない」
 質問したのを後悔しかけた所にほっとする答えだ。密かに一喜一憂するライの後ろで、ミントの声のトーンはゆっくり下がっていく。
「なんで今日に限ってさぁ……なんでぇ……」
 泣き疲れた子供のように眠りに入るのが聞いて取れた。はっとしてライは腰を上げ、持ってきて置いてあった重箱を持って来る。
 このまま寝られたら、何のために来たのかわからない。伝えるべきことだけはちゃんと伝えないと。
「ごめん、ねーちゃん、遅くなっちゃって。ほら、これ……」
 とろんとした目のミントの前にその重箱を差し出すライ。ミントは目の前の景色の変化にふっと顔を上げ、体を起こす。
「今日、誕生日だろ?だから、その……弁当、作ってきたんだ。仕事が終わったら一緒に食べようと思ってさ……」
 緊張した面持ちのライをじっと見つめるミント。差し出された重箱は大きくて、酒のまわった頭でも、その中身が二人前の量であることは見て取れた。
 バレンタインデーと重なる自分の誕生日。特に誰に祝われることもなく、いつもより多忙に過ごした今日一日。思わず飲めない酒に手を出したほど寂しかったこの日の終わりに、まさかこんな可愛らしい歓迎があるとは思わず、ミントは目をぱちくりさせるのだった。
「ごめん、その――ほんと、遅くなっちゃってさ……もっと早く来たかったんだけど忙しくて……」
 上手に言葉を紡ぎきれずしどろもどろするライの手から重箱を受け取り、おもむろに蓋を開けるミント。中身は、いつだったかミントがライに勧めた、野菜のフルコースの小さな詰め合わせだ。箱に丁寧に収められた料理の数々は、ついさっき作られたばかりだと言わんばかりにみずみずしくきらめいている。
「――遅いよぉ」
「う……」
 ふくれっつらでそう言うミントに、ライは思わず押し黙る。テイラーの小言よりも遥かに威力のあるその一言に、ライの気持ちは一気に最下点まで落ち切った。
 が――
「ほんと……今日は寂しかったんだからぁっ……」
「!?」
 ふらりと立ち上がったミントの両腕が、ライの背中の後ろで結ばれる。同時に豊満なミントの胸がライの胸に押しつけられ、火照ったミントの頬がひたりとライの首元に触れた。
「ちょ……ね、ねーちゃん……!?」
「誰も来てくれなかったんだよ〜?セクターさんも、グラッドさんも――ほんとに寂しかったよ〜」
 甘えるように言葉をつなげるミント。今、トレイユの町を離れたはずの人の名前まで挙げてるあたり、かなりまだ酒の残った頭のようだったが、こんな状況の中のライにそんな冷静な分析をする余裕があるはずもなく。
 付け加えるなら、一方的に抱きついてくるミントに押し倒されないように踏ん張るので精一杯でもあった。
「ねーちゃ、危な……」
「ありがと〜、ライ君。やっぱり大好き♪」
「んな……!?」
 必殺の一言に動揺したライが思わずぐらつく。ミントの体重を支えきれず、思いっきり後ろにすっ転びそうになった。
「はりゃ……?」
「! やっ、べ……!」
 慌てて重心を前に踏み込むが、今度は逆に踏み込み過ぎた。千鳥足のミントの体が迷いなく後方に倒れ、抱きしめられたままのライも勢いに任せて前のめりに倒れる。
 後ろはベッドだからケガはしないだろうが、このまま倒れたら自分の全体重がミントに圧し掛かる。咄嗟の判断でライは身をよじって体の向きを変えようとした。
 半身でベッドに倒れこむ二人。いや、どちらかといえばライの半身がミントに潰された形だろうか。下が柔らかいので大事には至らなかったが――
「いてて……ねーちゃん、だいじょ――」
 大事だった。ベッドに仰向けに寝転がったライの真上に、体を浮かせたミントの顔があったのだ。それもまさに、目と鼻の先。
「ライ君……」
「あの……ねーちゃ――っむ!?」
 想い人のうるんだ瞳を堪能する暇もなく、ライの目の前が真っ暗になる。ミントがその唇を、唐突にライの口元に押しつけてきたのだ。
 仰向けに寝そべって混乱するライにろくな抵抗など出来るはずもなく、その両手をミントの肩にあてて突き放そうとするので精いっぱいだった。加えて言うなら、乙女のやわ肌に初めて触れるライが全力で押し返せるはずもない。
「んむっ……っちゅ♪」
「っく……あ……!?」
 わけのわからないまま、口の中に滑りこまされる憧れの人の温かい舌。ねっとりと無防備な舌に絡みつかれ、ワインのほのかな匂いが口いっぱいに広がった。初めての口づけ、それも15歳の少年には濃厚過ぎるディープキスに、ライの脳髄まで女の味が刻みつけられる。
「っ、ぷは……」
 やがて顔をあげて口を離すミント。満足げなその表情の下で、酔いどれたミントよりも蕩けた目でぐったりと横たわるライ。しばらく口をふさがれていただけにしては異常に息も荒く、胸の高鳴りの苦しさに時々息が詰まる。
「ふふ――ライ君、かわいい♪」
 妖しくほほ笑みライを見下ろしながら、突然にミントが上着を脱ぎ捨てた。放心状態のライも、さすがにこれには仰天して制しにかかる。
「ね、ねーちゃん!?何やっ――」
「ライ君……大好きだよ」
 言いかけた拍子に、上半身裸のミントがライを抱きしめる。先手を打ちながらも奇襲につまづかされ、またもライの思考は停止する。
「ライ君だけだよ、こんなに優しいの……私、嬉しくって……」
 酒任せにミントの気持ちが溢れる下で硬直するライ。大きな胸に押しつぶされて身動きとれない。肉体的にも精神的にも。
「ねえ、ライ君――私のこと、好き?」
「あ……う……」
 息絶え絶えのライに顔を近づけてミントが問う。逃げ場のない状況で返す言葉もなく、ライはただ目を泳がせることしか出来なかった。
 焦れたミントが唇をすぼめ、ゆっくりとライの唇に近づく。嫌ならかわすだけの猶予は充分にあったが、なすがままに唇を奪われるライ。そして再び、口元の凌辱が始まる。
「んふ……っ、ちゅぱっ……」
「あっ……ぷ……! んむ、あ……!」
 先ほどより、より濃厚な攻めが口の中を満たす。愛する人の香りがゼロ距離で体の中まで注ぎ込こまれ、酔った生暖かい吐息がライの舌を溶かしにかかる。
 指一本動かす余裕もなく、舌先のテクに縛り付けられるライ。それを確かめたミントの行動は殊のほか早く、その左手をライの股間にあてがった。
「っ、あ……!?」
 頬の内側の快感も一気に冷める強烈な一手にライの目も冴える。服の上からすりすりと股間をさすりながらミントは目を細める。
「ぷは……っ!? や、やめ……ねーちゃ――んぶ、っ……!?」
 思わず口を離して抗議したライの唇を、再びミントの唇がふさぎ倒す。加えて右手をライの後頭部に添え、これ以上逃げないようにかっちりと押さえつけている。
 左手は徐々に素早く動かされ、ライの両手がそれを止めようと必死でその手首を握る。
 しかし竿を撫でられるたびに発生する強烈な刺激に手先から力が抜け、全力でミントの手を制止することが出来ない。その間にも魔手はライの分身を責め立て、じわじわと力を奪っていく一方だった。
「ライ君のこれ、カチカチになっちゃってるよ……?」
「っは、あ……!? あっ、く……!」
 口を離した拍子にライの口から声が漏れる。ミントは優しい笑みを浮かべ、左手と戦うライの両手を素通りして、右手をライのパンツの中まで滑りこませた。
「っ、うあ……!?」
 柔らかくて細い指が、ライの固くて太いそれを包みこむ。握った拍子にそれはびくんと跳ね上がり、一気にひとまわり大きく膨張する。
「ほら、楽にして。私に任せて――ね?」 
 そう言ってその手を上下させるミント。見えない位置の手を巧みに動かして、ライのペニスをまんべんなく撫でまわす。男性器の形をしっかり把握している証拠だ。
 一方、女性器どころか乳房を直接見るのも初めてのライは、なす術なくこの攻撃に晒されるだけだった。自慰では到底経験しえない他人の優しい手。自分の指にはない整えられた細い爪が身に擦れるたび、他人にペニスを扱かれる実感がライを包み、その相手が誰であるかを思えば思うほど下半身に血が集まる。
「いいよ、ライ君――後のことは心配しないで?」
「っ!? あ、うあ……くあ……っ!?」
 やがて耐え切れなくなったライの竿が一段と跳ね躍った。仰向けのライの腰がそれに合わせてびくびくと痙攣し、先端からとめどなく溢れるスペルマは、鈴口にあてがったミントの掌に当たってどろりと亀頭にからみつく。
「ふふ、いっぱい出したね」
「っは……はぁ……はぁ……」
 真っ白な世界をさまようライをよそに、ミントはライのズボンに手をかけ、パンツごとぐいっと引き下げた。一気にライの下半身が、ベッドに寝そべったまま丸出しになる。
 酒に酔っていながらも思いのほか冷静に状況を見据えて優位に立つミント。一方、愛する人の手前で絶頂を迎えたばかりのライは、魂の抜け殻のように横たわっていた。
 余裕を感じたミントが律儀にライの下着を完全に脱がせた頃、ライの目の焦点が何とか合ってくる。もちろん、それだけで判断能力まではついてこないが。
「!? っはあっ!? く、あああ……っ!」
 そして目の覚めるような強烈な感覚。イったばかりの男根を、ミントがその手で再びわしづかみにしたのだ。
「――うん、まだいけそうだね」
「待……っ、うああっ!?」
 わずかに熱を帯びたままのライの分身を握ったまま、ミントがその指先を絡める。
 一発目の精液でぬるぬるになった鈴口の周りを集中的に攻め立てることで、再びライの意識が下半身に集中する。
「はぁ……はぁ……あっ、ぐぁ……!」
 苦痛だか快楽だかわからない感覚の渦中でライが呻く手前、それをつぶさに感じ取ったミントが攻め手を変える。さっきまでライの口元を支配していた唇を、今度はライのザーメンだらけのペニスに吸いつけたのだ。
「あっ、は……!? っ、く……!」
 大声で喘いでしまいそうな刺激に、思わず両手で口をふさぐライ。しかしミントの時間は止まることを知らず、その舌先がれろぉっと根元から舐め上げた。
 その目が妖しく光ったかと思えば、またもミントの熱烈な責めの時間が始まる。
 裏筋まで丹念に舐め回しつつ、柔らかな唇全体で竿を包んで前後する。じゅぽじゅぽといやらしい音を立てて弄ばれるライの逸物は、休む間もなく強引に起き上がらされてびくんびくんと踊らされる。
「はっ……く、はぁ……っ!? あ、く……!」
 手元から溢れる恥声は部屋の中に小さく響いては、股間への愛撫が生みだす音に呑まれて消えていく。腰の中のものまで全部吸い取られてしまいそうな下半身への刺激に体をびくつかせるだけで、ライの体の自由は縛られずして奪われていた。
「っは、あ……っ!」
 そしてあっけなく果てる。びゅくっ――どくっ、どくっ、どくっ。
「ぅあ……! あ、あ……あ……っ!」
 短い間に二度目の射精。もちろん、これも人生で初めてのことだった。うつろな目で天井を仰ぐライの姿は、ミントにとっては予想通りの反応ではあった。
 ミントはこの間にスカートを脱ぎ、さらにはその下着にまで手をかけ、ゆっくりと脱ぎ捨てた。生まれたままの姿でゆっくりとライに近づき、ライの耳元で囁く。
「ねえ、ライ君……私のこと、好きかなぁ……」
 返事はなく沈黙が流れる。手元も留守のミントは、黙ってライの上着を脱がせる。
 そしてこちらも丸裸になったライに添うように寝て、再び耳元に口を運ぶ。
「私はあなたのこと、大好きだよ」
 半ば気絶に近いほどの放心状態のライではあったが、その声はちゃんと聞こえていた。
 何でもない言葉ならともかく、その問いの答えははっきりしていたから。
「――ライ君のこれ、まだイけそうだね」
「っく……!」
 ミントの右手が再びライの分身を撫ぜる。それは2度の射精でスペルマだらけになりながらも、さっきの言葉に反応して萎れかけた状態からわずかに復活しつつあった。
「こうなったら、最後まで――ね?」
 ミントは妖艶な笑みを浮かべ、ライのスペルマでいっぱいになった唇でライの口をふさぎ、その中身を一気にライの口に満たした。生臭い香りが口の中に広がりつつも、骨抜きのライにはそれを拒絶することさえ出来なかった。
 再びミントが口元をライの鈴口にキスをする。そして舌を伸ばし、その舌をライの剥けきっていない皮の内側にまで滑りこませた。
「!? っはぁああぁっ!? あ、くあ……!?」
 舌は皮の内側、奥まで辿り着き、さらにミントは自身の舌にカリの周りを一周させる。
 自慰の時点では触れたことすらもなかった、皮の内側のカリ元への刺激に、ライは一気に腰を跳ね上げた。
 浮いた腰の下に両手を回し、尻を押し上げ顔を押し付け、ペニスを喉まで咥えこむ。
 同時に今までカリを覆っていた皮が一気にめくれ、丸裸にされた竿と亀頭がミントの口の中に呑みこまれた形になった。
「あ……あ、あ、あ……っ!」
 感じ得たこともない快楽に、口を開けっ放しで息を漏らすことしか出来ないライ。
 口を押さえていた手から力は抜け落ち、全身ぐったりした状態で、反射に近い反応で腰元が踊らされるだけだ。
 だが、まだ序の口。より大量のスペルマを携え滑りのよくなったそのペニス、それも今度は無防備のカリと竿が露出した、急所を晒した状態。その状況で、さっきよりもさらに激しい動きでミントが口を上下し始めた。
「あくあっ!? うあっ……あ、うあ……!」
 じゅぶ、じゅぶ、じゅぶ――唾液とザーメンが絡み合う淫靡な音とともに、ライの下半身が壮絶な拷問に晒される。思わずミントの頭に手を置いて拒絶しそうな衝動に駆られても、快楽に身を任せた体が全く言うことを聞かない。体は糸の切れた人形のように、振動に合わせて揺れる以外の動きをしてくれないのだ。
「んぶっ……ん、う……っ」
 ある拍子に激しい前後運動を止め、奥まで咥えたままその舌でカリの周囲をじっとり一周舐め回すミント。ふとした緩急にライの分身はひくつき、じっくり与えられる快感により一層ペニス全体が膨張の一途を辿る。
「あぁあ……っ!? うく……っあ……!」
 臨界点が近付くのを舌先から感知して、ミントの口がピストン運動を再開する。
 極限まで高めきられた男根は、急激な刺激にびくついて一気に硬直する。
「あっ、く……あ、ぅあ……っ!」
 びゅるっ――そしてはじけた。ミントの口の中へ今日3度目の射精。しかし度重なる執拗な攻めのせいかその勢いは衰えず、何度もミントの中で欲望の塊をぶちまけた。
 口いっぱいにザーメンを含んだミントがその口をライから離す。しかしその口から精液を垂らすと、ライの反り返ったままの竿の上に塗りこめ指先で馴染ませ始めた。
「ね、ねーちゃん――もう、オレ……」
 消えそうな声でそれだけ言った。これ以上搾り取られたら、下半身どころか体全部の体液まで全部吸い取られてしまいそうだ。
 しかし、そんなライの言葉も空しく――
「だーめ。まだ最後までやってないもの」
 そう言った瞬間、尻に添えられていたミントの手の指が一本、ずぷりとライの体内に侵入する。
「!? っは、ぁあああっ……!?」
「ふふっ、まだまだやれるよね?」
 打ち込まれた指がライの中で踊る。最初は適当にかき回すかのように、しかしその実必ずあるはずの一点を探すかのように、内壁全体を這いまわるミントの分身。一体何が起こってるのかも把握しきれてないライは、抵抗も出来ずにひくつかされるのみだ。
 やがてある一か所を爪先が差し掛かった時、萎えかけたライのペニスが再びゆっくりその体を起こした。同時にライの下半身が、足の指の先まで硬直する。
「ここ、だね?」
「あっ……ぐあ……っ!?」
 見つけた前立腺を、ミントは指の腹でぐいぐいと押し込める。体内からの直接的な刺激で半ば無理強いのように勃起させられ、ライのペニスが悲鳴をあげそうなほどに膨れ上がる。
 そんなライを再び口に含む。今日だけで3度目のフェラチオ。だけど何度でも体は反応してしまう。それを見越したミントの妖しげな目がライを捉える一方で、その視線にすら気付けず快楽の渦中に置き去りにされるライ。
「ああ、あっ……! いっ、くああああ……っ!」
 喘ぐ口も疲れてきたか悲鳴も上げられず、眉に皺を寄せることしか出来ない。しかし体は正直なもので、ミントの口がライを責め立てるたびに腰はがくがくと悦んで、与えられる快楽を拒絶する素振りは全く見えぬままだった。
 ぐにぐにとミントの指がライの本体をマッサージするたびに意識が遠のく。暗い天井が光に包まれたかのように真っ白になり、ペニスから魂が全部抜けていく心地だった。
 身動きもとれず時間だけが流れ、失われるものは次々と搾取されていく。
「あ、あ、うぁ……! は……あ……!」
 口元から涎が流れてることも気づかずによがるだけのライ。ペニスからもとめどなくカウパーが流れ出て、竿をぬるつかせる手助けに一役買っている。しかし3度の射精を経てはさすがに次の絶頂も遠く、はちきれんばかりの亀頭は苦しそうにミントの口内で震えていた。
 察したミントが、その指先に強く力を込める。
「ひあ……!? あう、ああぁあっ!?」
 裏返った悲鳴とともにライの分身がいきり立ち、さらにミントの指先の力も継続。
 外気に触れることすらないはずの男の弱点を直接一気に攻め立て、このままとどめを刺すつもりだ。
「あ、くぅあっ! あぁあああぁあぁ……っ!?」
 息も吸えない感覚の中、体ごとのけ反って喘ぐ。そしてミントの舌先がライの裏筋を支配し、唇が温かく竿の根元を包み、捕縛された男根が逃げ場を失う。
 上下するミントの口に高まる射精感と遠のく意識。快感に溺れ、痺れる半身にのみ全ての感覚が集まる。そして最後、温かい唇が根元をきゅっと締め付け、ミントが鈴口の奥のすべてを吸い出そうと息を吸い込んだ瞬間、その時は訪れた。
「あが……っ! ああっ……う、あ……!」
 文字どおり吸い取られるように訪れた4度目の絶頂。体の表面は快楽を貪り、ライの心と体の奥からはすべてが奪い取られていく。
 まさに骨を抜かれたかのように力尽き、指一本動かすことも出来ないライ。しかし不幸なのは、その仰向けの体勢の前で、未だライの男根は無防備にさらされたままだということだ。
「ライ君、わかってるよね?最後まで……だよ?」
 無情な言葉がライの脳裏に焼きついた。丸裸でベッドに仰向け、過剰なほどに全てを搾り取られて何も残っていないライを、生まれたままの姿のミントがすっと見下ろす。
 もはやライには、心でそれを拒絶する気力も残っていなかった。
 萎えかけたライのペニスを握り、ミントが跨るようにライの上位に立つ。わずかに高度を残したそれを自らの秘部にあて――
「あん……っ、あ……」
 づぷ――っ、ずぷううううう――っ
「んはあああああああっ!?」
 ミントの嬌声が家屋に響き渡る。ライの口から溢れたわずかなうめき声は、あっさりとその声にかき消されて誰の耳にも残らなかった。
 ライを根元まで呑みこんだミントが体を倒し、相手の体に乗りかかる。その大きな胸がライの胸元にぐにっと弾み、互いの肌が広く接する。
「動く、よっ……?」
 ぐぽっ、ぐぽっ、ぐぽっ――腰を振るミントの動きに合わせて屋内に響き渡る淫音。
 動かしながらぐっぐっと腰の下に力を入れ、陰唇でライを何度も締め付ける。萎れそうだったライのそれも否応なしに大きくされ、サイズだけでミントの胎内をぎっちりと膨れ詰める。
「どう……っ? ライ、君……?」
「うっ、ぐうぅうっ……! うあう……っ!」
 返答ではなく、口から洩れるわずかな悲鳴。顔を歪めるその一方、竿と内壁が擦れるその感覚は快楽でしかない。加えて恋い焦がれた人のやわ肌が今、体全体で自分と接している。意識も絶え絶えのその中でも、その体温を感じ取るだけでライの体は強引に奮い立たされていた。
「んふっ……♪」
「あむ……っ!? んっ……んぐぅっ……!」
 白濁まみれの口でも気にせず、文字どおりライの唇を再び犯しにかかるミント。その口元の状態などを気にする余裕もなく、強引に舌ごと滑り込まされ、ライの口の中がわけのわからない匂いでどろどろになる。勿論、本人には状況が呑みこめていない。
 初めて経験する激しいセックスに、ライの下半身は爆発間近だった。だが、吐き出すものは既に全て吐き出した。初めての経験の数々に体の表面が反応しているだけで射精による終了だけが遠いのだ。
「あはっ! んああああああっ! あんっ、あはああああっ!」
「あぐっ……! は、ああっ……! い、くあぁ……っ!」
 快感の海に身を任せるミントと、それと拷問の狭間でもがくライ。しかしミントの内壁に包まれた肉棒だけは、間違いなく至上の快楽の中にある。萎えるどころか、体内の精子を吐き出そうといつでも準備万端だ。
「はっ……は……ライ君、頑張って……」
 づぷり
「んはぁああっ!? あ、あ、あ゛……っ!」
 一旦腰を止めて、再び性感帯を直接刺激する。指先がそこに届いたことを確認すると、動ける範囲で腰を動かして再び責め始める。
「あっ、くはっ……!? ああっ、か……!?」
 気が狂いそうな感覚の最中でライが悶える。性感帯を刺激されながら、想い人の局部が自分のペニスを呑みこんでいる。突きつけられた現実に、ライの性欲が最後の力を振り絞る。
「あぐあ……っ! はぁはぁ……あ、あっく……!」
 高まる今日5度目の射精感。下半身の組織が悲鳴をあげていることが伝わる。再び膨張するペニスからそれを感じ取ったミントが、ぐっと歯を食いしばる。
「んはっ……はあぁっ……! ライ君……いいよ、来て……」
「んっ……んぐっ……! ああっ、あ……!」
 指を引き抜き、ミントがその腰を一気に加速させる。唐突な衝撃にライの分身は一気に絶頂天まで高められ、次の拍子にミントが腰を一気に振り下ろした。
 びゅるるるっ
「熱……っ!? あ、ひあぁあっ!? あはっ、あふぁああああっ!?」
「んぐっ……! んぐううううううううう……っ!」
 最後にして最大の射精だった。初めての女性器に高められた男性器は一気に欲望を噴出し、どくどくと何度も脈打ってミントの胎内を満たした。
 一度裏筋が脈打つたび、同時にオルガズムを迎えたミントの内壁がヒクついてライの男根を搾るように締め付ける。それに合わせてライの精子は一滴残らず吸い取られ、しまいには脈打っても鈴口から何も溢れなくなるまで内壁は踊り、その動きが収まった瞬間、力尽きるようにライのペニスが萎れ果てた。
「うふふ……っ、ライ君、よかったよ……」
 精も根も果てて気を失ったライの横に寝そべり、ライにキスをする。そしてライの横に沿うように寝転がり、自身も酒に任せて深い眠りについた。

おわり

目次

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