レシミニ



「どうしたんですかミニスさん?」
ある晴れた日の午前中、いつもどおりレシィは洗濯物を干しに庭に出ると選択紐を結んである木に少女が所在なさげに座っていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「あのぅ・・・」
いつもの彼女からは考えられない程、その顔から陰鬱な空気が流れている。
「・・・・・」
レシィは抱え持っていた洗濯かごをその場に置いて彼女と目を合わせながらおずおずと尋ねてみる。
「そのっ・・・何かあったんですかミニスさん・・・?」
「・・・・・・」
「えっと・・・あぅ・・・」
彼女は何も答えない
レシィはすこし困った顔をしながらもやさしく
「僕はお洗濯ものを干してます・・・ここにずっといますからね」
そう言ってかごを持ち上げ洗濯ものを干し始める。
ミニスはその作業をじっと見つめていた。

洗濯物をすべて干し終えてからレシィはミニスの隣にそっと腰掛ける。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
時間が静かに流れる中ミニスはゆっくりとつぶやいた。
「レシィにね・・・」
「・・・・はい」

「レシィに私・・・謝らないといけないことがあるの・・・」
「・・・え?」
それってどういう・・・とレシィがたずねようとすると
「・・・昨日の夜・・・私のどが渇いてキッチンの方まで行こうとしたの・・・」
彼女は訥々と話し始める。
挿絵



ミニスは喉を潤した後、部屋に戻る前に
トイレを済ましておこうと思い廊下を歩いていた・・・すると・・・

ギシッ・・・
                 ギ・・・
 ギシ・・・

「あれ?」
何だろう・・・何か変な物音が・・・
「あそこ・・・ネスティの部屋?」

どうしたのだろうこんな真夜中に・・・それに明かりももれてる

「・・・・・・・・何か・・・してるのかな・・・・」
いけないこととは分かっていたけれど、考えミニスは好奇心を抑えられず、なるべく音を立てないように扉に耳をあてて中の様子をうかがってみた。

  ちゅきゅ・・・ぴちゅ・・・
ん・・・はぁっ・・・ネス・・・っ

(・・・トリスの声・・・?なんで・・・ここネスティ部屋なのに・・・)
それになんだかとっても苦しそうに唸っているような気がするし変な水音も・・・
「・・・・・・あ・・・」
何となくだが中で行われていることが何なのかミニス理解する・・・
けど・・・だけど・・・
考えたくない・・・二人がそんな・・・してるだなんて・・・
「・・・・・・」
恐る恐る鍵穴から中を見てみる・・・・

「・・・・・・う・・・」

はあっ!・・・やだ・・・  ぁぁネスぅ・・・
           もっとぉ・・・っ
お・・・・く・・・

「・・・そ・・・んな・・・・」

んあっ         ちゅく・・・ 
にゅっ・・・ 
   にゅっく・・・  あぅぅっ
い・・・く・・・・っよ・・・っ

「・・・・・・・やだ・・・・・」

だしてぇ・・・!
  イクぅっ!       ネスっ!ねすぅ!
イ     イ・・・クよぉぉぉぉぉぉぁぁぁっ!

「・・・っ!」
ミニスは眼を閉じ耳を塞いで逃げるように部屋へと戻って行ったのだった。
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「・・・そうですか・・・・昨日の夜にご主人さまが・・・」
ミニスは昨日のことを吐き出すようにレシィに語った
「レシィは知ってたんだね・・・二人がああいうことしてるって・・・」
「・・・ん・・・はい・・・」

レシィがミモザ邸で宛がわれている部屋はトリスと隣同士なので、何度か夜中に出て行く音は聞いていた。
一度心配になってどこに行っているのかを問いただしてみたら。
「んー・・・そうだなぁ、レシィにはきちんと言っておいた方がいいよね」
少し頬を赤らめながら彼女は答える。
「・・・実はネスの所にいってるんだ・・・」
最初それが何を意味するのかよくわからなかった
「え?・・・えーと・・・・・・・・・あっ!・・・ぁぅ・・・」
が理解して顔から湯気が噴き出る。
「たはは・・・そういうことなんだ」

だから心配しないで・・・ただみんなに言うのはまだ少し恥ずかしいから黙ってて欲しいんだけどね・・・

たしかそう言ってたっけ・・・

「えとっ、確かに今のミニスさんの気持ちすごくわかります・・・」
たぶんミニスは想像していた大人の愛と現実に目の当たりにしたそれとのギャップに大きなショックを受けてしまったのだとレシィは思う。
(無理もありません・・・僕なんかご主人さまに言われただけでとってもびっくりして、しばらくお顔を見ることができませんでしたから・・・)
「その・・・だけど大人がそういうことするのは自然なことだって・・・」
「違う・・・」
「え・・・?」
レシィが慰めようとするのをミニスがさえぎる
「違うのレシィ・・・私が・・・私が今悩んでるのはそんなことじゃなくて・・・」
どうしたのか・・・みるみる彼女の顔が赤く染まっていく
「・・・なくて?」
(そういえば最初に言ってたっけ僕に謝ることがあるって・・・)
「・・・・・・あのね・・・・あのっあの夜の後・・・私・・・」
「はい・・・」
「・・・ぇシィで・・・にぃ・・・しちゃったの・・・・」
「え?・・・あのっなんて?」
あまりにぼそぼそした声なのでよく聞き取れない。
「だ・・・だからね?、れ・・・ィで・・・・お・・にぃ・・・・ちゃって・・・・」
「あの・・・ごめんなさい、もう少しはっきりと・・・」
「だからっ!」
上気した顔でミニスが声を荒らげて叫ぶ。
「その後レシィでオナニーしちゃったって言ってるのよっ!!」
二人の間に春の暖かな風が通り抜けた。



トリスとネスティの情事を目撃してしまった夜
ミニスはベッドに突っ伏しマクラに顔を沈めて、早鐘の様に鳴り響く心臓を抑えようとしていた
「う・・・ううぅ・・・」
溶け合うように絡み合っていた二人の姿が目に焼き付いている・・・
「あんな・・・・・・あんなこと・・・・」
トリスとネスティの仲が良いことは当たり前のようにみんな知っていた
(きっと二人は恋人同士なんだろうなって何んとなくは感じてた・・・)
(好き同士の大人がああいうことをするんだってことも知識としては知っていた・・・)
「・・・・・けど」
今、自分の心の中がぐるぐるしているのは現実として“そういうことを“目の当たりにしてしまったから・・・・・・だけではない。
「・・・私も・・・」
私もレシィといつか・・・あんなことを・・・
「!な・・・っ何考えてるのよぉ・・・」
急いでそんな考えを吹き飛ばす。
(したくないしたくないしたくないしたくない!あんなの絶対私はしたくない!)
何度も頭振って自分に沸きあがってくるもやもやした感情を否定する。
(あんな・・・あんなぐちゃぐちゃのどろどろの・・・)
(あんなきたないことなんて・・・・・・)
「・・・・ん・・・んぅっ・・・」

じわ・・・・・

「あぅ・・・く・・・ん・・・っ」
けれど体は嘘つくことを許してはくれない。
挿絵

つづく

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