孤島のバカンス その2



 学生時代。いかに軍学校と言えど、年頃の女子生徒たちが興味を示すものといえばやはり『恋』。
 普段男の影を匂わせないアズリアにとってもそれは例外ではなかった。
 ……その対象となる相手は、一人の『女』だったという事を除けば。
「――貴様にくれてやる」
 賑わいを見せる正午の食堂で、アズリアは自分のプリンを正面に座るアティの盆へと投げ入れた。
「え、いいんですか?」
「……私は甘いものが苦手だ。それにお前は甘いものでも食べて、もう少し太ったほうがいいと思うぞ」
 そう言って華奢なアティの体に視線を向ける。
 抱きしめれば折れそうな、ガラス細工のような繊細さ。その体を思わず抱きしめたくなる衝動を常にアズリアは抑えていた。
「ありがとうアズリア。でも、太っちゃったら好きな人に振り向いてもらえなくなるかもしれませんねぇ……」

「――好きな奴がいるのかッ!!?」

 ガシャアァッ!!
 勢いよく立ち上がった拍子に、給食が盛大な音を立てて床へと散らばった。
「…………」
 静まる食堂内。何事かという風に、食べる手を止めた学生たちがアズリアへ視線を向ける。
 彼女はその視線に気づくと顔を赤らめ、静かに席についた。
「あの、アズリア。給食……」
「構わん。あとで片付ける」
 もはや給食などどうでもいい。今の彼女の脳内を支配している言葉に比べれば、そのような事は気に留める価値すらない。
「お前……好きな奴がいるのか……?」
 激しく脈打つ鼓動を抑え、アズリアはわずかに唇を震わせながら問う。
 悲しくも、その相手が自分ではないことは承知の上だった。
 アティは頬を赤らめると、目を伏せながらボソボソと口を動かす。
「…………です」
「何?……よく聞こえないぞ」
 ここぞとばかりにアティの口元へ耳を近づける。彼女の甘い香りがアズリアの鼻先に漂い、その興奮を抑えながらも耳に全神経を集中させた。
 アティは顔を赤らめたまま、もう一度その言葉を口にした。
「……いつか出会う、白馬に乗った王子様、です」
「……は、白馬だと?」
「あ、別に馬を飼ってるお金持ちと結婚したいワケじゃありませんよっ?」
「んな事はわかってる!」
 苛立たしげにアズリアは言う。だが、その内面に渦巻く黒い不安は、彼女のその一言で跡形もなく消え去ってしまった。
 実にアティらしい言葉。アズリアの口元に思わず笑みが浮かぶ。
 アティが恋に恋をする少女とは。「笑わないでください」と頬を膨らませるアティがたまらなく可愛い。
 アズリアは苦笑しながらも、ポンポンと彼女の頭を撫でながら頷いた。
「そう怒るなって。……いつかアティの前に現れるといな。その王子様とやらが」
「はいっ!キスだって、その時まで大事にとっておきますからねっ」
「……ああ、そうするといい」
 願わくば、その相手が自分でありますように。
 時間などこれからいくらでもある。それまでに、性別の障害など軽く乗り越えられるほどの魅力を備え付けなければ。
 アティの笑顔を見つめながら、アズリアは一人微笑んでいた。


 ……それが。
 何でよりによって、こんな金髪海賊男と真っ昼間の浜辺でローションプレイなどをいたしているのだろうか。
 足元に倒れているカイルの体を蹴り転がし、それをアズリアは汚らわしいものでも見るような目つきで見下ろしていた。


「見損なったぞアティ……。お前の言う『白馬の王子』とは、このような下賎な輩のことだったのか!? こんなッ、こ〜んなッ!!」
 そう言いながらカイルの頭に砂を蹴りかける。その様子はまるで用を足したあとの後片付けをする猫のようだ。
 顔を真っ赤にしながら子供のように怒るアズリアに、慌ててアティは止めに入る。
「お、大人気ないですからやめてくださいアズリア!!……大丈夫ですか?カイルさんっ! わあ、頭にこんな大きなタンコブがっ!」
「……うぅ……」
 アティに抱き起こされ、カイルは後頭部を押さえながら起き上がる。
「他にも怪我をしてるところは……ってうわ!!こっちのほうがヒドイですよカイルさん!?」
 カイルの張り詰めた股間に目を落とし、アティは思わず声をあげる。
「いつのまにこんな所まで殴られたんです!?」
「い、いや、こっちは……」
 カイルは彼女の言葉に顔を引きつらせる。
 突然のアズリアとの再会に気が動転しているのか、少し考えればわかりそうな状況にもアティは口を両手に当ててうろたえている。
 だがカイルにしても、この場で「これは勃起だ」などという事が言えるわけがない。
 目の前にはアズリアがいるのだ。
「こ、これは違うぞアティ!」
 慌ててパンツに手をかけるアティに、カイルは顔面を蒼白させながら訴える。だがアティは目に涙を浮かべながら彼を睨むように見つめた。
「そんな事いって、カイルさんのここが再起不能になったらどうするんです!?早く私に見せてください!!」
「あぁッ……!!」
 パンツを掴むアティの手が、カイルの太ももまで一気に下ろされる。
 途端に、今まで押さえ込まれていたカイルのそれが跳ね上がるように顔を出した。
「……あ」
 アティの目の前で脈打つ赤黒い物体。
 それを目にし、アティはようやく自分の一方的な混乱による勘違いに気づく。
「きゃあああッ!!ごめんなさいカイルさん!!」
 頬を真っ赤に染めながら、アティは素早くパンツを引き上げると、その上からカイルの股間を押さえるように両手を添え、全体重をかけた。
 どうやらさらに混乱した彼女は、そうやってカイルの下半身を鎮めようと思ったらしい。
「ぎゃあああああッ!!いてぇ!やめろアティ!!」
「だ、だって、アズリアが見てますし!!」
 その言葉にカイルはハッを頭上を見上げた。
「……ぁ……ッ!!」
 そこにはカイルのそこに目を釘付けにし、茹でダコのように首から上を紅潮させたアズリアが。
 口を金魚のようにパクパクと開けながら、彼女は硬直している。
 男の性器など、彼女にしてみれば昔父親と一緒に風呂に入った時に見た程度のものだったのだろう。
 それだけのブランクに加え、突然目の前にさらけ出された若い男のペニス。しかも記憶の中の父親のそれより遥かに大きく、膨らんだ亀頭を持ち上げ膨張していたのだ。
 アズリアの、剣を握る手に力がこもる。
「……貴様……」
 途端に彼女の黒髪はゆらゆらとうごめき、先端から白銀に染まっていく。
 目にも留まらぬ速さで鞘から引き抜いたアズリアの剣は、太陽の光に照らされ、さながらシャルトスのごとく光り輝いていた。
 紅いオーラをその身にまとい、一歩、一歩とカイルに歩み寄る。
 瞬間、その目が大きく見開かれた。
「貴様ッ!!私のアティに何を教えた――――ッ!!?」
「うおぉッ!?」
 ガキィッ!!
 間一髪で剣を避けるが、代わりに剣に命中したカイルの背後の岩は、数秒後に頂点から真下にかけて一本の亀裂が走る。
 直後、岩は粉微塵に砕け散った。
「次は貴様の体がこうなる番だッ!!」
 もはや今の彼女には何を言っても無駄らしい。
 学生時代の彼女を知るアティは、そのことを身に染みて理解していた。
 アティをテニス部に勧誘する男に。アティにラブレターを送った男に。体育の授業中に彼女の制服を盗もうとした男に。
 アズリアは周囲が止める声も聞かずに暴走の限りを尽くしていた。
 ――かつての恐ろしい過去がみるみるうちにアティの脳裏に甦る。
「カ、カイルさん!今は逃げましょう!!」
「お、おうっ」
「待てぇッ!!」
 今日のところはごめんなさいとアティは詫びながら、カイルの手を引いて逃げようとする。
 だがアティの駆け足は非常に遅く、今にも追いつかれそうだ。
「きゃあっ!!」
 ……しかも何もないところで転げそうになっている。
「ああもうっこの馬鹿ッ!!お前と一緒に走ってたら俺の体が真っ二つになっちまうだろーがッ!!」
 叫ぶなりカイルはアティの体を抱き上げると、全力疾走でアズリアを振り切っていった――。


「ふぅ……。ここまで来ればアズリアも追ってきませんよね……」
 浜辺に沿うように姿を見せていた崖の下に、大きめの空洞をカイルは見つけた。
 内側は、日差しの照らす外に比べてひんやりと涼しい。
「ったく、こんな時まで何でやってくるんだよ、帝国軍の奴らは……」
 愚痴りながら抱えていたアティを下ろすと、カイルは岩壁に背をもたれかけた。
「……あ、あの、カイルさん……」
 アティのか細い声が聞こえ、彼女のほうを振り向く。するとアティは顔を赤らめながらカイルから視線をそらすようにうつむいていた。
 ふと、自分の下半身の違和感に気づく。
 ……カイルのパンツの中心の盛り上がり。あの状況下にあって、いまだに自分の分身は活気を保っていたのだ。
 自身の絶大な精力にさすがに驚きながらも、カイルはとりあえず股間を押さえ込む。
「す、すげぇな俺……。一体あれからどんだけ時間が経ったんだ?」
「結構経ちましたね、うん……。それなのに、スゴイですね……」
 アズリアの乱入もあって、あの場の勢いがそがれた二人は、しばし状況の気まずさに黙り込む。
 必死で逃げ切り、場を改めてさあ再開、というわけにはいかないだろう。
「まあ、時間が経ちゃあ治まるさ。それまでしばらくここに隠れて――」
「で、でも、我慢できます?」
「……え?」
 思わず口にした言葉に、アティは慌てて口を押さえる。
 カイルはしばらくアティを見つめていたが、それから何も言わない彼女に向けて身を乗り出し、その赤らんだ顔を覗き込んだ。
「……それは、さっきの続きをしてもいいって事か?」
 口元に笑みを浮かべ、カイルは期待を含んで囁く。
 アティは否定とも肯定とも言えないような表情で視線を泳がせ、うろたえる。

「えっと、あの、その……ひぁッ!」
 突然ブラジャーの下にカイルの手が潜り込む。先ほど塗りこんだローションはまだ乾ききっておらず、カイルの指先を濡らした。
 乳首に指を這わせると、そこはさすがに時間をおいたため突起は柔らかく戻ってしまっていた。だがカイルに再度刺激を与えられた事により、乳首はすぐにしこりを帯び始める。
「んふッ……」
 すっかり先ほどのように固くなってしまった突起を指先で優しく嬲られ、アティは思わず声を漏らした。
 
 ――その声に、カイルの理性は瞬時にもろく崩れ去る。

「ああ――ッくそぉッ!!やっぱ我慢できねぇ!!」
「きゃあッ!?」
 カイルは両手を伸ばし、強引にアティを抱きすくめた。水着姿と暑さもあって二人の肌には汗が滲み、その体は熱く火照っている。本来ならば不快感とも言えるまとわりつくような肌の密着が、今の彼にとっては欲望の炎に注がれる油のような役割を果たしていた。
「あのっあの、カイル……さん」
 密着の暑さに額から汗を流しながら、アティはカイルを見上げる。
「先生は嫌か?ここですんのは」
「う……」
 カイルの腕の中で、頬を赤らめてうずくまるアティ。嫌だと否定はできなかった。先ほどから胸を愛撫され、彼女の鼓動も格段に回数を増してきているのだから。
 しかしここは外。しかも真っ昼間だ。
「でも、ここは明るいですし……外から見えちゃいますよ……?」
「う〜ん」
 困ったようにカイルは目を閉じる。
 アティはそんな彼の肩をつつく。どうしたと尋ねるカイルに、アティはしばらくためらう。
 しかしやがてごくりと喉を鳴らし、消え入りそうな声で口を開いた。
「……ですから、……この奥のほうで……」

「あはッ……んんぅ……!」
 薄暗い空洞の奥で、アティは覆い被さるカイルに腕をまわし、彼の愛撫を受け入れていた。
 外から漏れる日差しがわずかに彼の体を照らしている。お互いの顔や体は充分見えるのだが、室内ではない天然の暗がりという状況が、二人に新鮮な興奮をもたらしていた。
「……アティ……んッ……ふ……」
 カイルの舌が伸び、アティの乳首を上下に擦るようになぞる。固くなった頂点にさらに刺激が加えられ、アティの背中がビクビクとのけぞった。
 ローションを塗ったそこは妙な味覚がする。カイルは舌を引っ込ませ、今度は唇で胸の中心にしゃぶりつく。口内にローションの苦味が一度に広がった。
「うぅ……胸なんかに塗るんじゃなかったな」
 唇を胸から放し、口を押さえてうめくカイル。
「海で洗い落としてきましょうか?」
 カイルに押し上げられたブラジャーを胸のところに戻し、アティは立ち上がろうとする。
「いいって、むしろしょっぱくなる」
「はい……」
 カイルのペニスは、パンツの中でいまだに熱をもったままだ。
 彼としては早くその内にたぎる欲望を開放したいものだったが、いかんせんアティのほうは、まだ性交できるほどの状態には至っていない。
 アズリアに襲われる前はアティの秘部も濡れ始めていたが、すでに乾いてしまっていたその部分は、もう一度初めから慣らしてやらなければならない。
 欲望が先走りそうになるカイルはアティのビキニパンツに手を伸ばし、その指先を、股間の当て地から彼女の秘部に向けてもぐり込ませていく。
「あッ……」
 まだほとんど濡れていないそこに指を押し込まれ、アティの体がビクリと動く。
 やはりこの程度の愛撫ではそう濡れないだろう。
 じっくり前戯をする余裕などカイルにはない。カイルはくしゃくしゃと髪をかき、指を引き抜くと彼女のビキニパンツに手をかけた。
「カイルさん、あの、口で……してもらえたら、早く濡れると思うんですけど……」
 アティは顔を赤らめ、恥ずかしげに足を開く。
「まあ、そうなんだがなぁ……」
 そう言ってカイルはするするとアティの下半身をまとうそれを足から抜いていく。
 ぱさりとビキニパンツを地面に置くと、反射的に閉ざした彼女のひざを両手で押し開いた。
「ッ……」
 外の薄い明かりに照らされ、淡く赤みを帯びた花弁がカイルの眼前に晒される。
 自分から愛撫を誘っておいていざという時にはやはり恥らう、そんな彼女の初々しさが可愛らしい。
「口で濡らしてもいいんだがな、毎回それじゃあ面白みにかけるだろ?」
「べ、別に私は構いませんけど……。それに私たち、エッチはまだ二回しか……」
「や、新しい型の想像に妥協して、使い古されたものだけを好み続けるのは良くないぞ!? 新しい道を切り開いてこそ、新たな快楽が導き出される……違うか?アティ」
 ただ単に自分が何かを試したいだけなのだろう。うさんくさい説得力に欠ける演説を口走る。
 だがアティは彼の言葉に、真剣にうなずいていた。
「新・カイル一家の掟その一!何事にも新たな可能性を見出せ!でなきゃ、この広い海を存分に楽しむ事だってできやしねぇ。……男と女のカラダだって、おんなじだぜ?」
「カイルさん……」
「そういうワケで、今俺が思いついたのは……これだ!」
 アティの体から身を起こし、彼女のポーチを探り始める。しばらくしてそこから抜き出した手に握られていたのは、以前スカーレルに貰っていたミルクローションだった。
「……あの……」
 ほくほくと嬉しそうに微笑むカイルに、アティはわずかに顔を引きつらせる。
「アティが日焼け止めを出してる時に見たんだよ。……これは肌を潤すためのモンだろ? それなら敏感な部分に塗っても大丈夫さ。前に俺の肌荒れがヒドイって、スカーレルの奴に塗りたくられた事があったんだが」
 フタを外し、中のローションを手の平にトロリと出す。手の平で粘る白いそれを、指を使って手の平で握るようにかき混ぜ、広がったそれを眺めながらカイルは何気に含み笑いを漏らした。
「精液みたいだな、これ」
「そ、そんな事言わないでくださいっ!もう使えないじゃないですかっ」
「それじゃあ、今から全部使いきっちまおうぜ」
「えッ……?」
 ぬるりとローションにまみれた手の平が、アティの花弁を撫で上げた。
 カイルの手の体温で生温かくなったローションは、アティのその部分に体液を連想させる。
 そのまま指をゆっくりと埋め込み、ローションで膣内を濡らしていった。
「あッ、うぅッ……」
 ぬるぬるとした指が内側に滑り込む感触に、アティの肌が粟立つ。片手で乳房を愛撫しながら、もう片方の手で膣内を慣らしていくカイル。
 指を抜き差しするたびに、卑猥な音が空洞に響く。
「カ、カイルさんっ、あの、胸も気持ちいいんですけど……、アソコの、いつもカイルさんが触ってくれる所が……一番気持ちいいんです……」
 切れ切れに息を吐きながらアティが言う。彼女の言いたい事を察知したカイルは、乳房から手を放し、それを彼女の茂みのほうへと持っていく。
 指をうずめた部分のすぐ上、クリトリスを指先でつまみあげると、期待通りにアティがビクンと体を跳ね上がらせた。
「ここか?」
「んッ……そこ、です……」
 彼女の一番の性感帯に触れ、しばらく指先で突くように撫で上げていると、まもなくその秘部からは愛液が滲み出た。
 そこへ愛撫を繰り返すたびに、内側に広がったローションと混ざり合い、内側から白い愛液が溢れ出す。
 アティを初めて抱いた時に、安全日だと言われて膣内で射精した事を思い出し、カイルはその光景に異様なまでの興奮を抱いた。
「……なぁ、アティ。そろそろ俺も我慢の限界なんだが……いいか?」


「くそっ……。奴らめ、一体どこまで逃げていった!?」
 じりじりと強い日差しが照りつけるなか、軍服姿のアズリアは汗を流しながら浜辺を見渡していた。
 その隣りを、後から駆けつけたギャレオが歩いている。その目はアズリアを気遣うように、心配そうに見据えていた。
 ここに来てからアズリアの疲労は日増しに強くなっている。いまだに遂行できない剣の奪回、部下の暴走、そして――アティとの再会。
 それら全てが彼女に覆い被さっているのだ。いくら彼女の精神が並外れた強さのものだったとしても、堪えられるわけがない。
「隊長……」
 彼女を密かに想うギャレオ。その想いが届くものではない事は分かっている。
 だがしかし、副隊長である自分が、彼女の疲労と負担を少しでも軽減してさしあげなければ。
 彼は常にそう考えていた。
「隊長。少し休まれてはいかがでしょうか?無理をして倒れてしまっては元も子もありませんし」
「……そうだな。すまない、気を遣わせてしまって」
 ギャレオを見上げ、苦笑するアズリア。無理をして微笑んでいる様子が、彼には手にとるように分かった。
 ――気を遣われているのは他でもない、貴女自身ではないですか。
 その言葉を飲み込み、ギャレオは無言で足を進める。
 ふとその時、ギャレオは浜辺沿いの崖の下に、ちょうど日陰となる空洞を見つけた。
 あそこなら隊長が体を休めるにはちょうどいい。涼しい場所でしばしの間、心と体を休めていただこう。
 一人うなずくと、ギャレオはその空洞を指差した。
「隊長。あそこに入りましょう!しばらく日差しは防げそうですよ?」


「――あッ、あはぁッ!カイルさッ……んんッ!」
「……アティッ……!」
 空洞に男女の喘ぐ声が響いている。
 カイルはアティを向かい合わせにひざの上に乗せ、彼女の尻肉を掴むと、幾度も自身の腰へ向けてアティを突き上げていた。
 それはいつも正常位では芸がないだろうと、カイルが提案したからだ。
 体の重みで、カイルのペニスはいつも以上に深く膣内を貫く。まだ行為になれないアティには苦痛であったが、いつも痛いと言っていてはカイルに気を遣わせてしまう。
 嫌なときは拒めばいいと、かつてスカーレルが自分に言っていたのだが、やはり愛しい男にそんな事は言えるはずもなかった。
「んッ……う……」
 時折行為を中断し、カイルはアティに優しく口付ける。それは膣肉を押し分ける肉塊の痛みを忘れてしまうほどに甘美な感覚であった。
 しばらくアティの唇を堪能したあと、再びカイルは腰を突き上げる。愛液とローションが混ざり、カイルのペニスがアティの膣内に沈むたびに濡れた音が立つ。
「ぐッ……!アティ、もう、出るかもしれねぇ……」
「は、はいっ……」
 腰の動きを早めるカイルに、アティはすがりつく。
 あともう少しだ。カイルは膣肉の快楽に眉をゆがめ、大きく息を吸い込む。


「……お、おい。お前たち……」


「…………」
 聞き覚えのある野太い声。
 嫌な予感がした。
 そろりと声の聞こえたほうに目をやる二人。
「……お、お前は確か、ギャレオ……?」
 目の前にはギャレオが一人、ぽかんと口を開けて立っていた。どう反応をとればいいのか分からず、そのまま黙っている。お互いがここにいる事を予想だにしていなかったのは、双方同じだったろう。
 しかし、出会った衝撃が同じかといえば、それは大いに否定できる。
 どちらが、というと――。
「わあああッ!!」
 慌ててアティとカイルは体を離すと、水着を手にとった。
 ここにアズリアがいればただ事ではなかったかもしれない。目撃されたのがギャレオ一人でよかったと、不幸中の幸いに息を吐くアティ。
「……お前たち……」
 その時、ギャレオが女の声を発した。
 ――いや、性格に言えば、ギャレオのいる位置から声が聞こえたのだろう。
 その声に、アティとカイルは凍りつく。
 すっ、とギャレオの背後から人影が見えた。
「…………」
 もっとも恐れていた事態。
 ギャレオの大きな体のせいで二人の視界から消えていた人物が、姿を現した。
「……どこまでも、どこまでも、私をコケにしてくれるな……!!」
 せっかくの化粧は汗で全て落ちていた。怒りに般若の形相を浮かべる軍人、その名をアズリアと、人は呼んだ。
「ま、またこうなっちまうのか……?」
 お互いの遭遇にもっとも衝撃を受けた人物、それはまぎれもなく嫉妬のオーラをその身にまとった彼女であった――。


つづく

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