埋め立て代わり



「……不満そうですね」
ビジュを仰向けに組み敷き、アティは小首を傾げてみせる。
揺れる銀の髪が、抜剣状態にあるのだと知らせる。
シャルトスはといえば、アティの手を離れ、ビジュの重ねた腕を串刺しにしていた。
「てめェ…一体何のつもりだ」
「あえて言うなら、新趣向、でしょうか」
痛みでともすれば霞みそうになるなか放った問いは、よく分からない答えで返された。
その間にもアティの手は動いて軍服を器用にはだけさす。
冷たい指先が潜り込み脇腹を撫で―――反射的に膝を叩き込むが、力任せにねじ伏せられた。
考えなしの代償は、強まる腕の激痛と、ぎりぎり軋む足。
痛みと憎悪でうめくビジュを見下ろして、アティはくすくすと笑い更に指を這わす。
旧王国兵の拷問で受けた傷跡に。反応を楽しむように、ゆっくりと。
傷跡を隠そうとも、他者をいたぶる事で誤魔化そうとも、みっともなく這いつくばって叶うはずもない命乞いを繰り返した過去は消えないのだと。
そう、聞こえた。
「―――れ。黙れ黙れだまっ?!」
喉が締めつけられる。
窒息するのが先か、女の細い手とは思えない力に潰れるのが先か。
と、意識が暗転する直前に手が離れる。
咳き込む。身体がはねる度に腕が削れるのが分かるが、どうしようもない。
その様子を見、アティは微笑んで体全体で押さえ込むように身を倒した。
「これからなんですから、終わってはダメですよ?」
言って。
アティはビジュの喉に―――自らつけた痕にくちづけた。


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