レックス×アリーゼ



「あの・・・スカ―レルさん。ちょっと聞きたいことがあるんですけど・・・」
船首にいたスカーレルにアリーゼは少し頬を赤らめながら話し掛けた。
「どうしたの?アリーゼ。あたしに何か相談事?」
「はい・・・あの、突然こんな事を聞いちゃってごめんなさい」
そう言って一息おくと、アリーゼは覚悟を決めたのような表情でスカーレルに叫ぶように言った。
「あのっ・・・男の人を振り向かせる方法って何かありませんか?!」
「・・・え?」
突然の事に一瞬スカーレルは混乱しかけたが、何とか自我を取り戻すとアリーゼに微笑みながら言った。
「何?アリーゼ、あなた好きな人が出来ちゃったの?」
「は・・・はい、それも・・・あの・・・その・・・とても言いにくいんですけど・・・」
そう言うとスカーレルの耳に近付いて小声でスカーレルに言った。
「それも・・・好きになっちゃった人が・・・先生なんです」
「まあ・・・!」
アリーゼの意外な言葉にスカーレルは驚きながらアリーゼのほうを見る。
アリーゼの顔は極度の恥ずかしさに真っ赤になっていた。
そんなアリーゼを見て思わずスカーレルは笑いかけてしまった。
「あああ、あのっ!こういう事っておかしいでしょうか?!!生徒が先生の事を好きになっちゃうなんて!」
「アリーゼ・・・っ・・・」
相変わらず顔を熟れたトマトのように真っ赤にして必死で何かを弁解するかのようにいうアリーゼを見てスカーレルは思わず吹き出してしまった。
「?あの・・・何笑ってるんですか?」
「アハハハ・・・、ごめんなさい。悪気は無いわよ」
そう言うと軽い溜息をついてアリーゼに優しい口調で言った。
「そっか。先生の事好きになっちゃったのね。でも、それは悪い事じゃないわ」
「そ・・・そうですか?」
「そうよそうよー。それに・・・」
スカーレルはアリーゼの肩を軽く掴んで満面の笑みで言った。
「愛があれば何だってオッケーよ」
「そうですか?よかった・・・」
スカーレルの言葉に安心したアリーゼは本題を思い出し、改めてスカーレルに聞いた。
「あ、あの。それで・・・」
「分かってるわよ。男をいかに自分に気付かせるか・・・教えてあげてもいいわよ」
「本当ですか?!」
「ただし」
笑顔で喜ぶアリーゼに、まだ早い!とでも言うかのように制止させ、スカーレルは少し真面目な顔になってゆっくりとした口調で言った。
「あたしがこれから教えてあげるのは、本来大人になってからする事よ。それでも・・・覚悟はできてる?」
真面目な口調で言ったスカーレルに一瞬戸惑いながらも、首を縦に振って、
「かまいません。私、どうしても先生の事が好きなんです。生徒として出なく、アリーゼという一人の女の子として・・・好きなんです」
と、アリーゼも負けじと真面目な表情と口調でスカーレルに言った。
そう言うと、スカーレルから真面目な顔は消え、再びあのお気楽な顔に戻って言った。
「そうなのね・・・よし!分かったわ!あなたの覚悟にやられたわ。このスカーレルさんがあなたの望みを叶えてあげるわよ!」
「はい!よろしくお願いします!」
そして、スカーレルのその方法を教えてもらった瞬間、アリーゼの顔は再び真っ赤になっていた。

そして、その日の夜がやってきた。
船首の方で、極度に緊張したアリーゼと半分楽しんでいるような気分のスカーレルがいた。
「いい?それじゃ、最初はさりげなく、そしてその後はあなた次第よ?」
「は・・・はい。分かりました・・・でも・・・・・・」
その後の言葉を詰まらせながら、アリーゼはスカーレルに真っ赤な顔で訴えた。
「その・・・本当に、その・・・男の人って・・・あの・・・その・・・セ・・・セッ・・・・・・」
「そうよ。女の人からセックスを誘えば大抵の男は乗ってくれるわ。それに、先生ならあなたを体だけの目的で犯したりはしないハズよ。最初は驚くかもしれないけどね」
冷静にかつ面白そうな顔で言っているスカーレルにアリーゼは少し頬を膨らませながら再び訴えた。
「・・・スカーレルさん・・・ひょっとして楽しんでません?」
「そんな事無いわよ。何だって、あたしはあなたの恋のキューピッドなんだから」
「うう〜・・・・・・」
多少うなっていたアリーゼも観念したかのように溜息をついてスカーレルに言う。
その顔からは、これから起こる事に対する不安と覚悟が表情に表れていた。
「それじゃ、行ってきますね」
「いってらっしゃい。充分に楽しんできなさいね」
「スカーレルさん!」
「アハハハ♪」
そう言うとアリーゼはゆっくりとした歩調でレックスのいる部屋に向かった。
そんなアリーゼを見届けた後、スカーレルはマストにもたれかかって空を見上げた。
夜空は相変わらず、無数の星たちがちりばめられた宝石のように光っていた。
「・・・全く、あの子ったら相変わらず不器用ね・・・」
そう呟くと、そのまま自分の部屋に戻って行った。


(うう〜・・・ここまで来たのは良いけど・・・どうしよう・・・)
アリーゼはレックスの部屋の前で立ち止まっていた。
スカーレルに言われた通り、ここまで来たのは良かったがそこから先の事なんでどう考えても普通じゃない。
(別にそこまでして先生と一緒になりたいわけじゃないのに・・・やっぱりアルディラさんとかに相談した方が良かったかなあ・・・)
アリーゼはただ単にレックスに「好き」と言いたいだけなのだ。
何も体まで望んだりはしていない。
だが・・・・・・。
(ホントに・・・そうなのかな・・・)
改めて考えると、何だかおかしくなってくる。
「好き」。その一言だけ言って、レックスから返事をもらって、泣くか笑うかしながらレックスの部屋を後にする・・・それだけでいいのだろうか?
本当は・・・、
(私・・・先生を望んでる・・・・・?)
自分の唇に触れながらそんな事を考える。
先生とキスしたい・・・抱きしめてもらいたい・・・できる事なら・・・。
(そんなこと無い!私に限って!!)
そう考えるとそんな自分が恥ずかしくなってくるので横に頭をブンブン振って頭から邪な考えを振り払った。
(とにかく!今日こそは私の想いを先生にぶつけるんです!)
ムンと気合を入れるとアリーゼは静かにレックスの部屋のドアを叩いた。
軽く叩いたつもりなのに辺りが静まり返ってるせいか、ドアを叩いた音がやけにまわりに響いた。

少し待っていると、レックスが顔を出した。
「はーい・・・って、アリーゼ?」
「あ、はい!私です・・・」
十分に息は整えてあったはずなのにレックスと目が合った瞬間、心臓の鼓動が急に早くなった。
息苦しい。激しい運動をしたワケでもないのに・・・・・・。
「?どうしたんだい?」
不思議そうに見つめるレックスを見て慌ててアリーゼはあらかじめ用意しておいた理由を述べた。
「あ、あの!ちょっと分からない問題があったので教えてもらおうと思いまして・・・」
「そうかい?それじゃ、入っておいで」
何の躊躇いもなくレックスは部屋に招きいれた。この瞬間、更にアリーゼの鼓動は早くなった。いよいよだ。アリーゼはそう思った。
「は、はい!失礼します!」
そう言ってゆっくりと、一歩ずつレックスの部屋に侵入していく。
入り慣れた筈の部屋が、何故か今は入りづらい。
この間にも、アリーゼの鼓動のスピードは変わらない。
失神してしまいそうだった。いつ気を失ってもおかしくないと思った。
「それで、どこが分からないのかな?」
いつもと同じ勉強の時にだけかける眼鏡をかけてレックスはアリーゼの顔を覗き込む。
一瞬ビックリしながらも、慌てて持ってきた教科書を開いてレックスに分からない問題に指をさす。
「ここなんですけど・・・」
「ああ、ここかい?ここは・・・」
ゆっくりかつ丁寧に教えてくれるレックスを見て、アリーゼはしばらくボーっとレックスのほうを見つめてしまった。
いつもと変わらない、別にどこも変わってない。なのに・・・、
(なのに・・・私・・・先生を見て・・・)
先程から何か自分の様子が変な事には気が付いていた。
理性がだんだん聞かなくなってきている・・・もし、少しでも気を抜けばレックスにそのまま・・・・・・。
(どうしたんだろう・・・私・・・?)
軽く自分の胸に手を添えて何とか自分を押さえ込む。
その間にも、どんどん自分に対する抑えが聞かなくなってきていた。
(先生を襲いたいなんて・・・私・・・なんて淫らなの・・・・・・)
自分じゃない自分という矛盾にアリーゼはひたすら戦っていた。
好きって言えればそれで良いのだ。それで・・・・・・。
「それで・・・?アリーゼ・・・?どうしたんだい?」
「・・・えっ?」
不思議そうな顔で見るレックスにアリーゼは驚いた。
「いや、何か苦しそうだったから・・・」
「そそっ・・・そんなことありませんよ!大丈夫です!」
そう言って自分を抑えながらレックスに平然を装った。
こんな自分が嫌い。素直に気持ちを言えない・・・こんな自分が・・・。
「そうかい?でも、無理はしちゃダメだよ?」
「はい・・・分かってます・・・・・・」
「それじゃ、ここの事だけど・・・」
アリーゼを気遣いながらレックスは問題の説明を続けようとした・・・が、
「・・・先生」
アリーゼの一言で再び中断した。
「何だい?」
「あの・・・そのっ・・・!」
そう言いながら一呼吸おくと、アリーゼは席を立ち上がって、遂にレックスに自分の想いを告げた。
「先生!私・・・あなたのこと・・・好きです!生徒としてじゃなくて・・・アリーゼっていう・・・一人の女の子として!!」
涙目になりながらも必死で今まで言いたかったことを一気に言った。
好き・・・大好き・・・・・・狂おしいほどに・・・・・・。
「アリーゼ・・・」
レックスは驚きながらアリーゼのほうを見つめる。
その表情は、信じられない。そう言ったカンジの表情だった。
「私は・・・私は、あなたの生徒になってから、この島に来るまでは、怖くて仕方ない存在だった!でも・・・でも!!」
今は違う。今は私にとって大切で、かけがえの無い存在です!そう叫びたかったのに、叫べなかった。
代わりに、嗚咽だけが喉から出てきた。
「ふっ・・・ううっ・・・うえっ・・・ぇ・・・・・・」
零れ落ちてくる涙を必死で拭いながら、俯いて、声を殺して泣いた。
悔いは無い。後は、先生の返事次第・・・。この涙が、悲しき涙となるか、嬉しき涙となるか・・・。
だが、レックスから返事は来なかった。
代わりに・・・・・。
「・・・?!」
ふわっと、何か自分の体を包み込む感触があった。
まだ涙のせいで赤い目を向けると、すぐそこにレックスの顔があった。
一瞬、アリーゼは硬直してしまった。
何があったのか、一瞬で理解できてしまった。
レックスが・・・アリーゼを包み込むように抱きしめていた。
「せっ・・・先生・・・?」
顔を真っ赤にして慌てふためくアリーゼにレックスは静かな声で言った。
「驚いたよ・・・アリーゼと俺が、同じ考えをしてたなんて・・・」
「・・・え?」
予想外の言葉に、アリーゼは一瞬我が目ならず我が耳を疑った。
(今・・・なんて・・・?)
アリーゼは心の中で再確認しながらレックスのほうを見つめる。
レックスは相変わらずアリーゼを抱きしめたまま離そうとしなかった。
「俺も・・・そうだったんだよ。あの時、君が帝国の奴らに襲われた時には本当に怖かった。あのまま、君を失ってしまったらどうしようって思った」
アリーゼの頭に回した手をゆっくりと動かし、アリーゼの頭を撫でる。
親にも、まともに撫でてもらったこと無かった。アリーゼはそう思った。
「俺・・・君の教師だからって意味じゃなくて、大切な人って意味で心配したんだ。その・・・恋愛感情って言うかさ、そういうもので・・・」
「先生・・・」
そう言うと、ゆっくりとアリーゼの体を離し、向き合う。
この時も、お互いの胸の鼓動は落ち着かなかった。
「それで、俺、あの時も自分の身を捧げたんだと思う。君が助かってくれれば・・・そう思って」
「・・・!そんなのじゃ嫌です!!」
いきなりアリーゼに大声を出されたのでレックスは驚いた。


つづく

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