大きいことはいいことでござる by流浪の剣客カザミネ



『この島は…召喚術の実験場だったんだよ!』
『な、なんだってー!!』

読みかけの本に栞を挟み、ハヤトは一息ついてベッドに横になった。
話はできるが読み書きはまったくできなかったリィンバウム語にも少しは慣れてきたようだ。

「平和だな…」
ギブソン・ミモザ──もとい、ギブソンの奔走によってサイジェント魔王降臨事件は一応の収束を迎えていた。
ただ平和なのは結構なことだが、平和と退屈はほぼ同義でもある。
ぼーっとしているのも嫌いではないが、やはり人間たまには刺激が欲しくなるというものか。

どばぁん!
どうやら退屈の終わりは向こうからやってきてくれたようだ。
扉を粉砕しかねない勢いで飛び込んできたのはいつもの通りカシスだった。
このパターンはろくな事がない。
先日は料理作ったので味見しろと持ってきたが、毒味したポワソが毒になるという笑えない事態に陥った。
さて、今度はどんなことを言ってくるのやら──
逃げる準備もOKと腰を浮かせて待ちかまえていたハヤトに、カシスは開口一番
「胸、揉んでほしいんだけど」

まるで予想外の事態に、ハヤトはとりあえずベッドから転げ落ちた。


──時間は少しさかのぼる。
聖王都で事後処理に当たっているはずのミモザはフラットの居間で優雅にお茶を楽しんでいたりした。
「まあ、年頃の女の子なら気になることかもね」
他に相談できる相手もいないので、かねてからの悩みというかコンプレックスというか…、とにかくそれを彼女に話してみた。
この女性、2○歳にもなるのにとある部分を強調するかのようなセーターにヘソ出し、ニーソックスといった格好だ。
 ──うるさいわね!1つ引いて四捨五入すればまだハタチよ! とは本人の言。

とにかく、リプレはまだしも年下のアカネにすら劣っているのはやはり悲しいものがある。
「それで…何かこう、大きくなるヒケツとかってない?」
「そう言われてもねぇ…。特に何かしてるわけじゃないもの」
嗚呼、世界はこんなにも富の偏在を許すのですか。
憎しみが凶器になるのなら、あたしはもう牢暮らし。
「ま、まあ無いなら無いで需要があるものよ?」
必死のフォローも慰めのつもりなのだろうが、哀れみにしか聞こえません。

「あら、何の話?」
話に入ってきたのはさらりと肩口まで伸ばした金色の髪──セシルだ。
ラムダの療養に付いていった彼女だが、サイジェントに戻ってきたのでこちらにも挨拶に来たのだろう。
お土産に包装されたワインなど持ってきていた。

カシスの顔に希望の灯がともる。
”脳天気なおねえさん”より”頼れるお姉さん”
スタイルもいいし、なおかつ医者。これぞ天の配剤だ。
早速彼女にも相談することにした。

「ふぅん。なるほど、ね…」
グラスをくゆらせながら神妙な顔でうなずくセシル。
土産のはずのワインを開けているがまあ気にしない。
「無くもない、と言ったところかしら」
「ほんと!?」
さすが頼れるお姉さんは一味違う。
「でも個人差もあるし、必ず効くってわけじゃないから」
一言注意をしてから、その方法を口にする。

なるほど。だからミモザもあんなに大きいのね──
得心したカシスは目的の場所へ駆け出した。


「…ふぅ、そういうことか」
真っ白になった頭も回復し、カシスの説明も理解できた。
「他にもいろいろやってたけど…。牛乳いっぱい飲んでみたり」
「まあ効かないヤツには効かないよな。俺もずいぶん飲んでたけど」
「君の背といっしょにしないで。あたしのにはまだ未来があるもん」
さらっとヒドいことを言われて結構ショック。

「あとは自分でもマッサージしたりとか。でもやってるとついつい下の方に手が…ってそんなことはどうでもいいの」
「?」
「き、気にしないで!」
ぽろりとこぼれた言葉に首をかしげるハヤトを制して話を続けるカシス。
セシルが言うには性的興奮があるとマッサージの効果も増すとかなんとか。
だから好きな人にしてもらってね、ということらしい。

「で、協力するのはいいけどさー。これはどういうことだ?」
問うハヤトにはぐるぐる巻きに目隠しがされていて、何も見えていない。
「だって恥ずかしいもん」
何か釈然としないものを感じながら、無造作に手を突き出すハヤト。
その先で、ふよんと服越しに柔らかい感触が。
「お、ここか」
そのあたりを適当に撫で回してみる。
「…そこお腹」

殴られた。

「いくら何でもお腹と間違える!?」
怒りながらハヤトの手を取り、今度は自分で胸元まで導いてくる。
さっきとあんまり変わらないな、などと思うがまた殴られそうなので口にはしないでおく。
カシスの服は厚手のローブなので体のラインがわかりにくいのだ。
「うーん…。服越しだとくすぐったいばっかりで…」
「うん。俺もあんまり楽しくない」

また殴られた。

仕方なくごそごそと服を脱ぎ出すカシス。
衣擦れの音ばかり聞こえて生殺しだ。
3度目の正直。下着越しに確かな感触が手に伝わってくる。
膨らみかけ、といったほどで大きくしたいと思うのも無理からぬ事だろう。
胸に添うように手を当てて軽く撫でていると、すぐにカシスの息が荒くなってくる。
「ん……やぁっ…」
「ひょっとして……もう感じてるのか?」
「う…ぁぁっ!い、いつもはこんなじゃないもん…」
弱々しく抗議してくるが、艶を含んだ声で言われても説得力は皆無だ。
「てことは効果あるかもしれないんだな。俺は別に胸の大きさはこだわんないけど、協力するって言った以上最後までつきあうぜ」
ベッドに隣り合って座っていたカシスの体を抱えると膝の上に下ろし、後ろからブラの中に手を差し込むと直接揉み始める。
「ちょっ…!じゃ、あたしこんなことしなくてもいいじゃ…ふぁっ!」
きゅっと突起を摘んで反論をさえぎり
「俺もそう思うけど、カシスの努力を無駄にするのも薄情な気がするしな」
しゃあしゃあと嘘くさいセリフを吐きながら首筋に舌を這わす。
少し強めに弄るだけで声を上げてのけぞるように身をよじらすカシス。
いつも自分を振り回す相手をこうしていると何だかとても征服感を感じ、続いて嗜虐心が芽生えてくる。
胸を弄り回している手を下に伸ばし、ショーツの上から秘所をなぞるとすでにしっとりと濡れだしてきていた。
「や、やだっ……どこさわって…んむっ!」
口論には口で対抗する。別の意味でだが。
その間にハヤトの指はするりとショーツの中に侵入し、申し訳程度の下生えをかすめて秘所に到達。
直に割れ目をなぞってやると体がびくんと震え、合わせた唇の間から喘ぎ声が漏れ出す。
あふれた愛液を指ですくうと──自分では見れないので、かわりにカシスの目の前で指を開いて糸を引く様子を見せつけてやる。
「見せないでよ…バカぁ…」
いつもの「バカ」と違うニュアンスが新鮮でやみつきになりそうだ。
満足げなハヤトは再びショーツに侵入を開始する。
つぷりと割れ目の間に指を突き入れると、2本分でも締め付けてくる中を優しくかきまわす。
「ふぁ……ああぁっ!」
「たったこれだけでこんなになるなんて、思ったよりやらしいんだな、お前」
くちゅくちゅと淫靡な水音を響かせ、愛液があふれ出してくる。
「うぅっ……だって、相手がキミだから…あぁっ!」
そろそろ限界が近そうなのを感じたハヤトは、一番敏感な部分を一気に摘み上げた。
「────っ!」
声にならない悲鳴を上げて大きく仰け反ると、そのまま倒れるようにハヤトにもたれ掛かる。

さて、手伝うとなればここまで来た以上、恥ずかしめでたい破瓜の血で出血大サービスとかオチを付けたい所だ。
カシスの体をベッドに横たえると、急いでズボンをかちゃつかせ──

世界が、輝いた。


轟音が響き、フラット全体が激しく揺れる。
土産のワインをすべて空けてほろ酔い気分だったセシルとミモザは唐突に現実に引き戻された。
「いったい何があったの!?」
現場──すなわちハヤトの部屋に着くと、まず目に入ったのは粉砕された扉。
そして半ばめり込むように壁に張り付いているハヤト。しかもズボン半脱ぎ。
部屋をのぞいてみれば、煙を上げる中にショーツ1枚でぐったりしているカシスの姿が。
「……本当に何があったわけ?」
まったくわけがわからずハヤトに尋ねてみる。
頭からだくだくと流血してなんだか壁画のようだ。
「……女の持ち物には気を付けようってことかな…」
イッた瞬間に魔力が無差別放射され、いつも着けていた指輪をキーにして暴発に近い形で召喚術が炸裂したらしい。
今度やるときは素っ裸にしないとな……
そんなことを考えながらハヤトの意識は飛んでいった。


余談だが。
その後何度もほぼ強制的にマッサージされた結果、ブラを新調するに至ったとか。


おわり

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