アズリア視点



「やれやれ…これで、どうにか一区切りついたようだな」
「そうですね…それにアズリア、貴方がいなかったら勝てませんでした。貴方がいてくれたからシャルトスはウィスタリアスとして生まれ変わることもできたんです、本当にありがとう」
無色の派閥との決着後、私は海賊たちの船の船首で夜風に当たって海を眺めていた。そのとき、アティから声をかけられた。
ウィスタリアスはアティの心が力となっているらしい、アティは私からその力をもらったというのだ。
あの時はただ、あいつに活を入れてやろうと思っただけだったのが…それでもアティは感謝している、という。
しかし、なんて可愛い笑顔なんだ。軍学校時代から何も変わらないその笑顔…はぁはぁ…い、いかん。落ち着け、アズリア。
「けど、どうしてあんな無茶したんですか。私のために戦おうとしてくれたのは嬉しかったけど、だからといってお互いに心配をかけるようなことはやめましょう、ね?」
「あ、あぁ…すまない」
あぁ、アティに叱れている、アティ、アティー!もっと叱ってーっ!
「あ、あのアズリア…?」
…はっ。
「すまない…イスラのことが…な」
許せ、弟。
「イスラにはきっとアズリアの声は届きますよ、その時は私たちみんな手伝います」
「ありがとう、アティ」
「…そ、そうだ。アズリアにお礼がしたかったんですよ。ちょっと後ろ向いててもらえませんか?」
月明かりで少しばかり照らされたアティの顔は少し赤いように見えた。なんなのだろう、お礼とは…まさか…

「いいですよ、こっちを向いてください」
「いった…い…」
言いかけた私の言葉は途中で遮られた。それは…アティの唇だ…って何ぃ!?
ア、アティの唇がわ、私の…こ、これは…キスなのか…!?
ちょ、ちょっと待て。私のファーストキスがアティなのか、アティなのかー!
ハァハァ、吸ってー舌入れてー好きにしてくれーアティィィィィ!

「…ズ…ア、アズリア…アズリア!」
「え?」
「え?じゃないですよ、その…早く後ろ向いててください」
「あ、あぁすまん」
い、いかん。落ち着け、アズリア。そんなことはないのだ、第一アティは女、私も女だぞ。そもそも女同士でキスなどと…いや、アティならいいんだぞ。むしろ来てほしいくらいだ。…落ち着け、そうだ、ギャレオでも紫電絶華で刺してよう。

「いいですよ」
アティの許可が出た。では振り向くとしよう、待ち時間の間、ギャレオを何度か倒したしだいぶ落ち着いたようだ。
こういうとき、役に立つな。さすが副隊長。
「それで、お礼とはなんなんだ?アティ」
「いきますっ!」
「なっ?」
アティの顔がかけ声と共に近づいてくる、ま、まさか…本当に…

ちゅっ

「あー恥ずかしかった」
アティは私のほおにキスをした。想像とは場所が違ったがアティに…キスをされた…されたんだ。
ハァハァ、アティー!ビヴァ!アティィィィィー!!
「ご、ごめんなさい!その…キス…なんかしちゃって」
どうやらアティには私があまりの出来事に硬直してしまっていると思っているようだ。
違う!むしろもうちょっと横にずれてくれてよかったんだ!謝るなぁ…でも謝るアティも可愛いな…。
「な、なにをするんだ。いきなり…その…女同士だというのに」
「そ、そうですよね。その…お礼がしたいってスカーレルに相談したら“そういうときは男も女も一緒、キスしてあげなさいな。もちろんホッペにね”って言うものだから…」
あのオカマの差し金か…そ、そんなことはどうでもいい。い、今はこの場をどうするべきかだ、そうだアズリア=レヴィノス、こういうときこそ落ち着いてだな…
「やっぱり…嫌でした?」
あぁそんな目で見るなアティー!そんな艶めかしい目で私を見ないでくれーハァハァ…嫌なことはない…むしろ最高だー!
「お、驚きはしたが…悪くはない…わ、私としては口が…」
駄目だ、これ以上一緒にいると襲ってしまいそうだ。とりあえず部屋に戻ろう。
先ほどの発言を咳払いで濁らせてアティに部屋に戻る、と言って私は逃げた。


「あら?センセのキスはどうだった?」
廊下を歩いているとその途中、スカーレルが待ち伏せていた。事の発端がのこのこと…
「お前があいつに変なことを吹き込んだのか」
「そんな言い方ないんじゃなーい?実は嫌じゃなかったんじゃない?」
く…鋭いな…いや、私は正常だ。断じてアティからキスされたことで舞い上がってなどいない。
「ま、いいわ。これあげる」
そういうとスカーレルは小瓶を私に投げた。
「なんだ、これは」
「ヤード特製の超媚薬。どんな相手でもイチコロよ」
「馬鹿馬鹿しい、こんなもの私が欲しいとでも言うと思ったのか?」
「別に欲しいからあげるわけじゃないわ、サービスよ、サービス。気が向いたら使いなさい」
これがあればアティは私のもの…ウフフフ…い、いかん顔に出すなよ、アズリア。
「…一応、もらっておく」
私はその媚薬を受け取り部屋へと戻った。
「がんばってね〜…フフ、どうなるかしら」

「媚薬…か」
私は部屋に戻ってベットに体を預けた。仰向けになってその小瓶を見つめる。
その小瓶には「大胆になるクスリ〜地味な男がここまで大胆に!?〜」などと書かれている。
ちょっと、待て。どこがどう媚薬なんだ…小瓶には説明書きが書かれていることに気付いた。何々…“あなたの汗を染みこませた1粒を相手に飲ませたら相手はもうイチコロ。食事や飲み物に混ぜても大丈夫よ By.スカーレル”とある。どうやら失敗作のようだ。
しかし怪しい。これでアティが私のものになるというのなら喜んで使うのだが…
よし、ここは一つ試してみるか。そうと決まれば今日はもう寝よう。
「あぁアティたん…ハァハァ」


「てやーっ!」
朝、目が覚めた私はたまたま外にいたカイルを誘い戦闘訓練をしている。
奴には汗をかいてもらわなければならないのでしっかりと動いてもらわなければならない。
そういうわけで私はカイルに対して紫電絶華を容赦なく仕掛ける。
「ぐあああっ…お、おいもうちっと手加減してくれよ」
「何を言ってる、これしきのことでへばるような奴ではあるまい」
「ったく…朝っぱらからこれじゃあこっちの体が持たないぜ」
「まぁ訓練に付き合ってくれてすまないな、ほらタオルだ」
「わ、わりぃな…」
「そこのお二人さーん、朝食できたよーっ!」
遠くからソノラの声がした。ちょうどいい、早速媚薬の効果の程を試させてもらおう。
私はカイルからタオルを奪い取ると、早々と船に戻り部屋に置いておいた媚薬を1粒取り出すとタオルを絞って汗を染みこませた。そうしてできた媚薬を持って私は朝食へと向かう。
部屋に着くと幸い、誰もまだいないようだ。いまのうちにこの一粒をコップの水に入れた。
これは実験だからアティさえ飲まなければ大丈夫だ。そうしているとアティがやってきた。
「あれ?今日は早いんですね、アズリア」
「あ、あぁ目が早く覚めたものでな」
アティは昨日のことなど覚えていないような素振りだった。まぁいい、この薬が本物だった暁には目の前にいる天使、アティは私のものだ…フフフ…ハハハ…
「ア、アズリア?」
「ハハ…あ、あぁなんだ」
「まだ寝ぼけてるんですか?さぁ早く席に着きましょう」
アティは目の前の席に座ろうとしていた。ちょっと待てそこは…!
「アティ、こっちに座れ、な?」
「え、あ、はい…」
私は強引にアティを他の席へ座らせた。そのどさくさに紛れて隣に座る。アティの隣ゲトーッ!

そして次々と席が埋まっていく、そしてあの席には誰が座るのだろう…あまりじろじろ見ても怪しいだけだ、ここは視線を向けずにいよう。
「そんじゃ、全員揃ったし食べますか!」
カイルが言う。どうやら全員座ったようだ。さて、誰があの席に…!
その時私は見てはいけないものを見た気がした。いや、見間違えるはずがない。
あのむさ苦しい筋肉と角張った輪郭、一人だけ別世界のように空間を作り出す筋肉の巨漢…ギャレオだ。しかも美味しそうに水を飲んでいる。
…ま、まぁカイルと奴がどうなろうと問題ないだろう。それよりも効果が本物かどうかが大切だ。


翌日、ギャレオが非常にやつれた顔をしていた。どうやら効き目は本物のようだ。
これはいける、これでアティは私のものだ…フフフ…ハハハ…。
しかし問題はどうやってアティに媚薬を飲ませるかだ、昨日のように食事に混ぜるのは一番簡単だが失敗すればギャレオのようになってしまう。
私が悩んでいたところにスカーレルがやってきた、妙にニヤニヤしている。
「どうかしら?お薬の効き目は。バッチリでしょ」
「あぁ…確かにすごい効き目だ。あのギャレオの輪郭が丸くなるとはな」
「で、今度はセンセにそのお薬を?」
「何を馬鹿な…!冗談もほどほどにしろ」
「あらゴメンなさい…それじゃ失礼するわ…あ、そうそう。センセは今、ユクレスの村で農作業の手伝いをしているわ。じゃね〜」
スカーレルが部屋から立ち去った。そうか…メイトルパのところか。農作業…よし!
私は早速、準備に取りかかった。アティに媚薬を飲ませるためには農作業で疲れたところを狙おう。
そのためにアティの大好物であるナウバの実やその他さまざまなブレンドを施したベリーデリシャスウルトラヘルシードリンク、アズリア汁を作りあげた。
あとはこのアズリア汁をアティに飲ませれば…今夜が楽しみだ。


夜も更けて私はアティを待った。結局アズリア汁は部屋の外で待機していたスカーレルに預けた。
どうもあのオカマはすべてを把握しているのが怖いがそんなことはどうでもいい。
既にベットの上に座り、アティがくるのを待機していた。そこへコンコン、とノックがする。
「カギはあいてるぞ」
「アズリア、ちょっといい?」
アティキター!カモーンカモーン!!
「なんだ?こんな夜更けに」
「ん〜その…ちょっと」
あぁ恥じらいアティ、さぁその体を私に預けてーっ!!
…アティが近づいてくる。あぁそのセーターに隠された豊満な胸が目の前に…目の前にぃぃぃ!
さぁ私に抱きつけ、押し倒せ、キスをしろー…って、
「ア、アティ何を…」
アティは私の後ろに回ると肩を揉み始めた。肩なんでいいんだ、胸を揉め、胸をだ!
「私のためにジュースを作ってくれたお礼です、毎日朝から訓練疲れてると思って」
そんなことはどうでもいい、媚薬の効果があったんだろ、なっ?そうだろアティ…アティたーん!
…それにしてもなんて上手な肩もみなんだ…ア…ティ…。
「あ…あぁ…いい…も、っとぉ…」
「や、やだ。何言ってるんです、アズリア」
「そ、それはだな。あまりにも上手だったから、つい…」
「よかった!じゃあもっとしてあげますね」
あぁ、アティに肩を揉まれている。たまらない、いい…いいわぁ…。
んっ…あぁ…はぁはぁ…もっと、もっとぉ…。
「それでですね、アズリア」
なんだ、アティたん。もう私は貴女の虜…いや、この場合アティたんが私の虜なのか。
「実は、言いにくいんですけど。せっかくのジュース、他の人にあげちゃったんです」

な、なにぃぃぃぃぃぃ。私の頭の中で後半の言葉が何度も響く。他の人って誰だ!?
「ギャレオさんが一番よく手伝ってくれたんです…ってアズリア?大丈夫!?」
「た、隊長どうしましたっ!?」
「ギャ、ギャレオさん!アズリアが突然倒れちゃって…」
「ここは私に任せておけ。ストラをかけておこう。アティは休むといいだろう」
「す、すみません。お願いします、ギャレオさん」
「あぁ」

「でもなんでギャレオさん、アズリアの部屋にいたんだろう、それもタンスの中から…きっとかくれんぼでもしてたんですね」

「う…」
アティの言葉にショックで意識を失っていたようだ…ってなんでだ…。
「隊長、気が付きましたか」
ギャレオがなんでい、いるんだ…まさか…。
「隊長、じじ、自分は…た、隊長のことが…」
OK,落ち着けギャレオ。お前は早く檻に帰れ。よせ、やめろ。ち、近づくんじゃない…!
「いやああああああああああああああああああああああ」


「あら?センセ、どうしたの?」
「二人っきりの時は、アティって呼んで。スカーレル。」
「そうね、ごめん。アズリアの様子はどうだった?」
「イスラのことで大分思い詰めてるようで…ギャレオさんが今はそばにいてくれてます」
「そう、彼女ならきっと大丈夫よ」
「そうですね!」
「まぁ…彼女本当にセンセ狙いとはね…ギャレオに飲ませてよかったわ」
「…何か言いました?」
「なんでもないわ。さ、行きましょ」

翌日以降、アズリアは戦列を離れた。
そしてソノラに近づく毒蛇の影が…。


おわり

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