一触即発



―サイジェント郊外、ガレフの森
猟師位しか入る者のいないこの森に珍しく来訪者があった。
影は、大小二つ。森を颯爽と擦り抜けるかのように移動する者達を知る人間はこう呼称する
シノビ、と。
そのうち影は森の中央付近、しばらく前寄生するキノコの魔物との戦闘によって開けた場所へと到着した。
「しかしまあ、アカネさんの方から修行に誘ってくるとは珍しい事もあるものですね」
「まあまあ・・・ではいきますよ、お師匠」
シオンが頷くのを確認すると、アカネは彼の周囲を旋回し始めた
それまで笑みを讃えていたシオンの顔に真剣味が宿ってゆく。
「忍法・多重分身っ」
「ほぉ・・・」
何も分身時に声を出す必要は無いでしょうに。そう失笑するつもりでいたシオンの口から出たのは驚嘆の声だった。
「へへ・・・どうですか? お師匠」
シオンを取り囲むド派手な忍び装束に身を包んだ愛弟子全てが、同時に喋りだす
その数およそニ、三十といった所か。
(全ての分身から気配を感じる・・・随分と一人で修練を積んでいたようですね)
シオンが分身するのであれば、逆に全ての分身の気配を消し相手の動揺を誘う。
逆の発想とはいえ、弟子の上達ぶりに思わず舌を巻く。
(とはいえ・・・)
―全ての気配が等分されているという訳でも、ないですね
「そこですっ」
銃でいうところの抜き打ちの要領で懐から苦無を打ち放つ。流石に修練用に使われるものであるから、たとえ命中したとしても軽い打撲を負うだけで済む代物である。
丁度シオンの死角に位置していたアカネへと一直線に苦無は伸び、そして
ガッ・・・
「な・・・!?」
倒れた古木へとぶつかり、弾かれた。
「やりいっ」
慌ててシオンが振り返るとアカネが意外な場所から姿を表した。

明らかに苦無を投げたのとは明後日の方角である。
「これは・・・私としたことがしてやられましたか。大分、修行をしていたようですね?」
「へへへ・・・」
(予想の範疇を超える動き・・・この子もいつまでも雛鳥ではない、か)
急な弟子の成長を嬉しくも、少々寂しくも思いながら照れ笑いを浮かべるアカネを見やる
「お師匠もうまく翻弄できたんだから、今度こそは・・・っ! では師匠、また後で」
「へ? アカネさん?」
あっけに取られるシオンを尻目に、アカネはそそくさとサイジェントの街目指して駆け出していた。
見る間に声を掛けられぬ所まで行ったかと思うとその姿を消してしまった。
「・・・・・・まだ幾分、精神修練が足りないようですね」
一本取られたのもシャクですね。そんな事を一人ごちながらシオンはしばらくの間修練に励むのだった・・・。

「ふぅ・・・久し振りにゆっくりできてるって感じだな」
「そ、そうだね・・・」
(チャンスっ、チャンスよカシス!)
フラットの昼下がり、家でくつろぎお茶を飲むトウヤの横でカシスは一人盛り上がっていた。
「だけどこう平和だとあれだな。どうも気が抜けちまっていけねえよ」
「はは。少し前までの慌しさが異常だっただけだろ?」
椅子に体重を乗せ背伸びするガゼルにトウヤが苦笑してみせる。仕事を早めに切り上げたエドスもまた会話の輪に参加していた。
(とっ・・・取り合えずよ・・・先ずはトウヤをうまく外へ連れ出して・・・)
3人の談笑が進む中計画を練るカシス。既にトウヤ以外は目に入っていない
脳内で削除されているらしい。
「まあな・・・でもお陰で腕っぷしは鍛えられたってもんさ」
「だったらガゼル。お前も一緒に石切り場で働くか?」
「いや、そういう意味で言った訳じゃ・・・」
「ははは」
(そう! いざこざも片付いた今こそアタックのチャンスッ!)
「という訳でっ! さあ出かけましょうかトウヤ!」
だむっ、と唐突にテーブルに拳を叩き付け荒い息でトウヤに向き直るカシス。
向かい側では驚いたガゼルが盛大に椅子から転げ落ちたり、お茶を吹いたトウヤの所為でエドスがびしょ濡れになったりしているのだが無論、カシスには見えていない。いや、気に留めていない。
「何がという訳なのかは分からないけど、一体どうしたんだ・・・?」
「いいからいいから。外はいい天気だし歓楽街でお茶でもしましょう。大丈夫、任せて。エスコートは私がするから。だって私は行・動・派ッ!」
―今の君は行動派というより、暴走してるようにしか見えないけど
一瞬そう口にしようとしたトウヤだったがカシスの目の色が違う事に気付き、溜息をつく。
どうにも何を言っても伝わりそうに無い。
どちらにしろする事も無かったのだし素直にカシスについて行くか・・・
そう考え、カシスをなだめようとしたトウヤだったがサッと身を背後へ躍らせる。
めきばりどすん
とても楽しげなカシスを押し潰し天井からオレンジ色の塊が板ごと落ちてきた。
「やっほー、トウヤ」
「また随分と妙な所から出てくるもんだね、アカネ」
「だってほら、何時だか言ってたでしょ。クノイチが玄関から普通に入ってくるのは趣が無いとか・・・」
「あー・・・言った気がするよ、思い切り」
我ながら余計な事を言ったものだ。
リプレが怒髪天を突く所を想像しながら頬を掻くトウヤ。とはいえカシスは一連の流れで沈黙してくれたようだ。アカネの下から呻き声がするが、とりあえず聞こえない事にしておく。
「で、今日はどうしたんだ?」
「ふふ・・・今日こそはアンタを負かしてやろうと思ってね」
不敵に笑い、自信たっぷりに腕組みをするアカネ。なお未だにカシスは下敷きになっている。
「ああ、”アレ”か。丁度暇だったし・・・喜んで受けて立つよ」
「そうこなくっちゃ! 場所は何時もの所。先に行ってるよ」
はしゃぎながらアカネは玄関から出て行った。
「帰り道は普通なのか。さて・・・盟約に従い、いでよ・・・ライザー」
「(゚д゚)ノ」
「すまないけどこの天井、直しておいてくれるかい? 道具は屋根裏にあったと思うから」
「(゚д゚)ノ」
「頼んだよ。夕方までには戻ると思う」
「(゚д゚)ノシ」
こうして後には
「・・・私は・・・行動・・・派」
「・・・Fエイドはいるか?」
未だ呻き声を上げるカシスと、ライザーを手伝うエドス、白目を剥いたまま動かないガゼルが残されるのみであった。

「しかしアカネも懲りないね」
「そう言ってられるのも今のうちだよ、トウヤ。今日こそはアンタに勝つからね」
スラムの外れ、空家の屋根の上からアカネはトウヤを力一杯指差した。
事の起こりはアカネの修行にトウヤが付き合い始めたのが原因だった
己の分身の尽くを見透かされ、本物を当てられた彼女のプライドに火がつき勝負へと発展したのである。
現在の所勝敗は53戦0勝52敗1引き分け。その一回だけの引き分けもアカネが通りすがりの召喚馬車に轢かれた事で勝負がお流れになったからである。この時は勝負が流れたばかりか、アカネ自身まで三途の川に流されかける悲惨な結果となった。
「苦節云ヶ月!今日こそは負けないよ」
「で、負けたときは何時ものお約束。分かってるよな?」
「うっ・・・」
にっこりと笑いかけるトウヤを見て赤面するアカネ。そう、この勝負負けた方にはそれなりの”ペナルティ”があるのだ。
「え、ええいっ! いくよ・・・多重分身の術!」
「へぇ・・・」
屋根の上に、路地のあちこちに。アカネが次々と姿を表してゆく。
が、トウヤの余裕の表情は一向に消えることは無い。
「さあ、アタシがどこにいるか分かる!?」
「お、今度は皆が皆喋るんだな」
腕を組み、感心したかのようになんどもうんうんと首を振るトウヤ。
(へへ・・・そっちを見てる時点でアタシの勝ちは貰ったよ)
息を殺し、”本物”のアカネは暗闇の中でほくそ笑む。
(いくらなんでもトウヤだって、こんな所に隠れてるなんて分かりっこ無い無い)
「はい、見つけた」
「そうそう見つかっちゃった・・・って、ええっ!?」
トウヤの声に上を見上げれば、仕掛けの布をずらしこちらを見つめるトウヤの姿
「どうでも良いけど・・・ある意味反則じゃない? これ」
「く・・・」
アカネが隠れていたのは路地裏の一角―更にそこに穴を掘り、土遁の要領で潜んでいたのだった。
分身が気配を発する分、気配を殺し潜んでいたアカネは非常に見つかりにくい・・・はずだったのだが
「なんで見つけられるのよ・・・」
「なんでと言われてもね」
「納得いかない! もう一回、もう一回仕切りなおしっ!」
「はいはい」
殆どムキになっているアカネに対し、苦笑してみせるトウヤ。苦笑しつつもその顔は何所か楽しげに見える。

「・・・で、僕の60戦59勝と・・・もう少し強くてもいいよ、アカネ」
「んふ・・・んちゅ」
結局その後何度も挑戦したアカネであったが、尽く一瞬で本物の位置を見破られてしまった。
そして結果的にアカネは”ペナルティ”を受けている。
「ん・・・んぶう」
薄暗い空家の中に移動したトウヤは腰を下ろし、アカネに自らの肉棒へ奉仕するように命じていた。
月並みではあるがペナルティの中身はずぱり、”敗者は勝者の言う事を何でも聞く”である。
(しかし何時見ても大きくて硬い・・・って、何考えてるかなアタシも・・・)
とり止めも無い思いが脳裏を過るが必死に否定するアカネ。しかしその間もけして愛撫の手が止まる訳では無い。
舌先で肉棒の筋に沿い、つーっと舐め上げながら片方の手で睾丸を握り優しくマッサージする
「くっ・・・」
(相変らず、巧いよな・・・)
これもシルターンのクノイチの為せる技か。
幾分くだらない事を考えているうちに、射精感がこみ上げてきた
「ん・・・アカネ、僕そろそろ・・・」
「んむ・・・?」
快感に顔を歪めるトウヤと肉棒への愛撫を止めないアカネの視線が交錯する。
不意に。アカネの目が細まる
「うっ・・・」
それまでトウヤの睾丸を愛撫していた手が、竿の付け根を押さえていた。
舌の方は筋から鈴口へと刺激の対象を移行させ先端から溢れる透明な液を舐め取っている。
「へへ・・・男の人ってここの根元を押えるとね、簡単には射精できなくなるんだよ・・・?」
そんな事を一体何所で覚えた?
たったそれだけのツッコミも入れる事が出来ない程、トウヤは追い込まれていた
イきたいのに射精す事が出来ない。にも関わらず快感ばかりは高まってゆく。
「くあ・・・あっ・・・」
自然と声が出る。もはや攻守は完全に逆転していた。
(そろそろ限界かな)
悶えるトウヤを見て押えていた手を放すアカネ
その代わりその口の中に肉棒を飲み込んでゆく。
先程までとは違う、ぬめりと生暖かさが肉棒を完全に支配した。
「う・・・っ・・・あ・・・」
同時に普段からは想像できない量の精液がアカネの口の奥へと解き放たれた。
「んん・・・っ!? ん、ぷあっ・・・」
その射精の勢いはアカネにとっても予想外だったのか、慌てて口を放す。
「うわ・・・すごいよトウヤ。まだ出てる・・・」
アカネの口から開放された後も暫くの間射精は止まらなかった。射精している間アカネが手でしごき続けていたのも要因の一つだろう。
射精された白濁液はアカネの顔にまで掛かり汚していた。まだ暖かさの残るそれをアカネは指で掬い上げ、舐め取ってゆく。
「顔までベトベト・・・ひあっ!?」
「なんだ、アカネだってもうビショビショだったんじゃないか・・・」
射精の余韻の残る頭で既にトウヤは反撃に転じていた。忍び装束の下に手を忍ばせ、既に濡れそぼっていたアカネの秘口を刺激する。
「んあ・・・ここで終わりなんて言わないよね?」
「・・・勿論」
頬を桜色に染め、持たれかかってきたアカネの耳元にトウヤは囁いた。
「んあ・・・うああああっ」
「・・・っ」
既に愛撫を不要としていたアカネの膣は実にあっさりとトウヤの肉棒を受け入れた。
トウヤは先程までの体勢と変わらぬままで、アカネを抱きしめた。
丁度、騎上位でトウヤが上半身だけを起こすかのような姿勢となっている。
「さっき射精したばっかりなのに・・・硬い」
「少し激しくするけど・・・いいかい?」
「ん・・・平・・・うあっ!・・・や、激し・・・」
「だから・・・言ったろ?」
アカネが頷き終える前にトウヤは腰の律動を開始していた。急な事にアカネは驚きながらもしっかりとトウヤの背に腕を回ししがみ付く。
ぷちゅぷちゅという水音が行為の激しさを一層強く自覚させ、快感を引き出す。
トウヤの手は形の良いアカネのお尻を鷲掴みにし、固定していた。
「んふああ・・・あああああああ」
内部を突き、抉るかのような動きでアカネの頭の中が真っ白になってゆく。
(うあ・・・こんなの凄すぎ・・・)
強すぎる快感から逃げようと腰を動かそうとするがしっかりとトウヤの手が掴んでいるためにそれも出来ない。先程までのおかえしとばかりにトウヤの動きが更に激しさを増した時

ことり

「・・・っ!?」
空家の外から物音が聞こえた。
アカネの心臓が跳ね上がる。トウヤもそのピストン運動を止めていた。
「何所に隠れようかな・・・」
(ア、アルバ・・・!?)
外から聞こえてきたのは間違いなくアルバの声。そして
「ん・・・」
「どうやら、ラミもいるみたいだね・・・」
小声でトウヤが呟く。どうもかくれんぼをしているらしく、せわしなく足音がしている。
耳を澄ましてみるとフィズが数を数えているのが分かった。
「ど、どうすんのよっ!?」
板一枚を隔てた向かい側でこんな事をしているなど子供達は思うまい
焦るアカネを尻目に、トウヤはゆっくりと腰を動かし始めた。
「んあ・・・っ!?」
再び来た快楽の波に、思わず出そうになった声を慌てて押し留める
「そっか・・・この辺りの空家で皆は遊んでるって言ってたっけ」
「ト、トウヤ・・・アンタまさか」
―知っててわざわざ、場所を移動したの―?
目でそう問うアカネにトウヤはにやりと笑ってみせた。その顔が完全に確信犯である事を示している。
「興奮・・・するだろ? スリルがあってさ・・・」
「ば、馬鹿・・・くは、うああっ?」
アルバ達が近くに来た時程ではないにしろ、腰の律動が激しくなる
にちにちという音もだんだん大きくなってきた。
冷や汗を掻きながら、片手で口を押さえ、片手でトウヤに捕まりながらも快楽を貪る事に甘んじるアカネ。
中断するにしても一度高まってしまった快楽はそう簡単には抑える事はできない。
「んんっ、んんんんん・・・!」
「ふふ・・・なんだ、アカネもそれなりに乗り気じゃないか?」
(駄目・・・もう止めらんない。気持ち良い、気持ち良い、気持ち良い・・・)
それまでトウヤの為すがままになっていたアカネであったが、何時の間にか自らもトウヤの動きに合わせ腰を動かしていた。接合部から漏れる粘液質な音が強くなる。
「さて・・・そろそろイくよ、アカネ・・・」
快楽と羞恥心でおかしくなりそうになりながらも、なんとかコクコクと首を振ってみせるアカネ
と、何を思ったかトウヤの手がアカネの口を覆う手を除けた。そして・・・
「んんっ!? んん、んんんんんん〜〜〜!」
アカネとトウヤはディープキスをしたまま、絶頂に達した。
どくどくとアカネの中にトウヤの想いのたけが流れ込んでくる
(うあ・・・熱い・・・)


「まったく・・・トウヤってとことん意地悪いよね」
「ははは。そうむくれないむくれない」
夕刻のスラム。ようやく落ち着いたアカネにトウヤはこんな事を説明していた
―空家にメイトルパの幻惑術をかけてあったから、アルバ達が入ってくる事は絶対なかったんだよ―と。
「ま、まあ・・・アタシも気持ち良かったからいいんだけど・・・それより!」
「うん?」
「どんだけ分身の術を磨いても本物を当てれるのは何故か、教えてくんない?」
「何故か・・・って言われてもね」
困った表情を浮かべるトウヤ。何故かアカネとは視線を合わせようとしない
「勿体ぶってないで、さあ!」
「ええと・・・同じ術をシオンさんが使ったとしても、多分見分けられないと思うんだ」
「?」
「つ、つまりは・・・」
「つまりは・・・?」
「相手がアカネだから・・・かな?」
「・・・・・・」
頬を掻きながら、小声で呟くトウヤ。無言のままその言葉の意味をゆっくりと反芻するアカネ
「な・・・ななななななに言ってんのよ!? ば、馬鹿じゃない?」
「顔赤いよ、アカネ・・・」
「アンタだって・・・トウヤだって赤いっての!」
「こ、これは夕日の所為で」
「アタシだってそうだよ!」
耳まで赤くしたアカネとトウヤの取り止めない言い争いはその後暫く続いた。

一方、フラットのアジトでは
「ふふ、今日もまたトウヤさんとアカネさんは二人して何所かに行っているようですね」
「あらあら・・・シオンさん。お弟子さんを取られて悔しいんですか?」
「あっはっは・・・そういうカシスさんこそ、相方を寝取られて歯痒い想いをしているのでは?」
「うっふっふっふっふ・・・」
「あっはっはっはっは・・・」
「((((゚д゚;))))」
「・・・クロウツァの実、いるか?」
険悪な空気に包まれたシオンとカシスの間でライザーは身動きが取れず、ガゼルは倒れたままだった。

―今日もまたサイジェントはおおむね、平和である。


おわり

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