毒を食らわば



ぺしぺし。ぺしぺし。
「ふぁ……。おはよ、テテ」
頬を叩いて起こしてくれたテテに声をかけると、しゅたっと手を挙げて返してくる。

朝。清々しい朝。
そして気持ちのいい目覚め。
今日は何かいいことありそうな予感すらしてくる。
こんな日は野盗狩りでもして、財布をいただきつつ城に突き出して懸賞金の二重取りでも…
「よし。朝食だ」
ハヤトは着替えをすませると、朝の運動なのか、しゅしゅっとシャドーボクシングしているテテを頭に乗せて部屋を出た。

「おっはよー!」
どすっ!
リビングに顔を出すなり横殴りの衝撃に出迎えられた。
唐突に揺れた頭の上でテテがわたわたとバランスを取っている。

「ああ、おはよ」
猛烈なタックルをかましてきた茶髪の少女──カシスに軽く挨拶する。
脇腹に響くタックルももう慣れた。初めの頃は背骨がずれるかと思ったが。
これも愛情表現の一種だと思うとこれはこれで嬉しかったりする。
ぎゅっと抱きつかれて、控えめなりにも胸の感触が伝わってくる。
こっちは単純に嬉しい。

はて。何か違和感。
くっついてるカシスをはがすと、頭のてっぺんから見下ろしていく。
じっと見つめられて、いやんと照れたり。かわいい。が、これは別にいつも通り。
OKわかった、服装だ。
いつものローブではなく、ブラウスにスカート。そしてエプロン。


古代中国において無敵を誇った豪傑、英布将軍。彼は同時に無類の食通でもあり、自らの料理を振る舞い部下をねぎらったと言う。
だが彼は戦場での返り血は誇りであるが、畜生の血で汚れるのは不名誉であるとし、甲冑の前面に布をかぶせていた。
このことから、調理の際にかける布を「英布絽(えいふろ)」(絽は布の意)と呼び、それが諸外国に伝わる過程で「エプロン」に変化した。
なお、漢の浪漫と言えば統計的に「裸エプロン」が最上位に挙がるのは羞恥……もとい、周知の事実である。
ちなみに2位は「裸に男物のシャツ」であることは言うまでもない。

────民明書房刊「料理の鉄人28号」
そんなことはどうでもいい。エプロンと言えば家事の際に着用するものだ。そして朝の家事。となると──
「あ、あの、カシスさん?なにゆえエプロンなんか付けてらっさるのかな?」
「へ? そんなの決まってるでしょ。朝食作ってたの」
やはりか。今までの経験からして、ここは逃げの一手に限る。
「い、いや!残念だけどお腹減ってないから──」
ちょうどその時、ぐううう〜〜とお約束というか、基本に忠実な腹の音が。
「いいいい今のはテテの鳴き声で!俺は別に──!」
失敬な、と言わんばかりに頭の上で地団駄を踏むテテ。許せ。
しかし苦心の言い訳もどこ吹く風。カシスはキッチンから持ってきた皿を並べ始めた。

テーブルに並んだ料理。見かけは悪くない。むしろ普通だ。
だが、すさまじくイヤな予感が頭をちらつき、不安が澱のように溜まっていく。
と、ハヤトが手を付けあぐねているところ、てくてくと歩いてきたテテが無造作に料理のひとつを飲み込んだ。
びし
異音を立ててテテが石化する。
「…………」
「…………」
沈黙の中、カシスは取り出したラムルカムルの葉を細かく刻んでぱらぱらと振り掛け、ぷすりとフォークに刺し
「はい、あーん」
にっこり笑って差し出した。
「ちょっと待て。お前この状況でまだそれを食べろと」
「味は良いかもしんないじゃない」
「いや、そー言う問題じゃなくてだな」
「はい、あーん」

「うぅ……ぅ……光が……広がって……はっ!?」
いろいろとヤバげな夢から目覚める。時計を見るともう昼をまわっていた。
完食。今回もかなりきっつい感じだった。
もはやスペシャルボディも夢ではないのか。胃袋ばかり強くなっても仕方がないが。

こんこんと控えめなノックの後に、少し開けたドアの隙間から茶髪が顔を覗かせる。
「え、えっと……大丈夫?」
「ああ、もー慣れたよ」
カシスはおずおずと中へ入ると、ドアを閉めてそこにもたれ掛かった。
さすがにこう何度も失敗しては落ち込むのだろうか、大きなため息など吐いている。

さて、何でこうまで壊滅的な味になったりするのか。
外見がマトモになっている分上達してはいるのだろう。初期は目も当てられなかったし。
そもそも要所要所で味見でもしてればここまでは行かないはず──
ふと、怖い考えが浮かんだので聞いてみる。
「してるよな、味見」
「ううん」
OK。まず原因の一端を確認。
「……何でしてないんだ?」
「だってキミのために作ってるんだし、あたしが先に食べるのはダメかなって」
いや、それは違うだろ。喜んでいいものか微妙だ。

「仕方ない、ちょっとコーチしてやる。ここ座れ」
ちょいちょいと手で示すと、カシスはハヤトの横に腰を下ろしながら尋ねてくる。
「……キミって料理できたっけ?」
「ふふん、もちろんだ。リプレに教えたことだってあるしな」
「ホント!?」
きらきらと尊敬の眼差しが飛んでくる。まあウソは付いてない。ラーメンとか。


〜ステップ1 素材を見極めろ〜
「料理の基本はまず素材だよな。やっぱり大抵の物は新鮮な方がいい。野菜とかは見ればだいたいわかるけど、そうでないのは触って確かめるのも手だ」
腕を組んで話すハヤトに、ふんふんと聞き入るカシス。
「具体的に言うと──」
やおら組んでいた腕をほどくと、カシスの胸に無造作に手を伸ばしてむにゅと揉む。
「んっ…… って!い、いきなり何すんのよ!」
あわてて胸にくっついた手を振り払うと、ずざざっと大きく後ずさる。
が、ハヤトは話はまだ終わってないぞ、と腕を捕まえて引き寄せ、後ろから腕を回してがっちりとホールドした。
そしてブラウスの前をはだけさせると下着の間に手を滑り込ませて円を描くように撫でまわす。
「触ってみるとよくわかるけど、新鮮な物は瑞々しくて張りがある」
優しく揉むと手に吸い付いてくるような瑞々しい感触。
「ちょっ……や、やめ……んぁっ!」
弱々しく抵抗しながらも声に艶が混じる。ううむ、新鮮。
「指でつついて軽く押し返してくるくらいがいいらしいぞ」
「やっ……ふぁっ!」
きゅっと突起を押し込むと少し固くなって押し返してくる。
「でも肉なんかは新鮮なのより少し寝かせてからの方が美味いとか」
手を引き抜くと、そのままベッドに寝かせてやる。

〜ステップ2 味見はアグレッシブに〜
「味見って言ってもただ味を見るだけじゃない」
ベッドに寝かされたカシスは全身にうっすら汗をにじませ、荒い息を吐いている。話聞こえてないかもしれないが。
「舌全体の感覚を使って舌触りを確かめるんだ」
のしかかるように覆い被さると、唇を重ねて深く吸う。
小さく開いた唇を割って舌を侵入させ、口内をなぞり、舌を絡め合う。
レモンの味……ではないが、意識がとろけるほどに甘い。
その間に手はスカートをめくり上げてショーツの中へ入っていく。
「んぅ……んむ……ふぁっ……」
舌が絡むたびに指を飲み込む秘所から愛液があふれ、重ねた唇の間から喘ぎ声が漏れ出す。
銀糸を引きながら唇を離す頃には、ショーツはぐしょぐしょに濡れていた。
「もう……頭真っ白で……何言ったかぜんぜん覚えてないんだけど……」
「こーいうのは頭じゃなくて体で覚えるんだよ」

古人曰く『考えるな、感じるんだ』
むしろしっかり感じろと。

ハヤトは無用になったショーツを強引に引っ剥がして愛液あふれる源泉に口を付けた。
「ふああっ!」
くたりと伸びていた体に電流が走る。
割れ目に舌をねじ込んで中を擦るように刺激していくと、嬌声を上げて仰け反るように体が跳ねる。
「うーむ、微妙なしょっぱさ」
「あんっ……へ……変なこと言わないでよ……」
「その中にほのかな甘みが……これが愛の味ってやつか」
水音を立てて舐め回しながらアホなことをのたまうと、ずちゅるると一気に吸い上げる。
「あっ……へ……変なこと言わないでよバカああぁっ!」
少々色気に欠ける感じでカシスの快感は頂点に達した。

活き……もとい、イキがいいなどとオチが付いたところで今日のレッスンは終了です。


──と思いきや、ぐったりしていたカシスが起き上がって、焦点の定まっていない目でこっちを見つめている。
OK落ち着け。何か目が異様だぞ。
ふらふらとこめかみに手を当て、力のない敬礼をすると
「……実践に移りまーす」
がばっと抱きつき、有無を言わさず強烈なキスをかましてきた。
激しく吸われ、入ってきた舌に口内を蹂躙される。
──ちょっと待て。俺より数段上手いし。
枝を落とすようにざくざくと意識が切り落とされていく。
唇を離し、垂れた唾液を舐め取る。その舌の動きだけでも淫靡な感じだ。

うつろな視界の中で、カシスの顔がふっと沈む。
何をしているのか気付いた時には、ズボンの戒めを解かれて自身が飛び出していた。
「お、おい!何してんだ!」
じっと見つめていた屹立するそれを、カシスの繊細な手が柔らかく包む。
「うっ!」
そっと指が触れると自身がびくっと大きく痙攣する。
「……新鮮?」
「……聞くな」
彼女の手が触れている、と考えるだけで下半身からこみ上げてくるような感覚が押し寄せる。

ぬめりとした舌が伝わり、唾液が糸を引いていく。
「くっ……や、やめ……」
止めようにも、まるで神経がそこに集中してしまったかのようで手足が動いてくれない。
できることと言えば歯を食いしばって必死に堪えることぐらいだが、それもいつまで保つことか。
「んっ……は、ぁ……」
喘ぐ彼女の呼吸が触れるたび、ぞわりと背中がに寒気が走り、何かが弾けそうになる。

もうぎりぎりの所まで来ているのにまだ終わらない。
カシスの口がそれを飲み込んでいく。
生温かい唾液にまみれていく感触。狭い中でびくびくと震えるそれを押さえつけるような舌の動き。
悦に入った息遣いが過敏になった神経を通して快感を脳髄に叩き込んでくる。
「うっ……も、もう……」
はむ、と軽く歯を立てられる。それが限界だった。
「くっ……は、離れ……!」
もう遅い。止めることもできず熱いものが通り過ぎ、口内で弾け飛んだ。
「んっ! んむっ……!」
叩き付けられたそれを嚥下し、彼女の喉がこくりと動く。

ようやく止まるとカシスは唇を離すと
「けほっ、うぇ〜、苦い〜……」
軽く咳き込み、苦しそうな感じで喉を押さえた。
「もう!変な物飲まさないでよ!」
と、いつもの剣幕でまくし立ててくる。
じゃあこんなことやるなよ、とか突っ込みたかったが聞きゃしないだろう。
「こっちは繊細な女の子なのよ!? 妊娠したらどーするのよ!」
いや、しないだろ。口から卵でも産むのかお前は。
あられもない格好しているのも気に留めず、わめきながらぽかぽかと殴ってくるカシス。
まあこっちも悪いし謝っておいた方がいいか。

「わかったわかった、悪かったよ。今度はちゃんと下の口に──」
「バカ!」
もう一度押し倒そうとしたハヤトの顔面に鉄拳が突き刺さった。


その後、カシスの料理は特訓の成果?もあって、めきめきとは行かないまでも、普通に食べられるほどには上達した。
ついでに「食後のデザート」はいつも美味しくいただいていたりする。


おわり

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