千変万化



「まったく…どれだけ僕やアメルが心配したと―」
また彼が彼女の名を言葉に含む。
困ったような表情を浮かべるマグナを、彼は言葉巧みに―いや…これは違う。
使っている言葉自体は難しいものだがその内容は大抵の場合異口同音で締めくくられる。そう、今の様に。
いつもの和やかな情景。笑う仲間達。
暖かな雰囲気と安堵感。
―だが、何故だろうか?
気づけば彼が彼女の側に居ることが…笑いかけ話している事が胸を締め付けるようになったのは。
そんな胸を庇うかのように両の手を胸元で合わせる。
「…? 御気分でも悪いんですか?」
「シャムロック…お前、そればっかりだな」
「ん…何でもないの」
やや足早に、ルゥはその場を立ち去っていった。

「む…」
文献に目を通していたネスティの耳にノックの音が聞こえてきた。元より彼の部屋を訪問する人間は少ない為、音には敏感になってしまう。
「ネスティ…いるかな?」
更に珍しい事もあるものだ、とネスティは首を捻る。とは言うものの居留守を使うわけにもいかないのでドアへと向かう。融機人である証―機械が露出している部分などを見られることを忌む彼は常に自室には鍵を掛ける事が習慣づいているだ。
「こ…こんばんわ」
「珍しいな。君が僕の部屋にわざわざ来るなんて」
「来ちゃ駄目だったかな…?」
「いや、別段そんな事もないが…」
ややおどおどしながら見つめてくる褐色の少女の姿にネスティは自らの違和感が更に膨らんでゆくのを感じた。

(砂糖…砂糖、と)
ネスティは引き出しを開け、滅多に使うことのない砂糖の入った小瓶をルゥに手渡した。
「紅茶には…砂糖を入れる方だったよな?」
「うん、ありがと。でもネスティ…そっちの小瓶は何?」
手渡された瓶から砂糖をティーカップに投擲しながら、不思議そうにネスティの持っている物を指差すルゥ。透明な硝子の瓶には手渡された瓶と同じく白い粉末が入っていた。
「ああ…これは塩さ」
「はい?」
「沿岸区域で採れる…」
「いや、それ位ルゥだって知ってるよ・・・ただ、どうして紅茶に淹れるのかなって」
「そりゃあ美味しいからさ」
言うが否や小匙で塩を掬い取りティーカップへ落すと掻き回し、紅茶を啜る。
「うん。やはり小匙一杯が丁度良いな」
「・・・・・・」
そんな彼の様子をルゥは疲れた表情で見つめる。味音痴だとマグナ達から聞いてはいたものの、ここまでとは思っていなかったらしく少々退いていた。
「それで・・・何か用事があったんじゃないのか?」
ティーカップを皿へと置きネスティはルゥを見つめ返す。
「そ、そうだった・・・ええとね」
ベットの端に腰掛けるルゥは視線を逸らし、もじもじとし始めた。
時間が掛かりそうだな・・・とネスティは二杯目の紅茶へとその口を付ける。
彼が口を付けるのとほぼ同時、ルゥは決心したかのようにネスティに顔を向けるときっぱりとこう言い放った。
「ネスティって、アメルの事が好きなんだよね?」
ぶびゅり
無表情、無表情のままのネスティは思い切り紅茶を吹きだした。飛ぶ紅茶の射程上にはいなかった為、ルゥへの被害は皆無である。
「何故また・・・そう思うんだ?」
自らが紅茶を吹いた事は一切気にせず―もっともそちらが気にならないほど実際は動揺しているのかもしれないが―勤めて冷静な声で聞き返すネスティ。
「ネスティを見てると、何時の間にか目がアメルにいってるもの。マグナに説教してる時だって妙にアメルを引き合いに出すじゃない?」
「・・・・・・」
(えらくストレートに、そして核心を突いてくるんだな・・・この娘は)
改めてルゥを見つめる。その目は普段には無い程真剣そのものだった。
―言い繕ったとしても無駄だろうな
多少の言い訳も、見た目以上に聡明な彼女には通じまい。
「君以外は・・・気付いてるのか?」
「ううん。多分気付いてないんじゃないかな」
軽くルゥの質問を肯定しながらも探りを入れるネスティ。彼が頻繁にアメルを見ていた事に気付く程、ルゥが彼を見ていたという事実には気付かない。
「そうか・・・」
「アメルは・・・アメルはマグナの事が好きなんだよね」
「そうだろうな」
きり、と胸が痛んだ気がした。
「マグナは・・・カイナの事が好きなんだよね」
「・・・ああ」
(それ位、僕にだって分かっているさ・・・)
マグナの瞳がアメルを向いていなかったとしても。彼女の目がネスティに向かう事は無いだろう。ネスティ自身にしてもまた、融機人としての罪の記憶が負い目となりその気持ちを打ち明ける事は無い。否・・・できずにいた。
「わざわざ・・・そんな事を言いにきたのか?」
自分でも少し口調がきつくなっている事には気付いていたものの、それを押し留める事ができないネスティ。
「ううん・・・あの・・・あのね?」
再びルゥが視線を逸らす。その頬はやや紅潮していた。
「ルゥじゃ・・・アメルの代わりにはなれないのかな・・・?」
「・・・・・・」
ネスティの頭が混乱する

(今・・・彼女は何と言った? アメルの代わり・・・?)
他人の気持ちに対しても・・・自らの気持ちに対しても実に真っ直ぐな事を言う。
封印の森で暮らしていた為、他者と接していなかったからだけというわけでもないのだろう。純粋に言葉をぶつけてくる・・・そこがルゥらしさと言えた。
―純粋、真っ直ぐ
ネスティの顔がその二つの単語に歪む。
(何故こうも・・・)
―アメルにしろ、ルゥにしろ自分には無いものを持っているのだ?
そんな感情が暴発し、気付いた時には
「きゃあっ!?」
ぼすっ・・・と多少重い音をさせ、ネスティはルゥをベットへと押し倒していた。
「ネ、ネスティ?」
「代わりをする・・・そう言ったよな」
「う、うん・・・」
間近で見るルゥの表情は困惑と羞恥心で満ちていた。何も知らず、無垢な瞳。
そんな彼女を滅茶苦茶にしてしまいたい。ネスティの心の奥から黒い感情が吹き出し、そしてそれは実行に移されていた。
「じゃあ・・・頼もうかな」
「本当・・・うれ・・・んむっ!?」
ルゥの手首を己の手で拘束したまま、その唇を奪う。舌を侵入させ硬く閉じた口を抉じ開け、口内を荒々しく蹂躙する。
「んん・・・んんーっ! んぶ・・・んううう・・・」
当初は抵抗していたルゥだったが、やがてネスティの舌に自らの舌を絡ませ始めた。
押えていた手からの何時の間にか力が抜けている。
それを確認したネスティの手が彼女の胸を覆う布へと伸び乱暴に下へと引きずり下ろした。固定されていた金具がブチブチという音を立てて外れ、豊満な褐色の乳房が外部へと露出した。
「ぷあ・・・ネスティ・・・? なんでこんな・・・」
口を開放されたルゥの目には怯えからか涙が溜まっていた。だがそんな訴えすらネスティの嗜虐心を大きくさせる役にしか立たない。

「君が望んだ事だろう・・・?」
「や・・・痛い、痛いよっ・・・」
冷たい表情のまま、力を込めて乳房を揉みしだく。形の整った双丘がゴム鞠のようにその形状を変える。動かす手を止めないまま、ネスティの口が乳首へと伸び、含んだかと思うとそのまま甘噛みに移った。
「きゃうううっ」
強引な愛撫にも経験の浅いルゥの身体は敏感に反応した。背を仰け反らせ震えると快感を高めてゆく。
「なんだ・・・もう感じているのかい?」
「気持ちよいけど・・・こんな・・・こんなっ・・・」
弱弱しい声で抗議するルゥ。先程までは瞳に溜められている程度だった涙は既に頬を伝い、流れ落ちていた。その閉じかけていた目が見開かれる。
「すまないが・・・僕も気持ちよくしてくれるか?」
「あ・・・」
ルゥの視線が目の前に突き出されたネスティのイチモツへと注がれる。欲望に従い大きくそそり立ったそれはドクドクと脈打っている。
(これが男の人の・・・)
本からの情報しか持っていなかったルゥとしてはそのグロテスクな物との邂逅は非常に衝撃的だった。だが一瞬躊躇したものの、結局はその口を恐る恐る肉棒へと近づけてゆく。
ぴちゃ
「く・・・」
拙い動きでルゥの舌が亀頭を這い回る。たどたどしい動きではあったがそのぎこち無さがネスティの情欲を煽る。
「これでいいの・・・? ネスティ、気持ち良い?」
「ああ。だが少し刺激が足りない・・・なっ」
「むぐっ!?」
ネスティの腰が突き出され、肉棒がルゥの口膣の奥深くへと挿入された。
異物の侵入にルゥの口は肉棒を押し戻そうとしたがネスティは彼女の後頭部を押さえつけ、それを妨害する。
「むぐあっ・・・んぷうううう」
「悪いな・・・舌だけじゃ少々物足りなくてね」
「んん・・・んんんっ」
頭を固定したままネスティは腰を律動させる。分泌された唾液によってその度ちぷちぷという水音が漏れ出る。
無理強いされているというのにも関わらず、何時の間にかルゥの方も舌を動かし賢明に肉棒へと這わせていた。
「く・・・ルゥ。このまま出すぞ」
ネスティの注挿がその激しさを増す。ルゥがまた苦しそうな声を上げるが快感を貪るネスティはそれを黙殺する。そして大きくその腰が震えた。
「くお・・・っ」
「んん、んん!?」
喉の奥へと大量の白濁液が迸る。ドクドクと放出されるそれを吐き出す事もできずルゥは喉を鳴らし、嚥下してゆく。
「ぶあ・・・っ。げほっ・・・げほっ」
だが量が量だった為か全てを嚥下する事は出来ず、ネスティがその口を開放すると同時に身体をクの字に曲げ、シーツの上に精液と唾液の混ざり合った物をぼたぼたと溢した。
「ふう・・・流石に量が多かったか」
「うう・・・うっ・・・酷いよ、ネスティ・・・」
「仕方無いだろう? そもそも誘って来たのは君の方じゃないか。それに・・・まだ終りじゃない」
「まだ終りじゃないって・・・ひゃっ・・・そっちは・・・!」
半ば悲鳴に近い声を上げるルゥ。だがそんな彼女に構う事無くネスティは彼女をまたベットに捻じ伏せると下半身を覆っていた布までも剥がしにかかった。
「うん・・・? これは」
「駄目・・・駄目ぇ・・・っ」
羞恥心からか、顔を真っ赤にし涙声でルゥはその顔を両手で覆った。露出した秘部は既に濡れそぼりてかてかと妖しい光沢で包まれている。
「何だ・・・僕のを口に含んでいる時にもう濡れてたのか?」
「や・・・言わないでよお」
「だがまあ濡れているのなら問題無いな」
「え・・・?」
一瞬その言葉の意味がルゥには理解できなかった。が、直にその意味を知ることとなる。気付けばぴたり、と秘部に肉棒があてがわれていた。
「それ・・・っ」
「うや・・・うあああああっ!?」
一息にネスティがルゥの中に侵入してきた。何かが身体の奥底で突き破られた痛みがルゥの頭を灼き焦がす。濡れていてはいたものの、所詮は申し訳程度である。痛みはかなりのものだった。だがそれも意に介さずネスティが動き始める。
「痛っ・・・いた・・・あああっ」
「く・・・たいした締め付けだ」
抜くのにも差し込むのにも、強烈な締め付けの為にかなり困難ではあったがネスティは更に力を込め前後運動を続ける。
「ううっ・・・いやああ・・・ああああ・・・」
ネスティが腰を突き動かす度、ルゥの乳房がぶるぶると揺り動かされる。
「・・・・・・」
無言のままネスティはその乳房を上から掴み、硬く屹立した乳首を指の間に挟むとぐりぐりと回転させる。
「はう・・・うあっ!?」
それまで苦痛を伴うだけだったルゥの声に多少ながらも甘いものが混じる。
上下左右、巧みに腰を動かしたまま今度はルゥの顔に自らの顔を接近させてゆく。片手で頬を伝う涙を拭ってみせた。
「うううっ・・・ネスティ・・・ネスティ・・・」
うわ言のように自分の名を呼ぶ彼女の口をそっと唇で塞ぐ。それと知るや今度はルゥの方から舌を絡ませてきた。相変らずその動きはぎこちなかったがこちらもそれに応え、じっとりとした愛撫を繰り返す。
「んぷあ・・・はああっ・・・あっあっ・・・」
ネスティが唇を離す頃にはルゥの口から漏れるものはもはや嬌声だけとなっていた。それを確認すると身体を離し、挿入はしたまま彼女の身体を反転させる。
そして再び身体を前へと突き出した。

むぶり、と膣内に対する刺激が変わる。
「ひぅっ!?」
背後からより深く侵入してきた肉棒に、顔を半ばシーツにうずもれさせたルゥの目が大きく開く。
先程までのゆったりとした動きとは対照的に、ネスティはルゥの形の良い尻を両手で押えると激しく突き始めた。
「やああっ・・・うはあ・・・っ・・・あああああっ!?」
ぱんぱんと肉の爆ぜる音が響き、白と褐色の肌がぶれながらぶつかり合う。
更に大きくなった刺激の為、淫らな声を上げるルゥの口はだらしなく開かれっぱなしとなり零れる唾液はシーツを濡らしてゆく。
「やあああーっ、ルゥ・・・変だよっ・・・何か変だよおおっ・・・!?」
「何が変なんだ?」
激しく律動する身体とは対照的に淡々としたネスティの声。それだけに妙にこの部屋の情景からは浮いていた。
「さっきまで・・・さっきまであんなに痛かったのに・・・っ、今は・・・ひうっ・・・もっと、もっと強くして欲しいって・・・何で・・・? うあああっ」
「そうか。じゃあ望み通りにするとしようか」
これでもかといわんばかりにネスティの腰がルゥの膣を掻き回す。
「あああっ・・・奥に、奥に当たってるよ」
途端に締め付けが強くなる。不意打ちにネスティ自身もまた限界へと押し上げられてゆく。快楽を長く貪る術は知っているものの、一旦始まった絶頂までは流石に止める事はできない。
「く・・・ルゥ、いくぞ」
「うん、うん・・・ルゥももう・・・やあっ・・・あああああああああっ!」
先程あれほど出したとは思えない程の量の精液がルゥの中に流れ込む。
「うあああああ・・・あつい・・・あついよぉ・・・」
二人とも一気に脱力し、ベットへと倒れこんだ。

(・・・僕は、馬鹿か?)
純粋な思いをぶつけられ無茶苦茶にしたくなった。
しかも・・・思い人の代わりにしてだと・・・?
一時の感情に突き動かされ、取り返しの付かない真似をしてしまった。
何度似た過ちを繰り返せば良いのだろう・・・と顔を歪める。
(畜生・・・)
どうしようも無い焦燥感に駆られるネスティの頭に何か暖かい物が触れた
「・・・ルゥ?」
気付けばルゥがその身を起こしネスティの頭を撫でていた。
「嫌だった? ルゥが小さい頃、良くおばあちゃんがこうして泣きそうなのを我慢させてたんだけど」
―僕は子供じゃ・・・
そう言い返そうとして押し留めた。
(自分に無い物を持っている他人に対して癇癪を起こし、暴れる。はは・・・今の僕はそれこそ子供と変わらないじゃないか・・・)
「ルゥ・・・すまなかった。僕は・・・」
「え? 何が?」
「何がって・・・君は初めてだったっていうのに、あんな無理矢理・・・」
「へ・・・? こういう事ってさっきのネスティみたいに、男の人が強引にするんじゃないの? ルゥが読んだ本には・・・」
そこまで言ってしまった、というように慌てて口を噤んでみせるルゥ。
―一体どんな本を読んだんだ?
「だがルゥ。今ので分かっただろう・・・? 僕は君が考えているほど・・・綺麗な人間じゃ無い」
「んー・・・そもそも、ネスティの言う綺麗な人間って何?」
「それは・・・」
(君はアメルのように純粋な・・・)
「どんな人だって、怒ったり・・・憎んだり、好きな人が他の誰かと一緒にいて嫉妬してたりするんだよ。最初からキレイな人なんているわけないじゃない」
「・・・」
「それにね?」
「普段はあんまり見れないけど・・・今みたく、皆の事を気遣ってくれてる所がルゥは・・・す、好きなの」
沈黙が部屋を包む。顔を見ないままでもルゥがうろたえ始めているのがネスティには感じられた。
「なあ・・・ルゥ」
「な、何?」
「もう暫く・・・こうして頭を撫でてくれないか? 妙に落ち着くんだ」
きょとんとした表情を浮かべたルゥだったが、その顔は直に破顔した。
「・・・うんっ!」

・・・・・・

「しかしだな、ルゥ。男が強引なのが普通だと思うなんていうのは間違っている」
「そうなの?」
「そうだ。確かに書物から知識を得るというのは身近で最も確実な手段ではあるがその分実践が伴わない。時には自ら他人に聞くことも必要なんだ」
「おー・・・」
そんな事他人に聞けるか、と言うツッコミが浮かんできそうなものではあったが素直にネスティの講釈に感心し、ぺちぺちと拍手してみせるルゥ。
「でもネスティ。という事は・・・ネスティがルゥに正しい方法を教えてくれるって事?」
ネスティの額に一滴の汗が生まれる。
「い、いや・・・今のは言葉のアヤであって」
「ルゥは今からでも構わないんだけど」
興味津々、といった様子でネスティに寄りかかりルゥが見上げてくる。
寄りかかった際にふにゃり、と乳房の感触がした。無論の事ルゥは未だ全裸である。
「・・・・・・」
自らの愚息がその固さを取り戻すのを実感する。
(・・・やっぱり僕は馬鹿だな)


おわり

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