川上之嘆



良い芳香が鼻をつく。
香りに誘われるがまま、トウヤは一口紅茶を啜った。
「ん・・・美味しいな」
「そうですか。お口に合ったようで何よりです」
少女の淡々とした返事。視線は彼ではなく手元の自動弓へと注がれている。
巻き上げ式のこういった自動弓は手入れを怠るとその精度を極端に低下させてしまう。戦闘中などでは便利だが、小まめな整備が必要な分忍耐力の無い者には不向きである。逆に・・・彼女にはふさわしいものではあるが。
小鳥の鳴き声を耳にし、ふと窓の外を覗く。サイジェントは今日も快晴。
雲ひとつ無い。風もどうやら弱いらしく工場の煙もほぼ垂直に空へと伸びていた。
「平和だねぇ・・・」
「それは良いのですが・・・何かある度此処に避難してくるのはどうかと」
此処―すなわち騎士団詰め所のサイサリスが使っている部屋の事だ。
「いや・・・流石に城の中までは彼女達も追ってこないから、さ」
窓の外を覗いたまま、トウヤが呟く。
”いい加減、どっちの方が好きなのかはっきりしてちょうだい”
今朝方、カシスがその背にパラ・ダリオを召喚して聞いてきた。
それを見ただけでまあ・・・それが問いかけではなく単なる脅迫である事は薄々気付いていたのだが、適当な言い訳を考えている所でアカネが乱入してきた。
それがまたカシスの頭上だったり、その事で二人が血で血を洗うドックファイトに突入したり、これ以上家を破壊するなやるなら外でご自由にとリプレがすりこぎの一撃で二人を昏倒させたりと、紆余曲折を経てろくに朝食も食べぬままトウヤもまた外に放り出されたのだった。
「まあそんな訳でこうして朝食までご馳走になってるんだ」
「今ひとつ納得はいきませんが・・・そもそも、ぴしゃりと言い聞かせなければカシスさんも諦めないと思うのですが」
「カシスはちょっと極端な所があるからね。今までにも何度かはっきりと言ってるんだけど、そのタイミングに合わせてブラックラックを・・・」
「それは確信犯と言うのでは」
「だろうね。だから最近はこうして彼女が頭を冷やすまで何処かでじっとしてるのが一番の策になってるんだ」
やや重い溜息をつき、残っていた紅茶を一気に呷るトウヤ。
「・・・恋愛もまた命がけ、と先人も言っていますからね。そう言った意味ではカシスさんの行動もまた多少は理に適っているのかもしれません」
(命がけ・・・ってどちらかといえばカシスは奪う側のみなんだが)
サイサリスに対して心中で突っ込む。しかし普段からお堅いイメージがある彼女の口から恋愛、の二文字がでてきた事にトウヤは軽く驚いた。
「良く父が言っていました。時には激しく、そして手段を選ばず。そうやって父さんも母さんを陥れ・・・もとい、結婚したんだよと」
内容を詳しく聞きたいような、聞きたくないような事を言い出すサイサリス。
「・・・・・・」
この場にいればいずれ彼女がその先を話し出すような気がしたトウヤはそそくさと退出の準備を始めた。が、どうも身体の動きがぎこちなくてしょうがない。
(ん・・・何だ・・・?)
戸惑うトウヤを見つめるサイサリスの目は相変らず淡々としている。
「カシスさんも召喚術など使わずとも・・・こうすればいとも簡単に対象が補足できると言う事に気付けば良いのですけどね」
淡々としたその瞳の奥に危険な物を感じた時には既に―トウヤの身体は床へと倒れこんでいた。

「・・・お目覚めですか?」
実際の所、気を失ったのは一瞬だったのだろう。
ろくに動かせない首を使い、状況を把握した限りトウヤはそう推測していた。
ベットの上、露出した下半身。
「罪人等が暴れる時に良く使う薬です。効果の程はその身で味わった分良くお分かりになったのでは?」
そして、服を脱ぐ途中のサイサリス。
その光景に目が釘付けとなる。手で覆い隠そうにも相変らず身体は麻痺している為それもままならない。
「まさか君が・・・一服持ってくるなんて思いもよらなかったよ・・・」
「こうでもしなければ、私では貴方を繋ぎ止めておくことはできませんから」
どこか悔しげな、そして寂しげな声。
(本気・・・なんだな)
やがて一糸纏わぬ姿となったサイサリスは頭の後ろへと手を回し髪留めを外した。
ぱらり、と黒髪が開放される。
幼いながらもきびきびと騎士団を統率し、凛々しい射手でもあるサイサリス。
そのサイサリスが頬を染め、裸で目の前に佇んでいる。
もはや夢幻とも思えるその状況に頭がクラクラするのをトウヤは自覚する。
「・・・味気ない体型だと自分でも思うのですが・・・トウヤさんのここはしっかりと反応してくださっているみたいですね。・・・嬉しいです」
身をかがめ、腹に付く程の勢いで屹立する剛直をやや興奮気味に見つめながら軽く突付いてみせるサイサリス。小皿を裏返した程度の膨らみしか持たぬ双丘が良く見えた事でトウヤは彼女が年下である事を再認した。
「こうして、トウヤさんの息遣いが間近で感じられる事ができるなんて・・・」
暫く愚息を弄んでいたサイサリスだったが、今度は自らの肢体をトウヤの上へと重ね、目を閉じていた。
「く・・・」
彼女の下腹部が愚息に触れ、擦られる度トウヤの理性が飛びそうになる。
「・・・・・・」
しかしそこから、サイサリスの動きは進展しなかった。
やがて彼女から焦りの気配が色濃く出始める。
「なあ・・・サイサリス」
「・・・・・・なんでしょうか」
「もしかして・・・この先どうすれば良いか分かってない・・・?」
「・・・・・・っ」
サイサリスの身体が大きく震えた。どうも図星だったらしい。
(そういう事なら・・・)
「よいしょ・・・っと」
「きゃっ・・・?」

普段は聞くことも無いサイサリスの可愛らしい悲鳴。トウヤはさっと身を動かすとサイサリスをベットへと横たえる。丁度二人の位置が逆となり、トウヤが彼女を押し倒したような体制となった。
「何故・・・まだ薬の効果は切れていない筈・・・」
トウヤが目でベットの下を見るように促す。
「いつの間に・・・」
ベットの下にはトウヤが呼んだばかりのシャンプーライムが動いていた。向こうもこのような場面に召喚されたのは初めてだったらしく、こちらを見て良いのか恥ずかしそうにしている。トウヤは苦笑すると直に送還してやった。
「・・・トウヤさん」
「ん? どうかしたかい?」
「薬の効果も解けたというのに・・・逃げないのですか?」
「・・・どうして?」
「私は貴方を騙して・・・強引にでも関係を持とうとしたんですよ・・・それなのに・・・」
不安そうに呟くサイサリスにトウヤは苦笑してみせる。
「まあ・・・普通ならここまでされれば文句の一つも出てきそうなもんだけどね。でも僕としては、ここまでして一緒になろうとしてくれたサイサリスの気持ちに応えるのも良いかなって思ったりしてる訳で」
サイサリスの眼は驚きで暫くの間大きく見開かれたままだった。
だが気を取り直したのかゆっくりと言葉を紡ぐ。
「でしたら・・・今、この一時だけで良いのです。この一時だけ・・・普段恋人にしているように私にも接しては貰えませんか・・・?」
トウヤはその返答の代わりにその口で彼女の唇を塞いでいた。

「ん・・・ふぅ・・・っくあ・・・あああっ」
また軽くサイサリスの身体が揺れる。
貞節を決め込み、自慰もした事の無かった少女の身体は驚くほど快感に敏感であった。トウヤが経験豊富な事が相乗効果となり先程から彼女は絶頂を繰り返している。
もっとも彼女の場合、気持ちの高揚感というのも大きいのではあるが。
「ひうっ・・・」
(ゾクゾクする・・・)
ぼうっとした頭でトウヤの舌が首筋を舐めるのを実感した。
ベットの上に未成熟の身体を横たえ、ただただトウヤの愛撫に身を任せる。
「どうかな・・・気持ち良い?」
全身を丁寧に弄りながらトウヤが問いかける。
「そんな事言われても・・・分かりませんよ・・・」
嬌声に変わりそうになるのと堪えつつ、サイサリスは何とか言葉を絞り出してみせる。どうにか普段の淡々とした口調にはなっていたもののその声は上ずり自分でも驚くほど艶が篭っていた。
(本当に私の声なのでしょうか・・・今までに聞いた事・・・無い)
トウヤはその返事に満足したのか一旦身を離すと両膝を使い、彼女の股を押し開いた。にちゃりとした音と共に桜色の秘口が露となる。
「・・・・・・あ」
声を上げたもののサイサリスは抵抗しない。寧ろ彼女の眼差しはトウヤの剛直へと注がれていた。波打つその姿は先程見たよりも更に大きくなっているように思えた。そして、それを見て興奮している自分を自覚し鼓動をが早くなる。
「少し痛いかもしれないけど・・・平気かい?」
「構いません。痛みには慣れています・・・それが騎士というものです」
不思議と不安は無かった。軽く頷いてみせるサイサリス。
「じゃあ、力抜いて・・・」
「ん・・・っ」
体内に熱い異物が侵入してくる。鋭い痛みに身をこわばらせるがそれも一瞬の事で、身体をえもいえぬ感覚が駆け巡る。
「ふう・・・あああっ!?」
サイサリスが身体をビクビクと痙攣させる。破瓜の痛みにも個人差があると言われているが彼女にとって幸いだったのはその傷みが軽かった事か。
「全部・・・入ってしまいましたね」
接合部分に恍惚とした、不思議そうな視線を向ける。
(これだけ愛液が出てるからな・・・よし)
「それじゃ、動くよ?」
「え・・・動くとは・・・あああっ!?」
サイサリスの脳裏が白黒に明滅し、身体が震える。
「ん・・・膣壁を擦っただけでイっちゃった・・・?」
「あ・・・ひっ・・・」
トウヤが軽く腰を揺する。それだけでサイサリスは声を漏らした。
(素質・・・なのか?)
もはや痛みを感じていないという事を確認すると、トウヤはゆっくりと腰を動かし始めた。その動きは実に遅かったがその動きひとつひとつに対しサイサリスは敏感に反応してみせる。
「うあ・・・はっ・・・ああああああ・・・」
「どうかな・・・気持ち良いのが分かるかい?」
華奢な身体が前後運動の度に大きく揺れる。声を上げ続けている為口を大きく広げたまま、その両手でシーツに必死で掴まっている。
「そのような事っ・・・わかりま・・・せん・・・がっ・・・トウヤさんの・・・熱いものが私の膣で暴れる度に・・・ビリビリと・・・電気が・・・走るみたっ・・・ひうっ・・・!」
「そっか・・・分からないか。それだったら」
「や・・・何・・・んんっ」
トウヤの腰が大きくグラインドし、コレまで以上に内側から膣壁が掻き回される。
急な動きにサイサリスの身体が限界まで、えびぞりとなった。
「こんな・・・は・・・うあっ」
「分からないんじゃ、もっと気持ちよくしてあげないとね?」
トウヤ自身も彼女の程好い締めつけを楽しんでいるのだろう。熱に浮かされたような表情で不敵な笑みを作っていた。
「あああっ・・・そんな、これ以上されたら、私・・・私は・・・」
「うん・・・? 良く聞こえないな」
「きゃううっ!?」
サイサリスに覆い被さるかのように身体を彼女に密着させるトウヤ。内部の奥を突かれ、更には耳たぶを口で弄ばれ・・・サイサリスの意識は尚もその混濁の度合いを強くしてゆく。
「はーっ・・・はーっ・・・いえ・・・間違い・・・でした・・・」
「間違い・・・?」
浅く律動を繰り返されている結合部では二人の混合液が糸を引き、ぬちゃぬちゃと大きな音を立てている。そちらに意識を奪われつつも、サイサリスの口がゆっくりと言葉を紡ぐ。
「はい・・・もう・・・どうなっても構いません・・・だから・・・もっと、もっと激しく・・・」
やっとの思いでそう呟くとシーツを握っていた手を放し、トウヤの背中へと回していた。
きゅっとその手に力が篭る。
「分かったよ。それじゃ・・・遠慮なく」
「〜〜〜〜っ・・・! はああああ、あああああっ」
トウヤの前後運動が加速する。それに伴い接合部からの水音がぱんぱんという肉同士が激しくぶつかりあう音でかき消された。
「あああっ・・・や?」
サイサリスの背筋を何かが駆け上り、ゾクゾクとした感覚をもたらす。
「サイサリス・・・っ」
丁度絶頂が近くなっていたトウヤがその腰を離そうとする。それに感づいたサイサリスは自らを貫く剛直を逃すいまいと、投げ出されていた足を腰に絡め、両手に更なる力を込めて思い切り密着した。
「駄目です・・・今離れたら駄目ですよっ・・・」
「な・・・くうっ」
想像できない程の力で抱きつかれ、トウヤの心に隙が生まれる。そして気の緩みがそのまま射精へと彼の身体を促していた。
「っ・・・!? やあああっ、あはああああああああっ・・・」
びゅくびゅくという効果音が相応しい程大量の白濁液をその身で受け止めたままサイサリスもまた絶頂にその身を委ねた。


「各員、くれぐれも隊列を乱すなよ」
若き騎士イリアスの指揮の下演習へと向かう騎士団が街を進んでゆく。
と、何処からか炸裂音と悲鳴が響いてきた。
「む・・・?」
部下達に先へ進んでいるように命じ、喧騒の方へと歩いてゆく。
「さあ、今日こそはあたしを好きだって言ってもらうからね!」
「カシス露骨過ぎ・・・」
「いいからほら、足を動かせ足をっ!」
原因であった召喚師と誓約者、くのいちの追いかけっこを見たイリアスから肩の力が抜ける。街の者にしろ彼にしろ・・・それはもはや風物詩に近いものだった。
「やれやれ。彼等も飽きるという事を知らないのかな。なあ、サイサ―」
傍らに同伴してきていた彼女に同意を求めようとした所でイリアスは軽く息を飲んだ。
―サイサリスは彼等の様子を見たまま、一筋の涙を零していた。
しかし直に涙を拭うと、何時もの調子でイリアスに向き直る。
「・・・目にゴミが入ってしまいました」
「そ、そうか・・・」
「さあ。我々も早く行かねば置いていかれてしまいますよ」
「ああ・・・」
そそくさと歩み去るサイサリスを慌てて追って行くイリアス。

重なり合った二人はまた、別々の道を進んで行く。
泡沫の記憶を胸に抱いたまま、足早に進んでゆく。


おわり

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