深謀遠慮



―風雷の里でレックスとキュウマが何やら会話している。
「また薬でも煉ってるのかい? キュウマ」
「ああいえ・・・御館様、これは薬は薬でも・・・」
「・・・成る程、毒薬か」
「ほう・・・お分かりになるので?」
「一応元軍人だよ? 士官学校で一通りの事は習ってるからね・・・って、まあ普段から本の虫だったから自然とこっちにも詳しくなってただけだけど」
「ははは・・・貴方様らしいですよ」
「調合に使ってる草や蟲から見て、蟲毒―神経を害する類の物かな?」
「ええ。投具に毒を仕込むのはシノビの常套手段ですし」
「しかしまあ、これを見てると彼を思い出すよ」
「彼、ですか?」
「うん。組織から離れて、足は洗ったとは言ってたけどあれで中々・・・」

「・・・・・・」
今ひとつ頼りないランプの明かりを使い、読書に興じるスカーレル。
しかしこの恋愛小説を読み終えてしまえば次の港に寄るまでには大分間ができてしまう。それを考えると退屈しのぎは必要であった。
と、彼の部屋のドアが控えめに叩かれる。
「どうぞ。来る頃だとは思ってたわ」
本を閉じ、ドアへと向き直る。ゆっくりと開いたドアの先にはトレードマークの帽子を取ったこの船の小さな砲撃手が佇んでいた。
「や、やっほー・・・」
手をぱたぱたと振ってみせるソノラ。その動きは多少芝居がかっていた。
それは即ち彼女に普段程の余裕が無い事を意味している。
「はいはい。取り合えずドア、閉めてくれる?」
「うん・・・」
彼女がドアを閉め、スカーレルへと向き直った時には
「ん・・・」
「ん・・・!? んん・・・っ・・・」
彼は音も無く忍び寄って来ており、ソノラの唇を奪っていた。
舌と舌が絡まりあい、やがてどちらともなく唇を離してゆく。一旦見詰め合った二人だったが、ソノラの方からその顔をスカーレルの意外と分厚い胸へと沈める。スカーレルの鼻腔を清潔な石鹸の香りがつく。
「あらあら・・・お風呂にも入って準備は万端、って訳?」
「い、いいでしょ・・・だってあたし・・・あたしっ・・・」
感極まる、といった様子のソノラの仕草にスカーレルは微笑する。
酒の勢いも手伝い、初めて彼女を抱いたのは一月前。
それから頻繁に二人は交わっていた。
元々気心の知れた二人ではあった事もあり、ソノラの方にも躊躇は無かった。
が、スカーレルは交わるペースをゆっくりと広げていった。
三日に一度、五日に一度・・・そして確か最後に交わったのは一週間前、甲板での事だった筈だ。
そして今夜、こうして身体の疼きを堪えきれなくなったソノラの方からとうとう誘いをかけに来たという訳である。
「はいはい。ってあら・・・ちょっとソノラ」
「ひうっ・・・」
髪を撫でる一方でスカーレルの片手はソノラの下着へと侵入していた。そしてその手がはっきりと湿り気を感じ取る。
「もうこんなにしてるの? ちょっと前まではあんなに恥ずかしそうにしてたクセに・・・これも才能かしらね?」
「ううっ・・・あたしがこんなになったの、誰の所為だと思ってるのよ・・・」
「はいはい。それじゃ、責任を持ってあげましょうかね」
子供をあやすような口ぶりでソノラをベットへと誘導しテキパキと服を脱がしてゆく。こういう時彼女の服の形状は便利なものでさしたる時間を経る事無くソノラはシミ一つ無い肢体をベットの上で披露した。
「本当、いつ見ても羨ましい身体よね」
「ん・・・あああ・・・」
スカーレルはそんな言葉を呟きながら彼女の身体へと指を這わせる。
一見ただなぞっているだけにしか見えないそれは絶妙に彼女の性感帯を刺激している。
元暗殺者にとったら急所も性感帯も大して変わらないわよ、というのは彼自身の弁である。
「ス、スカーレル・・・っ!」
悲鳴にも近い懇願の声を上げるソノラ。彼の予想以上にこの一週間でソノラの情欲は掻き立てられていたらしく、このままでは泣き出しかねない顔になっていた。
「せっかちね・・・まあ前戯も少なくて良さそうだし・・・と、そうだわ」
何かを思いついた、といった表情をするスカーレル。一方のソノラの顔には不安の色が浮かぶ。大抵彼がこういう顔をしている時にはロクな事を考えていないというのは長い間の付き合いの賜物である。

「うう・・・流石にちょっと恥ずかしいんだけど」
「どうしたの? 文句があるなら辞めてもいいんだけど」
「っ・・・」
ベットへと横たわったスカーレルにソノラが馬乗りになっていた。
毎回主導権を握ってばかりでは詰まらないと考えた彼が思いついたのは早い話、騎上位で睦み合うという事であった。
「ん・・・ふぅっ・・・!」
意を決したのかソノラはスカーレルの肉棒を掴むと自らの中へと埋没させた。
久方ぶりの感覚にその背筋をゾクゾクと快楽が昇ってゆく。
「や・・・何これ・・・っ・・・いつもより・・・凄い・・・」
「まあ当然よね。ソノラの体重の所為でより深く突き立ってるんだから」
最奥まで貫かれる感触に身悶えるソノラを軽く下から突き上げてみせるスカーレル。
「きゃうっ・・・!?」
「ほらほら、何時までも一人で楽しんでないの。しっかりとアタシも気持ち良くしてちょうだいよ」
「う、うん・・・んっく・・・」
ぎこちないながらも上下運動を開始するソノラ。元々それほど造りの良くない船のベットが二人分の重量でギシギシと嫌な音を立て始める。
暫くの間必死に動くソノラをじっと観察していたスカーレルであったが、彼女の快感が高まり玉の汗を額に浮かばせるようになった頃には自らもその動きに合わせるようにして、律動を開始していた。
「ひああっ・・・や、奥・・・突付いてる・・・」
動きの激しさにも関わらず肉棒を包み込む膣は千切らんばかりに締め付けてくる。流石にスカーレルもそれには耐え切れなかった。
「やあ・・・あっあっ・・・スカーレル、あたし・・・」
「ええ・・・良いわよ。じゃ・・・しっかりと受け取って・・・ねっ」
「んやあ・・・あああああああっ」
最後に大きく腰を打ち込むと同時に自らの欲望の滾りを解き放つ。ソノラもそれとほぼ時を同じくして気をやったようだった。
「はあっ・・・はあっ・・・」
一気に脱力し、自らに覆い被さってくるソノラをスカーレルは優しく受け止める。その顔はやはり微笑していた。
(ま・・・当分は退屈しないで良さそうね)

「つまりはさ・・・彼自身が毒みたいなものなんだよ」
「はあ・・・」
「最初のうちは相手も、自らが毒にかかったなんて気付かない。そう、それこそこの蟲毒みたいにね。でも確実にじわじわと毒は侵食していく」
「・・・・・・」
「気付いた時には命取り。ま・・・この場合は彼から離れられないとでも言った方が正しいのかな」
「暗殺者の技術・・・というものですか」
「いや。それとは別の魅力みたいなものかな・・・? と、それはともかく・・・キュウマ、例の薬はできてるかい?」
「ええ。ですが過度の服用には注意してくださいね?」
「うん、分かってるよ」
(毒も結局は使い方、使われ方次第ってね・・・)


おわり

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