成長ベル×レックスの両想い逆鬼畜・4



触れた唇は酷く熱かった。それでも指先は少しだけ冷たくて、呼吸は近い。こうして顔を見上げて体を重ねるのは初めてなんじゃないかと思う。いつもは、自分が見下ろす形になっていたのだから。
「緊張、してるのかい?」
ベルフラウの固くなった体に触れながらレックスは問う。返ってくるのは少しだけ戸惑ったような表情と小さな声だ。
「笑わないでよ…? 私、自分から迫ることはあっても男の人にこういう風に抱かれるのは初めてだから…。馬鹿みたいでしょ? 貴方にあれだけの事しておいてこんな事言うの」
「そんな事ないよ…」
返ってくるのはいつもの優しい微笑み。自分にだけ向けられるそれと触れてくる指先は優しくて、心が鳴る。この人の事が愛しいのだと、官能を伴って叫びを上げる。
「本当はね、学校にいる間ずっと不安だったのよ?だって私と貴方の間には一方的としか言えない約束しかなくて、貴方の心が誰かに移っても私には文句言えないんですもの。だから待っててくれなかったらどうしようって…」
「ちゃんと、待ってただろう? 君が大人になるまで。だからもうそんなに不安になる事はないんだよ?」
ベルフラウの頬を撫でながらレックスは言う。その手にそっと自分の手を添えてベルフラウは囁いた。
「だから、証明して? 私だけが好きだって事…。貴方の手で、貴方の指先で、貴方の意志で、私を愛して?」
一途に自分の事を想ってくれるその存在が愛しくてレックスは額にそっとキスを落とす。それだけですらその体は小さく震えた。他人に主導権を握られているという状況の中で、彼女はそれでも一生懸命にその愛撫に応えようとしていた。
「逃げたいって言っても逃がさないよ? その覚悟、できてる?」
「当たり前でしょ。もう本当はずっとこうされたかったんだから…」
普段の強気で強引な態度は寂しさと不安の裏返し。とても不器用で兇暴な愛情表現であっても、それは酷く優しい。心を落ち着かせる暖かさがあった。
ベルフラウの頬を撫でていたレックスの手が顎をなぞって首筋へ落ちる。白くて細いそこを撫でながら鎖骨を伝い、あまり豊かではない胸へと辿り着く。手で包み込んでも零れないそれを優しく揉み解す。
「あ、あ…せんせ…ッ! あんまり力込めないで…ん、はぁッ!」
大きさがそれほどでもないせいか、少し力を込めると痛みがあるらしい。それでも微かな刺激にも敏感に反応してしまう辺り感度はなかなか良いらしく、愛撫にはきちんと反応を返してくれる。手ですっぽりと包み込めるそれは揉む度に乳首も擦り上げる。少しだけ動かしてもベルフラウの口からは切ない声が上がっていた。
「ご、ごめんなさい…小さくて……。本当は、こういうのは大きい方がいいのよね?もう少し大きかったら胸で貴方の…もっと気持ちよくさせてあげられたのに…」
「気にする事はないよ。ベルはベルだ。君には君だけの魅力がある。たとえば…」
レックスは言葉を途中で止めてベルフラウの胸に這わせていた手を今度は濡れる秘所へともっていった。
「あ、あんッ! ダメ…先生…そこ、感じちゃう…! ゃ、あぁんッ!」
「凄く感じやすいとかね。こういう風に、触られるのは初めてだろ? 気持ちいいかい?」
「う、うん…先生の指、凄く気持ちいい…ぁ、はぁん! も、もっと…して欲しい……」
口でしてもらった事はあっても指でこういう風に刺激されるのは初めてでベルフラウの体は戸惑いと快感に震える。子猫が甘えるように更なる快楽を強請り、自ら腰を動かしていた。
「じゃあ自分で脚を開いてそこをもっとよく見せて? もっと気持ち良くしてあげるから」
「う、うん…」
レックスの言われるままにベルフラウは自ら脚を開き、濡れるそこを露にする。昼間の外でそういった事をするという事に彼女は羞恥を覚え、その頬を紅く染めた。
「せ、せんせぃ…恥ずかしい……」
「誰も見てないから大丈夫だよ。もう凄く濡れてるね。そんなに気持ち良かった?」
「こんなに淫乱な女は嫌い? でも触れてるのが貴方の指先だって考えたら…止まらないの……」
切なげな表情で問うベルフラウにレックスはそっとキスをする。そして微笑む。
「ベルは俺の事が本当に好きなんだね。俺も君の事が好きだよ。君が俺を想うのと同じ位に」
「先生…」
そう言ってレックスは濡れるベルフラウのそこに口付けようとする。
「ま、待って」
それを止めたのはベルフラウの声だった。
小さく制止をかけた後、彼女はそっと自らの手で濡れるそこを押し広げる。白い指先が愛液で汚れるのにも構わず恥部を惜しげもなく晒した。
「もういいから…ここに、貴方のを入れて……」
小さく震える声で言葉が紡がれる。その指先も微かに震えていた。レックスはその手をそっと退けると指先を口に含み、舐め上げる。
「あ、せんせ…んッ」
「分かったよ。ベルは結構エッチな子だね。俺のこれが欲しくて欲しくて仕方ないんだ」
指の付け根に舌を這わせ、愛液を舐め取る。それだけでもベルフラウの体は震えた。
「はしたない女って思わないで…お願い」
「そんな事思うはずないだろ。可愛いよ、凄く」
そう言ってレックスはベルフラウの腰を少し持ち上げると膨張した己の性器を入り口に押し当てる。そしてそれをゆっくりと中に進ませた。
「あ、んあ、先生のが私の中に入って…ふあッ!」
「…っ……ベルの中、温かい…」
異物の侵入にベルフラウはレックスの体に抱き付く事で耐える。まだ数えるくらいしか体を重ねた事はないし、こうして相手に身を預けて抱かれる事は初めてだったので柄にもなく緊張した。
「んんッ、あ、あん…先生ッ…!」
「動くよ? いいね?」
奥まで突き入れて、レックスはベルフラウの耳元で囁いた。それにベルフラウは小さく頷く。
「もっと、貴方を感じさせて…?」
その一言で火が点いた。レックスは腰を引き、また深く突き入れる。
「あ、んあッ、せんせ…レックス…あ、ああッ!」
レックスが腰を動かす度、グチュグチュと卑猥な水音が接合部から鳴る。それは酷く卑猥で理性を溶かしていく。もうここが外である事を忘れて二人はお互いを激しく貪りあっていた。
「ふあッ、あはッ…好き…せんせ…ぃ…ん、はぁん!レ、ックス…!」
名前を呼んで、背中に爪を立てる。ただそれだけなのに涙が出そうだった。
だって、それは夢でしかないと、ずっと思っていたのだ。
出逢った時、自分はまだ子供で、それでも彼は大人で。
しかも「先生」として自分の前に現れた。その上彼を想う人も他にいて。
それこその身長差くらいに、ハードルは高かった。
子供である自分が嫌だった。
どうしてもっと早くに生まれて、
「生徒」じゃなく一人の女の子として出逢わなかったのだろうと何度も思った。
埋まらない身長差も大きさの違う手も歯痒くて、早く大人になりたいと思った。
それでも長い長い片想いの末に彼は自分の事をずっと待っててくれて、そうして身も心も受け入れてくれた。
強引な方法で体を結んだのに、それでもこうして今も変わらず愛してくれている。その事がまるで奇跡みたいで、どうしようもなく嬉しかった。
「ご、ごめん、痛かったかな?」
「え…?」
レックスが不意にその動きを止めて問うた。ベルフラウは訳が分からないといった様子で見つめ返すと、その手がそっと目の淵を撫でた。濡れた指先に、知らずに自分が泣いていたのだと気付く。
「馬鹿ね…違うのよ。ただこうして貴方に抱かれるのが嬉しかっただけ。ね、せんせ…ううんレックス。もっと、して…?」
ギュっと首筋に抱きついて耳元で囁く。甘く、熱く。
もう一度キスをされて、そうしてまた奥を貫かれる。
「んああッ!あ、あん!せんせ…あぁんッ!」
擦り上げられる度に悦びの悲鳴が零れた。
自分を抱き締めるその手は大きくて、彼が紛れもなく男である事を思い知る。
――どれ程の逡巡を、罪悪感を、その身に背負ったのだろうと考える。教え子とこういう関係になる事に真面目な彼はきっと迷ったはずだ。その目に子供であった頃の姿を思い浮かべるだけで自分を責めずにはいられなかっただろう。どうしようもない罪の意識を背負って、それでも自分を愛することを選んでくれたのだと、そう考えると胸に湧く。切なさと、溢れる愛しさが。それすらも快感に繋がって、頭が白くなる。
「あ、あ、あ、せんせ…私もう…ああぁんッ!」
「…っ、ベル…ッ!」
腰の動きが早まり、何度も奥を叩かれるとベルフラウの体が痙攣し始める。
そして一際大きく突かれるとその背中が大きく撓った。
「ああッ、あんッ…ックス…ああぁぁッ!」
「っ、く…ッ!」
ベルフラウの中で熱い性が放たれる。ドクドクと注がれるそれをベルフラウはレックスの首筋にしがみ付くことで耐える。
「ベル…大丈夫かな?」
「ええ大丈夫…。先生、気持ち良かった?」
ベルフラウがそう問うてる間にレックスはそこから己を引き抜く。そして彼女に微笑みを向けた。
「うん…そのさ、ベル」
「何かしら?」
一度切られたレックスの言葉の先をベルフラウは促す。レックスはコホンと一度息を吐いてから改まったように話し出した。
「こういう時に言う事じゃないかもしれないけど…もう少ししたらさ、君の実家に行こう?君の父さんにちゃんと挨拶して…そうして許して貰えたなら俺の、家族になって欲しい。俺はしがない教師でしかないけど…君に俺の子を産んで貰いたいって思ってる。君と、幸せな家庭を築けたらいいって思ってる。…ダメ、かな?」
最後まで言ってその表情がほんの少しだけ情けないものに変わる。ベルフラウはそれに微笑みながらそっとその顔を両手で包み込んだ。
「馬鹿ね…たとえ反対されたって私はずっと貴方についていくわよ。一生離してなんてあげないから覚悟しててよ?」
そう言って笑う彼女は酷く綺麗だ。それにレックスは苦笑いを返す。
「いや、でも反対されて駆け落ちするってのはちょっと…。歯や腕の数本は覚悟してるからさ、ちゃんと許して貰ってからにしようよ。君は一人娘なんだし…」
「ああ、あれは嘘よ」
「は……?」
ベルフラウがさらっと口にした一言にレックスは思わず固まる。何だかとんでもないような事を言われた気がするのだが。
「あれは貴方に手を出させない為と大事に扱わせる為の嘘。本当は私、他に三人も兄妹がいるんですもの」
「はは…嘘だろ?」
ベルフラウの衝撃的一言にレックスは何だか泣きたい気持ちになる。今まで大富豪の一人娘に手を出した事で感じていた罪悪感やら、親元から一人娘を奪ってしまった申し訳なさは一体なんだったのかと。しかもそんな思いをもう何年も背負ってきたのに。そんなレックスを後目にベルフラウはぶつぶつと独り言を言い始めた。
「ああでも貴方を実家に連れて行くのは危険よね。あの子…アリーゼって貴方みたいなマゾ…ゲフンゴフン、いえ、人の良さそうな人見るとすぐに押し倒して問い詰めたくなるみたいだし。行くんならあの子のいない時を狙ったほうがいいわね…って、貴方、ちゃんと聞いてるんですの?」
ベルフラウが少し怒ったように問うてもレックスは乾いた笑いを浮かべるだけだ。
「はは…そっか、じゃあ君が俺と結婚してもあの家は他の誰かが継ぐから問題ないんだね…。何だか悩んでた数年が馬鹿みたいに思えるよ……」
何か一気にどっと疲れてしまった。寿命が少し縮まった気がする。そんな事を思ってベルフラウの言葉を聞き流すその態度が気に食わないのか、ベルフラウはその体をそっと押し退けた。そして今度は逆に押し倒すような体勢を取る。
「ベル…?」
「ねえ先生? 今度は私を楽しませてね?貴方の子供ができるように頑張るから」
そう言ってにっこり微笑む彼女はとても綺麗だ。それでも思う。その笑顔や先程までの健気な態度も全部相手を油断させ、騙す為の嘘なんじゃないかと。もしかしたら彼女の罠に嵌ったのは自分かもしれない。知らない間に蜘蛛の巣に捕らわれた蝶のように、逃げられなくなっていたのは彼女ではなく自分なのか。
レックスはそんな事を思ったがそっと目を閉じ、微笑みを顔に浮かべる。そんな人生も、悪くないんじゃないと。
彼女の実家に行ったらきっと楽しいだろう。騒々しくて、馬鹿みたいで、それでもきっとどうしようもなく嬉しいだろう。血の繋がりがある人間同士ですら殺しあうこの世界で、それでもきっと彼女を取り巻く環境は優しいだろう。そこに自分の居場所ができるのだと考えると、それはとてもかけがえのない事で、尊い事のように思えてくる。この人とならきっと、優しい世界で新しい命を育む事が出来る。そう信じられるのが幸せだった。自分の体に降ってくる彼女のキスは酷く優しい。
それでもこの時彼はまだ知らない。この後恐るべき野外プレイの連戦が始まろうとしていた事など。


「ベル…いきなりそんな大きいの入らないよ……」
「大丈夫よ、貴方なら。ほら、もっと大きく広げて?」
「こ、こうかな…?」
「そうよ。そのまま…」
「あ、ベルあっついよ…」
「慣れれば大丈夫よ、そんなの」
「―…ねえ、貴方達、人前でイチャつくの止めてくれる?」
目の前の二人にアルディラは苛立った声で言った。わざわざ人の家にまで来てイチャつかれると腹が立つ。
「大体貴女は言葉の使い方が間違ってるわ。口は普通広げるじゃなくて開けるって言うものよ」
「あはは…細かい事は気にしないよ。
でもベル、次食べされる時はもっと細かく砕いてからにしてくれよ。口の中、火傷しちゃうよ」
そう笑う彼の目の前にはお手製の可愛らしい弁当が広げてある。それをフォークに刺し、彼の口に運ぶのはベルフラウだ。
「もう慣れてないんだから仕方ないじゃない…。でもこうやって好きな人と新婚みたいに「あーん」ってするの、昔から少し憧れてたのよねぇ」
「だから鬱陶しいから止めて欲しいんだけど、それ。やるんだった家でやって頂戴」
憎々しげにアルディラは口を開く。その額には青筋が浮かんでいるがそれを指摘する人間はいない。
「お姉さまったら私と先生の仲に嫉妬してるの? クノンにして貰えばいいじゃない?」
「な、何言ってるのよ、貴女は…」
ベルフラウの一言にアルディラは慌てる。すぐ側に控えているクノンはそれをそれを不思議そうな顔をして見つめていた。
「…で、さっきの話の続きなんだけど、あの後貴方達ヤったの?」
コホンと一度息を吐いてからアルディラは問うた。それに微笑みながら答えたのはレックスだ。
「まあお陰様で…? でもあの後大変だったんだよ。マルルゥがそこにいるの忘れてヤっちゃったから俺、次の日彼女に「ケダモノさん」とか呼ばれるし。正直凄くショックだったよ…。まあベルよりマシなんだけど」
「ベルフラウは何て呼ばれたの?」
アルディラは興味津々と言った様子で問う。ベルフラウは黙ったままだ。レックスが代わりに小さな声で答える。
「―…女王様さん」
「…ぷ、はははは」
アルディラはそれに思わず吹き出してしまった。ベルフラウがそれに頬を膨らませる。
「ちょっと、お姉さま! 笑うなんて酷いですわよ!」
「あはは…だって貴女「女王様さん」って正直ハマリすぎよ…ぷ、くくく」
自分で口にしてアルディラはまた笑い出してしまった。ベルフラウはそれを呆れたように見つめ、レックスは苦笑いで見つめている。
「まあ、あの後の光景見られたんじゃああ言われても仕方ないよね?あれは正直俺の中で黒歴史にしたいよ、ホント…」
「どんな事をされたのですか?」
クノンが興味深げに問うてくる。レックスはそれにあからさまに肩を落とし、目を逸らして答えた。
「…聞かないでくれよ、詳しくは。まあちょっと彼女に特殊なプレイを強要されたというかで…」
「最初にいい思いさせてあげたんだからいいでしょ?最初は嫌がってたけど貴方だって最後はよがってたじゃない?」
「言わないでくれよ、それは…」
「…何だか聞かない方がよろしいようですね」
二人の態度からクノンは噂の恐怖の連戦内容を追及する事を止める。新しい世界を知る勇気はまだないからだ。
「ところで、先生? あの時どうやって腕の拘束外したの? 自分じゃ解けないはずよね?」
「ああ、あれはクノンが…」
ベルフラウはアルディラの相手をしていた為あそこで行われていた事を知らない。レックスが正直に答えるとクノンが言葉を継いだ。
「はい。ご奉仕をするついでに外させて頂きました。とても苦しそうでしたので」
「奉仕?」
「あ…」
「クノンっ!」
レックスが慌てて叫ぶがもう遅い。しまった、という風に口を押さえるクノンと顔を見ずともあきらかに怒りのオーラを放っているだろうベルフラウ。その二人に挟まれてレックスは思わずその場から逃げ出したくなった。逃げることなど、できはしないのだが。
「すみません、レックス様…。二人の秘密だと言われましたのに…。私はダメなフラーゼンですね。今後は気を付けます」
「二人の秘密?」
クノンのその一言が逆に決定打となってしまった。眉を吊り上げ、青筋を浮かべるベルフラウはガシっとその長いマフラーを鷲掴みにするとその体をズルズルと引き摺る。
「クノン!アルディラ!た、助けて…」
「レックス様、もし何かありましたらお気軽にリペアセンターまでお越し下さい。一日も早く完治するよう、善処致しますので」
「あう…ア、アルディラ…?」
「まあ頑張って「女王様さん」に可愛がられなさいな」
「―……」
微笑む二人の女性は他人事と割り切っているのかどこまでも冷たい。世の中の厳しさを知りつつレックスはズルズルと家まで引き摺られていった。

「さて、悪い先生にはお仕置きが必要ね?」
「うう…ッ」
自室のベッドの上に組み敷かれ、レックスは情けない顔でベルフラウを見上げる。彼女は何だか酷く楽しそうである。
「ふふ、貴方に選ばせてあげるわね、お仕置き内容は。1、触手プレイ。2、汁プレイ。3、幼児プレイ。4、百合プレイ。5、道具プレイ。さて、どれがいいかしら?」
「どれも嫌です」
楽しげに吐かれるベルフラウの提案にレックスは即答するがすぐに返事は返ってくる。
「じゃあ全部試すわね」
「ゴメンナサイ、俺が悪かったです。喜んでその中から選ばせて頂きます」
そんな答えしか返せなかった自分を情けなく思いながらレックスは恐る恐る口を開いた。
「その…詳しいプレイ内容をお聞かせ願いたいんですが」
「ふふ、1の触手プレイはその名の通り蛸使ってみようと思うんだけど、どうかしら?」
「た、蛸!?」
その名前が出ただけでレックスの体温が下がる。彼女は好んで食べるようだが正直今でもあれは苦手だ。あのウネウネとして動きがグロテスクで気持ち悪くて仕方ない。あれが生きたまま体の上を這いずり回るなんて考えただけで泣きそうだ。顔面蒼白になるレックスの様子を楽しげに見つめながらベルフラウは次の言葉を発す。
「2の汁プレイってのはスライム召喚してみようと思うんだけど。ほら、あれってぐちゃぐちゃしててどことなく汁っぽいじゃない?たまには全身汁塗れになってみるのも楽しいんじゃないかしら?」
「―……」
レックスはもう返す言葉を持たなかった。スライムを使うというのは勿論自分にだろう。あんな物使おうなんて考える神経が信じられない。見てるだけで気持ちが悪いのに。
「3の幼児プレイってのはね、ほら憑依召喚ってあるじゃない?あれの一種で体の時間を退行させるものがあるんですって。まだ小さくてツルツルで声変わりしてない貴方を犯すのも楽しそうよね?」
「幼児虐待は犯罪です。俺は君をそんな犯罪上等な子に育てた覚えはありません」
「この島に法律なんてあってないようなものじゃない。それに私は貴方に育てられた覚えはないですわよ?尤も、貴方を私好みに調教するのは楽しそうですけど」
「―……」
何だかいい先生になれればいいと思っていたけど、それ以前に自分の生徒の中から犯罪者が生まれてしまいそうで今にも駄目教師の烙印を押されそうな自分にレックスは激しく絶望した。それにトドメをさすかのようにベルフラウの言葉は続けられる。
「4の百合プレイってのはね、これも憑依召喚の一つで相手の体を一時的に性転換させるものがあるんですって。何だかこの前お姉さまの大きな胸触ったら癖になっちゃって。女の人相手にするのも悪くないかなって思ったのよ」
「お姉さま相手の浮気なら許可するから妖しげな世界に俺を引っ張りこまないで下さい」
「馬鹿ね。お姉さまより女にされて屈辱に打ち震える貴方を強引に犯すほうが楽しいに決まってるじゃない」
「―……」
女同士って見る分には楽しそうだけどまさか自分が巻き込まれるなんて想像もしてなかった。理想は理想の世界に留めて置くべきだと心底思った瞬間であった。
「5の道具プレイってのは…まあ言わなくても分かるわよね。鞭とか蝋燭とか…そういう世界も楽しいんじゃないかと思うのよ。何ならローターとかも使ってみる?」
「いいです。結構です。謹んで遠慮します」
名前を聞くだけで体温が下がるようなものを立て続けに口にされてレックスは思わず条件反射で拒否してしまった。痛いのは正直嫌だ。
「ベル…もっと普通にしようよ。俺は普通に恙無く君と家庭を築きたいんだけど。それに君は鬼属性以外の召喚術、使えないよね?」
「それなら大丈夫よ。貴方が抜剣して自分に使えばいいんだから。
貴方、あの時言ったわよね、何でもするって?それにお仕置きなんだから貴方が楽しかったら意味ないじゃない。マンネリ防止の為にも新しい刺激は必要だわ。ふふ、貴方が一つヘマする毎に一つずつ試していくってのも楽しそうよね?」
「―…俺は物凄く嫌です、そんなの」
口で抵抗しても無駄なことは分かっていてもせずにはいられなかった。それでもベルフラウは笑うだけだ。
「ごめんなさい…私、貴方の事は好きだし、貴方みたいになりたいとも思ったんだけど…でも貴方みたいにはなれないみたい。だって、みんなの笑顔より貴方一人の羞恥に悶える顔やよがり泣く顔の方が好きなんですもの」
にっこりと笑顔で恐ろしい事を口にする彼女はとても可愛らしい。外見だけは。あまりに可愛すぎて何だかとても泣きたくなるほどに。
「さあ、先生。どれがいい?」
逃げることを許さない彼女の微笑みにレックスは苦笑いを浮かべることしかできない。
こういう状況でも逆らえないのは犬属性の性か。
早くも人生の選択を少し誤ったような気がしている紅い忠犬であった。


おわり

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