楽園の終日 (後編)



引き摺られるようにしてファリエルは連行されていた。血みどろの戦いで傷ついた肉体。傷そのものは治療系の術で癒されたが痛みと疲労は残る。身体中が悲鳴を上げている。鎖で繋がれた手足。逃げ出そうと試みることさえできはしない。ただ存在するのは絶望。決められた運命に対する諦観。身を貫く視線を感じる。ズタボロに裂けてもはや衣服としての機能を果たさぬ布切れ。その隙間から覗く白い素肌に。下卑た視線だった。含み笑いも聞こえる。その様子だけで自分がこれからどうされるのかを悟ってしまう。処刑の執行。それまでの間を玩具として。
「オラッ、しっかり歩け。」
「……はい………」
虚ろな瞳で力なく返事する。身を包むのは深い絶望。これから待ち受ける過酷な運命。散々に慰み者にされた果てに嬲り殺されるのだろう。救いはない。それに助かったとしても兄はもうこの世にはいない。兄が理想としていたもの。それも永遠に失われた。ならば自分がこの世に生きる意味もない。
(ごめんなさい兄さん。この島を…兄さんが守ろうとした楽園を…私達は守れなかった。)
ただ兄に詫びる。兄の理想を果たすことを出来なかった無力な自分を呪いながら。

連行された先は遺跡であった。兄ハイネルが核識の座と同化した。言わば兄の墓標。防衛用の機構も破壊され今では完全に無色の派閥の手に落ちた喚起の門。その内部に多数の兵たちに連れられる。奥の間の扉が開く。待ち受ける光景は半ば想像していた通りのものであった。
「…アルディラ…義姉さん………」
扉の内側。真っ先にファリエルの視界に飛び込んできたもの。それは無色の兵の慰み者として肉棒の蹂躙を受ける義姉。アルディラの無惨な姿であった。

「おいおい、ほんとに人形みたいに動かなくなっちまったぞ壊れてるんじゃねぇのか?」
「使い尽くめで尻まで緩くなっちまったしな。この女。」
もう木偶のように動かなくなったアルディラ。そんな彼女を男達は肉棒で汚す。意思を無くした彼女を貫く男根の数々。ただ精液を吐き出す肉穴として酷使されている。理知的な美貌に彩られた彼女。その肢体を白濁の汚汁が埋め尽くす。膣とアナルを同時に使用され、スペルマを顔にぶちまけられながらもアルディラは無反応である。もう本当に壊れてしまったかのように。

「義姉さん…義姉さん…うぅ……」
余りの惨状に目を背けてファリエルは涙ぐむ。考えてみればすぐに分かることだ。核識の力は無色の手勢の魔剣に封じられた。ならば核識の座でその制御を補佐していたアルディラがどうなったのかなど。もはやこの世にはいない。よしんば生きていたとしても。そう想像していた。そしてまさしく予想の通りなのだ。これからファリエル自身がそうされる様にアルディラも陵辱を受けているのだ。処刑までの座興として。
「しかし訳わかんねえよなあ。あのハイネルってのも。」
「ああ、なんで実験用の召喚獣なんぞに同情するかねぇ。ただの馬鹿だぜ。」
義姉を輪姦しながら兄を罵倒する者たち。口汚い響きが耳に次々と飛び込んでくる。
「なんでもこの女、ハイネルのコレだったらしいぜ。こんな人形相手にとち狂うとはな。」
「逝かれてたんだよ頭が。それともこの肉人形がそんなにお気に召したのかねぇ。変態が。」
違う。貴方達に…貴方達に兄さんの何が分かるというの。兄さんがどれだけ優しくみんなに愛されていたか。兄さんと義姉さんがどれだけ純粋に愛し合っていたか。それが貴方達なんかに。貴方達なんかに理解できるはずがない。理解されてたまるものですか。
「く…ぅ…ぅくぅぅぅ………」
しゃくり上げる嗚咽をファリエルは噛み殺す。自分が愛した兄を嘲り笑い、兄が愛した義姉を犯し辱める。そんな最低の屑たちの慰み者となって嬲り殺される。その口惜しさに顔を歪めて。

グチュグチュと濡れた肉が膣内で擦れあう音が響く。犯されている。その現実を実感させられる。アルディラを汚した無色の兵たちの情欲。それはファリエルにも当然向けられた。
「へへへ。こっちの嬢ちゃんも上玉だな。よく締まるぜ。」
「おい、もっと喘いで楽しませてみろよ。げへへ。」
「…うっ…うくぅぅ…っく…あうっ!…あっ…あっ…」
喘ぎ声を噛み殺そうとするが抑えきれない。ぱんぱん響く衝動にファリエルは悶える。既に純潔は奪われた。処女を失って間もない秘所からは血が滲み出している。穢れを知らなかったファリエルの膣肉を蹂躙する男根。突き上げる衝撃はファリエルの子宮にまでも響いてくるかのようだった。
(兄さん…兄さん…うくぅぅぅぅ)
目に涙を溜めて陵辱を受ける。破瓜の痛みも強姦されたショック。そのどちらもファリエルにとっては既に諦めのついたことだ。だが兄ハイネルの顔だけが浮かぶ。兄を失ったこと。兄の理想の楽園を守れなかったこと。その喪失感ばかりが溢れてくる。膣肉をえぐる肉棒の刺激。陰部を貫かれる痛み。それらはより鮮明にしてくれる。惨めな敗北者である自分たちの立場を。
「おらぁっ!いくぞ。しっかり受けろよっ!」
「あっ…あぁ…ぐぅぅぅぅぅっ!!」
掛け声とともに膣内射精が施される。ビクンと身体が震える。膣内、そして子宮へと白濁液が逆流する。その感触にただ呻く。深い絶望とともに。
「やっぱこう反応してくれねぇと面白くねぇよなぁ。ガハハ。」
ただ無反応に犯されるだけのアルディラとは違い、ファリエルの陵辱することに楽しみを覚える男。反応がなくては女を犯す意味はない。
「尻も使うぞ。後がつかえてるんでな。いくぜ。」
「う…ぁ…ぎひっ!…ぎひぃぃぃぃぃっ!んぎぃぃぃぃっ!」
そしてアナルにも挿入を受ける。菊座を抉られる痛みにファリエルは悶え声をあげる。

「もっと力強く吸えよ。この愚図っ!」
「マンコの方も緩めんじゃねえぞボケっ!」
「こちとらまだまだたくさんいるんだぜ。いつまでたっても終わんねぇよ。これじゃあ。」
どれぐらい時間が経過したのだろうか。随分経った気もするし、まだそれほどでもない気もする。時間感覚さえ定かでなくファリエルの意識はうつろう。あれからずっと輪姦され続けている。ファリエルの膣とアナルには交代で兵士達の肉棒が埋め込まれる。胎内ですき放題暴れてスペルマを注ぐ。もう膣も腸も吐き出された精液でぐちゃぐちゃだった。居並ぶ陵辱者の群れには前後の肉穴だけでは対処しきれない。当然使えるところはどこでも使う。真っ先に使用されるのは口。顎が外れそうになるほど肉棒を咥えさせられ喉を置かされる。むせ返るような精液を胃に直接流し込んでくれる。両の手にはしっかりと握り締められたペニス。その亀頭が膨れてファリエルの手の中に白濁をほとばしらせる。精液で二チャニチャになった手。手だけではない。胸も髪も何も。ペニスをしごく道具として使えそうな箇所はどこでも構わず使用され白濁を浴びる。
(………アルディラ…義姉さん………)
輪姦を受けながらファリエルの意識はアルディラの方へと向いていた。ファリエル同様に彼女もいまだ無色の手勢の性処理の道具として酷使されている。相も変わらずの無反応で。
「つまんねえんだよ。コイツ。人形犯してるみたいでよ。俺もあっちの娘が良かったぜ。」
「まあまあ。別嬪なのは確かなんだから。こんなに汚れちゃ意味ねぇけど。」
グチャグチャにアルディラを精液で汚しながら勝手なことをいう男達。そんな彼らにもアルディラは何の反応も示さない。ファリエルには分かる。ハイネルを失ったときに既に彼女の心が死んでいたことを。あれだけ兄を愛していた義姉だ。兄の理想の潰えたとき意図の切れたように壊れてしまったのだろう。
(私も…もう…楽に…ごめんなさい…兄さん……)
深い絶望と陵辱の中でファリエルも早く楽になるため意識の崩壊を望む。

たんぱく質で構成される物体同士の摩擦音。機体内部及び外部に発生。機体表面に付着するゲル状の液体。大量の精子を含む。精液と認識。現在、子宮内を満たしている液体と同一であると認識。
「少しは喋れよ。おいっ!」
頭部に衝撃。拳による打撃と認定。思考回路の0.5秒間停止。回復。頬部に打撲。軽微。システム全体に異常なし。
「無駄だって。まあこんな人形でも肉穴には違いねぇんだしよ。」
膣内に異物挿入。検索により現地人、雄の肉体の一部と認識。機能は生殖器と推測。行為は彼らの生殖活動と酷似している。融機人と現地人との交配は不可能。よって行為の意味を見出せず理解不能。
「あ〜あ。あっちの娘ならいい反応してくれるのにな。」
「でもずっと使い続けでそろそろ壊れ始めるんじゃね?そうなりゃ大差ないぜ。」
臀部。対象の生殖器の進入を確認。排出器官使用不能。
「あっち見てみろよ。お前さんの義妹が輪姦されてるぜ。」
「だから無駄だって何言っても。」
音声認識。会話内容解読。発言が指する物体を認識。現地人の雌体。それと複数の雄体。生殖活動中。雌体の固体名を検索。ファリエル・コープス。データベースに登録されている情報を閲覧。マスター、ハイネル・コープスの妹。身体機能大幅に低下中。生命活動の停止も危ぶまれる。エラー発生。当機体にエラー発生。感情プログラムの不正起動。エラー発生。エラー発生。強制終了不可能。エラー発生。

「おいおいこりゃいくらなんでも汚れすぎだな。」
ようやくに順番が回ってきたときにはもう肉便器は精液で埋め尽くされ白濁の塊と化していた。スペルマにまみれた哀れな娘が放置されている。
「こりゃ少し綺麗にしとかねぇとな。」
そういって召喚術兵は手持ちのサモナイト石で水精を召喚して水流でファリエルの身体を洗い流す。冷水を浴びせられたショックで目を覚ますファリエル。
「…ん…ぅ…………」
「おねんねの時間は終わりだ。まだまだ奉仕してもらうぜ。」
そういってファリエルの髪を掴んで引き摺る。陵辱に晒され幾度となく精液を浴びせられた髪は荒れ放題に乱れている。一向に終わりの見えぬ陵辱にファリエルは気が遠くなる。陵辱の終着点。それは自分の処刑の執行。永遠にこの世からいなくなれる。そして愛する兄の下に。自分の死をこれほど待ち遠しく思ったことはない。
「おいこら。こっちを見ろ。ボケっ!」
放心状態から引きずり出される。促されるままに目を向けた方向。目に映る物体。
「アルディラ…義姉さん………」
もう枯れ果てたと思っていた涙腺から涙がこぼれだした。潤む瞳に映るアルディラの姿。先程のファリエル以上に精液にまみれ乾いた箇所が粉をふいている。ゴボゴボ音を立てて溢れ出す精液。アルディラの膣口を水源に小さな精液の泉が湧き上がっていた。
「オマエさんが綺麗にしてやるんだな。オマエの兄貴の嫁さんをよぉ。」
ボロボロと落涙するファリエルに男は下卑た笑みを浮かべて告げた。

(アルディラ義姉さん………)
涙ぐみながらアルディラをファリエルは見つめる。目に映る無惨な義姉の姿。兄にはとても見せられない。こんなときだけ兄がもうこの世にいないことを幸いと思う。義姉のこんな姿を見れば兄は地獄のように苦しむであろうから。
「さっさとしろ。やれっ!!」
急かす声。相手の意図は明白だ。肉棒を持って犯すのにも飽きたのか今度は見世物にして楽しむつもりだ。最期まで玩具なのだ。自分たちは。
「ぅ…っく…ぅ…んっ!!」
泣くのを堪えてファリエルはいまだに精液を垂れ流すアルディラの膣口に自分の口をつける。舌を滑らせて膣内に残るスペルマを舐めとり残りをずるずると啜りだす。
(キレイにしてあげますね私が…義姉さん…兄さんのところに行く前に…)
吸い出してもまだ精液は溢れる。喉を通る苦味も我慢してファリエルはすする。どうせ自分もアルディラもこの後みせしめに殺されるだけだ。それならばせめて自分がキレイにしてあげるしかない。兄が愛した義姉を。それしかすることがない。
「あははっ。本気でやってるよコイツ。」
「とうとう頭が逝っちゃたんじゃねえの。」
「はむっ…ぬぐっ…んじゅぷ…んぷ…ごくっ…んぐっ…」
口の中と周りが冷えた精液でべとべとになるのにも構わずに続けるファリエル。耳障りなギャラリーの歓声を意識から切り捨てて。

「はぁ…あ…はぁ…う…うぅ…」
疲労と苦痛に心身ともに限界をきたしていた。発狂してもおかしくないほどに。いや、もう既に壊れているのだろう。
「あっ…はぁ…んむちゅ……」
それでも続ける。義姉の身体を汚す白濁もだいぶ舐めとった。あれだけ精液にまみれていた身体も元の肌の色を晒す部分が多くなっている。代わりにファリエルの顔と腹の中が精液で汚れている。それでも構わずに舐めとる。アルディラの乳肉に付着する白濁を。
「ご苦労なことだな。だがそろそろこっちの方も楽しませてもらうぜ。」
「ひああっ!!あっ…んくっ…んひぃっ!」
ファリエルはアルディラの身体に覆いかぶさっていた。すぼまって形の良い。そして先程まで酷使され続けていた尻肉を晒している。それを掻き分けるようにして男根は後背位から挿入される。
「おらっ!いいんだろこうやってワンコロのように犯されるのがよっ!えっ!!」
「あっ…あぁっ…くひっ…ひぃっ…んあぁっ!!」
雌犬のように四つんばいで犯されて喘ぐファリエル。度重なる陵辱の果てに身体が反応するようになってしまった。どうしても喘ぐのを止められない。自分の膣肉が肉棒と擦れあって抉られる。粘膜同士の接触が生み出す悦楽の波動に溺れそうになる。哀しいことに。
(兄さん…こんな私でも抱きしめてくれますか…こんな淫らな妹でも…)
喘ぎながら涙がにじむ。あの世で兄に再開したとしても会わせる顔がない。兄の命、理想、愛する人。何一つ守ることの出来なかった不肖の妹の自分は。
「あっ…っく…えっ…っ!…えっ?」
繰り返される肉棒の挿入にファリエルは喘ぐ。すると頭に手がふわりと乗せられていた。目を見開く。そして気づく。その手が自分の身体の下にいるアルディラのものであると。

「アルディラ…義姉…さん……」
呆然とファリエルは呟いていた。見やると優しいそして哀しい瞳でアルディラはファリエルを見つめて頭をなぜている。
「義姉さん…うっ…っく…うあぁぁっ!!」
たまらず崩れ落ちるようにファリエルはアルディラにしがみつく。ポロポロ涙を零す。子供のように義姉の胸で泣きつく。柔らかいアルディラの乳肉がファリエルの顔にあたる。そんなファリエルを責める陵辱の手はやまない。子宮まで突き上げるような衝動にたびたび喘ぐファリエル。
「ファ……ェ…ル……」
するとか細くしかも無機的な音声でアルディラが呟いてきた。ファリエルを慰めるように愛しげにその頭を撫ぜる。
「義姉さん…っ…っく…アルディラ義姉さんっ!!」
涙で崩れる顔をファリエルはこすりつける。とても聞き取れそうもないような声で呟いてくるアルディラ。その一つ一つをファリエルは必死で聞き取っていた。
『大丈夫…あの人は笑って貴女を迎え入れてくれるから…だから泣かないで…一緒にあの人のところへ行きましょう。』
それがファリエルの聞き取れたアルディラの最期の言葉だった。彼女の人格プログラムが最期に残した遺言。それを噛み締めてアルディラの身体にすがりつくファリエル。自分の生命に幕を引くまで続く陵辱劇。その中でほんの僅かな温もりを感じながら。

ここは名も知れぬ島。一人の男が理想を掲げ仲間とともに築き上げようとした楽園。人と召喚獣とが共存しあう最期の地上の楽園。

「ギギ…イジョウナシ…イジョウナシ……」
壊れたラジオのように残骸が音を発する。機械都市の成れの果て。

「ウォォォォ…オォォォォオオオ…ォォォォォォォォ……」
亡霊の徘徊する森。死霊の跋扈する水晶の園。

かつては豊かな緑の園。今はただの焼け跡。獣の死骸で埋め尽くされた。死肉を漁るハイエナすらすまぬ死の荒野。草木生えぬ死んだ土地。

焼け落ちた城と里。かつては頑健な君主と美しい姫君。それに傅く忍びが治めた郷。それはもう夢の跡。兵どもが夢の跡。

「で…どうするよ?こいつ等。殺すのちょっと勿体無くないか?」
汚しつくした二人の女。白濁に浸った肉体を絡み合わせて横たわる二人を見つめぼやく。
「融機人の女の方は貴重なサンプルだ。回収し今後の実験に役立てる。」
答えはすぐに返ってくる。そして淡々と続く。
「ファリエル・コープスの処刑は予定通りに執り行なう。火炙りが妥当と考えられている。だがそれで終わりではない。死んだ後もその魂をサプレスの悪魔に捧げる。死後は悪魔達の慰み者というわけだ。」
そう冷淡に告げる。ここは楽園。一人の男が命をかけて築こうとした。そんな楽園の残骸。男を愛した二人の女には死による安息さえ与えられない。愛する男の下に逝くことさえ叶わぬことを知らずにアルディラとファリエルは意識のないまま精液に濡れた身体を重ね合わせる。


おわり

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