ギャグ路線



「さっきは本当に悪かったな。ちょっとふざけすぎた。…よっと。」
「きゃっ」
モーリンの家の一室に入って、私はその部屋のベッドにあお向けに置かれる。
私が硬直するような形になっているところに、フォルテもベッドに乗ってくる。
フォルテが足で私を挟むような感じで馬乗りに…これって…。
「ちょっ、フォルテ、これはどういうことなの?」
やっとのことで、私は抗議の声を上げる。どういうことなのか、本当は少し理解できていたけど、それをはっきりといえる度胸は私にはない。

「まだ言葉が必要か?」
真剣な声と、真剣な目。戦いの時以外に、フォルテがこういう表情をすることはめったにない。
本気なんだということが伝わってくる。
「最初から、こういう風にするつもりだったの?」

「ああ。お前の前では、何を言っても冗談になっちまいそうだからさ。アメルとロッカの話に乗って、お前に俺を意識させるよう仕組んだんだよ。」
確かに私は、フォルテを意識した。
私があんなことをしていても平気でいるフォルテに、やきもきしてた。だけど。

「…私はあんなことしなくても、ずっとあんたのこと意識しっぱなしだった。」
真剣な目で、フォルテを見返した。多分、睨んでるくらいの表情になってるだろう。
この男は、いつも変なところに目ざといのに、私が意識していたことにも気付かなかった。
それに少し腹が立つ。だけど、私に意識させようとしたことは、少し嬉しかった。

「記憶がなくて、何もかも意味が分からなくて、不安で、フォルテに拾われて。最初はものすごく安心したけど、そのうち怖くなった。あんたがいなくなったら、あんたに捨てられたら、どうやって生きていこうか、って。」

「そんなこと考えてたのかよ。馬鹿だなぁ、お前。」
頭をわしわしと掴まれて、なでられる。
普段なら平手の一発でもかましてやるところだけど、そんな気分にはならない。
「まぁ俺も、人のこと言えないけどな。俺も不安だったよ。お前がいつか記憶を取り戻して、どっか違うところ行っちまうんじゃないか。お前の恋人だったって奴が現れて、そいつに連いていっちまうんじゃないかって。」

フォルテの、弱い部分を聞いても、やっぱり嫌な気持ちにはならなかった。
多分、今のフォルテの言葉が真実で、普段の態度が不安を塗りつぶすための作り物だったからだろう。
(半分以上素だろうけど)
私のも、それに合わせた虚勢だった。
だから、片方が本当のことを言ったら、片方も虚勢を張らずに済むんだ。きっと。

ふと気付くと、フォルテが私のさらしに手をやっていた。

「いいか?」
これは…そういうことなのよね。
いつかはこういう日が来るんだろうなと思ってた。
「うん。…だけど、自分で脱がせて。」
一旦ベッドから起き上がって、さらしをとる。自分で分かってたけど、小さい胸…。
ものすごく恥ずかしいけど、袴と下着も取る。

…向こうを振り向けない。ほんの少し躊躇している間に、フォルテの腕が私を向きなおさせる。と、同時に。
「んぅ!」
フォルテの顔が迫ってきた、と思ったら、いきなり口づけされた。
舌は入れてこなかったけど、記憶の中にキスの感触がなくて、戸惑う。
それに慣れる前に、フォルテの手が私の胸を触る。
…相棒の大きな手に余すところなく収まってしまう私の胸…。
「俺の手に収まるくらいの小ささで悲しいな、とか思ってるんだろう。」
「う…。」

それってあんたも思ってたってことじゃないの?失礼ね、とは言えない。
実際考えてたから。ちょっと、申し訳なくなる。
「そんなこと、考えられなくしてやるよ。」
「ん、やぁ…」
片方の胸を手で揉みながら、もう一つの乳首に口をつけて、愛撫してくる。
「あっ、あん…」
「感じやすいんだな。」
フォルテが乳首から口を離して、意地悪く言う。顔はものすごく楽しそうだ。
「な!あ、んん…」
文句を言おうと重ったのに、フォルテの口がまた乳首を刺激して、何も言えなくなる。

「はぁ、あ…あ、まって、そこは…」
全身を撫で回していたフォルテの手が、いつの間にか足の付け根に伸びていた。
「や…あ」
その手を抑えることもできず、私の足は開かされてしまう。
フォルテの目には、全部見えてしまっているのだろう。
私が恥ずかしさから何も言えないでいると、フォルテがそこに口をつけてきた。
「そんなところ汚…ああっ!」
舌が動き回る。初めての感覚に、私は言葉をつむぐこともできなくなった。
必死で声を抑える。フォルテは、聞きたがってるんだろうけど、私は恥ずかしい。

「あ…」
フォルテの太い指が、私のあそこにするっと入っていく。
愛撫のせいですっかり濡れていた私のそこは、指をまったく拒まない。
「んぅ…ん…」
指が動き回る。ぐちゅぐちゅという音がして、そこがますます濡れていくのが、自分でもはっきり分かった。
「あっ…」
指が、二本に増えた。けれどたっぷり濡れていた私のそこは、やっぱり指を拒まない。
動き回る指が、そのたびに刺激を伝えてきて、頭がしびれていく。
私が声をあげないつもりだと分かったのか、口付けで私の口をふさぐ。
今度は舌を入れられた。受け止めた方がいいんだろうな、と思って、私も舌を伸ばす。
気持ちいい。体の上も下も、快感だけで埋まりそうになる。私ってこんなんだったんだ。

フォルテが口を私から離して、指も抜く。
もっと気持ちよくなりたかったのに、と思ってしまって、その想像の卑猥さに自分で驚いて、顔が赤くなる。

「いいか?」
また、相棒の顔が真剣になる。本番ってことなんだよね。
「うん…来て。」
少し怖かったけど。はっきりと答える。
またフォルテの手が私の足を開いて、もう一方の手ががさがさと何かを取り出す。
私のそこに、何かが当たっているのが分かって、ゆっくりと私の中に入ってくる。

「あ…」
私が怖がっているのが伝わったのか、相棒の太い腕が、私を抱きしめてくれた。
少しずつ入ってきていたものが、何かに引っかかるような感じがして一度止まる。
その後、一段と強い力で入れられて。

「痛っ…!」
想像していたよりもずっと強い痛みで、私はフォルテの背中に強くしがみつく。
「ケイナ…」
フォルテの、私をいたわるような声が聞こえてくる。
大丈夫、お前を抱いているのは俺だから、と、伝えてくれるような声。
「フォルテ、フォルテっ!」
何度も何度も名前を呼んで、痛みに慣れようとする。
ゆっくりと、痛みがさっきまでと同じようなしびれに変わってくる。

痛みに少しだけ慣れて、しばらく抱き合ったまま止まっていた。
さっきから私も思ってたことを、向こうも思ってたらしい。
「お前、初めてだったんだな。」
「…みたいね。」
記憶がないから、もしかしたら別の人に昔抱かれたのかもしれないと思ってたけど。
私がこういうことに疎いのは、やっぱりフォルテが初めての相手だったからなんだろう。
「あんたは、手馴れてるんでしょう。」
「お前と会ってからはずっとご無沙汰だったからな。優しくしてやれるか分からないぞ。」

ちょっと不安になるセリフ。いきなりがむしゃらにこられたら、ちょっと無理な気もする。
「…ちゃんと優しくして。」
「善処します。」

フォルテの体が、またゆっくりと動き始める。私の中から抜かれて、また少し入って。
「あ、あぁ…ん…」
やっぱり少し痛くて、さっきまでよりは気持ちよくはなかったけど。
気持ちのいいところが擦られて、快感も少しだけ伝わってくる。
何よりも、フォルテに抱かれているんだな、ということを強く意識する。
「あんっ、あっ、フォルテっ!」
目を開いて、相棒の顔を見る。汗が出てたけど、快感を必死で感じようとするよりは、私のことを大事にしてくれようとしてるように見えた。
それが嬉しくて、私の方からも少しだけ腰を動かすような感じになる。
やっぱり痛いけど、フォルテにも気持ちよくなって欲しい。
「はあ、あぁ、ん…」
「ケイナ…」
ちょっとずつ動きが速くなる。快感も、少しずつ増していく。
「はぁ、はぁっ」

しばらくフォルテの動きが続いた後、ぐいっと引き抜かれるような感じがした。
「痛っ。」
鈍い痛みが走って、私の中からフォルテのものが引き抜かれる。

そのままフォルテは、私のことを裸のまま抱きしめてきた。
もう、恥ずかしいという感情はない。
相棒の、大きなからだが温かくて、ずっとこうしていたいと思える。

「この戦いが終わったら、また二人で旅続けよう」
「…うん。」

「旅を続けて、お前の記憶が元に戻っても、お前のこと離してやるつもりはないから。」
「…うん。」

「それで、いつかお前に子どもができたら、冒険者引退して、どこかで一緒に暮らそう。」
「…………うん。」


道場の廊下を歩く二人。今回の大騒ぎの立役者。
「ふふふ、中々おもしろい余興だったね。」
前世で豊穣の天使と呼ばれる芋大好きっ子の声。
「あはは、そうだね。アメルはさすがおじいさんの孫だ。アメルの考えたことはいつもすごくおもしろいよ。トリスさんのあんな姿を見られて、今日はすごく幸せな日だ。彼女の保護者気取りでいる男の情け無い姿も見れたし。」
弟に振り回される哀れな平和主義者の顔から、ほんの少し垣間見える本当の顔。

「ええ、そうね。ネスティを呼び出してくるのにちょっと筋肉男を利用させてもらったけど、今頃はあの男も役得にあやかっていることでしょう。ふふふ、私って優しいなぁ。」
つかつか、と歩くアメルの動きが止まり、声が一段低くなる。
「あの融械人…記憶を残してローラーの近くに居座ってるなんて…。ローラーが男として転生してきていたら、すぐにでもモノにしたのに。いえ、女同士でも問題ないかも。『豊穣の天使』の力をもってすれば…。」
「あはは、そのときは、僕も混ぜてもらえないかな。」
「駄目よ。いきなり3Pは早いわ。トリスって純真そうだもの。少しずつ少しずつ変えていくのよ…。」

恐ろしい話をしている二人の姿を、意地っぱりで純真な弟が見つけて、声をかける。
「お前ら、何のんきに話してんだよ!」
「ううん、別に何でもない『わ』『よ』」
語尾以外が重なる二人の言葉。その意思も、固く結びついているのだった。
「???まぁ話の内容はどうでもいいけどよ!
暴走したあいつが街に飛び出しそうなんだよ!止めるぞ!」

『システム・オーバー・ロード。機界とのアクセス率120%』
「あはははは!こんな、こんなことあるはずがない!!淫靡な!怠惰な!破廉恥な!!君は馬鹿か!?僕も馬鹿だ。いや、全員馬鹿だ。世の中の全てが馬鹿だぁぁぁ!!その記号は終わりをもたらす印!消し去れ!機神ゼルゼノン!!」

「ネスティ〜、いい加減機嫌なおしてよう。」
「トリス殿…拙者の目には、あれは、『機嫌』などという次元には見えないでござるが…。」


おわり

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