狂乱演舞〜黒欲の少女達〜 1



「あのさ〜、クラレット〜?」
間抜けな声が一室の中に響き渡る。今この状況を目の前にいる少女に確かめる為に。
「…どうかしましたか?」
いつもと変わらない口調で逆に聞いてきた、クラレットと呼ばれた少女は今この状況を理解していないのだろうか。
少なくともハヤトの目からはクラレットが今この状況を理解していないわけが無かった、そうでなければ彼女が自分の瞳を覗き込む事は無いから。
「俺達、確かメルギトスとの戦いを一緒に戦ったマグナ達といまフラットにいるんだよな?」
そう、いつもと変わらないフラット生活を送っていたというわけではない。全てはモナティを通して知り合ったマグナ達との宴の最中なのである。
戦いが終わった時に際して宴をするという意味で再び舞台はサイジェント、フラットへと戻っていたのであった。(マーン兄弟は自宅へ帰ったが)
宴をするということにはマグナ達一行も大賛成の様子であり、結局一同は初めに集まったフラットに集まっているのであった。
結局苦労するのはリプレとなる、作る料理が大量に必要になるためどれだけの苦労をするかも分からない。
まぁ結局その問題も対した問題とならずにすんだが…(要は、リプレにとってなにも支障がなかったということ)
勿論ハヤトやクラレットもその宴に参戦しないわけが無かった、メルギトスとの戦いには共に参加した一人なのだから。
そして今もその宴は続いている。既に外は暗いというのにやかましい声が聞こえる。
「…そうですけど…それがどうかしたのですか?」
「どうかしたかって…大有りだって」
ハヤトは自分の手首を気にしながらもう一度視線を彼女へと戻すと改めて自分の状態がどうなっているかという事を思い返して一言。

「何で俺、こんなことになってんだ?」

気にしていた手首はきつく紐の類で縛られており、ベッドに倒れこんでいるのである。
ちょっとだけ倒れている場所から視線を上げれば彼女、クラレットの顔が見える。
折角宴を満喫していたというのにどうして自分はクラレットに組み敷かれているのだろうか、彼女はそうしてこんなことをしているのだろうか。
クラレットはこの状況をどうやって受け取っているのだろうか、人の感情というものは人が受け取って理解することなどは出来ない。
「何で、と申されましても…」
クラレットが口を閉ざす。ハヤトの腕を束縛したのは他でもないクラレット本人である、まさかハヤト自身がそんなことをするはずも無い。
そんなことをするのはいわゆる「M」の属性なのではないだろうか、ましてやハヤトは痛みを快感に覚えるような神経の持ち主ではない。
「あーとりあえずさ、どけてくれないかな〜…なんて、後手も開放してくれないかな…」
あくまでハヤトは低姿勢で彼女に頼み込んだ。このままでは何かをするということも認められない、身体の自由をハヤトの体は欲していた。
しかし、その頼み込みはクラレットが許すことは無かった。耳には響いたはずだが…それは空しく一室を響かせるだけにとどまる。
首を横に振って拒絶の意味を表す。言葉で表さなくてもそれは彼女が否定しているということが掴み取れることは確か。
「…嫌です」
クラレットがそこまで言い終えると自分の体を身動きできないハヤトに重ね合わせた。ベッドに体を預けるかのようにして顔を彼の胸に鎮める。
彼女の体からは柔らかい暖かさと清潔感のする香りが響いて、それはクラレット自身を情勢であるということを意識させる。

まずは、何故こうなっているのかという事を説明するのが重要であろう、彼女が取った行動は貪欲に…そして真っ黒に… ハヤトとマグナ、似たような性格のためだろうか、それとも通じる何かがあったのだろうか、二人は意気投合していた。
片や魔王と言う存在を送還し、リィンバウムの危機を救った勇者、片やリィンバウム最強の召喚師といわれた調律者の子孫。
それはメルギトスを封印する前からなにかしら性格そのものに似たものがあったためだろうか?
決して否定することではない、そして駄目なものでは無い、人は一人で生きてゆこうとすることが難しい為に意気投合をするのだから。
だが、その関係に不満をもつ少女が二人いたのである、嫉妬というものかそれともそやきもちというものか、どちらとも受け取れる言葉。
クラレットとアメルの二人である。二人とも二人のパートナーということを自任している。
その為だろうか、彼が、彼らが仲良くしているということによって傍にいるという回数が減ってしまったのである、それは非常なまでに悔しきこと。
昼方、既に始まっていた宴を抜け出して二人は揃ってそのことで話し合っているのであった。
「…とは申しましても…裂くわけにはいきませんから…」
クラレットがそう唸るとアメルもまた頷く、仲の酔い二人の仲を裂いてしまえばそれこそ良いことなど全くないくなってしまうのである。
良策というものを探してみるが、それも中々いい案が無い、あの二人の性格を考えてこそ、である。
何かいい案と言うものは無いだろうか…
救いの手はある熟女(ということにしたほうがいいかもしれない)から差し伸べられていったのである。
「どうかしたの?二人とも?」
二人そろってため息をつくなんて、と声を駆けてきたのはアメルにとってもクラレットにとっても世話になった召喚師、ミモザだ。
普段はからかってくる彼女だが…今回はそんなこともいっていられるような状況ではなかった、だれでもいいからアドバイスは欲しかった。
それが今回の彼らに生き地獄を味わせることになるとはまだ誰も知らなかったのだ…
「実は…」
アメルから悩みを打ち明けた、その話を聞いてミモザが笑みを深くしているということには全く気付いている気配すら見当たらない。
「成る程ね〜要約するとあの二人が余り構ってくれないから不満が溜まっているということね?」
「なっ…!」
けれども事実、これを否定してしまえば悩んでしまうことなど何もかもなくなってしまうのだ、赤面が事実をあらわし証明される。
うんうん、と頷いて彼女は何かを考えている様子である、どうやら策があるのかもしれない。
そんなミモザの姿にわずかな希望とほのかな絶望(どうして?)を感じながらも兎に角彼女からのアドバイスを待つことになったのである。
しばらくして彼女が笑みを浮かべると、
「いい案があるわ、これなら確実ね」
それは彼女達にとってはこれ以上に無いというくらいの嬉しい出来事、彼女の策はどうなっていることなのか…
二人を近くまで手繰り寄せるとミモザは二人の耳に耳打ちをした、その耳打ちは彼女にたちにとっても羞恥心を煽るものだったが…
けれども構ってくる可能性は向上させるにはもうなりふり構っていられない。
その打ち耳の内容は―――
「襲ってあげればいいのよ、不満が爆発したかのようにして」
今まさにその瞬間だったのだ、夜もふけている中起きている人間は宴の中で大騒ぎをしていてこのことには気付くよしも無いだろう。
昼ならば兎も角夜、それも深夜という時間帯なのである。勝手に侵入してくるような人もほぼ皆無といっても過言ではない。
上手く酔ったふりをしてハヤトに自分を運んでもらうようにして正解だった…
ちなみにアメルも似たような方法でマグナによって客室にまで運んでもらっていたところは確認済みである。
それからは自分としても思えていないくらいの手つきでいろいろとハヤトにした事は覚えている。
ベッドに寝かされた瞬間にハヤトも一緒にベッドまで引き込んで上乗りになり、手首を束縛して…よく自分もここまで出来たものだと驚いたくらいである。
「…ハヤト…」
この瞬間、彼がいままで構ってくれなかったことが鮮明に思い出してきたのである。
マグナと仲良く離しているハヤト、マグナと釣りに出かけているハヤト、今までの旅の経緯を楽しそうに話し続けているハヤト…
当分の間クラレットが傍にいる機会など全く無かったのである、自分は貴方のパートナーなのに、どうして傍にいさせてくれない?
思い浮かんできた頃には彼女の体は本能的なものに従って動き出していた、顔はハヤトへと段々接近してくる。
「うわわっ!?クラレット何を…!!??」
ハヤトが疑問を口にする前には既に唇という唇を密着させていた、兎に角自分がいるということで自分に構って欲しいから…
軽いキスだったのが次第に重苦しいキスへと変貌し、ハヤトの口内には異物―――クラレットの舌が侵入してゆきハヤトを舐めつくす。
キス、初めてのキス、相手がクラレットなのには嬉しさが無いことは決してない。だがこのときは何故か彼女に恐怖を感じていた。
何故かこの瞬間前に見つめた彼女の瞳は…初めて出会ったときの様な色彩を持たない瞳だったから。
しばらくして深く侵入させてきた唇を離すと、クラレットはそのまま責める手つきを止めなかった、今度は首辺りへとキスを這わせる。
「ん…はっ!!、ちょ、く、クラレ…!?」
快感の声が響いた、声を聴いた瞬間に少しだけクラレットも驚きがあったのかもしれない。
しかし、クラレットはそんなハヤトの反応を見てついつい笑顔を浮かべてしまった、どうしてだろうか、そんな彼が余りに愛しすぎた。
「ふふっ…首がそんなに気持ちいいんですか?…ならもっと…」
そこまで言い終えるとまたクラレットはハヤトの首にキスをして、そのまま首の全体へと這わせ続ける。
男性、首の辺りは小さい頃にはくすぐったく感じてしまう、だが心身ともに成熟してゆくとその部分からは快感を漏れてくる、それが性感帯。
ハヤトにとっての性感帯は首のようである、そうでなければこんな姿のハヤトなどにはお目にかかることが出来ないから。
舌を出して舐めるまでとはいかないが、ハヤトの首辺りを何度も首を這わせ続ける、ハヤトからたまに声が漏れてくる。
「ちょ…ちょっとクラレット…やめっ…」
「…そうですよね、ハヤトももっと快感を感じたいんですよね…」
ハヤトの静止の言葉を別の意味に受け取りそのままクラレットは首から顔を離すと彼に笑みを浮かべたまま体を後ろにずらしてゆく。
そして彼のベルトを取り外してズボンも剥ぎ取る。これには当然ハヤトも抵抗なり何なりするべきだったのだが手首を封鎖せられ、何も出来ない。
「く、クラレット!な、何を!?」
慌てるハヤトに気にせずにそのままハヤトのそれを取り出し始める。
ネスティは疲れていた、今までここに来てからミモザに酒を飲まされ続けていたからである。
実際あまり酒というものには免疫というものが無い。融機人の抗体の薬の中には勿論酔いの悪化を防ぐ効果だってあるのだ。
それ以上に飲まされる恐れも無いとは言い切れなく遠慮なく飲まされ続けていたネスティはとりあえずこの場面から逃げ出すことを優先したのである。
ため息をついてお酒の余韻を少しづつ消してゆき、ひとまず客室となっている場所で一休みでもするかと考えてフラットの中を歩いていたのである。
「先輩も限度というものを考えて欲しい…僕が余り酒を飲めないことだって知っているはずだろう…
 そうだ、まだ子供だった時にも先輩を飲ませてくる時があった…あの時はギブンソン先輩のおかげで難は逃れたが…
 大体何だ、あんなにまで飲むようなものが酒なのか?酔いつぶれてしまったら思考力も失ってしまうじゃないか…実際アメルも倒れていたしな…
 …そういえばマグナも飲んでいたのだろうか?飲んで酔っていたならばしっかりと叱らんとな、僕もマグナも未成年だしな…
 大体お酒なんて誰が開発したんだ…あんなの人格を壊すだけに存在してしまった飲み物じゃないか…対して美味しくもないというのに
 言葉の中には二日酔いなんてものがあるそうだが…馬鹿馬鹿しい、そこまでして飲むなんて馬鹿がいるはずがないじゃないか…
 …いや彼らの今の状況ならそれも有り得ないとは言い切れないかもしれないが…」
ぶつぶつと駄々長い文句を喋り続けている、よく一人でここまで喋られるものだなと言ってやりたいものだ…寂しいのだろうか?
ネスティに渡された(というよりも無断で借りて構わないようだが)部屋に入るとそのまま彼はベッドに横になった。
酒の余韻を少しでも早くなくそうとする為である。部屋でゆっくりと休めばこの体の気だるさもなくなってくれるだろう、ネスティはそう考えていた。
ゆっくり休む、それが最もいい方法だったというのにそれがまさか邪魔されるなどということはネスティも想像していなかったのだが…
「…!!…!!」
耳に何かの声が聞こえてくる…女性の声だろうか?それも随分と艶かしさを彩っているのではないだろうか?
今客室を使っているのは自分と…マグナ、アメルの二人しかいない。女性の声となればそれはアメルしかいないのである。
「お酒を飲んでいたとはいえ何をそんな声を出しているんだアメルは…」
眠れないじゃないか…重い体を起こして苦情でも言いに行くつもりだろう、ネスティは寝かせた体を起こす。
扉を開こうとして、先ほどからアメルが叫んでいる言葉を耳にすることが出来たのであった。
「あぁっ!!マグナ!マグナぁ!!」
…マグナの名前を何度も連呼しているではないか、一体何をしているというんだ?融機人の知能を持っても何をしているのかは想像できなかった。
「…まぁいい、兎に角うるさいからひとまずは黙ってもらうしかないだろう。一体何がそこまで叫ばせているというんだ…」
声の大きさからして隣の部屋だろう。ネスティがそこを覗いてみると確かに彼女達はそこにいた………
その場面は、ネスティの想像をはるか遠くにまで飛ばすような光景であった。
「あん!あぁ!!マグナ!!マグナ!」
「うぅ…が…アメル…」
騎馬位でアメルの体に挿入されているマグナのそれ、言葉で言う乱交というものだろうか。
ネスティの視線から見ても彼女達が何をしているということはすぐにわかる、マグナの苦しそうな姿を見れば…
襲っているのである、アメルがマグナを。
「はぁ…んぅ…ぁぁぁぁぁ!!」
マグナのそれに絡ませるかのようにして淫らに腰を振り続けるアメル、ネスティの脳内では知ることのない言葉、である。
「…何をしているんだ?あの二人は…?」
いや、分かっている、分かってはいるのだ…それでもあのような交わりを二人がしているなどとは想像も出来なかった。
「あぁ…マグナぁ…もっとぉ…」
精が侵入したのか、突然余韻に浸ったような声を上げてマグナを求め続ける、その当のマグナといえば誰かと同じようにして腕を縛られている。
邪魔をするだけ迷惑かもしれないな…ましてや苦情をいう機会もないと判断したネスティは仕方なく部屋に戻っていった。
その声を聞きながら、ゆっくりと休む以外に何もすることは出来ない。


二人の男性が食べつくされる宴はまだ始まったばかり。


つづく

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