消せない罪(前編)



灰色の空・・・荒れ果てた大地・・・・
私は大悪魔と戦う為、私は兵器となり・・・そして・・・
 
「ご飯の支度できましたよ。マグナ、運ぶのを手伝ってください」
マグナはアメルに呼ばれ食事を運ぼうとすると、食事の献立に驚いた。
「すごい・・・・全部芋料理じゃない!」
「わ、私だってお芋さん以外の料理も作れますよ!!」
アメルが巡りの大樹から帰ってきてから半年、それからもアルミネの森で護人として暮らしている
もちろん住んでいるのはマグナ、ネスティ、レオルド、そしてアメルの4人である。
本来ここで『君は馬鹿か?このぐらいで驚いて・・・』と言ってくるのだが、ネスティの姿がいない・・・・
今、ネスティは養父であるのラウルに近状の報告を伝えるため、聖王都ゼラムにいる。
とは言っても、平和なアルミネの森には特に報告することもなく、ただの里帰りをしているようなものだ。
一方のレオルドはレルム村の再建を手伝う為に今はいない。つまり今、マグナとアメルは二人っきりの状況である。


普段食事はみんなで公平に当番製で食事を作っている。
いつもアメルの番になると決まって自分の好きな芋料理である。味はどんなお店でもひけをとらない味で色々とレパートリーがあるのだが、こう三食芋料理だとさすがに飽きてしまう
その対策に当番制を考えついたのだ。・・・・・ちなみにこの事実はアメルには言っておらず、三人の秘密ということにしている。
食事を終えた二人は食べた食器を片づけながら会話をして
「私は毎日お芋さん料理でも構いませんけど、マグナは嫌でしょ?」
「別に・・・俺は」
アメルはマグナの性格はわかっている。言葉では誤魔化してはいるが、マグナの顔を見れば本当かどうかわかる。
それを見て嘘だとわかったアメルはクスッっと笑い
「嘘ばっかり。マグナは毎日ずっとじゃ飽きてしまうでしょう?だから色々と考えているんです」
「え?毎日ずっとって・・・・」
マグナは次第に顔を赤らめ始め、マグナの顔を見て自分の言葉に気づきアメルも顔を赤く染め二人は沈黙した

「あ・・・ははははっ!俺って何変なこと考えているんだろ。ネスやレオルドもいるのに」
「そ、そうですよね。もうマグナったら」
二人は照れながらごまかすように作業を続けた。アメルは食器を洗い、マグナはその食器を拭く
その姿は他からみれば仲の良い夫婦としか思えないほどの光景が拡がっている。
『なんだかこれって新婚さんってみたい・・・』
アメルは隣にいるマグナを見て、少し照れながら皿洗いに集中し、その皿を渡そうとしたそのとき濡れたアメルの手が水ではなく、赤い鮮血に染まっていたのだ。アメルはみるみると顔を青ざめ体が震いだし始めた。
「アメル!」
「!!」
アメルはハッと気がつくと、赤く染めた手ではなく水で濡れた手に戻っていた。マグナは心配そうにアメルを見つめ
「アメル、大丈夫か?顔・・・青いよ?」
「だ、大丈夫です・・・ごめんなさい、ボーッとしてました。」
アメルは心配しているマグナを見て、笑ってごまかした。

『アメルどうしたんだろう』
マグナは自分の部屋に戻り、ベッドの上でアメルのことを考えていた。
本人はなんでもないというが、あの表情は尋常じゃない・・・きっと何かあると睨んだ・・・
『明日、アメルに思い切って聞いてみよう・・・』
そのままマグナは、ゆっくりとそのまま眠りについた。
 
荒れ果てた大地・・・青空ではなく、空が赤く染まった世界・・・・
アメルはそこに立っていた。
「!こ、ここは・・・・ッ!!」
アメルは何かを思い出しその場から逃げるように走り出した。
走っても、走ってもこの景色は変わらない。空から淡い光のようなものが雪のように降り出しアメルはそれに気づき走るのをやめ、その光を見上げた。
「!・・・・っ!!」
その光はよく見るとぼんやりと人の顔が映りだし、アメルの頭から直接にかすれた声で囁いた。


『ゼ・・・ナゼ・・・』
『ナ・・・・ゼ・・・・エダケ・・イキテイル』
「ひっ!!」
アメルは再び走り出した。力の限り走り続けたが、その声は絶えることはなかった・・・・
『ナゼ・・・オ前ダケガ生キテイル』
『ドウシテ・・・私達ガ殺サレナケレバイケナイ・・・・』
『ドウシテ・・・オ前ダケガ幸セニ・・・』
『俺達ガコウナッタノハ・・・オ前ノ所為ダ・・・アルミネ・・・』
ハッっと気がつくとアメルの全身は返り血を浴びた様に赤く染まりそして
「あ・・あぁ・・・ぃいやぁぁぁぁぁぁっ!!」
アメルはがくりと膝を落とし、頭を抑え絶叫した・・・・
 
「アメル!!」
「!・・・マ・・グナ?」
アメルの悲鳴を聞いてマグナは急いでアメルの部屋へ向かい、アメルを抱き起こした。
「・・・マグナ・・マグナァー!!あああぁぁッ!!」
マグナの心配そうな顔をみるとアメルは何かが切れたか、子供のように泣きじゃくり抱き返した。
「アメル・・・大丈夫だから」
泣きじゃくるアメルをあやすように優しく頭をなで、落ち着くまで抱きしめた。
しばらくして、マグナの胸に顔を埋めたアメルは口を開いた・・・・
「・・・マグナ、お願いです・・・・私を犯してください」
「えぇ!?」

マグナは意外な言葉に驚き、生気の抜けたアメルの目を見つめた。
「最近夢を見るんです。昔の・・・・アルミネだった頃の・・・」
「アルミネの?」
そのまま返答せずアメルは話を続け
「私は召喚兵器としてレイムさんと戦ったとき・・・多くの人を・・何百、何千もの人を殺めました。何も関係ないの・・・ただ、そこにいた人達を私は!」
召喚兵器・・・それは大悪魔メルギトスを滅ぼす為にクレスメント家と融機人が作り上げられた召喚獣と機械を融合した兵器・・・
アメルの前世である大天使アルミネもその呪われし兵器の被害者だった。
召喚兵器の重要目的は『大悪魔とその配下全ての破壊』・・・つまりメルギトスの支配する一帯すべてを破壊するという意味となる。その目的の為に何の関係のない人々や死に至ったのは言うまでもない・・・
「違う!!それは、俺の先祖が・・・クレスメント家が君を操って・・・」
マグナはアメルの顔を上げ、じっと目を見つめ声を荒げたが、アメルもまた声を荒げ
「でも!結果的に殺めてしまったのは私なんです!!どんなことをしても消すこともできない罪だから・・・」
反論し、抱きしめているマグナの手を払い顔を伏せながら力ない声で・・・
「その殺めた人達が語りかけてくるんです・・・なぜ、私達が殺されないとならない・・お前だけが幸せに生きていると・・・」
「アメル・・・」
そしてアメルはマグナの胸にしがみつき、すがるように・・・・
「お・・・・願い・・・マグナ・・私に罰を・・・・メチャクチャに犯してください!!」
大粒の涙を流しながら、マグナに哀願した。


つづく

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