セクター改造 2



「これが生体ボディというものか。慣れないものだな」
 手術は終わった。ゲックが俺に施したのは私の脳組織をより生体に近いボディに移し変える
 というものだった。一体、どこでこのような技術を身に着けたのやら。
「無論、お主が望むのならば以前のボディに移しなおすことも可能じゃよ」
「それは今後の経過を見てみないことには何も言えんな」
 ゲックの技術は神業といってもいいだろう。傍目には生身の人間とは寸分違わぬ。
 とはいえ所詮は紛い物。このような身体であの女(ひと)の愛に応えようはずもない。
 私は心のどこかで失望していた。
「セクターよ。こんな話を知っておるか。我らが名も無き世界と呼ぶ異界の話じゃ」
 するとそんな私の心情を察してかゲックは話しかける。
「かの世界において、人は人と寸分違わぬ機械人形を生み出せると聞く。その者たちとともに愛を育むことも、無論」
「気休めは止せ。俺は気まぐれに付き合ってやっただけだ」
「セクター。造られし命にも人と同じ魂は宿る。まして、元々人間であったお主ならば」
「それ以上は喋るな。まあいい。この身体も悪くはない。頂いていくぞ」
「そうか。じゃがしばらくは安静にしてもらうぞ。移植まもないので何があるか分からぬからな」
「貴様に言われるまでもない。調整とやらが終わるまでは眠らせてもらおう。年寄りの戯言も聞かなくて済む」
 そう言うとゲックは何も言わず立ち去った。私は凍結モードに入る。深い眠りの世界へ。


「ん?」
 深夜、私はふいに凍結からさめる。おかしい。設定した時間よりも随分早いな。
 誰かが勝手に凍結を解除したのだろうか。
「何のつもりだ。貴様」
 私は眼前にいる相手を睨み付ける。ローレット。またこの人形か。
「これはゲックの命令か?」
「教授は関係ありません。これは私の独断です」
「どうだかな。まあ、いい。貴様は何のために俺を起こした」
「最終確認のためです。セクター。あなたの生体ボディの」
「おかしなことを言う。それならゲックのいるときでも構わぬだろう」
「教授は私がこれからすることを知れば決してお許しにならないでしょう」
 そういってローレットは私に近づく。さて、この人形、私を始末にでもきたのか。
 いや、それはない。それなら凍結を解除する必要性などないのだから。
 そうこう考えている内にローレットは私の目の前に立ち、そして
「なっ!貴様、何をっ!」
 瞬間、ローレットは身にまとった衣を脱ぎ捨てるするとそこには……
「なんだと!?これは…………」
 そこにあるのはいつもの一目で機械人形と分かる身体ではなかった。
 今の私と同じ生体ボディ。より生身に近いローレットの姿がそこにあった。
「セクター。貴方の生体ボディの最終チェックを私のこのボディを使って行ないます」
 動けぬ、私の目の前でえ生身の裸身を晒すローレットはそう冷たく淡々と告げた。


つづく

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