閑話 初めての夜 sideライ&リシェル



 これは拷問だ。少なくともライはそう感じた。よくもまあこんなにも酷なことをしてくれる。
「……すぅ……すぅ……んっ……う……」
 すうすうとたつ寝息。それがライの身体にもふきかかる。いい気なものだ。こんなにも幸せそうに。
(おかげでこっちはちっとも眠れやしねえってのにな……)
 そう胸中、ぼやきながらもたれ掛かってくるリシェルをライは見つめる。その愛らしい寝顔に思わず見とれそうになる。
 思えばこの夜は色々なことがありすぎた。いきなり背後からメイドクライシスを喰らって拉致されたかと思えば、
 目を覚ませば楽園もかくやと言わんばかりの有難い光景。なんか淫魔に大切なものをこってりと搾りとられたり、
 逆上したリシェルにしこたま召喚術喰らって折檻されたり。……なんか思い出すだけで心が挫けてきた。
 だがそんな破天荒な夜にもかけがえのない思い出は刻まれた。お互いの素直な気持ちを通わすことができた。
 そして結ばれることができた。本当に心から愛しいと思える相手と。
(………しちまったんだよなオレ。こいつ……リシェルと……)
 初めてリシェルに包まれたときの感触。とても柔らかかった。温かかった。そして優しかった。
 身体を重ねることで、実感することができた。リシェルがどれだけ自分のことを想ってくれているのかを。
(本当に嬉しいよ。オマエにこんなにも想ってもらえてさ)
 いつだって傍にいてくれた幼馴染。突拍子な思いつきで人を散々引きずり回して、その度に迷惑を被った。
 けれどその分、楽しい思いも沢山させてくれた。一緒に遊んで、喧嘩して、時には二人一緒に叱られて、
 そんな何気ない日々の積み重ねが今この胸の中にある確かな想いを育んでくれた。ようやく気づくことができた。
(オレも好きだったんだよな。オマエのこと……ずっと前から……)
 気づいたきっかけは他人からの後押しだったけれども、好きだという気持ち自体は自分の内から生まれたものだ。
 リシェルと一緒にすごしてきた時間。その一つ一つが愛おしく思えてくる。寝顔をじっと覗き込む。
 やっぱり可愛い。愛らしくて愛らしくてたまらない。胸がトクンと鳴る。
(………やべぇ……我慢できそうにねえ……)
 ふいに眠ったままのリシェルにキスをしたくなった。行為の最中にも何度か交わした口付け。
 柔らかな感触がまだ自分の唇に残っている。もう一度味わいたいと魔がさす。顔を近づける。
(いいよな?……こんぐらい……別に……)
 もうキスどころか行き着くところまで行ってしまった後だ。けれど心臓がバクバクと音を立てている。
 自然と息が荒くなる。吐き出す息はリシェルの顔にふきかかる。
(くあぁ……しっかりしろよ……オレ……)
 やはり勢いが一度途切れるとドギマギしてしまう。好きな女の子にキスをする。ただそれだけのことなのに。
 もう触れ合いそうなほど間近で躊躇い顔を震わす。どうにも踏ん切りがつかない。そうしているうちに。
「……ん……う………」
「どわぁぁああ!」
 パッチリと閉じていたリシェルの目蓋が開かれる。ライはたじろいで身を引いた。



「お、起きてたのか!?」
「なんか……顔に吹きかかってくすぐったかったから……」
「あ……悪りぃ……」
 そのまま赤面してライは俯く。そんなライの顔をリシェルは見つめて
「あんたの顔、真っ赤じゃん」
 呟かれてライはギクッとなる。バツが悪そうに視線を逸らしていると
「ふふふ。でもそれってさ……あたしのこと……ちゃんと意識してくれてるんだよね?」
 嬉しそうにリシェルもまた頬を染める。恥ずかしがりながらも素直な気持ちを呟く。
「嬉しい。嬉しいよ。あんたにそんな風に想ってもらえるの。あたし、ずっと夢見てたから」
 大好きな人の一番になりたい。恋に憧れる年頃の少女ならば、それは当然の願望だった。
「だから今……それが叶って……本当に嬉しくて……あたし……うっ……ふぇっ……」
 感極まって、リシェルの瞳からは水滴が零れる。ぽろぽろと何粒も頬を伝って。
「おいおい。泣くなよ」
「ひっく……だって……嬉しいんだもん!あんたに好きになってもらえて本当に嬉しいんだもん!!」
 涙で濡れる顔を見せながらリシェルは言う。そのままライにがっしりと抱きつく。
「ずっと不安だった!不安で不安でしょうがなかった!!」
 しっかりとはみ付きながらリシェルはぶつけてきた。今まで胸の中に溜め込んできたその想いを。
「だってあんた優しいから!誰にだって優しいから!だから……」
 不安だった。誰にでも優しいライだからこそ、いつか他の特定の誰かにその優しさが向くかもしれない。そう不安に思い続けたきた。
「好きだったんだから!あんたのことあたしはずっと前から……ちっちゃな頃からずっと好きだったんだから!!」
 誰にも渡したくなかった。一番になりたいとずっと願っていた。幼い日から温め続けてきた想い。
 その想いがずっとリシェルの小さな胸を焦がし続けていた。
「なのにあんた、気づいてくれなかったじゃない!あたしの気持ち、ちっとも気づいてくれなかったじゃない!
 さっさと気づきなさいよ!!この鈍感!!ニブチンっ!どアホ!大馬鹿ぁぁ!!」
 想いを素直に伝えられなくて、伝えようとしても伝わらなくて、抱えたのはもどかしさ。積もったのは切なさ。
 ありったけの想いをリシェルはわめく。これまで伝えられなかった数々の想いに代えて。
「バカぁ……本当にバカなんだから……でも……」
 しゃくりあげながら、鼻声混じりでもリシェルは呟いた。素直な自分の気持ちを。
「大好き……あんたのことが大好き……大好きなんだよぉ……」
 背中に回された手にギュッと力がこもったのをライは感じた。同時に心も身体も芯から温まっていく。
 ふいに、ライもキュッとリシェルのことをきつく抱きしめていた。しばしの間、抱擁が続いた。
 お互いの温もりを確かめ合うように。抱擁を解くと、ライはそっとリシェルに顔を寄せる。
 リシェルもそれに応じ、目を閉じる。今度は先程のような躊躇は起きなかった。
「……んっ……ちゅ……ん……」
 軽く唇同士を重ねあう。その感触はやっぱり柔らかかった。そのまま堪能したい気分にもなったが、すぐに顔を離す。
 そして
「好きだぜ。リシェル。オマエのこと、他の誰よりも」
 屈託のない笑顔でライはそう言った。何よりも一番欲していたその言葉にリシェルは
「あたしだってあんたのこと、この世界で一番大好きなんだからっ!」
 とこちらも負けじとその胸の中に募る愛をライに向かって叫んだ。
 


 確かめ合った気持ち。けれどそれだけでは収まりそうにない。これは若さの所以か。
 欲していた。繋がりを。愛しい人を最も深く感じていられる尊い時間を。一度といわずに何度でも。
「別に無理しなくてもいいんだぞ。オマエ、さっきあんなに痛そうにしてたし」
 リシェルを気遣ってライは声をかける。まだリシェルは破瓜を経験したばかりだ。あまり続けて痛い思いをさせたくはなかった。
「別にたいしたことないわよ。あんなの。それに」
 リシェルは強がりながら視線を注ぐ。ライの身体のある一点に対して。
「そんなの見せ付けといて説得力ないじゃん」
 屹立する海綿をじろりと見られライは赤面する。恥ずかしいことにまたしてもこの一部は言うことを聞かない。
 最初の交わりであれだけリシェルを堪能したばかりだというのに、また元気を取り戻して来ている。
「ほんとどっから来てんのかしらね。その元気」
「う、うるせぇな。ほっとけ!」
 狼狽するライに対しリシェルはクスクス笑い声を立てる。けれどその心の中は満たされていた。
 ライのそこがこうも反応してくれていることはつまり。
「そんだけあたしのこと好きでいてくれてるって証拠なんだよね」
「知るかよ!バカ……」
 目を輝かせながら言ってくるリシェルにライはひたすら照れ隠す。リシェルはフッと笑いながら静かに呟く。
「あたし……本当に嬉しいから……あんたに好きになってもらえて……だから……」
 そこまで言ってから、少しはにかみながら続けて
「だからあんたのしたいこと……させてあげたい……あんたに気持ちよくなってもらいたい……」
 耳まで真っ赤になりながら言う。言った後で頭から湯気を出しながらお決まりの反応を示す。
「ああ、もう!なに言わせんのよ!このバカっ!!」
 コロコロと変わるリシェルの表情に、ライは自然と笑みがこぼれていた。本当に嬉しかった。
 自分のことをここまで好きでいてくれる女の子が、こうして自分の傍にいてくれることが。



「じゃあ、するぞ。遠慮なく」
「………うん……」
 手短に伝えると、リシェルはこくんと頷く。そっけない言葉とは裏腹にライ胸の中では熱い塊が湧き上がっていた。
 また、繋がることができる。大好きなリシェルと深くまで。思うだけで飛び跳ねてしまいそうな気分だった。
 慎重に位置を確かめて切っ先を宛がう。先の交わりの名残がそのまま潤滑油となるので前戯はいらなかった。
「いくぞ。リシェル」
「……ん……ぅ……」
 挿入は初めてのときよりもスムーズに行われた。ずぷずぷとリシェルの膣肉はライを飲み込んでいく。
 弾力のある海綿それが膣壁を擦りながら奥まで深く沈んでいく。包まれていく。優しい温もりにライ自身が。
「……っは……あっ……かふっ………」
 肉根が膣内に沈むごとにぞくぞくとした刺激がリシェルの身体全体に伝わる。びくびくとその身体が小刻みに震えているのがライにもわかる。
「あぁ……くぅぅ……」
 深く、より深く沈むごとにリシェルの震えは大きくなる。ざわめいている。肉蓑が。ライを受け入れてることに。
「深い……すご……い……」
 初めてのときは痛みの方が先に来て、このような感覚は記憶に残らなかった。ずるずると。自分の中に入ってくる。異物感。
 奥まで深くに。制されていく。自身の肉が進入してきた肉塊に。
(入ってる……あたしのあそこにライのが入ってるよ……)
 二度目の交わりでは、一度目には感じとる余裕のなかったことまで感じることができる。ピリピリとした痛みも神経をくすぐるけれども。
 それ以上にリシェルは感じていた。自分の中に入ってくるライの存在を。
「大丈夫か?リシェル」
「……うん……まだちょっと……痛いけど……」
 肉茎はすんなりと根元までリシェルの膣内におさまっていた。リシェルは瞳に涙を滲ませる。破瓜から間もない。やっぱり傷口は痛む。けれども
「あったかいよぉ……あたしの中にあんたがちゃんといるよぉ……感じるよぉ……」
 自分の内にライが確かにいる。そのことにリシェルは満たされていた。歓喜の涙が零れる。
「オレも感じてるよ。オマエの中……すっげぇ温かい……」
 絡みつくような肉の感触に酔いしれながらライもそう漏らす。そしてまたリシェルとキスを交わした。心も身体も文字通り一つになって。


 腰も動かさず、ただ繋がったままの状態でライはリシェルと抱き合っていた。肌に伝わる。リシェルの体温。
 この腕に抱いて感じる。リシェルの柔らかさ。顔をくすぐる。リシェルの吐息。鼻腔に広がる。リシェルの匂い。
 それら一つ一つを噛みしめて。ライは満たされていた。こうして自分を包んでくれているリシェルの優しさに。
 気持ちよかった。今、自身をキュッと締め付けてくれているリシェルの秘肉の感触が。
 このままずっとこうしていたい。リシェルとずっと繋がり続けていたい。心からそう思った。
「……あの……さ……」
 ギュッと抱きしめられながらリシェルはライにもじもじと尋ねる。
「どうかな……あたしの中……ちゃんと気持いい?」
 聞かれるまでもないことだった。答えなんて一つしかない。迷わず口にする。
「最高に決まってるだろ。そんなのワザワザ聞くな。このバカ」
 そう言われて、リシェルは幸せそうに微笑みながら涙ぐむ。
「よかった……よかったよぉ……」
 またポロポロと涙をこぼす。そんなリシェルをライは見つめながら
「なんかいつも以上に泣き虫だな。今日のオマエ」
 軽く笑って言う。するとリシェルは少しだけ拗ねた顔を見せて言う。
「うっさい!泣かしてるあんたが言うな!バカっ!」
 いかにもリシェルらしいその反応にライは嬉しくなる。大好きなリシェルを今こうして抱いている。そのことを確かに実感して。
 そんなふうにライが浸っていると、リシェルはするりとライの首筋に手を回す。そしてねだるようにしてこう言った。
「気持ちよくなっちゃおう……あたしとあんたで……一緒に……気持ちよくさ……」
 それは合図だった。リシェルからライへの。もっと気持ちよくなりたい。気持ちよくさせてあげたい。そんな願いのこもった。
「そうだな」
 ライも頷く。こうしてただ繋がったままというのも悪くはないけれど、もっと感じたかった。リシェルのことを。
「一緒に幸せになろうな。リシェル」
「うん」
 そして交わしたのは二人で幸せになることを誓った約束。違うことのない永遠の約束。
 そんな約束を交わしてから二人は互いをより激しく求め合う。


side ライ&リシェル 終わり
次回 side ポムニットに続く

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