丼物って飽きないもんだ 2



鼻先が触れるくらいまでカシスの顔が近づく。
「そ、そうだ! 俺より先におねーさんの方の相手をしてやれよ!」
「やだ。ハヤトじゃなきゃいや」
滅多に耳にできないようなストレートな台詞。
新堂勇人。変化球は気付かないが直球には弱い。だがここは我慢である。

「ほ、ほら!俺はいつでもいるけど姉さんは今しかいないだろ? 家族を大事にしないよーなのはダメだぞ。えっと、き、嫌いだぞ?」
かなり切羽詰まっているのか頭が回らない。自分でも何を言っているのかイマイチ理解してないくらいだ。
だが、そんな一言にカシスの顔がふにゃっと崩れる。
どうやら『嫌い』に反応したらしい。
思い立ったら即行動。
ベッドに腰掛け、ハヤトの狼狽えっぷりを実に面白そうに眺めていたクラレット。
そんな姉が「え?」と思った瞬間にはもう妹に押し倒されていた。
「ちょ、ちょっと何を……うむっ!?」
激しく唇を吸われ、ねじ込まれたカシスの舌が口内を蹂躙していく。
突然の出来事に頭が真っ白になり、体が対応できない。
「ひんっ!」
その動かない体が、バネ仕掛けのように跳ね上がる。
下着の上からカシスの指が秘所をなぞり上げたのだ。
姉の新鮮な反応が心地良いのか、カシスは焦らすように姉を攻め始めた。
首筋や耳を舐め、ネグリジェの上から胸を撫で回し、下着越しに互いの秘所を擦り合わせる。
「やっ……やめ……んんっ!」
クラレットの声が次第に艶を帯びていく。

「くっ……このっ……」
手が届くほど近くで繰り広げられる姉妹の痴態。
だが首すら動かない状態ではその状況を捉えることが出来ない。
なまじ嬌声だけが耳をくすぐったりと生殺しだ。
力が……、こんな時こそ力が……!
エルゴもいい迷惑である。

ハヤトの葛藤をよそに、カシスの方は本能の赴くままに。
今ひとつもどかしいのか姉の下着を引っ剥がし、ぽいと投げ捨てる。
続いて自分も下着を脱ぎ捨てると、姉のそれと直に擦り合わせていく。

姉妹の乱れっぷりを心のカメラに収めるべく無様にもがくハヤト。
そんな情けないアホの顔にぱさりと何かの感触が。
つんと鼻を突く女の匂い。これは──
舞い降りる翼、自由への剣、妖精達の理想郷。これは──!


=====

「なあ新堂。縞パンの縞は何故横なんだと思う」
物憂げな表情で窓の外を見つめてつぶやく。
そんな姿は遠目には絵になるほど様になり、無駄に女生徒を迷わせたりするのであろうが、口にする内容で台無しだ。
深崎籐矢。女の子が恥じらう姿を見るのが至上の楽しみと公言してはばからない腐れ外道である。
「何だいきなり」
この男はたまに唐突に物事を切り出す。今回もそれだ。
「『横縞』……すなわち『邪』。縞パンには男の願望や欲望が詰まっているんだと僕は思う」
外ヅラは優等生な男だが、旧知のハヤトらに対して出てくるのは寝言か畜生の言語が9割を占める。
だが残る1割は言霊となって漢の胸を打ったり打たなかったり。
がっしと男の手を握るハヤト。今回のはその1割が心の琴線に触れたようだ。
そんなハヤトの横を突風が吹き抜け──
「余計なことばかり吹き込むんじゃないわよ!」
走り込んだ橋本のハイキックが男の顔面を撃ち抜き、返す刀でついでにハヤトも蹴り倒す。
ぐっと親指を立てて机の雪崩に沈んでいく深崎、それに応えるようにハヤトも腕を掲げる。
ああ、我が師カミ……深崎よ、今日の橋本夏美はブルーの縞パンでした。

=====


「うおぉっ!」
ぱきぃん、と甲高い音が響き、ハヤトの体が跳ね上がる。

「っ! 私の呪縛を──ひんっ!」
常識外のハヤトの行動に驚く姉と、まるで気にせず攻め続けるカシス。
「俺を誰だと思ってるんだ? これくらいの呪縛、魔力を一点集中すりゃ何とでもなるぜ」
どこに集中したかは推して知るべし。
状況によっては格好が付くのかもしれないが、少なくとも片手に縞々ぱんつ握って繰り出す台詞ではない。

あとで神棚でも作っておこう。
窮地から救ってくれた宝具に感謝の念を抱きつつ、ポケットにしまっておくハヤト。
この状況は惜しいが、どうも命の危険が伴う。とりあえずは脱出だ。
「ぅわっ!?」
と思ったのも束の間、再びカシスに押し倒された。
倒れながらも視線を巡らせば、ぐったりのびている姉の姿が目に映る。
どうやら姉をKOしたのでこちらに戻ってきたらしい。
ぼすん、と勢いのままベッドに倒れ込む。
だが今や体は自由の身。少女一人分など軽く押しのけて華麗に脱出を──
「んむっ!」
歯がぶつかるほどに唇を押しつけてくるカシス。
「んっ……ちゅ……。はぁ……っ」
歯列をなぞられ、舌を絡められ、そのたびに押しのけようとするハヤトの腕から力が抜けていく。

「ふふっ。また動けなくなっちゃいましたね」
ゆらりと起きあがったクラレットがこちらを見下ろしくすくすと笑う。
実に楽しそうな顔だ。何で俺の周りの女はこうタチが悪いのか。
「こちらの立ちは良さそうですけど」
上手いこと言ったつもりか。
ハヤトのズボンをずり下ろしながら微笑むクラレットを睨み付ける。
そこには天高くそびえるバベルの塔(誇張)が。
先ほどの姉妹プレイにディープキスですっかりコンバインOK、コンバインOKである。

「あまり準備は必要ないようですけど……んっ」
がちがちに強ばったハヤトのそれを、クラレットの小さな口が飲み込んでいく。
そして上の方ではカシスが舌を絡めて唾液を混ぜ合い、ぐいぐいと体を擦りつけながらハヤトの手を取り自分の胸に導く。
揉みしだく手には、小さいながらもワイシャツ越しに膨らみの柔らかさと尖った固さが伝わってくる。

すでに臨戦態勢だったハヤトの体は上下のダブル口撃に耐えられるはずもなく。
「くあっ……!」
「んっ……!んくっ……!」
どくどくと。クラレットの口内にたっぷりぶちまけてしまった。
細い喉がこくこくと動き、飲み下していく。
「けほっ……。出し過ぎですよ……」
ようやく止まったところで口を離し、小さくえづく。
「それに……出すならこっちにしてもらわないと」
ネグリジェをたくし上げ、露わになった秘所を指で軽く開いて見せるクラレット。
糸を引いた愛液が指を伝って落ち、シーツに小さく染みを作る。
ハヤトをまたいで膝立ちになると、ゆっくりと腰を下ろし──

「ダメっ!」
どーん、といきなりクラレットを突き飛ばすカシス。
そのままベッドから転げ落ちてしまった。
「ハヤトはあたしのだもん! 誰にも渡さないんだから!」
もんとか言われても。
滅多に聞けない台詞に思いっきりゴロゴロしたい衝動に駆られるハヤト。
そんな間にカシスは姉と同じようにハヤトにまたがると、躊躇うことなく一息に腰を沈み込ませた。
「つぁっ……!」
股下から脳天まで衝撃が駆け上がる。
「ふぁぁっ! はっ……くぅっ……!」
カシスの体が小刻みに震える。
姉との絡みとハヤトのキスでしっかり濡れてはいたものの、狭い内壁をごりごりと擦られ意識が飛びそうになる。
詰まっていた息を整え、カシスがゆっくりと腰を上下させる。
「んっ……、ふぁっ……!」
ぐちゅぐちゅと淫猥な水音が部屋に響き渡る。
カシスの嬌声と合わせてハヤトの思考を少しずつ削り取っていく。

「いたた……。もう、乱暴なんですから……」
突き飛ばされたクラレットが起き上がり、ハヤトの横に腰掛ける。
「この様子じゃ、私が入り込む余地は無いみたいですね」
カシスを見つめる目がふっと遠くなる。少し寂しそうな表情だ。
「って、ちょっと!?」
部屋を出て行く流れかと思いきや、カシスに向かい合うような形でハヤトの上にまたがるクラレット。
「上がお暇なようですから、私の相手をお願いしますね」
腰を上げ、ハヤトの顔の前に秘所をさらけ出す。
そうだった。外見こそおっとりした感じだが、ヤツの肉親だった。
愛液がてらてらと光り、女の匂いを振りまくそこに引き込まれ、ハヤトの舌が侵入する。
「んっ……。そう、いいですよ……」
「ひぁっ!やっ……!んぁっ……!」
カシスの声が一段と強くなる。クラレットが何かしているようだ。
「お、おい……。あんまりキツいことは……」
「ふふ……。一人占めはずるいですよ。 この子への愛情なら私も負けてないんですから」
いかん。どうやらかなりSの入った人らしい。
カシスのやつ、だいじょーぶかな。

シャツをはだけ、あらわになった小ぶりな胸をクラレットの指が優しく撫で回す。
「んっ……ちゅ……」
「ひぅっ……んむっ……ぷはっ!」
腰を動かし肩で息をするカシスの唇を塞ぎ、舌を絡める。
思うように呼吸ができず、次第に息が荒くなっていく。
「ああ……、そんな可愛い顔するようになって……」
うっとりとした顔で妹を見つめる感慨深げなクラレット。
「っておい、俺にも見せろ!」
無様な抗議を上げるハヤト。
ハヤトからはクラレットの体が遮り、カシスの顔が見えないのだ。
「ダメです。あなたは私のお尻でもご覧になっててください」
でん、と柔らかい尻がハヤトの顔にのしかかる。
やや不機嫌な様子のクラレット。どうやら今までカシスのえろかわいい顔を独占してたのがご不満なようだ。

そんな間も動き続けるカシスの腰に限界はすぐに訪れ
「くっ……、もう……!」
「ふあああああっ!」
カシスの中にどくどくと欲望を吐き出すハヤト。
脱力したカシスの体をクラレットが抱き留める。
ハヤトもにじんだ汗をぬぐい、大きく息を吐いた。
ふぅ。さすがに疲れ──
「私は中途半端なんですけど」
クラレットが不満の声を上げる。
二人とも仲良く達したのに私だけ仲間外れですか、と口を尖らせる。
と、「私に良い考えがある」といった顔をし、やおらカシスを抱きしめたままベッドに押し倒した。
「……姉様?」
「いいから、じっとしてなさい」
そしてしとどに濡れた秘所を重ね合わせ、どうぞと手招き。
男としては抗しがたい魔力に誘われるまま、ハヤトは二人の間に自身を突き入れた。
「うっ……こりゃ……」
中に入れるのとはまた違った感触。
二人の柔肉に上下から挟まれ、ややもどかしい感覚がハヤトをくすぐる。
「ふぅっ……こっちも、お願いしますね」
体を起こしたクラレットがハヤトの手を取り、自らの胸に導く。
しっとりと汗ばんだ肌に指がめり込む。
少し固さの残るカシスの胸と対照的に、マシュマロを掴んでいるような触り心地だ。
や、どっちが良いかとかは言及を避ける方向で。
手の中のやわやわとした感触を楽しみつつ腰を前後させる。
そのたびに蜜を溢れさせながら、ぴったりと吸い付くようにハヤトのものを擦り上げる。
「もっと激しくしてくれないと、終わらせませんよ」
「りょ、りょーかい」
不満の声に応えてピッチを速める。
愛液が粘度を増してぐちゅぐちゅと絡み付く。
「ひぁっ!やぁっ!きゃぅっ!」
カシスが髪を振り乱しながら嬌声を上げる。
そのあまりの様子にハヤトが思わず腰を止めた。
「な、何かえらいことになってるぞ。……大丈夫か?」
「んっ……。ああ、この子はここが特に弱いから」
ハヤトに代わってクラレットの指が隙間に差し込まれる。
何やら触手めいた動きをしている指が小豆のような突起を弄ぶ。
「あぅっ!あぁっ!んああっ!」
痙攣したかというほどに背筋を弓なりに反らせるカシス。
それを楽しそうに見下ろし、ね?とハヤトに微笑みかけるクラレット。
同意を求められても困るというか、酸欠しそうになってるんだが。いや、勉強にはなったけど。
それじゃあ続きですよ、と促され再び腰を動かすハヤト。
カシスの顔は快楽で蕩け、こぼれた涙や口元から垂れた唾液でぐしゃぐしゃになっている。
いつもの人を惹き付ける快活さは見る影もないが、これはこれでというか。
嗜虐心を刺激され、何とも性欲を揺さぶられるものがある。
そして余裕のあったクラレットの方も、次第に息を荒らげ甘い声を出し始めた。
「もう……、限界…だ……!」
「ええ、私も……ああぁぁっ!」
「ふあぁぁっ!」
二人の間で弾け、飛び散った白濁がぱたぱたとカシスの胸を汚す。
大きくのけぞったクラレットは脱力して、抱きつくようにカシスの上に倒れ込んだ。

たっぷり楽しみ満足したクラレットは、汗で張り付いた髪をかき上げ、下着を拾うと
「じゃあ後はよろしくお願いしますね。 ……この子のこと、これからも」
それだけ言って部屋を出て行ってしまった。
あの様子ではすぐにここから立ち去るつもりだろう。
とりあえず一難は去ったということか。
これで枕を高くして眠れ──
「もっと」
カシスの腕が首に回り、ぐいっと胸元に抱き寄せられる。
「……あのな、こっちはもう三連続で限界というか」
「体が熱くて我慢できないの……。 こんな切ないままじゃ眠れないよ……」
柔らかく火照った肌の感触と汗の匂いがハヤトの脳を刺激する。
それだけで元気になるもう一人の自分が恨めしい。

「ちゃんと責任取ってよ……ね」
ちゅ、と軽いキス。
ぱん、と頭の配線が吹っ飛び疲労とかお構いなしにスイッチが入る。
──明日はゆっくり休もうとハヤトは堅く心に誓った。


「ん……」
翌朝、目を覚ましたカシスの前には見慣れた顔。
「おはよ」
雲一つ無い青空のような顔。ただ青空というのはどこか抜けているものだ。
「うん、おはよ。……ねえ。寝顔、見てた?」
「んーと……。か、かわいかったぞ?」
「ふーん、そう。ありがと」
太陽のような笑顔。ただ太陽というのは近寄りがたいものだ。

「────────────!!」
甲高い悲鳴が、澄み切った青空にこだまする。
中略。
細い心身を包むのは乱れたワイシャツ。濡れたパンツは穿かないのがここでのたしなみ。
もちろん、この程度のことで騒ぎ立てるなどといった、常識的な人など存在していようはずもない。

最も、今回に限っては住人はみんな外出中であるのだが。

「まったく……乙女の寝顔は見ないのがエチケットってもんでしょ。 少しは学習してよねー。頭にふえるわかめでも詰まってんじゃないの」
ぱんぱんと手を払いながら文句を垂れるカシス。
どうやらカシスさんの中では裸より寝顔見られる方が恥ずかしいらしい。
イマイチその辺のことはハヤトには理解できない。
そんなこと言われてもなー。隣で寝てんだから目に入っちゃうだろ。
むしろ視か……見てるだけで抑えた俺の精神力を褒めるところじゃないだろうか。
などと考えながら、ハヤトは壁に刺さった頭を引っこ抜いた。

と、衝撃で壁に貼ってあった何かがぺらりと落ちてくる。
「……何だこりゃ」

      『おやすみの間にいただきました
         ぼやぼやしてると寝ている間にバッサリですよ』

たまらないぜハニハニ。アウトローも震え出すほど情け無用だ。
「へぇ……寝ている間にねぇ……。ふぅん……ほぉ……」
冷たい視線に晒され、さぁっと血の気が引くのを感じる。
「い、いや待て。どっちかって言うと俺も被害者と言うべき立場で──」
「動けるようになっても逃げなかったじゃない」
「だってお前が……。ってあれ、覚えてんの?」
こくりと頷くカシス。
実の所、覚えてるも何も術にかかってなかったのだからして。
たまにはだだ甘えしてみたいが気恥ずかしくてできなかったところ、渡りに船だったわけで。
クラレットの方も効かないことを悟ったので、再度術を使ったりもしなかったと。


さて、乙女の事情を露にも知らない男の方は。
視線の重圧を反らしながらどうやって逃げるか考えていると、不意に轟音がフラットを揺るがした。
これぞ天の助けと外の様子をうかがいに飛び出すハヤト。

外に出てみれば、地面には10mほどのクレーターとその前に立つ二人。
片方はやけにギザギザの多い白マント、もう片方は妙に地味な服だ。
その長身の白マントが口を開く。
「妹の様子を見に来たんだけど……どこにいるのかな」
妹?
果てしなくイヤな予感が全身を襲う。
「あら、兄様にソル。どしたの?」
横からひょいと顔を出したカシスがタイムリーに聞き捨てならない言葉を吐いた。
ちなみに着替えずに飛び出してきたのか、シーツを巻いて体を隠している。
「はぁ……。なあ、お前の兄弟って何人いるんだ? 何か一人増えるたびに俺の苦労が数倍になってるような気がするんだが」
あの姉さんとか、あの白いのとか。
「ん〜。あたしも全員知ってるわけじゃないけど」
ヘタすりゃ100人くらいいるかもね、あははと軽く笑うカシス。
「……お前、流星拳とか使えない?」
「何のこと?」
昨夜の誓いが即座に破れてしまった。
今日もゆっくり休めそうにない。
とりあえず目先の苦労は減らすべきかな、とハヤトはサモナイト石を取り出した。


おわり

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