愛しい死神 2



「いやああぁあぁああぁああっ!!」
悲鳴が深夜の館内に響いた。イオスの声だ。ルヴァイドはイオスに与えた部屋へ飛び込んだ。調度品の少ないその部屋のカーテンは閉じられてはいなくて、部屋の中のものは蒼く月光に染められていた。
机も飾り棚もレースカーテンも、寝台の上で震えているイオスも。月の青ざめた光に照らされて、イオスは普段よりもさらに浮世離れした美しさだ。長い睫毛が目元に濃い影を作って、不思議な色合いの瞳の表情はうかがえない。
「あ…ルヴァイド様……。」
「どうした、イオス。」
「すみません…お疲れでしょうに、起こしてしまって……。」
「気にするな。…悪い夢でも見たのか?」
思い当たることは一つしかない。先日、陵辱されかかった記憶が未だイオスを苦しめているのだ。
「…。」
沈黙は肯定。顔を伏せて押し黙ったイオスは儚げで、瞬きをしたら幻のように消えてしまいそうだ。
そんなありもしない考えに急き立てられてルヴァイドは早足でイオスの部屋を横切り、寝台の側に立った。
「座っても構わないか。」
すぐに椅子をお持ちしますと立ち上がろうとするイオスを制し、寝台の端に腰掛けた。己を見つめるルヴァイドから、イオスは目を逸らせなかった。それは数秒であったか数分であったのか。見つめ合っているうち、ルヴァイドの腕がイオスを捕らえて引き寄せた。体が軋むような強さで拘束されイオスは何が起こったのか分からないといった様子だったが、抱きしめられたと理解するとその腕を振りほどこうともがき始めた。ルヴァイドの体温を薄い布越しに感じて全身が燃えるように熱くなる。
「放してください、ルヴァイド様……。」
その抵抗を、抱擁を嫌がっていると捉えたルヴァイドは引き寄せた腕を解きイオスを解放した。
「すまない、俺もお前を襲った輩と同じ男だったな。」
「違うんですルヴァイド様…貴方に心配してもらう価値など僕には無いのです。こんな…汚らわしい女など…」
「汚らわしいのはお前に狼藉を働こうとしたあの者たちだ…。イオス、お前が汚らわしいはずがあるものか。」
「違う…違うんです、僕…。」
涙を流すことなく肩を震わせて嗚咽をもらす姿が憐れで、小さな子供にするように背中を軽く擦ってやった。寝巻きの襟からのぞく白いうなじは見えない振りをした。
「落ち着くまで待ってやろう。ゆっくりで良いから何故そう思うのか話してみろ。」
イオスは戸惑うように視線をさ迷わせた。自分でも見たこともない所を下劣な視線で犯されべたべたと体中を撫で回され大切なものを汚される所であったのに快感を感じてしまった、思い出すだけで気が狂いそうな記憶。
「…俺は、こればかりは強制出来ない。だがイオス、例えお前であろうと俺が誰より美しいと思っている女を汚れているなどと言われるのは気分が悪い。」
「え……ルヴァイド様…。」
赤らんでいるであろう頬は月明かりの下では相手に分からない筈だった。
「理由を話せないのならそれでも良い。しかしその言葉は撤回しろ。」
「……。」
「イオス?」
酷い、とイオスは思った。膝が触れ合うような近さで気遣わしげな表情で見下ろされては拒否権を剥奪されてしまったのと同じだ。
「ルヴァイド様……聞いて…下さいますか?どんなことを言ってもそれでもまだ、僕を、あの、その……。

………美しい、と言ってくださいますか?」
「ああ……。」
ルヴァイドが肯定してもしばらくイオスは迷っているようだったが、促すと顔を伏せたまま口を開いた。
「僕…ぬれた…気持ちが悪くて、恥ずかしかったのに…。怖かった…のに…嫌で嫌で、仕方が無かったのに…あいつが僕の中から出した指にはぬるぬるしたものがべったり付いていて…。」
「それで、淫乱だと言われたのだな。」
「ど…うしてそれを…?」
「強姦をする者が女の心を折るために使う常套句のようなものだ、イオス。愛液は相手のためのものでなくお前が傷つかぬために分泌されるものだ。強姦される時にも出てくる。…これで単独行動には懲りただろう?もう傍を離れるな。」
ルヴァイドは出来るだけ緩慢な動作でイオスを抱き寄せた。細い肩がびくりと戦慄いたが、抵抗は無かった。しばらくそうしていると、遠慮がちに体を預けてきたので僅かに腕に力をこめた。イオスを怯えさせないように。
「…ルヴァイドさま。」
包み込むように抱きしめられて眩暈のような幸福を覚えた。イオスは感じてしまったことを言えなかった。言えるはずが無かった。口にしてしまえば、軽蔑され頼み事を断られてしまうと思ったのだ。数年前、ルヴァイドの寝首を掻こうとした時のように。今なら「乱暴されそうになった可哀想な部下」として情けをかけてもらえるかもしれないという打算があった。
「ルヴァイド様、お願いがあります。…僕を、抱いて下さい。」
「!?イオス、何を言っている?」
己の胸に頬を寄せるイオスを思わず覗き込んだ。
「そんなこと…」
「そんなことはいつかお前の夫となる者としかするな、ですか?ルヴァイド様。祖国を裏切り、デグレアでも異端である僕を娶る者がいると本気で思っていらっしゃるのですか?」
それはあだ討ちのために自らの身体を利用するつもりでいた数年前のイオスにルヴァイドが言った言葉だった。ルヴァイドも馬鹿ではない。デグレアに寝返らせてしまった以上、イオスには人並みの幸福とは無縁の人生を歩ませてしまうことは理解しているはずだった。


「お願いです…一度だけ。ルヴァイド様にはそれだけでもうご迷惑をかけませんから、どうか…。」
返事は無かった。剣を振るい慣れ肉刺の潰れた無骨な手が壊れ物を扱うような手つきでイオスを引き寄せた。柔らかな感触が触れた。少しかさついた唇の感触。近すぎる距離に血が一気に顔に集まってくる。
ルヴァイドが目を閉じていたのでイオスは慌てて見開いていた目をつぶった。口付けをしてみたいと思ったことはあったがその時に目を閉じるか閉じないか迷うなどと考えたことは無かった。軽く触れるだけだったルヴァイドが舌で唇を割って口内に侵入し歯列をなぞり、舌の動きに驚いたイオスは口を少し開いてしまい角度を変えてさらに深く口付けられる。襲われた時と違い舌の動きに嫌悪は感じなかった。
粘膜をなぶられて体がざわり、としたがイオスにはそれを感じる余裕が無い。何とかルヴァイドの動きを真似て舌を動かす。瞳をきつく閉じて縋りつくようにしながら応えた。息が出来ずに頭がくらくらとしていると、唐突に開放された。耳の奥ではまだ激しい拍動の音がする。顔を上げるとルヴァイドが軍服の上着を脱ぎ捨ている。イオスは寝台に横たわっていた。どうやら口付けの最中に押し倒されていたようだ。寝台を軋ませてルヴァイドはイオスを組み敷く。真っ直ぐに見下ろす端正な顔にはわずかに疲労の色が見えた。
「イオス…」
耳元で囁くように呼ばれてイオスは震えた。寝衣の合わせを開かれ素肌に外気の冷たさと熱い手の感触が触れる。その行為を望んでいたというのに、イオスの心は酷く乾いていた。ルヴァイドの優しさに付け入っている気がして、胸が痛んだ。

ワンピース状の寝衣の前を開かれイオスの裸身が晒された。テントの暗がりでも十分映えていた白い肢体は月明かりの下で内から発光するようだ。小ぶりだが柔らかそうな乳房もほっそりとした首筋もルヴァイドがその気になれば心ゆくまで堪能できるだろう。困った顔をしてもじもじと内股をすり合わせるイオスが可愛くて、そんな彼女に気付かない振りをした。イオスの性格からして己の体を舐めるようにして眺めるルヴァイドを指摘することも咎めることも出来ないことを知っていて視姦をする。
「ルヴァイド様…あまり、見ないで下さい…僕の体は、…女らしく、ありませんから…。」
掠れた声で訴えるイオスの肉体は贅肉がとても少ない。絹を練りこんだような肌のすぐ下に硬い筋肉の感触がある。華奢な体躯からは想像も出来ない一撃を繰り出せるのもしなやかな筋肉が可能にしていた。
腕や腹など筋肉の目立ちやすい部位を見られるのが恥ずかしいのだ。それは気にするほどのものではないのだがコンプレックスのあまりイオスの目には己の身体は実際よりもずっと立派な体格に見えてしまうのだろう。有能な兵士であり忠実な部下であるイオスが体型のことを気にしているのはどこか微笑ましかった。

「っあの……っお願いです…ルヴァイド様…」
「大人しくしていろ、イオス。」
潤んだ瞳で見上げるイオスの首筋に顔を寄せ磨いたように滑らかな肌を吸い上げると、はっと息を呑む音がした。イオスは香料の入った石鹸を使わない。匂いで敵に気付かれるのを嫌うためだ。なのにイオスの身体は狂おしいほどに甘い香りがする。細い身体をを撫で回し、唇の跡をあちこちに残していくたびにイオスは押し殺した喘ぎを漏らす。どうせ誰も聞いていないというのに、指をシーツに食い込ませ唇をきつく結んで嬌声を上げまいとする。しかしルヴァイドが胸に手を這わせ、手触りを確かめるように優しく揉みしだくと耐えられずに甘い声で啼いた。イオスに見えないようにして人の悪い笑みを浮かべ桜色の可憐な乳首を口に含み、かり、と甘噛みする。
「や…あぁ…っ!」
控えめな膨らみをゆるゆると緩急をつけて撫でられ、片方は胸の突起を口の中で転がされ、シーツを握り締めていたイオスの手はいつの間にかルヴァイドの頭を押さえ込んでいた。
「あぁ…ん……」
不意にルヴァイドが身を起こした。
「…ルヴァイド様…?」
中途半端に高まったままのイオスが己を呼ぶのを心地よく聞きながらイオスの下肢に手を伸ばしショーツを下ろした。イオスは主君が何をしようとしているか悟り、火照った顔を手のひらで覆いながら腰を浮かせてそれを手伝う。ルヴァイドはイオスのすんなりと伸びた足を開かせた。愛液で湿り気を帯びた秘所に思わず喉が鳴る。指で花芽をなぞってやるとびくびくと華奢な身体が跳ねた。
「あぁ…!ん…あぁ…やあぁ…っ」
「気持ち良いか?」
「うぁ…ん…き、聞かないで…くださ…」
さらに足を開かせルヴァイドはイオスの下肢の間に顔を埋めた。色素が殆ど無く濃桃色をした秘裂に舌を這わせる。
「ああぁあっ!…何を…なさって…っ!止めてくださぁ…あぁん…そこ、きたない…ですっ……」
股の間にルヴァイドがいるため自分で足を閉じられない。イオスは半泣きになって懇願した。誰より慕わしく思っている人に恥ずかしい姿を晒しなぶられていることに強い背徳感と快感を感じる。
「汚くなど無い。…お前はこんな所までも美しいな…。」
指で舌で翻弄されてみっともなく声を上げ、身体の奥から愛液を滴らせる自分をルヴァイドが綺麗だと言ったことにイオスは身体が熱くなるのを感じた。


伸ばしっぱなしの長い髪が内股に擦れてくすぐったい。花弁にルヴァイドの吐息がかかり、そんなにも近くで秘められた場所を見られていることに今更ながら気づいた。淫靡な水音が響き、聴覚からも追い上げられていく。
「あぁ…ルヴァイドさま…!ああぁ…っ!!」
秘所から蜜をとめどなく溢れさせてイオスは絶頂を迎えた。達した余韻でいまいちはっきりとしない頭で、ルヴァイドが前をくつろげているのを理解した。勃ちあがった自身を露出させている。
「あ……。」
「恐ろしいか?」
「いえ…。」
ルヴァイドの雄は色も大きさも凶悪な程で、イオスを襲った男など比較にもならない代物だ。それなのに不思議と気味悪くも恐ろしくもなかった。
「ルヴァイドさま…」
「どうした?」
ここまで来て拒まれるとは思わなかったが、やはり男性自身を見て怖気づいたのだろうかとルヴァイドは早合点しかけた。イオスが体を起こし自身に恐る恐るといった手つきで指を絡めるまでは。
「僕も…ルヴァイドさまに何かして差し上げたいです。気持ちよくなって欲しいです…」
イオスは雄の前に身を屈めた。ルヴァイドは僅かに狼狽してイオスの両肩に手をかけたが、強くは押し返せなかった。
「その様な事は…」
「ルヴァイドさまは、僕の、……性器に、触れて…気持ちよくして下さいました…。…だから、僕も……んっ……ぴちゃ、…ぴちゃ…」
ルヴァイド自身の味や臭いに戸惑いながら丹念に指を絡め舌を這わせ、さも愛おしそうに先端に口付けをする。動きは稚拙でぎこちないものだったが、性に疎いイオスが悦んで欲しい一心で懸命にほどこす愛撫はその事実だけでルヴァイドの官能を刺激した。欲を言えば自身を口に含んでの愛撫もしてもらいたかったが、そんな手法があることをイオスは想像だにしていないだろう。性行為に及ぶのは初めての彼女に無茶な要求をするのは気が引けた。
「……っイオス、もう十分だ。…ありがとう。」
柔らかな髪を撫ぜながら礼の言葉を口にすると実に嬉しそうに微笑む。子供のように無垢な微笑とルヴァイド自身の零す先走りで濡れた口元のアンバランスが淫らだった。イオスの口元についた汚れを拭ってやり、顎を持ち上げてやるとぎゅっと固く目をつぶって自分から触れるだけの軽い口付けをしてきた。

それに応えて顔中に口付けを降らせてやる。イオスの背を支え、静かに寝台に押し倒した。花弁に熱い自身を押し付けながら問いかける。
「イオス…準備はいいか?」
ルヴァイドの雄は硬く張り詰めていたがまだイオスを気遣う余裕があった。望んでいないなら無理強いはしたくない。しかしそれは杞憂だったようだ。
イオスはルヴァイドの首に腕を回して消え入りそうな声でつぶやいた。
「はい…。」
その答えに満足してイオスの秘所に己をあてがい、ゆっくりと埋め込む。
「うああああっ…!」
愛液で潤っているとはいえ、体格差がかなりあるうえに一度も受け入れたことの無い内部はかなりきつく、挿入に痛みさえともなう。しかしイオスの苦痛はルヴァイドの比ではないだろう。膣内を割り開かれ、破瓜の証がシーツに赤く染みを作っていた。歯を食いしばって悲鳴を耐えている。
「苦しいか…っ?」
「……うっ……だい……じょ…ぶ……」
平気な振りをして笑顔を作ろうとするが、口角が僅かに上がっただけで上手くいかなかった。言葉を紡ぐため腹に力を込めると強く締め付けてしまい、自らの内部にルヴァイドの雄の存在を感じた。狭い膣壁を押し広げられ堪えきれずに小さく呻く。イオスが痛みを紛らわせられるよう片手で乳房を揉みしだき負担をかけないように律動をするうちに慣れてきたのか、快楽が痛みを凌駕したのか、イオスの吐息に甘いものが含まれ始めた。新雪のように白く滑らかな肌に汗が伝う。
「…ふ…ぅん…あ、ああ…!」
イオスは無意識に細すぎる腰を揺らし、足を限界近くまで開いてルヴァイドをさらに奥へと誘った。打ち付けるたびに身体を弓なりに反らして艶めいた声を上げ、広い背へと回された手が滑り落ちそうになりながらも必死で縋ってくる。匂い立つほどの媚態に、ルヴァイドはいつしか気遣う余裕も無くなり貪欲にイオスを求めていく。額にかかった髪を払ってやり呼吸をするのに精一杯のイオスの唇に貪るような口づけをする。いっそう激しく突き上げながら焦らすこともせず、上顎をなぞり舌裏をねぶり口内を犯す。どこまでも深く深く繋がろうとするように。息継ぎが上手く出来ないイオスの苦しげな喘ぎに口付けから解放してやり、胸への愛撫を再開する。身体を自分を貫くルヴァイドの動きに合わせて揺らめかせ荒い息を吐き、焦点の定まらない大きな瞳を細めて幸せそうに微笑むイオスは普段からは想像もつかないほどに妖艶だった。
「イオス…イオス…っ!」
「ルヴァイドさま…っ…ルヴァ…ド…さまぁ…!あぁんっ!…あっ…あああああぁ―っ!!」
互いの名を呼び合いこれ以上ないほどに熱を高め合った。最奥を何度も突き上げられ全身を弛緩させて意識を失った小さな身体を折れんばかりに抱きしめ、ルヴァイドはイオスの膣壁に熱い精を放った。 

ほぼ同時に達した後、ルヴァイドはイオスの上に覆いかぶさったままでいた。正直、まだ物足りない気分ではあったが気を遣ったイオスを起こしてまで事に及ぼうとは思わなかった。イオスの柔らかな双球に頭を乗せて心音を聞きながらまどろんでいると、イオスが目を覚ました気配を感じた。ルヴァイドの下で細い身体が小さく身じろぎする。
「すみません…僕、眠って…」
「後悔は、していないか。」
藪から棒に聞かれて、寝ぼけた頭では答えようもない。
「…え?」
「俺に抱かれたことをだ。」
イオスの頭はその一言で一気に覚醒した。その言葉に先刻まで主との情交に溺れていたことを思い出す。
熱が収まった後では思い出すのでさえ恥ずかしかったが、決して後悔などしていない。
「!!あ……い、いいえっ!!そのようなことは決して、」
慌てて否定する言葉を遮るようにイオスの髪に手を差し入れ、指で梳くように撫でる。くせの無い亜麻色の髪は絡まることも無く指を通した。
「別に嘘など吐かずとも良い。これで俺は、イオス…
…お前から全てを取り上げてしまったことになるのだからな。」
まず仲間の命を。己の独りよがりでその命を救い、帝国のエリート軍人という地位と誇りと、祖国とを。
純潔まで奪ってしまった。
「ルヴァイド様…。今の僕にとっては…いつか僕が貴方を殺すまで、貴方に忠誠を捧げることが全てなんです。貴方は僕から何も取り上げてなんかいません。」
「イオス…」
「それにルヴァイド様、誘ったのは僕なんですから…どうかお気になさらないで下さい。…、……。」
当の昔にその約束は果たせないものになっていた。イオスはもう復讐者ではなく敵国の将に恋をした愚かな女に成り下がっていたのだ。
(……ごめんなさい……)
その謝罪がルヴァイドに向けたものなのか、死んでいった祖国の仲間に向けたものなのかはイオスにも分からなかった。自分に圧し掛かっているルヴァイドの重さと体温とを心地よく感じながらイオスは再び意識を手放した。
「…イオス?」
反応が無い。身を起こしてイオスを見ると健やかな寝息をたてて眠っていた。穏やかな表情だ。この様子ならばもう悪夢を見ることもないだろう。イオスに命を奪われる日がいつか来ようと最期の瞬間まで彼女が傍にいてくれるというのなら、悔いは無かった。眠ってしまったイオスを起こさないようにルヴァイドはそっと唇を重ねた。


おわり

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