ギアン×フェア 2



言い訳だけが頭の中でぐるぐると巡った。
「どうして濡れてないの?」
探る様な瞳で私を見詰めながら、ギアンは私を背中から抱き締める。
頭の頂に当たるギアンの顎に僅かながらの恐れを感じて、私はたどたどしく口を開いた。
「ぬ、濡らせなかったの。…その、シてる所をコーラルが……来て…」

『…お母さん』
ノックと同時に開け放たれたドアから、ひょっこりとくすんだ金髪が覗く。
『!!!』
私は慌てて毛布を被った。ううん、被ったと言うよりは下半身に毛布を掛けた、かな?
言葉通り、血の気が引いた。まだ私の右手はアソコに当てられたまま。さっき迄あんなに熱かったのに、一瞬で冷たくなっている。溢れていた液も引っ込んでいた。
『……どうしたの?具合、悪い…?』
ドアに寄り掛かったままのコーラルが、毛布を被った私を見詰める。金色の瞳が、僅かな怒りと労りの色を宿した。
『働き過ぎ…。初期発見が遅れると、そのまま……ポックリ…。過労死に於けるよくある兆候かと。ヒゲに直談判…即実行…』
くるりと反転したコーラルを、私は見送るべきだった。
けれどー
咄嗟に私の唇は余計な事を紡ぎ出す。
『ちょ、ちょっと待ちなさい!オーナーをヒゲなんて言っちゃ駄目でしょ!!それと…私は平気だから、直談判なんてしなくても大丈夫よ…!』
コーラルを引き止める様な事を言って、それに慌てて心境とは裏腹に笑ってしまった。

うん。空元気なのは分かってる。

でもね、でも―

『……分かった。でも無理はしないで、お母さん。お母さんが倒れたら皆心配するから。だから…』
『うん。大丈夫だよ、コーラル』

嗚呼、貴方に嘘を吐いてる事が辛いよ。
私は今凄くいやらしい事をしてて、貴方にそれを見られたから後めたくて嘘を吐いてるの。だって、貴方にそれを話したら軽蔑するでしょ?
でも、ギアンは私を気持ち良くしてくれるの。とってもとっても気持ち良いんだよ?貴方は性別があやふやだから、分からないかも知れないけれど凄く気持ち良いの。

コーラルとのやり取りをそこ迄回想した私は不意に鼻の奥がツン、と痛みが走って泣きたくなった。ギアンにシて欲しいっていう気持ちも急速に冷め、ただ被りを振るだけ。

「ごめんなさい、今日はもう…」
いいよ、と言い掛けて顔を上げようとした私の頬に、ギアンの手が添えられる。
顔の角度を変えられないまま、ギアンは私に囁いた。
「コーラルに見せてあげれば良かったのに」

え…?何?今なんて言ったの?
コーラル、に…?

何か言わなきゃ、と思っても、私の声は喉から出て行こうとしない。私を覗き込むギアンの瞳孔が、すぅっと縦に走り身体の自由が効かなくなる。
ずるりとギアンから滑り落ちる私を、邪眼を光らせたまま彼は呟いた。
「コーラルにも見せてあげれば良かったんだ。キミが、一人で自分を慰めている所を」
「や…」
「ボクと繋がりたくて、一生懸命頑張ってる姿を、さぁ…」
「そん、なの…!恥ず」
ばんっ!
ギアンの右手が私の顔スレスレに叩き付けられる。
「恥ずかしい?…ウソだよ。こうやってボクを求めてるって事はさ…」
怖い。怖いよ、ギアン。
私の唇は声を紡ごうと懸命に震える。けれど、言葉は一向に出ない。ただ、かちかちと歯が音を立てるだけだった。
「ボクにおねだりする事はいやらしく無い、と?」
「………っ」
「あは、あはははは!冗談が旨いね、実に笑わせてくれるよフェア。…それともアレかな、『母親』としての『愛』って奴?そんな物は捨ててしまいなよ。強くて深い愛情は罪なだけさ」
笑いながら私を見るギアンの目が、少し前の彼を彷彿とさせる。
「ボク達は身を以って確信しただろう?夢でしか会えない母親、ボクの御守りに込められた母親の想い」
…やめて、やめてよ!
「ボクの目の前に居るのは、『母親』じゃない。…ただ、男に抱かれたい、淫乱な女の子だよ」
「うっ…うくっ、ふ、ふえぇ…!」
邪眼で身動きが取れないまでも、私の目からは涙が溢れ零れる。
コーラルの前では母親振っても、私はただのいやらしい女なんだ。ギアンに抱いて欲しくておねだりしちゃう、最低の女なんだ…!


つづく

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