ハヤト×クラレット 1



 ―――どうして、こうなってしまったのか、私には分からない。
 クラレット・セルボルト。それが私の持つ姓名である。無色の派閥の乱以降、フラットのアジトで世話になっている。
 さて、それはさておき疑問を持つべきは私の過去ではなく(私自身未だ抱えているものはあるのだが)、今の私の現状についてである。
 …場所はおそらくアジトの屋根裏部屋。一応は見慣れた景色なので、一安心する。問題なのは、何故ここにいるか、ということである。
 たしか、私はハヤト…私のパートナーとも言うべき彼に、部屋で召喚術の勉強を教えていたはずなのだ。
 そう、たしか今回はメイトルパの召喚術について。これもハヤトを元の世界に戻すための一環ではあったのだが…どうしてかその記憶が曖昧である。

 さて、もう一つ問題なのは、この格好である。
 有り体に言えば、素っ裸に首輪、靴と言った少々どころか随分とマニアックな格好をさせられていることだ。
 羞恥心がすぐにこみ上げてきそうなのを押さえて、私は冷静に判断する。
 ―――誰がこんなことを。…外部の人間の仕業とは考えにくい。外に連れ出されたのならともかく、場所はアジトの中のままである。
 となれば、フラットの誰かの仕業か。しかし、エドスやレイドは仕事に、ジンガはエドスの手伝い、
 ガゼルとリプレはモナティやエルカ、子どもたちを連れて買出しに行っているはずだ。……そこで一番考えたくない可能性のひとつにぶち当たる。

「ああ、クラレット…もう起きたんだ、大丈夫か?
 でも、クラレットに気づかせずに召喚術を使えるようになった俺もなかなかだよな」
 
 ギィ、と木板の床を踏み鳴らしながら屋根下から続く梯子を上って来たハヤト。
 私が誰よりも信頼している彼はそう言った。

「ハヤト! まさか、この格好…ハヤトが?」
「うん、そうだよ。……まさか、他のやつがやったと思った?」
 悪びれもせずにむしろ自然と認めたハヤトは、私に近づいてにっこりと笑う。否定して欲しかった私の思いとは裏腹にあっさりと答えた。
「そんなことさせるわけないだろ? クラレットは俺だけのものだからね」
「…は、ハヤト?」
 高慢な物言い。それは決していつもの彼のものだとは思えないものであった。
 だが、うろたえる私に構わず、目の前にしゃがみ込むと私の顔を覗きこみながら笑う。
「あはは、流石にビックリした? ごめんごめん…乱暴にしたのは謝るよ。俺も不本意だったんだけどさ」
 くく、と笑いを噛み殺しながらその指先を私の下乳に這わせ、持ち上げるように指先を押し上げる。
「んっ…!」
 あまりに卑猥な愛撫に、眉をしかめるも思わず温かい吐息が零れてしまう。
 身体を彼と重ねたのは初めてではない。もちろん、それでも片手で指折り数えられるほどだが。
 いつもであれば、こういうのに疎い彼はうろたえて、こちらから何かアプローチしなければ何もしてこないはずなのだが、
 今の彼はそれどころか、私を犯しかねない勢いすらある。


「ど、どうしてこんなことをするんですか…その、言ってくだされば、私は何だって……」
 その言葉の先はいえなかった。さすがに自分からその言葉を発するのは恥ずかしかった。
 だが、そんな私の心を見透かしたように、ハヤトは満足げに頷く。
「嬉しいな、クラレットがそう言ってくれるなんてさ。 でも、クラレットが悪いんだぜ?」
「へっ……? んきゅっ……!?」
 私が悪い? その言葉の意味を理解する前に、ハヤトは無遠慮に私の乳房を片手で揉み掴んだ。
 思わず間抜けな声が漏れてしまい、さらに恥ずかしさはこみ上げて、顔が赤くなるのが自分でも分かる。
「俺が健全な男子だっていうこと忘れた?
 ……みんな、勘違いしているかもしれないけどさ、俺だって普通に性欲は溜まったりするんだ」
「はぅ…ぅっ、ぁぁっ!」
 本来なら恥ずかしくもあるその告白を、ハヤトは淡々と口にする。しかし、私にその言葉の意図が理解できなかった。
 ハヤトの十本の指先は、それぞれが意志を持っているかのように私の乳房の上で踊り、時折その頂すら踏みにじってしまう。
 自分でも恥ずかしくなってしまうような声を漏らしながら、私はただ身体を捩らせるしか他なかった。

 だが、次のハヤトの言葉でだんだん高まっていた興奮が急に冷めてしまうことになる。
「クラレット……、少し前に俺の剣で自慰しただろ?」
「―――っぁ!?」
 声にならなかった。まさか、あれをハヤトに見られていただなんて。
 本当に自分でも恥ずべきことだと思った。彼の部屋の掃除をリプレから任されて、彼の部屋にいたときのことだった。
 あの部屋はハヤトの匂いやハヤトの生活がそこで垣間見ることができた。
 はしたないと思う間もなく、いつの間にか自分の衝動と彼への思いが抑制できなくなったとき、
 気づけば、彼の剣を手に取ってその柄で自分の秘所を弄っていた。恥ずかしさと情けなさ、そして彼に対する申し訳なさで、涙が溢れてきた。
「ご、ごめんなさ……」
「ああ、別に謝らなくていいよ。クラレットが俺のことを思ってくれてるっていうのは嬉しかったから。
 ……でも、さ。あれを見ちゃったら俺も我慢できなくなるんだよな」
 弦楽器でもかき鳴らすかのように、私の下乳を指先で、ととん、とん、とリズムを取るように叩く。
 その度に、乳房はふるふると震えて、羞恥心はさらに煽られ、自分の状態を正視することもできなかった。

「ごめんなさい……」
「だから、謝らなくていいんだって。ほら」
 そう言って、私の目の前にからんと乾いた音を立てて、放り投げられたのは、あの時私が使った剣。
 はっとなって彼の顔を見上げる。
「…な、何を……?」
「いや、ほら…この間の続きしてみせてくれよ。 俺が見ることができたのは、ほんのちょっとだけだったからさ。
 まあ、普通は驚くよな。自分の部屋で、自分の好きな人が自慰してたらさ」
 彼は敢えて私の羞恥心を煽っているのだろう。わざとらしくそう言いながら、にやりと笑ってこちらを見下ろしている。
「そ、そんなこと……で、出来ません…」
「なんで? あの時は出来てたのに、今はできないっていうのか? …それにクラレット、さっき言ってたよな?
 『言ったらなんでもする』ってさ」
「…そ、それは、そうです…けど」
 正確には最後までは言っていないのだが、今のハヤトに屁理屈は通じなさそうだ。
 私はしぶしぶ剣を手に取ると、刃で指を切らないように柄を掴んでゆっくりと既に曝け出されている秘所へと近づける。


「んっ…ふっ……」
 意識せずとも自然と声が漏れてしまう。そんな私をハヤトは実に楽しそうに眺めていた。
 恥ずかしさを出来るだけ抑えるためにも、今はハヤトのことを意識の外に置きながら、
 先っぽしか入らない剣の柄でぐりぐりと自分の秘所を弄る。
 どうしてここまで卑猥なことが出来るのだろう。私は自分自身の淫乱さを呪った。
 ―――大好きな人の目の前だというのに。こんな、見せ物みたいに。
「可愛いよ、クラレット。ほら、遠慮しなくてもいいんだぜ? 今はみんなも出かけているし、一応屋根裏部屋の鍵は閉めたからさ」
 自慰を促すハヤトの声。その言葉に素直に従えばいいのか、それとも抗えばいいのか。
 自らの手で溶かしていく理性では判断がつかなかった。
 ただひたすら、自分の秘所を弄る。それしか私に出来ることはなかった。
「んぁ、はっ…くぁ…は、ハヤトぉ…っ!」
 自然と彼の名前が私の口からついて出る。しかし、既にこの時点で羞恥を気にしていられなかった。
 最初はぎこちない剣の柄の動きだったが、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を立てて、入り口をかき回す。
 それどころか大股を開いて、ハヤトに自分の痴態を見せ付けていた。

 ――なんて浅ましい、そして、恥ずかしい。
 そう考えても、行為は終えられることが出来なかった。
「変態だな、クラレットは。こんなはしたないところを、俺に見せ付けるだなんてさ」
「ち、ちが……ぅ…あはっ…んふぁっ…!」
 否定しようとしても、否定しきれることが出来なかった。今の自分は変態以外の何物でもない。
 自分の痴態を見せびらかして、しかも、喜悦の声すら漏れ出てしまっている。だが、ハヤトはそんな私にですら容赦はしなかった。
「いいや、変態さ。クラレットだって分かってるんだろ? 俺にエッチな姿を見せ付ける変態だってさ!!」
 いつの間にか後ろに回っていたハヤトは、強くぎゅむぅっと私の乳房を揉みしだいた。
 まるで牛の搾乳をされるような、そんな感じに。
 ますます恥ずかしさは募るものの、だからといって、何が終わるわけでもない。
 私は少しでも早く終わらせるためにも、小刻みに柄をうごかした。
「ちが……ぁ…、あひっ! ひぁっ…ああ、ああっ、あぁぁっっ――っ!」
「変態だって。別に認めなくなかったらいいんだけど……さ!」
「だ、めぇぇ…、おっぱい、揉まないで、弄らないれぇぇっ…!」
 エスカレートしていく快感は、いつしか羞恥心を被虐心に、羞恥を興奮へと導いていた。
 理性は殆ど蕩けてしまい、幼稚かつ下品な言葉すらついて出てしまう。
「ほら、俺も手伝ってやるよ、変態さん」
「や、やらっ…そ、そんなに激しくう、動かさないでっ…! おしっこ…おしっこが出るぅっ…、で、出ちゃいますぅぅぅっ――!!」
 その抗議の言葉は意味を為すことはなかった。いつの間にか尿意を催していたのだろう。
 自慰というには卑猥な行為に、絶頂を迎えると失禁してしまい、
 剣が引き抜かれると同時にじょばじょばと激しい水音を立てて、私は彼の剣を濡らしていた。


つづく

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