タケシー大好きビジュ 12



「先生……私……ちょっと疲れちゃったわ」
 今日一日のできごとは幼い少女には負担が大きすぎたのか、二人が浴室から出る頃になると、ベルフラウは疲労をアティに訴え始めていた。
「ベルフラウはもう、今日は私のところで休ませてあげたらどう?」
 カイルたちや集落のみんなには、既にベルフラウの無事を自分から上手く伝えてあるという旨をメイメイはアティに伝えた。アティもそれならばと、ベルフラウを今日はもうメイメイの店で休ませてもらうことにする。
 ウィゼルもまた戦闘の傷と疲れを癒すため今日はもう休み、剣の修復は明日から取り掛かるという意をアティに伝える。おそらく、ウィゼルも今日はメイメイのお世話になるのだろう。
 アティは一人でカイルたちの待つ船へと帰ることになった。
「それじゃあ、メイメイさん……ベルフラウをよろしくお願いします」
「はいはい、任せておいて、先生」
 別れを交わすアティとメイメイ。そしてアティはウィゼルに軽く会釈をする。
「それでは……」
「……確たるものを探せ。お前が、剣へと込めるべきものを……」
「え?」
 店を出ようとするアティの背中にウィゼルの声が投げかかる。
「俺が明日打つ剣は今までのものとは似て異なる代物だ。遺跡の意志ではなくお前の意志を核としてその剣は、力を振るう……。お前の心の強さがそのまま、剣の力へと転じるのだ」
「私の、心の強さ……確たるもの……」
 ウィゼルの言葉にアティは困惑を示す。そんなアティにメイメイが再び声をかける。
「難しく考えなくていいのよ、先生。貴方にとって一番、大切な想い……それが、答えよ」
「一番、大切な……」
 アティの心の中にある人がよぎる。たが、胸の痛みがすぐにそれを消し去る。その痛みはビジュが残した、心の傷跡だった。
「会ってらっしゃいな。貴方が今、思い描いたその人に……。きっと、その人が貴方を導いてくれるわ」
「……でも」
「にゃはははっ、それじゃ先生、またねぇ」
 戸惑うアティをメイメイは強引に店の外へと押しやった。店の外へ出ると、空から日はもう完全に消えていた。


 暗がりを一人で進むアティ……。
 さっきまではベルフラウとあれだけふざけ合えたのに、独りになってみるとその余裕などもうどこにもない。自分が今日、何を失ってしまったのか、それをあらためて思い知らされてしまう。
 一日の出来事をどうしても思い出してしまう、アティ。
 ベルフラウもまた独りになれば、自分と同じように、今日のことを思い返してしまうのだろうか。
 それとも、もう夢の中で泣いているのだろうか。
 自然とアティの頬に涙が伝った。
「……あれ、……私……」
 立ち止まって涙を拭う。だが、拭っても拭っても涙が溢れ出てきてしまう。
「どう、して……涙……止まらないです……っ」
 自分はもう大丈夫だと思っていたのに――。
 不安で、寂しくて、悲しくて、苦しくて――。
 側に誰かがいないだけで、今の自分はこんなにも弱いものなのか――。
「あ、ああ……うああぁぁっ……私、……私……っ」
 アティは泣き崩れると、その場から一歩も動けなくなってしまった。
 心細かった。独りは嫌だった。
 会いたかった。自分が思い描いた、その人に。
 だが、それ以上に怖かった。汚れてしまった自分をどんな眼でその人が見るのか、それがアティには怖くて怖くてたまらなかった。
「私……どうしたら……っ」
 暗闇の中アティは孤独に泣き続けた――。

 どれだけ、アティは泣き続けただろうか。
 ふと、泣き続けるアティの肩に声がかかった。
「アティ」
「……っ!?」
 顔を上げたアティは、そこに立っていた人物に驚いた。何故なら、今、自分が会いたいと思っていた、その人がそこに立っていたのだから。
「……カ、カイルさ……ん?」
「あのなあ……泣くにしたって、こんなところでわざわざ泣くこたあないだろうが」
「ど、どうして……こんなところに……」
 カイルは照れくさそうに人差し指で顎を掻くと、アティに応える。
「いや、それはな……お前が帰ってくるのがあんまり遅いから、……な」
「心配して、くれたんですか……?」
「ああ……まあな。お前、今日は一回も顔を見せなかったしな」
 そういえば今日は一日ずっとカイルと顔を合わせていなかったことを、アティは思い出した。いや、それ以前にこうやってしっかりと眼を合わせて話すのも随分と久しぶりのことだった。
「そういや、ベルフラウはどうした?見つかったんじゃないのか?」
 そうキョロキョロとするカイルに、アティは一度だけ微かに微笑むと事情を話した。カイルが側にいるだけでアティの心には、先ほどまでのあれだけの心細さはもうどこにもなかった。
「そうか……まあ何にせよ、一度船まで戻ろうぜ。……ほら、立てるか?」
 カイルはそう言って、足元のアティに手を差し出す。アティはその手を取って立ち上がった。冷えたアティの手に、カイルの手はとても暖かった。
「ごめんなさい……カイルさん」
 そうアティはカイルに謝ると笑ってみせる。
「帰りましょう?」
 そして、アティとカイルは船へと歩き始めた。
 いつもと同じアティの笑顔がそこにあった。
 だが、カイルにはそれがどうしても無理をした笑顔であるように見えて仕方がなかった。
「心配したわよ!先生!」
「ベルフラウもアティさんも姿を消してしまって……。みなさん、とても心配したんですよ」
 船へ戻ったアティをソノラとスカーレル、それにヤードが温かく向かえる。アティはみんなに心配をかけたことを謝ると、ベルフラウの事情を――もちろん、ビジュの話は上手く省いて説明した。
 その後、久しぶりにアティと海賊一家は顔を合わせて食事をした。ベルフラウがいないこともあって、少しそこは寂しい感じもしたが、それでも今までと変わらない夕食の風景がそこにあった。
 ――だが、それも表面上だけだった。
 アティの心の下にはまだ消えない、恐れ、不安、悲しみ……そんな感情が渦巻いていたのだ。


「ねえ、アニキ……。先生、ちょっと様子変じゃなかった? これまでも部屋に篭りっ放しだったけど、それとはまたなんか、違うような感じで……」
 食事を終え、部屋で休んでいたカイルをソノラが訪ねてきた。
「……お前もやっぱりそう思うか、ソノラ?」
「うん……。カンなんだけどさ」
「お前のカンは当てになるのか?」
 そんな冗談を言うカイルに、ぶーぶー!とソノラはカイルにぼやいてみせる。
「ねえ、先生にちょっと会って話をしてみてきてよ」
「……ああ、そのつもりだった」
 カイルの脳裏に暗い道で独りで泣くアティの姿が過ぎった。
 あのとき、カイルは自分がアティに声をかけるべきかどうか長い間迷った。
 泣いているアティにすぐにでも手を差し伸ばしたかった。それが本心だった。しかし、それをしたら、その伸ばした手からアティが逃げていってしまいそうな不安を、カイル感じたのだった。だからこそ、すぐにはアティに声をかけられなかった。
 ああやって、アティに声をかけたのも、やっとのことでだったのだ……。
「……たぶん、兄貴じゃないと先生は助けられないと思う……」
 ソノラは気づいていた。アティの様子がおかしいのは、特にカイルに対してなのだった。
 アティの様子は普段と変わらない。だが、カイルに対してだけ、なんとなく、なんとなくだが、ソノラはアティが無理をしているような気がしてならなかった。
「行ってあげて、アニキ。先生を助けに……」
「ああ」
 ソノラのその言葉にカイルはハッキリと頷いた。

 コンコン!
 部屋の扉を叩く音が廊下に響いた。
「アティ……ちょっと話があるんだが……」
「カ、カイル……さん」
 突然の訪問者にアティの驚くような声が、扉の向こうから聞こえた。
「なあ、入っていいか?」
「……」
 部屋の中から、アティの返事は返ってこなかった。
「……入るぞ」
「来ないで!……入って……来ないでください……っ」
 カイルの言葉に、否定の叫びが上がった。
「アティ……お前、また泣いているのか……?」
「今、入ってきたら……私、カイルさんのこと……キライになっちゃいます……」
 そのアティの言葉に、カイルの胸がズキリと痛んだ。
 そっとしておくべきなのかもしれない。カイルは悩んだ。
 だが、だがそっとしておいたからこそ、アティは今こんなにも傷ついているんじゃないのか――?
 カイルはそう自問する。
 イスラにあれだけやられたのに、それでも独りにしておいた、それがこの結果なんじゃないのか――?
 カイルは葛藤を続ける。
 アティとカイルの間に重い沈黙が続いた。
 時間はどれだけ流れただろうか。
「……お前には嫌われたくはねえよ。だけどな……嫌われても、今のお前を放っておくことなんて、俺にはできねえんだよ……わりぃ……入るぞ?」
「……カイルさ、ん」
 それがカイルの答えだった。

 扉を開き、アティの部屋の中へと足を運ぶカイル。扉を閉じると、その視界に、ベッドの上でうずくまるように泣いていたアティの姿が飛び込んできた。
「やっぱり泣いていたのか」
 カイルがそうポツリという。
 部屋の中に入っても、気まずさが流れていた。
「今日は一日中出かけていたみたいだけどよ……何かあったのか?」
 カイルの言葉にアティの身体がビクッと震えた。アティのそれを、カイルは肯定の反応だと理解した。
「何かあったんだな……?なあ、よかったら俺に話してみちゃくれねえか?」
 カイルはアティそうやって優しく問いかけた。
「もしかしたら、俺でもお前の助けになれるかもしれねえ。……まあ大した力にもならねえかもしれないけどな」
 カイルの言葉はアティを思ってのことだった。だが、そのカイルの問いかけにアティは怯えたような表情をつくり、嗚咽を漏らすだけだった。
「……話せませんよ……だって……カイルさんに、嫌われちゃいます……っ」
「バカ……何で俺が嫌ったりなんかするんだよ……。まあ話したくないなら、無理には聞かねえよ。だけどな……俺はお前の力になってやりたいんだよ」
 アティのその様子にカイルもあきらめたのか、そんな言葉をその背中に優しく投げる。
「俺は……迷惑か……?」
「そんな……っ!でも……でも、今は……私のことは放っておいて欲しいです……」
「それはできないな」
 そういってアティの拒絶をハッキリとカイルは否定した。
「どう、して……?」
「そんなの決まってるだろ……」
 そう言うとカイルはアティへ向かって歩みよって行く。そしてアティの震える片をそっと掴んで、アティの眼を真剣に見つめた。
「あ……」
 アティとカイルはお互いに真っ直ぐと見つめ合った。そしてカイルは思いの丈をアティに告白した。
「お前が……好きだからだよ、アティ」
「カイ、ル……?」
「俺はな、お前の本当の笑顔が好きだ。だからこそ、今のお前を放ってはおけないんだ。……もちろん、仲間としても放っておけない。が、それ以上に個人的な理由でお前を放ってはおけないんだよ」
 その言葉はアティがずっと待ち望んでいた一言だった。だが、同時に今のアティには最も残酷な言葉でもあった。
「カイル……っう、うう……私、……私……」
「お、おい?……すまねえ……急に俺、変なこと言っちまったな……」
 また突然泣き出してしまったアティに、カイルは困惑する。
「違……っ、私、カイルの言葉……すごく、嬉しい……よっ! でも、でも……私、カイルにそんな言葉、言ってもらう資格なんて……もうないの……っ」
「バカ!何を言ってんだよ、資格なんてもんは必要ないだろう?」
「そうじゃない……そうじゃないの……私……うわあああぁぁぁぁ……っ!!」
 激しく泣きじゃくるアティに、カイルはもう何も言えなくなってしまった。
 アティが泣き止むまで、カイルはずっと胸を貸して側にいてやることしかできなかった。

 重苦しい時間が流れた――。
「……」
 アティが泣き止むと、部屋には静かな沈黙しかなかった。
 カイルとアティは互いに肩を寄せ合っていた。
「……私……」
 沈黙を先に破ったのはアティだった。ついに重い口をアティは開いたのだった。
「……私……汚されてしまったの……」
 そして予想もしていなかった言葉とその重さに、カイルはどう答えていいのかわからなくなる。そんな中、アティは詰まりながらも言葉を続けた。
「私……無理やり……っ、好きな人にあげたかったのに……」
「アティ……」
「……玩具のように何度も弄ばれて……そして……そして……っ」
「もういい……アティ……もう何も言わなくていい……」
 カイルはそのアティの告白を聞いているだけで、自分の握り締めた拳に力と共に怒りが篭ることを感じた。
「……私、ベルフラウまで傷つけて……」
 カイルはいたたまれなくなって、思わずアティの身体を抱きしめる。
「カイ、ル……」
 カイルの腕の中でアティの身体は小刻みに震えていた。
「すまん……すまねえ……アティ……俺が助けられなかったばっかりに……」
 今日という一日を安穏と過ごしていた自分を、カイルは責め続ける。そんなカイルをアティは真っ直ぐに見つめ続けた。
「お前を守れなかった俺が、もう言えるものでもないかもしれないが、まだ間に合うなら……まだ貫いていけるなら、……俺は貫きたい」
「え……」
「惚れた相手は、守り抜け。何があろうと手放すな。カイル一家の三つの掟……最後の、一つをさ」
「これからは……お前は俺がずっと守り続けてやる。ずっとな」
 そのカイルの真剣な表情をアティはじっと見つめた。
「ずっと……?」
「ああ。ずっと一緒だ。離すもんかよ……絶対にな……」
 そう言ってカイルはアティの唇を寄せる。
「あっ」
 静かな、そして優しい口づけだった。
「んっ……うん……むっ」
 カイルが口を離すと、アティの唇からぷはっと息がこぼれた。
 頬を紅くするアティ。
「カイル……」
 恍惚とした表情を浮かべ、カイルの眼を見つめるアティ。カイルもアティの眼を優しい眼で見つめ返す。
「それじゃあ……ずっと一緒にいるってこと……証明してください」
 アティは少し恥ずかしそうにそう言って、その眼を伏せた。アティの照れた様子に、カイルは全てを理解した。
「いいのか?俺で……」
「カイルでないと……ダメです……」
 その言葉にカイルの心臓は高鳴っていく。ここまで来たら後には引けなかった。カイルはアティとずっと一緒にいると決めた。それを証明する。

「アティ……」
 カイルはアティの服に手をかける。少し服がはだけると、アティのその綺麗な肌が露出する。
「カイル……」
 アティがカイルの名前を呼ぶ。
「……私……汚れてしまっていますか?」
「そんなことないさ……すごく……綺麗だよ……お前は…」
「本当に?」
「ああ、本当だ」
 はだけた服のアティが、カイルにはまぶしく輝いているように見えた。
「だったら……このまま抱いて……ください……。じゃないと、私……ずっと汚れたままのような気がして……」
「アティ……」
「お願い……カイル……私を抱いて……。カイルに抱かれたら……私……少しは癒されるような気がするの……」
 そんなアティの訴えに、カイルは胸が痛む想いを感じる。
「いいのか?アティ……」
「うん……私……カイルに……抱かれたいから……」
「それじゃあ……」
 カイルはアティの服に手をかけ、優しくゆっくりと脱がせる。
「あっ……」
 思わず恥ずかしそうに声を上げるアティの身体から服を取ると、カイルはそのまま、下着姿のアティの身体をベッドの上に横たえた。
「カイル……」
 アティの瞳が真っ直ぐカイルを見つめてくる。カイルはその瞳に吸い込まれるように、アティの肌に触れた。
「んっ……あっ……」
 カイルの手が触れた途端、アティの口から甘い声が漏れる。その声にカイルの胸は高鳴る。アティのこんな声を聞くのも初めてだった。
「……アティ……?」
 カイルがアティに尋ねるような視線を送る。カイルの問いかけにアティは小さく頷いた。
「カイル……いいです……。カイルに触られると……何だか、すごく気持ちいいです……。だから……続けて……」
「ああ……」
 カイルはそう言うと、アティの胸を下着の上から触れる。
「あんっ……あっ……な、なにか……違う……」
「わ、わりぃ……」
「そ、そうじゃないの……カイルがいいの……。今まで、辱められたのと……全然違うの……。すごく……すごく、いい気持ち……」
 アティの言葉にカイルは複雑な心境になってしまった。
 カイルはアティを癒したかった。
 そして、それ以上にカイルは、今、アティを愛したかった。
「アティ……」
 カイルは優しくアティの乳房を布越しにまさぐりながら、その耳元で名前を呼んだ。
「あっ……ああっ……カイル……カイ、ル……」
 アティも自分の名前を呼び返してくれる。それがカイルには、すごく嬉しかった。
「出会ったころにさ、名前……呼んでもらったよな? 今は自然に俺の名前呼べている……。嬉しいぜ、アティ」
「……カイル……」
 今カイルは、アティをすごく感じたかった。アティの温もりを、どうしようもなく感じたかった。その為には、アティの身体の一部を覆っているものが邪魔だった。
「下着……とってもいいか?」
 思い切って問いかけたカイルの言葉に、アティは頬を紅く染めながら小さく頷く。
 カイルはまるで壊れ物にでも触れるかのように優しく、アティの身体から下着を脱がせていった。
「……は……恥ずかしいです」
 生まれたままの姿をカイルの前にさらしたアティは、消え入りそうな声でそう呟く。
「恥ずかしがることなんかないさ……お前の体……すごく綺麗だ……」
 アティの身体は、カイルの想像以上にか弱かった。
 船で出会った頃から、アティとは戦いのイメージが離れなかった。いつも前線にたって剣を振るうアティの姿をカイルは思い出した。
 最前線で孤独に戦うアティ……。
 それは碧の賢帝があったためもあるのだろう。
 だが、目の前のアティはどうしようもなく儚げな存在だった。
 俺は、こんな女を戦いの中に置いていたのか――。
 カイルの胸にそんな罪悪感と後悔が過ぎった。
「これからは……俺が必ず隣にいてやるよ……」
 カイルはそう呟くと、アティの首筋にキスをした。
「んっ……あっ、……あんっ……」
 キスに身悶えるアティの身体に、カイルは舌を這わせる。
 首筋から乳房へ……。
「あんっ……そこ……い、いいです……っ」
 乳房から、その先にある乳首へ……。
「……ひあっ!カイル……そこ、感じすぎちゃう……」
 乳首を先まで舐めてから、カイルの舌はお腹からヘソの辺りを丹念に舐めまわした。
「んっ、んんっ……カイル……そんなに……舐めないで……あぁぁ」
 身悶えるアティから舌を話すと、カイルは耳元で囁きかける。
「こうやって俺が綺麗にしてやるよ。お前が汚れてるって思ったなら……その汚れを全部……俺が消してやる」
「カイル……」
 カイルの言葉にアティの瞳から、一筋の涙が零れた。
 カイルはその涙を、指で拭ってやる。
「俺はお前の側にいるから……だからもう……泣くな」
 カイルがそう言うと、アティはしっかりと頷いて見せた。それを見たカイルは、アティの女の部分へと顔を近づけ、そこへ沿わせるように舌を動かす。
「あっ、ああっ……ダメ……カイル……そこ……汚い……」
「お前に汚いところなんてないさ、アティ」
 カイルはそう言うと、アティのそこに沿って何度も何度も舐め続けた。
「んんんっ……あんっ!あぁんっ!カイルっ!……カイルっ!」
 カイルの舌先がそこを舐め上げる度に、アティはビクンと身体を痙攣させる。そして奥からは、ネットリとした蜜が溢れ出してきた。
 カイルは浅く舌先を入れて、その蜜を音を立てて舐め取る。
「あっ、そんな……んんっ、あぁっ……」
 アティのそこは、カイルの舌が動く度に蠢く。
「はぁ……あんっ、あぁ……カ、カイル……」
 アティの甘えるような声に、カイルはだんだん興奮してくる。
 もっとアティの身体を感じたい。
 そんな思いが強くなって、カイルはアティの腰に顔を埋めたまま、両手を乳房へと伸ばした。
「あっ、ああっ、そ、そんなこと……されたら……んんんっ、あっ、あんっ」
 カイルは柔らかいアティの乳房をまさぐりながら、アティの女の部分に沿って舌を這わし続ける。その刺激にアティは、小刻みに身体を震わせて、時々ビクンと跳ねた。
「はぁんっ、あっ……あんっ……カイル……ダメ、です……。わ、私もう……おかしくなっちゃいますよぉ……」
 どこか切なげにそう呟いたアティの言葉に、カイルはゆっくりとそこから顔を離す。そして大きく膨らんでしまった性器をアティのそこへと押し当てながら、身体を重ねていった。
「いくぞ……アティ……」
 カイルはそう囁きかけると、アティの中に自分の性器を、ゆっくりと押し入れていく。
「んんんっ!あっ!ああぁぁぁ……」
「アティ……大丈夫か?痛いか?」
 声を上げたアティを気遣うようにカイルが尋ねると、アティは首を横に振った。
「だ、大丈夫……だから……お願い……つ、続けてください……」
「ああ……」
 カイルはできるだけゆっくりと、アティの中へと入っていく。
「あっ……ああっ、カイルが……私の中に……入って……ああっ」
 中の液がカイルの性器に絡みつき、アティのそこが優しく包み込んできた。
「お前の中……暖かいな……」
 思わず呟いたカイルの言葉に、アティの顔が真っ赤に染まる。
「そ、そんなこと……い、言わないでも……」
 恥ずかしそうにそう言ったアティが、カイルにはすごく可愛らしく思えた。
「アティ……動いても……いいか?」
 アティをもっと感じたくなったカイルは、耳元でそう囁きかける。するとアティは頬を紅く染めたまま、小さくコクリと頷いた。
「じゃあ……動くぞ」
 カイルはそう言うと、ゆっくりとアティの身体を求めるように、腰を動かし始める。
「……んんっ、あっ、あんっ、あぁんっ……」
 カイルの腰が前後する度に、アティの口から甘い声が漏れた。その声にカイルの心臓は鼓動を早めていく。
「アティ……本当に……大丈夫か?」
「う、うん……大丈夫……。それに……カイルに抱かれていると……すごく、安心できるの……。だから……このまま……つ、続けて……」
「わかった……」
 カイルはアティの言葉に頷くと、そのまま腰を前後させ続けた。
「んんんっ、あんっ、あっ……カイルの……す、すごく……あ、熱い……」
 カイルの性器を奥まで受け入れたアティが、震える唇でそう呟く。アティのきめの細かい肌は、徐々に赤みを帯びてきていた。
「アティ……」
 アティが自分を感じてくれている。そう思うとカイルは、どんどん熱くなっていった。そしてさらにアティを求めるように、腰の動きを速めていってしまう。
「あっ!はぁっ!だ、だめっ、声が……声……で、出ちゃう……っ」
 アティは恥ずかしさと快感の狭間で身悶え続けた。そんなアティの姿にカイルも興奮が高まって、どんどん腰の動きを激しくさせてしまう。
「あっ、ああっ……カイルのが……お、奥まで……きて……んんんっ、ああぁぁぁっ!」
 カイルの腰の動きが激しくなるにつれ、アティの口から漏れる喘ぎ声も、だんだん大きくなっていった。そして繋がった場所からはどんどん液が溢れ出して、湿った音を立て始める。
「あんっ、やっ、ああっ……こ、こんな……音……は、恥ずかしい……」
「恥ずかしがるなよ……アティ。……もっと……素直に俺を感じてくれよ……」
 カイルはそうアティに囁きかけながら、優しく髪を撫でた。
「カイル……私で、いいの? ……あなたと……初めてなのに……こんなに……感じちゃうのに……」
 少し寂しそうな表情を浮べながら、アティはカイルにそう尋ねてきた。
「バカ……俺もお前じゃなきゃ、ダメなんだよ……。……ったく……大胆なくせして、妙なところで神経質だよなお前は……」
 優しくそう答えたカイルは、アティの頬に軽くキスをする。
「あっ……カイル……」
 カイルの言葉に少し安心したのか、アティは潤んだ眼で見つめてきた。
「だから……素直に……俺を感じて……」
 そう囁いたカイルは、またアティの身体を求め、腰を動かし始める。
「……あっ、あんっ、ふあっ……カイル……」
 アティが甘い声を上げて身をよじる度に、カイルの性器を包み込んだそこがヒクヒクと痙攣した。そこが擦れるが、カイルに何ともいえない快感を与えてくる。その快感に突き動かされるように、カイルは何度も何度も腰を前後させた。
「ふあっ……カ、カイル……カイルっ!」
 アティはカイルの名を何度も呼びながら、身体を激しく痙攣させる。
「ア、アティっ……!」
 カイルもアティの名前を呼びながら、激しく求め続けた。
「んあっ!はあっ!ああっ!わ、私……もうっ!あああぁぁっ!!」
「お、俺も……二人……一緒に、な……うっ!くうっ!!」
 アティとカイルはほぼ同時に声を上げ、大きく身体を仰け反らせる。その瞬間、アティの中でカイルの思いがドクンドクンと脈打った。
「んっ……ふあっ……ああっ……カイルが……いっぱい……わ、私の中に……」
 注ぎ込まれる熱い感触に、アティは唇を震わせて身悶える。
「も、もっと……いっぱい……カイルので……私を満たして……あぁ……あぁぁぁぁ……」
 アティはそう言いながらカイルにしがみついてきた。
「アティ……」
 カイルもアティの身体を優しく包み込むように抱きしめる。
 そのまましばらくの間、アティとカイルは繋がったまま、互いの温もりを感じながら抱き合い続けていた。


おわり

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