孤島の極楽温泉ツアー 5



(覚悟しろ、肉棒船長……。次こそが――貴様の最後だっ!!)


 乱れた浴衣姿。薄暗い座敷。酒で朱を帯びた柔らかな肢体。
『今日は安全日だから……中で……』。
 その最高のシチュエーションに埋め尽くされた状況下で突然窓から現れたキュウマ。
 例によって絶頂間際に邪魔が入ってしまった事を嘆く暇もなく、カイルは二階から鼻血を流して落下したキュウマの様子を見るため、しぶしぶ下の階へと降りるハメになってしまった。
 ……のだが。

「よっしゃあ、一等!」
「すごーい!アニキ!」
 ……気がつけば、カイルはいまだ行われていた宴会の催し物に何食わぬ顔で参加していたのであった。
 景品は四つの集落から各々が集めてきた物で、日常生活でも非常に実用的だとか。
 廊下を通る際にたまたま彼らに声を掛けられた事が原因だったのだが、最初はしぶしぶ付き合っていたカイルも、いつしか仲間達とともに無我夢中でダーツを投げ続けていたらしい。
「おめでとうございます、カイル様」
「おうよ!で、一等の景品ってのは何なんだ?」
「景品と言っても……リペアセンターに置いてある物なので、それほど期待をなさられても困ってしまうのですが」
「いいよクノン!あたし達、役に立つ物なら何貰ったって嬉しいもん」
 クノンの言葉にソノラは笑顔で首を振る。
 クノンは安堵の表情を浮かべると、ルーレットの裏から何やら大きな袋を引きずり出してきた。
「何だこりゃ?すげえ量だな」
 思わずカイルは身を乗り出し、袋の口を手にとる。
「実用的ですので、多すぎても困る事はないかと思います。一年間は確実に補充の必要がありません」
「へぇ」
 期待に胸を膨らませながら、カイルは袋の紐を素早く解いた。
 一体この中には何が入っているのか?
 リペアセンターなら救急道具一年分なんてオチも考えられるが、先の海賊生活の事を考えればそういう景品も悪くはない。
 まさかラトリクスで拾ったネジや鉄板みたいなガラクタの山が詰まってて「修理道具一年分」とか言わないよな、と苦笑交じりに考えながらカイルは袋の中を覗きこんだ。

おむつ一年分

(いらねぇ――――――ッ!!!)

「ク、クノン。俺んトコの船には赤ん坊は乗ってねぇんだが……」
「ご安心下さい。これは大人用です」
「もっと使わねぇよ!!」
 ……迂闊だった。
 リペアセンターは島の外の世界で言えば病院のようなものだ。それならば当然こういった物も用意されている事くらい予想できただろうに。
 しかし、せっかくクノンがくれると言ってくれた物を素っ気無く断るほどカイルも冷淡な男ではない。
 いずれは使う時が来るだろう。幸い船には御意見番という立派な使用候補もいる。
 そう心でつぶやくと、カイルは冷えた笑みを浮かべながら震える両手で純白の排泄用下着を受け取った。
「ふっ……無理にこわばった表情をなさらなくてもよろしいのですよ?カイルさん。肉棒船長の異名を持つ貴方なら、それらの使い道くらい、いともた易く思いつくでしょうに」
 ――カイルにとっては耳に届くだけでも不快極まりない甘い声色が、嘲笑混じりの溜め息とともに囁かれる。
 振り返れば、浴衣姿の仲間達が並ぶなか、明らかに場違いとしか思えないようなバスローブ姿のフレイズがワイングラスを片手に微笑を浮かべていた。
 グラスの中に映り込んだ幾多のおむつを愛おしげに見つめ、深紅のワインをゆっくりと飲み干す。
「貴方の考えている事くらい予想できますよ。……例えば、貴方の愛しいアティさんにそのおむつを履いてもらうとか、はたまたベッドの上で無垢な幼子のようにあられもなく体を開いたアティさんに自らおむつを履かせてあげるとか、それどころか蛙のように醜く手足をおっ広げた貴方がアティさんにおむつを履かせてもらうとかっ!!おお汚らわしい!まさに低脳なオスザルの考えそうな事ですね!!」
「そりゃどこぞのエロ天使がたった今考えた事じゃねぇか!!」
 温泉から上がり「私の純白レースの下着が消えた」などと騒いだ後に、狭間の領域に飛び帰ったと聞いて安心していたのだが、どうもこの天使は女性達が大勢集まる機会には何があろうとも出席しなければ気がすまないらしい。
 女性陣の非難の眼差しすらフレイズにとっては甘美な味わいとして受け取れるらしく、恍惚とした面持ちで彼はなおもカイルに言葉を続けている。
「まったく……あのフレイズさんという方は、カイルさんを目の前にするとどうしてああも下品な堕天使へと化してしまうのでしょうね」
 黒く淀んだ瞳でフレイズを見つめるカイルを援護するかのように、部屋の隅でお茶をすすっていたヤードがふいにつぶやく。
 そんな彼の隣りで、湯上りの体をコキコキと鳴らしていたスカーレルは苦笑交じりに口を開いた。
「まあ、普段から紳士的な態度をとり続けてる彼からしてみれば、常に肉欲全開のカイルの行動は腹立たしくて目障りで羨ましくて仕方ないんでしょうね」
「それにしても、あの肉ぼ……いや、あの言い方は品性に欠けるにも程がありますよ。せめてもう少し柔らかい表現で、『陰茎船長』程度に」
「余計に生々しいわよ」


(やばい……調子に乗ってあいつらに付き合ってたら、随分時間が過ぎちまったみてぇだ)
 ダーツのついでに酒まで呷り、気がつけばカイルは朦朧とした赤い顔で薄暗い廊下を歩いていた。
 目指す先はもちろん、先ほどまで心身ともにとろける程アティと愛し合った宿泊部屋。
 今度こそは誰にも邪魔されずに、アティの中で思いっきり――。
 全身をまとう酒の熱とともに、湧きあがった欲望がカイルの下半身に火を灯す。
 先の期待に口の端をぴくぴくと震わせながら、彼女の部屋の戸にゆっくりと手をかけた。
「――待たせたな、アティ。……もう寝ちまったか?」
 部屋の中へ足を踏み入れる。だがアティは既に布団にくるまり、彼の反対側を向いて寝そべっていた。
 しかしカイルの言葉に、アティはふるふると首を横に振ってみせる。
「いえ……起きてます。早く、こっちに」
 背中を向けたまま、アティは小声で答え、手招きをする。
 その行動は普段の彼女をよく知るカイルにしてみれば若干の違和感を感じるものであったが、この状況においてそんな些細な事を気に止められる余裕など、カイルには毛の先程もありはしない。
「ははははっ、何だ、アティもやる気満々なんじゃねぇかよ」
 嬉々とした表情で、カイルは彼女のもとへと歩み寄る。
布団をめくり上げると彼はいそいそと中へ潜り込み、アティの体を背後から抱きしめた。
「っ……」
 一瞬ピクリと震えた気もするが、大した事ではないだろう。
 カイルは彼女の耳に口付けると、その体を更に引き寄せ、腕の中に包み込んだ。


「…………」
 その頃――。
 アズリアはただ黙り、息を潜めていた。
 刀を両手に握り締め、『機会』をうかがおうと全神経を集中させている。
 そんな彼女の体には、男の腕がまとわりついていた。
 浅黒く日焼けした、逞しい二の腕。
 
それは――まぎれもない、カイルの腕だった。

(ふ、ふふふっ……。肉棒船長の奴、赤いカツラをかぶっただけで私をアティと思い込むとは。やはり宴会であれほど酒を飲んでいただけあって、思考も鈍っているようだな)
 カイルが部屋に戻ってくるまでにアティとすり替わる作戦は見事に成功した。
 このまま事が順調に運べば、あの浜辺での一件以来胸に秘め続けていた野望を今夜こそ達成できるというものだ。
 彼女の野望、それは――。
(この男の忌まわしい生殖器を叩っ斬り、アティに二度とちょっかいを出せないようにしてやる事だ!!)
「くっ……くふふふ」
 顔を伏せたまま肩を小刻みに震わせる。
 これから自分を待ち受ける薔薇色の人生に、この男の姿はもはや存在しない。
 例えそこに居たとしても、それは恐らく、彼に似た逞しい肉体の『女海賊』であるはずなのだ。
「なぁに笑ってんだよ?アティ」
 その様子に、カイルは酒気を帯びた吐息で彼女の耳元に囁きかける。
「べ、別に……何でも」
 これまでのアズリアなら、酒臭いカイルの息などが顔に触れようものなら激怒した挙句に敵陣であるはずのラトリクスまで駆け込み、拝借した消毒液で顔を何度も洗っていた事だろう。
 しかし、今の彼女はカイルに対して、その程度では何ら怒りを覚える事はない。
 この男はどうせ今日限りで、長年付き合ってきた『男』という性別とオサラバする事になるのだ。
 この程度の事には目をつぶっておいてやろう。
 アズリアは一人ほくそ笑むと、抱えていた鞘から静かに刀を引き抜いた。
「…………」
 布団からわずかにそれが顔を覗かせる。
 月明かりに照らされた刀身は今宵の獲物を求め、濡れるように妖しく光っていた。
「それじゃあ、お楽しみの再開と致しますか……っと」
「ぁっ……!?」
 瞬間、柄を持つアズリアの指先がぴくりと震えた。

「ん……む……」

 ちゅ、と軽い音を立てながら、カイルの唇がアズリアの首筋を伝っていく。
(こ、コイツ、いきなり何をしてっ……!?)
 ぞくりとした肌寒さがキスと同時に背中を走り抜ける。
 カイルの唇の感触に、アズリアの体を一面の鳥肌が覆い尽くした。
『気持ち悪いぞ貴様ッ!!』
 ……などと言えるはずもなく、アズリアは唇を噛みしめて目を伏せる。
 駄目だ。ここで抵抗して自分の正体がバレてしまえば、すべての計画が水の泡となってしまう。
(そういえば……)
 女暗殺者というものは、獲物を仕留める前にまず相手を誘惑し、『コト』を済ませておく場合もあるらしい。
 そのほうが相手もこちらに対する警戒心をなくし、油断しているから――だとか。
(うろ覚え、だがな)
 それならば、その方法は今のこの状況においても有効といえる手段ではないだろうか。
 ……だがしかし。
「なに強張ってんだよ?アティ。……もっと楽にしろって」
 首筋にキスを繰り返していたカイルが、突然行為を中断する。
「え……」
 全身に悪寒は感じていたが、それほど身を縮めていたつもりはない。
 カイルはアズリアの腕を優しく撫でながら、再び口を開いた。
「こんなに体が硬くなっちまってるじゃねぇか。いつもはもっと……柔らかいのによ」
(――悪かったな筋肉質でッ!!)
 怒り任せに額へ浮き上がる青筋を鎮めようと、必死で平静を保つアズリア。
 ……もちろん、油断させる為とはいえこのような男に純潔をくれてやる気など彼女には毛頭ない。
 本番直前まで何とか耐えれば。
 しばらく体を思うように触らせてやりさえすれば、この男も簡単に気を抜き、仕留めるその瞬間もよりた易くなる事だろう。
 その為にはこの程度の辛抱――
「ふぁっ……!?」
 アズリアの腕を撫でていたカイルの手が、突然するりと彼女の浴衣の中へ潜り込む。
 カイルの思考を考えればまもなく目的の行為に移る事くらいは予想できたが、だからといってその行動に素早く対応できるほど彼女自身に余裕はなかった。
(お、落ち着くんだ。アズリア・レヴィノス!この程度が何だ。こんなもの、今までに経験した生死を賭けた戦いに比べれば……)
 歯を食いしばり、小さく深呼吸を繰り返す。
 だが狼狽するアズリアをよそに、無骨な手の感触は腹部へと進み、そのままゆっくりと上へ向かっていく。
 ――もしや。
「ま、待っ……!」
 危険を察知したアズリアはとっさに片腕で自身の胸を覆う。
 すると予想通り、カイルの手は彼女の腕へぴたりと触れた。
「おい?腕、どけてくれねぇか。胸が揉めねえ」
 できるわけがない。
 胸を触らせれば最後。
 ……一発で正体がバレる。
(いくらこの馬鹿でも、私のAカップの胸とアティのDカップの胸の違いくらい、触ればすぐに分かるだろうからなっ……)
 冷や汗交じりに無言で首を横に振るアズリア。
 その様子にカイルは不満気に唸るが、直後その顔に不敵な笑みが浮かんだ。
「それじゃあ、こっちのほうを触らせてもらうぜ」
「えっ……!?」
 彼の手は胸から離れ、今度は下へと滑り降りていく。
 向かう先はいまだ誰一人として触れた事のない、アズリアの――。
(っ!!)
 途端にその目は大きく見開き、動揺と羞恥に紅潮した。
 カイルの手は確実に彼女の下半身へと伸び、そこを覆う薄い下着をくぐり抜けていく。
 アズリアの鞘を持つ腕がそれに抵抗しようと僅かに動く。
 だが、これ以上彼の愛撫を邪魔すれば、自分の行動を怪しまれる事になるだろう。
 まだだ。まだ時は満ちていない。ここは耐えてみせねば。
(が、我慢だ……!)
 手首まですっかり下着の中に潜り込んだカイルの手は、そのまま指先で恥部を覆う茂みをなぞっていく。
 恥毛の柔らかな感触を楽しみながら、その指先は何かを捜し求めるように奥へと進んでいった。
 やがて彼の人差し指に触れたのは、女性が恥部に持つ最も敏感な突起。
 カイルはそれを軽く摘む。
「ぁっ……」
 そこに与えられる優しくも強い刺激に、無意識にアズリアの口からは甘い声が漏れる。
 慌てて口を閉じるも、その声を当然の如く耳にしたカイルは満足げに笑う声を押し殺し、慣れた仕草で愛撫を続けた。
「待っ……、ん、あぅ……!!」
 突起を指先で擦るように撫でられるたび、その動きに応じてアズリアの口からは押さえようのない嬌声が上がる。
 同時に背筋をぞくりとした奇妙な感覚が走り抜け、無意識に身をよじらせていた。
 ……おかしい、この男にこんな場所を弄ばれているのに。
 嫌悪を抱いていた体は、いつの間にか秘所を這う彼の指先にその快楽を求めている。
「そんなに気持ちいいのか?ここを触っただけで、やけにイイ声出すなぁ」
 そう言ってカイルは体を強張らせるアズリアを横抱きのまま、背後から更に強く抱き締めた。
 密着する逞しい男の体。背中越しに感じる鼓動は、彼自身の興奮を直にアズリアの身へ伝え掛けるようだ。
 彼女の体を抱き締める腕は想像以上に硬く、そして強い。
 頬に触れるカイルの吐息。
 下着の中で愛撫を続けながらも彼の舌はアズリアの首筋を這い、音を立てて熱い口付けを何度も落とした。
(な……何を、やってるんだ私は……!?この男のペースに流されてどうする!!)
 潤んだ瞳で呼吸を整え、必死に正気を保とうと試みるアズリア。
 駄目だ。このままでは一方的に体を弄ばれるだけじゃないか。
 アズリアは唇を噛み、鞘を持つ手に力を込める――が。
「じゃあそろそろ、こっちのほうも慣らしとくか?もう充分濡れてるみてぇだし、必要ないかもしれねえけどな」
「え」
 直後、閉ざされた彼女の濡れた花弁をカイルの指がぱくりと開いた。
 開かれた秘所にもう一本の指が押し当てられる。
 くちゅ、と愛液の湿った音が耳に届くと同時に、
(そ、そこはっ!)
 僅かな抵抗感をともない、カイルの指がアズリアの中へと侵入を始めようとしていた。
 男を知らない場所と言えど、充分に濡れたそこは多少の異物を受け入れるくらいは何ら困難な事ではない。
 しかし、それでも未開通である膣内はカイルの指を拒むかのように強く締め付け、アズリア自身にも慣れぬ苦痛を与える事には変わりなかった。
「う……くっ……」
 挿入を繰り返されるたびにアズリアの秘所からは水音が漏れる。
 鈍い痛みに混ざり、仄かに甘い快楽が身を包み込む。
「…………」
 ――初めての感覚だった。
 軍人として生きる道を選んだ時から、女として平凡な日常を穏便に生きる事はすでに諦めていた。
 誰かの妻になるという夢を持つ事など考えてはいなかったし、まして男とこういった行為を行う事もないまま一生を終えるかもしれないと考えた事もあった。
 軍の中では影で一部の部下達がそういった陰口を叩いている事も気づいていたし、それを自分がまったく気に留めた事がないと言えば嘘になるのも事実だった。
(このまま……生娘のままでいるくらいなら、いっその事正体を明かさずに抱かれてしまうのも悪くはないかもしれないな……)
 一度男を知ってしまえば、処女だ何だと影で嘲笑する部下の言葉を逐一気に留める必要もないし、ギャレオにそれらの事で気を遣わせる事もなくなる。
「は……」
 膣内に沈むカイルの指先をたどり、静かに彼の手へ自身の手を重ねる。
 そうだ。
 ここで男を知ってしまえば、アティへの想いも断ち切ることができるかもしれな……。
 …………。
(待てよ。ここでこいつに抱かれた場合、私とアティは同じ男に抱かれたという事になる)
 それはつまり――。
(穴兄弟ならぬ、棒姉妹!?)
 ……アズリアの額を一筋の汗が伝う。
 それは快楽による体温の上昇から来たものではなかった。
 火照っていた体は徐々にその熱を無くし、愛撫の心地よさにすっかり淀んでいた思考は冴え始める。
(……よく考えれば、この男は私の最愛のアティを横取りした奴じゃないか。
恋敵の男に何故、この私までもが抱かれなければならんのだ!……第一、それに)
「?どうした、アティ――ぐふっ!!?」
 カイルが依然顔を背けたままの彼女を覗き込もうとした直後――その腹に鋭い衝撃が走った。
 俯けば、硬い棒のような物が鳩尾に容赦なく食い込んでいる。
 いきなり何を、と上向いた瞬間、
「ぐえっ!!」
 更に顔面を拳で強打された。
「っ……!!な、何だってんだいきなり!?」
 布団から転げ出し、鼻からこぼれ落ちる鮮血を手の平に受け止めながら、混乱した面持ちで目の前の彼女を見据える。
 ――同時に、その体が凍りついたのは言うまでもなかった。
 
「…………調子に乗るなよ貴様。さっきまであれほど欲望を発散させておいて、この期に及んでまだアティを求めるか?しかも……これだけ人の体を触りまくっていたら、いい加減相手が自分の女じゃない事ぐらい気づけ!!!」

 ぎらりと視界を照らす銀の光。
 乱れた髪と浴衣は女性としての色香を帯びた妖しさとは打って変わり、今の状況においてはただ怪しさしか見受けられない。
 刀をカイルに突きつける女――アズリア・レヴィノス。
 突然の事に状況が飲み込めず、鼻血を垂らしながら彼女を見上げるカイル。
 猿に睨まれた肉棒。
 平和な集落での一夜、そこに一触即発の戦況が生まれようとしていた。


 そしてその頃。
「キュウマさーん。そんなとこで寝てたら風邪ひきますよー!ほら、スバルも言ってあげないと!」
「大丈夫だって。パナシェは心配性だなあ。キュウマはシノビなんだぞ?夜も頑張って忍術の練習してるんだよ」
「あ……そうか。それじゃあ邪魔しちゃ悪いよね。僕達は中に戻ろうか」
 草むらに忍ぶ一人の男。彼の体はうつ伏せのまま、微動だにしない。
 その顔は、何故か鼻を血で濡らしたまま極上の笑みを浮かべていた……。


つづく

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