孤島の極楽温泉ツアー 3



 温泉から出た後、アティ達はオウキーニの振る舞ってくれた料理を囲み、賑やかな宴会をおこなっていた。
 浴衣姿での宴会は、まさに旅行気分のものだ。
 その場にはなぜか敵であるアズリアとギャレオも半ば強制的に参加させられていたのだが、ギャレオはともかく酒の入ったアズリアはその暴走ぶりもいつにも増して凄まじく、大声で軍歌を歌いだし、更にはギャレオの腹に顔を描き、腹踊りを命令したりと散々な状態であった。
「あはははっ……もう、アズリアったら、あんなにはしゃいで」
 アティはそんな彼女を見ながら、ジュースを片手に楽しげに微笑んでいる。
「ま、日頃の疲れやストレスくらいはこういう場所で発散させなきゃな」
 そう言いながら盃を口に運ぶカイルは、現時点で一体何本目の酒を飲んでいるのだろう。彼の目の前には六本もの銚子が転がっており、隣りで一緒に盛り上がっているスカーレルが彼についでいる酒の数も含めれば……。
 指折り数えていたアティのほうが、想像で酔いそうになってしまう。
「カイルさんがお酒に強いのは知ってますけど……気持ち悪くならないんですか?」
「ああ、何だかちょっと気持ちよくなってきたかな〜ってくらいだな、今んトコ」
 頬をかすかに赤らめながら上機嫌に答えるカイル。すると彼はアティの手元にあった盃を手にし、スカーレルの持っていた銚子を取りあげた。
「あ、ちょっとカイル。何すんの」
「ったく先生は!こんな時まで遠慮すんなっての。みんな盛り上がってんだからよ、思いっきりハメ外そうぜ?」
 そう言うなりカイルは盃にトクトクと酒をついでいく。温められたシルターン風の酒。その程度の量でも湯気とともに舞い上がる匂いは、酒に弱い者にとっては少々きついものがある。
 以前ゲンジがこの酒を、彼の故郷である『ニッポン』で作られているものと味がよく似ていると言っていた。
 帝国でも人に勧められて口にした事はあるが、アティはこの酒をあまり好きではなかった。
「う……」
 笑顔で突き出される盃。……何だか前にもこんな事があった気がする。
「センセ、このバカに無理して合わせなくてもいいのよ」
 アティの困った表情を見落とさなかったスカーレルが、呆れたようにカイルを流し目で見ながら言う。
 だがアティは慌てて首を横に振り、カイルの手から盃を受け取った。
「べ、別に無理なんてしてませんよっ?いただきます!」
 無言でスカーレルが肩をすくめる傍ら、アティは盃を満たす酒に視線を落とす。
 ……冷えたままなら何とか飲める事もできるだろうが、熱気を帯びたその酒は、顔を近づけると強い匂いが鼻を突く。
 アティはしばらくためらっていたが、決心して目をつむると盃の縁に口をつけ、ぐいっと一気にあおった。
「……はぁっ……」
 喉を通り抜けた酒に、まるで胸が火を灯したかのように熱を持ち始める。不味いというわけではないが、飲んだ後はどうも気分が悪くなってしまう。
 盃をひざに置いたままうつむくアティを目にし、カイルは慌てて彼女の顔を覗き込んだ。
「あ……わりぃ、先生。このくらいの量でもちょっとキツかったか?」
「ううん、大丈夫です。あはは……きゃあっ!」
 赤らんだ顔で笑顔を浮かべるアティ。その時突然、彼女の背後に何かが覆い被さった。勢いで畳に突っ伏しながらも、アティは背中にのしかかったものを確認しようと首だけを振り向かせてみると。
「アティィ〜ッ!この馬鹿男の酒を飲むなら、私の酒も飲めぇ!!」
「ア、アズリア!」
 顔を真っ赤に染めたアズリアが、ろれつの回らない口調で銚子をアティの頬にピタピタと押し当てる。
 ……その息はむせ返るような酒の匂いだ。
「あの、でも私、今ので充分……」
「なにぃ!?こいつの酒は飲めて、私の酒は飲めんというのか!?」
 その姿はまるでどこぞの口うるさい身勝手な上司のようだ。ある意味間違ってはいないが。
 アティは酔っ払った彼女から逃れようと、その部下のギャレオに視線を向けるが、彼は触らぬ神に祟りなし、とでもいうように目を伏せて黙々と酒を飲んでいる。
 ここで断れば、アズリアは酔った勢いで取り返しのつかないような暴走ぶりを自分達に見せるつもりなのかもしれない。
 アティはしばらく唸ると、やがて小さく息を吐いた。
「わかりました。貴女のお酒も飲みますから――」
「よし飲め!たらふく飲め!」
「ぶふっ!!」
 言うなりアズリアは銚子をアティの口の中に押し込み、その中身を彼女の口内に勢いよく流し込んでいく。
 飲み込まざるをえない状況に、アティはそれらを強制的にすべて飲み干すはめになってしまった。
「お、おい!ムチャクチャすんじゃねぇよ!」
「はははははっあはっあっははははは」
 けたたましい笑い声で畳を転がるアズリアは、すでに軍人としての面影を残してはいない。……カイルは今後どんな機会があろうとも、この女にだけは酒は与えまいと心に誓っていた。
「……うぅ……っ」
 ますます酔いが激しくなってきたアティは、口元を押さえながらよろよろと立ち上がる。
「大丈夫?センセ」
 このアティ萌えバカコンビに付き合うからこんな事になるのよ、とでも言いたげな顔でスカーレルはアティの体を支える。アティは苦笑しながら礼を言うと、眉をひそめて額を押さえた。
「ごめんなさい……、部屋でちょっと休んできます」
「おい先生、もう行くのか?」
 戸を開けて廊下に出ようとするアティに、慌ててカイルは立ち上がり、彼女の肩を掴む。
 そもそも自分が彼女に酒を勧めたせいでこうなってしまったのだ。アズリアのそばでカイルがアティに酒を飲ませていて、それを黙って見過ごすアズリアではない事くらい分かっていたのに。
 このまま部屋に戻っていくアティを酒を片手に見送れるほど、カイルも無神経な男ではない。
「わかった、俺が先生を部屋まで送ってくよ。そんなフラついた足で歩いてちゃ、いつ転んでもおかしくねぇからな。……えーっと、客室は上の部屋だったか」
 アティの片手を掴んで隣りを歩くカイルに、彼女は赤らんだままの頬ですみませんと言う。
「そんじゃあ部屋に――」
 その時カイルの肩を、背後から掴みかかる者が。
 ――もしやアズリアか。
 カイルが恐る恐る振り返ると……そこにいるのはしかめっ面で彼を見るスカーレルの姿があった。
「なんだ、お前か……」
 ホッと息をつく彼にスカーレルは呆れたように目を伏せると、カイルの耳元に口を近づける。
「……宴会でハメ外すのは勝手だけどね、センセの部屋でまで外しまくるんじゃないわよ。彼女、酔ってるんだから」
「……わ、わかってらぁ」


「ふぅ……」
 割り当てられた彼女の部屋にたどり着き、カイルはアティを座布団の上に座らせると、自分もそのまま畳の上に胡座をかいて座り込んだ。
 アティはいまだに赤らんだ顔のまま、ぼんやりとした面持ちで畳を見つめている。
「まだ気分悪いか?」
「ん……まだちょっと」
 熱を持った頬を押さえるアティ。カイルは宴会場を出る際にスカーレルに持たされた、濡らしたタオルを彼女の頬にそっと当てる。
「…………」
 しばらく二人のあいだに沈黙が続く。
 何か言わなければ。カイルがそう思った矢先、アティが口を開いた。
「あの……やっと、二人っきりになれましたね。今日は朝からずっとみんなといましたから」
「ああ、そうだな。そういえば」
「温泉も男女別でしたしね。せっかくだから、カイルさんと一緒にのんびり浸かりたかったなって思ってたんですけど」
 その言葉にカイルの頬が赤らむ。
 カイル自身も彼女と同じ思いを抱いていたのだが、まさか自分がのんびりどころか温泉の中で男女の楽しみを期待していたなどとは口が裂けても言えない。ただ相槌を打ちながら照れ笑いを浮かべる。
 すると彼の肩に、ふわりと心地のよいものが重なった。
 ――アティの髪の毛だ。
 アティはうっすらと目を開け、酒の酔いに頬を染めながらトロンとした眼差しでカイルを見上げている。
「あはは……どうしてでしょう?お酒は苦手だったのに、酔うと何だか気分が舞い上がっちゃって」
 そう言って彼の片腕に自分の二の腕を絡めると、アティはぽすんと頭をカイルの胸に預け、その身をもたれ掛けた。
 酒が原因か、カイルに触れる彼女の体は熱を帯びている。お互いに浴衣姿という事もあってか、肌に感じる相手の体温はいつも以上にはっきりと感じ取る事ができる。
 ……もちろん、その鼓動も。
「……ドキドキしてますよ?カイルさん」
 胸に顔をうずめたまま、アティは鼓動を高鳴らせる彼の顔を、視線だけを向けて見上げた。
 当たり前だろうが。カイルはそんな彼女を同様に視線で見下ろしながら内心つぶやく。
 部屋に二人っきり、恋人の熱い柔肌を体に感じながら興奮しない男など、この世にいるわけがない。
 それに。
「…………」
 彼女の崩れた襟元から覗く、豊満な胸の谷間。
 酔いでほのかに朱を帯びた、柔らかなふたつの山が寄り合う光景。
 ……今すぐにでも見たい。揉みたい。そして吸いたい。
 徐々にカイルの中から、もやもやとした淫らな感情が湧きあがっていく。
 カイルはそっと手を差し出すと、アティの髪を撫でた。彼の手の動きと同時に、シャンプーの香りが鼻をくすぐる。
 優しく、どことなく甘い香り。
 確かユクレス村の果実を使い、ラトリクスで作ったものなのだとクノンが言っていた気がする。
「……どうしたんですか?」
 何も言わずただ赤い髪を触るカイルに、アティは首をかしげる。
 カイルはその言葉に笑みを浮かべると、髪を撫でていた手を彼女の頬へ向けてゆっくりと滑らせた。
 アティの柔らかい頬は火照り、潤っている。
「いや、な。温泉で二人でゆっくりできなかった分、しばらくここでお前とゆっくりしていこうか……と」
 そう言うと同時に、アティの顔をふっと影が覆う。
 ――柔らかいが、かさついた感触。
「んっ……」
 カイルの唇が、アティのそれに優しく重ねられる。
 突然の事にアティは一瞬驚いたように目を大きく開いたが、やがて唇を味わうように深く重ねられ、時折放しては再び吸われる心地よさに目を細めていく。

「は……」
 ようやくお互いの唇を離すと、アティは気恥ずかしさに頬を染めながら、酒の味が残る自分の口を押さえ込んだ。
「ほ、ホントにいきなりなんですからっ……」
「ははは、わりい。どうやら俺もちょっと酔いがまわってきたみたいだな」
「ウソでしょう。カイルさんはお酒に強いじゃないですか」
 それはそうなんだが、と苦笑するカイル。
 だが酔っているという彼の言葉はウソではなかった。
 アティに密かに想いを寄せていた頃、彼女と顔を合わせるときにはよく酒を飲んでは緊張を解きほぐそうとしていたのだが、どれだけ飲んでも彼は酒に酔う事ができなかった。
 あの時は自分が酒に強いからだとばかり思っていたのだが、今考えれば、あれは酔わなかったのではなく、酔う事ができなかったのではないか。
 緊張のあまり酒を楽しむ事のできなかった自分が、今はその美味さに酔いしれている。
 それはきっと自分がアティと心を通じ合えたからなのだろうと、カイルはそう思えた。
 ……それならば、今は自分の意志を、その『酔いの勢い』とやらに任せてみるのもいいかもしれない。
 カイルはアティの肩を掴んで引き寄せると、彼女の耳元に口を近づけた。
「……なあ、アティ。せっかくだし、宴会が終わるまで俺達はここで、しばらく二人っきりで楽しもうぜ?」
「え?ここで、って言っても、ここには何も――」
 そう言いかけた時、アティの表情がわずかに止まる。
 ――浴衣の内側から太ももを撫でる、温かくて大きな感触。
 それが何か気づいた時、アティの頬が一気に紅潮した。
「カ、カイルさんッ!?」
 いつのまにやらカイルの手はアティの浴衣の中へと忍び込み、彼女のなめらかな太ももをまさぐっていた。
 以前ミスミにご馳走してもらった『餅』という食べ物に勝るとも劣らない肌触りと感触。
 酔いがまわって彼女の体が火照っていた事も相成って、その太ももは手に吸い付くようであまりにも気持ちがいい。
 真っ赤になりながらうろたえるアティの襟元を掴むと、彼は更にそれを左右へ開く。
「あ、あのあのっ……」
 広がった襟元から、薄いピンク色のブラジャーに包まれた胸が顔を覗かせる。そのフロントホックを外そうと伸ばしたカイルの手を、アティは慌てて掴んだ。
「……ま、待ってください。いきなり……あの、そういう事は」
「いきなりじゃなければいいのか?」
 アティの言葉を遮り、カイルが口を挟む。
「そ、そうです。こういう事は、ちゃんとムードのある時にっ」
「俺ら、さっきまで充分ムードあったと思うんだがなぁ」
 そう言って冗談めかして自分の唇をトントンと指すカイルに、アティは先ほど交わした口付けを思い出し、思わず顔を赤らめる。
 確かに雰囲気はあるといえばあるのだが、何といっても今はお互いに酒が入り、軽く酔いの混ざった状態にある。そんな時におこなう『行為』に、彼女の望むようなムードというものが果たして当てはまるのだろうか。
「でも、やっぱりちょっと……」
 アティは困ったように微笑むと、カイルの手を胸から放し、彼から少し体を離そうと後ろへ振り返った。
 しかし。
「――ダメだぜ」
 背後からカイルの手が伸び、ぐい、とアティの体を抱きすくめる。
「ちょっ……カイルさんっ?」
 アティの耳に彼の吐息がかかる。酒の匂いが混ざった呼吸とともに、カイルは言葉を続けた。
「ホントに嫌ならやめとくけどよ。せっかく珍しく酔っ払ったお前を抱けるチャンスを、みすみす見逃すほど俺は甘くねぇぞ」
 カイルの中では、酒と性欲は一体と化しているのだろうか。酔い心地にまかせた彼の行動はいつも以上に積極的――というよりも強引だ。
 アティの腰を抱く腕を彼女の胸の方へと持っていくと、彼は指をそのままブラジャーの中へ差し込む。指先を撫でるように胸に這わせ、アティが思わず声を漏らすと、カイルはブラジャーのホックに再び指をかけた。
「あっ……」
 途端にブラジャーの正面は頼りなく開き、その中からアティの丸い乳房がぷるんとこぼれ出る。外したブラジャーを畳の上に置くと、カイルは両手を彼女の浴衣の中へと滑り込ませた。
「んふっ……ぅ……!」
 アティの前で交差した彼の手が、浴衣の中で彼女のふたつの乳房を押し上げるように揉みしだき始める。欲望に準じたように動く彼の手はいつもと同じく温かいが、その手に余るアティの乳房――もといその体は、それ以上に熱を帯び、与えられる愛撫に快楽の震えを起こしている。
「カイ……ル、さん。それ以上はっ……」
 息も絶え絶えに、アティは自身の浴衣の中で動くカイルの手を取り払おうと、彼の腕を掴む。しかしその力はあまりにも弱く、払うどころかまともに掴む事すらできていない。
 カイルは荒々しくも優しく愛撫しながら指先で胸の中心をたどり、乳首を探り当てる。すでに硬く尖った先端を左右同時につまみ上げると、アティの背筋がわずかに反った。
 その反応を楽しむように、彼はアティのうなじに唇を這わせ、音を立てて口付けていく。
「やっ……やだ……」
 目元を赤らめ、身をよじるアティの顔を、カイルは後ろから覗き込む。目が合うと、彼は確信的な意地の悪い笑みを浮かべた。
「まあ、アティがそこまで嫌だってんなら今すぐにでもやめるぜ」
「ぅ……」
 分かっているくせに。
 恥ずかしさのあまり無意識に口から拒否の言葉を漏らした時は、いつもそう言って行為を中断しようとする。
 これまでにも何度か体を重ね、その性感帯を知り尽くした彼の愛撫をアティが拒むはずがない事ぐらいカイルは当然分かっている。
 ……だからこそ、彼はあえて言っているのだが。
 どうする?と笑顔で尋ねるカイルに、アティは紅潮しながら目を伏せると、震えるような吐息を静かに漏らしながら小声で答えた。
「……つ、続けて……ください」
 羞恥をこらえたアティの返答に、カイルは満足気に頷くと、乳房を弄んでいた片方の手をそこから抜き取る。その手をそのまま彼女の下半身のほうへ滑らせ、腰の帯はほどかずに浴衣の裾をたくし上げた。
 ――眩しいほどに白い太もも。細いが程よく肉のついたアティの足は、カイルのやや無骨な手とは正反対の印象を受ける。
「じゃあ、遠慮なく」
 カイルの言葉と同時に、体を更に背後から抱きしめるように引き寄せられる。片手で乳房を撫でながら、もう片方の手はアティのピンク色のショーツをくぐり、内側へと侵入していった。

「んっ……!」
 薄い茂みを指先で掻き分け、彼の指が陰唇の淵をなぞっていく。
 すでに潤っていたアティの秘部からは愛液が滲み、前後に動くカイルの中指に粘りながら絡んでいく。
「何か……えらく濡れてるな。酔うと感じやすくなるタイプなのか?」
「し、知りませんよそんな……あっ……」
 慌てて首を振るアティの言葉を、カイルの行為がさえぎった。
 二本の指が同時に膣内へうずまっていく。狭いために挿入の抵抗感はあるが、濡れた肉壁はそれを奥へ誘うように包み込み、飲み込んでいく。
 内側に広がる快楽にアティは折っていた足をよじり、片膝を立てた。足先が握り拳を作るように丸まった様子が、彼女の体の昂ぶりをあらわしていて面白い。
 胸の中心の肉を親指と中指でつまみ、ぷっくりと突き出た乳首を人差し指でくりくりと弄ぶたびに、アティの口からは甘い吐息が絶え間なく漏れる。
「はぁっ……、ん……。カイルさん、そんな、あんまり……」
 動かさないで、と反射的に言いかけた口をアティは慌てて閉ざす。そう言えばまたカイルは意地悪く止めてみせるのだろう。
 カイルが指を膣内へと沈めるたびに、そこは淫らな音を立て、愛液を溢れさせていく。痙攣する膣肉は、指を抜こうとすると追い求めるように絡みついた。
 手をショーツに差し込んだままその布地を浮かせると、薄暗いショーツの中、愛液で濡れた自身の手がカイルの視界に映りこむ。
「ん……酔っただけで、いつも以上の感度だな。これからは俺の部屋に来た時は、事前に一杯やっとくか?」
「お、お酒ばっかり飲むのは体によくありませんよっ」
「はははっ。そんじゃあ、酒を飲む以外でもっと気持ちよくなれる方法を教えてくれよ、先生?」
 そう言ってカイルは指を引き抜くと、彼女の充血したクリトリスを軽くつまみ上げた。
「ひぁッ……!」
 その刺激に、アティは悲鳴にも似た嬌声をあげ、体を跳ねる。
「もっと気持ちよくなれる方法って、他にねぇかなあ」
 二本の指の間で転がすようにクリトリスを押しながら、カイルはアティの耳元で囁くように尋ねる。そのままもう一方の手で、閉じようとする彼女の太ももを開かせた。

 カイルの巧みな指の動きに、アティの体はますます熱を帯びていく。もっとも敏感な部分に与えられる刺激は、彼女にとってあまりにも強すぎた。
「そ……んな事しなくても、充分っ……あぁッ……!」
 その時アティは一際大きく体を震わせ、背筋を痙攣させた。
 熱のこもった弱々しい息を吐きながら、彼女は全身の力が抜けたように、ぐったりとカイルの胸に体重をかける。
「……はぁ……」
 恍惚としたうつろな眼差しをカイルに向け、アティはカイルの胸からずるずると後頭部をずり下ろしていく。
 そんなアティを上から覗き込み、カイルは彼女の顎に手を添えて上向かせた。
「ひょっとして、もうイッたのか?」
「ッ!!」
 カイルの言葉に、アティは顔から湯気を立ち上らせそうなほどに頬を紅潮させる。
 その時、体を下へずらした拍子に、彼女の背後に何かが当たった。
 ……これは、もしかして。
「俺のこっちのほうは、まだ出番待ちなんだが……」
「あっ……わわわっ!」
 当たっていたものが何か気づき、アティは慌てて身を起こす。だが上半身を起き上がらせた所で、カイルは再びアティの体を抱きすくめた。
 アティの腰の後ろ辺りに彼の下半身の昂ぶりが押し当てられるが、本人は知ってか知らずか、更にアティを抱き寄せる。
「これだけ濡れてるんだし、もう大丈夫だよな。アティ?」
「え……えっと……」
 何が、と言わずとも分かっている。さんざん愛撫を受けておいて、それで終わりなわけがない。
 腰に触れる、熱を帯びた硬いものが求めているもの。
 それは……。
「じらさないでくれよ。俺のほうもそろそろ限界がきてるんでな。ぶっちゃけた話、早いトコやっちまいてぇんだ」
「あ、う……」
 そう言って突然アティのショーツに手をかけるカイルに、アティは顔を赤らめたまま振り返る。
 彼は自らの性欲旺盛ぶりに苦笑していたが、その荒い息遣いはどうにも抑える事ができないようだ。心なしか、さきほど以上に彼の体温は上昇している。
 確かにここまでしておいて拒むのも彼が気の毒だし、拒む理由もない。恥ずかしいという気持ちも、今まで何度も行為をおこなってきた彼女にとってはもうどうしようもないものだ。
 アティは目蓋を薄く伏せると、強張らせていた体から力を抜き、こくりと頷いてみせた。
「わ、わかりました」
「おう。それじゃあ……さっそく」
 カイルはアティの腰を浮かせると、彼女のショーツを太ももの中ほどまで下ろしていく。途中で愛液が弧を描くように、離れていく秘部とのあいだで糸を引いた。
 ここまで濡れていたのかと、アティは思わず赤面する。
 背後で布擦れの音が聞こえ、彼が自身の浴衣の帯をほどいているのだという事に気づき、アティの鼓動が早まっていく。
「いくぞ?アティ」
 そう言ってカイルは彼女の腰を抱き上げると、その体を膝の上へと乗せた。てっきり仰向けに寝かされるものだと思っていたのだが、その行動にアティは目を丸くする。
「あの、カイルさん?こんな格好じゃ、そういうコトはできないような……」
「いや、このままやる」
 言うなり彼はアティを抱きしめたまま前かがみになる。そしてアティの腰と太ももの裏を掴み、彼女の背中に体を密着させた。
 同時に濡れた蕾に、カイルの硬い熱があてがわれる。
「あっ……」
 反応したアティの口から吐息混じりの声が漏れる。
 ぐぐ、と先端を押し込むと、愛液で濡れそぼった花弁はそれを受け入れ、膣内へと飲み込んでいった。
「んっ……くぅ……」
 カイルが体内へ入り込んでくる感覚にアティは目を細め、畳の上で拳を握り締める。
 ゆっくりと亀頭を包み込んでいくアティの熱い肉壁の感触を確かめると、カイルは両手を彼女の左右の太ももの裏へまわした。
 そのまま体を抱き抱えると、前倒しにしていた体を彼女ごと一気に後ろに引いてみせる。
 ちょうどカイルの腰の真上に乗ったアティは、彼と繋がった状態のままだ。
 カイルが抱えていた太ももから力を抜くと、アティの体は彼の中心に向けてみるみる下がっていった。
「ちょ、カイルさんっ……!……うっ……」
 アティの体が下に向かっていく事で、カイルのペニスは彼女の膣にみるみる沈んでいく。この体勢では体を起こす事も引く事もできないため、アティは逃れられない痛みに眉を歪めた。

「辛いか?アティ」
 根元まで飲み込み、わずかにうめいたアティにカイルは顔を覗き込みながら尋ねる。
 行為そのものは慣れてきてはいるが、やはり急に挿入されて快楽を感じるほど彼女の体はセックスに溺れてはいない。
 だがアティは首を横に振ると、荒い呼吸を交えながら笑顔を作ってみせた。
「ちょっと、キツイですけど……しばらくすれば慣れると思います」
「や、痛いならいつもの体勢でもいいんだが……」
「……だってカイルさん、この格好でやってみたかったんでしょ?」
「…………そうだけどよ」
 そう言われてカイルは困ったように頬を赤らめる。
「私、結構丈夫ですから。……ちょっとぐらい痛くても平気です」
「……まあ、それならお言葉に甘えて」
 カイルは再びアティの太ももの根元を掴むと、ゆっくりと彼女の腰を持ち上げ、突き上げる。アティもそれに合わせて腰を動かし、なるべく痛みを感じる事のないよう、自身で受け入れる角度を探し当てる事にした。
「ッ……、は……」
 静かな部屋に、くちくちと男女の濡れた性器の擦れ合う音だけが響いている。その音と同時に酒と愛液の混ざった匂いが鼻をくすぐり、二人の興奮を無意識に高めていった。
 いつしかアティも、カイルを受け入れていくうちに自分が心地よいと思える角度を見つけたようだ。息を荒げながらも頬を染め、艶かしく腰を動かしている。
 カイルもそれに合わせ、片手を彼女の腰に添えた状態で、上下に揺れる乳房を愛撫する。アティの赤くなった耳たぶを唇で咥えると、やはり色の通りにとても熱い。お互いの繋がっている部分に指を滑らせると、カイルに貫かれている膣からは、畳に小さな水溜りを作るほどの愛液が溢れ出していた。
「あっ……カイルさんっ、私、もう……はぁっ……」
「んッ、俺もそろそろ……」
 ますます締め付けてくるアティの膣をもう少し楽しみたいと思う気持ちはやまやまだが、このまま引き抜くのをもったいぶって、膣内で射精してしまってはさすがに困る。
 そろそろ限界だろう、とカイルがアティの腰を持ち上げようとすると、彼女はそれを拒むように首を振った。
「外で出さなくても平気です。今日……大丈夫な日ですから」
「なに!?本当か!」
 いつもはそういう時期でもあまり中には出させてくれなかったものなのだが。
 これも酒の魔法なのかとカイルは酒に感謝を繰り返しながら、嬉々としてアティの腰を掴み、激しく突き上げる。
「あっ、ちょっとだからってあんまり激しくされるのはッ……あっ、あぁッ!!」
 予想外のカイルの猛攻撃に、アティは慌ててもがき始める。
 さすがに一方的に乱暴に突き上げられては、どれだけ濡れていようと痛いものは痛い。だが欲望の先走った今の彼にアティの言葉は届いてはいなかった。
「んぅっ……!カイルさんッ!さ、さすがに痛ッ……あぅッ……!」
 やはり耳に届かず。
「ふぅ、はぁっ、……んっ、いくぞアティッ!!」
 カイルは額に汗を滲ませながら声をあげ、腰を一際激しく突き上げた。
「いっ、痛いですってばぁ!!」

「――何事ですかアティ殿ッ!?」

 突然、タン!と彼らの正面の窓がふすまごと開き、蒼白した面持ちで部屋に飛び込んできたのはキュウマだった。
「…………」
 状況が飲み込めず、沈黙する三人。
 キュウマの目の前には、浴衣姿でご開帳したアティと、彼女を膝に座らせたカイル。そしてアティの中心を貫いているものは……。
「……あの、ここ二階ですよ?」
「シノビ、ですから」
「……どうしてこの部屋に?」
「外で巡回をしておりましたら、偶然この辺りで悲鳴のような声が聞こえまして。……あの、こちらから質問してもよろしいですか?」
「はい……どうぞ」
「お二人の状況は……?」
「…………」
 ぷっ、とキュウマの鼻から血が飛び出す。
 それでもなお出続ける鼻血は彼の顎を伝い、床に滴り落ちる。
「………………あ」
 ぐるりとキュウマの目が反転した瞬間、彼の体は後ろへ傾き、音もなく夜の闇へと消えていった。
 ――その直後に、何かが地面へ叩きつけられるような鈍い音。
「うわああキュウマの野郎が二階から落ちた――ッ!!」
「カイルさん、彼の様子を見てきてください!私は……ちょっと足腰の立つ状態じゃありませんからっ」
 え、と顔を引きつらせるカイル。
「そ、そんな、久し振りに邪魔の入らねぇ展開だと思ってたのに――」
「早く!キュウマさんが亡くなる間際に見た光景があれだなんて嫌すぎます!!」
 涙ぐむカイルを同情する気など、さすがのアティにもない。尻を叩く勢いでカイルを部屋から追い出すと、アティは慌てて窓際に駆け寄り、恐る恐る下を覗き込んでいた。
 ――その様子を、天井の穴から覗く目がひとつ。


「おのれ肉棒船長め……!アティを相手に背面座位とはうらやま……、い、いやらしいっ」
 薄暗い天井裏。駆け回るネズミを背にバナナをむさぼりながら一部始終を盗み見ていたのは、一匹の猿――ではなく、アズリアだった。
「前回の出張りっぷりとは打って変わって、完全に蚊帳の外ですね、隊長」
「言うなギャレオ!」
 宴会場からアティを連れ出し、帰りが遅いと思っていたら案の定これだった。
 この様子ではアティが彼に種付けされるのも時間の問題だろう。
 ならば、それを回避させる方法はただひとつ。
 アズリアは手にした剣を握り締め、口元に笑みを浮かべた。

(覚悟しろ、肉棒船長……。次こそが――貴様の最後だっ!!)

「隊長、剣の奪回は……?」


つづく

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