幕間 〜夏美と綾〜



湯につかっている時だけは心くつろげる。そんな他愛のないことをついこの間までは信じていた。温浴は血行を潤滑にし、身体についた垢を洗い落としてくれる。雨に降られて濡れ鼠になったときも、泥をひっかぶって汚れたときも風呂で綺麗に洗い落とせば気分を一新することができた。一日の汚れを洗い落として清潔を保てば快い気分で明日を迎えられる。そう信じていた。昨日までは。
(おちない………)
事が終わって半ば強制的に連れてこられた浴場。強めのシャワーを頭から被りながら綾はうなだれる。もう何回も繰り返し身体を洗った。石鹸を肌に刷り込んで擦り切れるくらいにゴシゴシと強く。髪も念入りに洗った。腰まで届く長髪を洗うのは手間がかかる。それでも丹念に洗った。下半身にシャワーを当てる。赤く腫れた傷口に水がしみる。一番力を入れて洗った部位である。一日の汚れを、そう今日一日の穢れを消そうとして。
(やっぱり…おちない…です…わたしの…身体の…汚れ…におい…全部…)
汗も何もかも洗い流した。アナルを、口を、全身を汚した白濁もかきだして洗い落とした。生臭い精液の残り香。それを消すべくもう何時間もこうして洗い続けている。臭いなどするわけがない。身体の汚れなんて残っていない少なくとも表面上は。それなのに自分の身体が腐臭を発している気がする。全身が腐りはてた生ごみと化したような心地。施された陵辱。汚された身体。もう何をしても戻れない。穢れを知らぬ清い身体には。
「うっ…うっう…うぐっ…ひぐっ……」
ただ弱くすすり泣く。決して消えぬ傷痕にさいなまれながら。

「い…嫌ぁぁぁっ!!もう許してくださいぃぃぃっ!!」
泣き叫ぶそれがただ途労に過ぎないことを知りながら。
「止めて…もう止めてぇぇぇぇ!!」
悲鳴を上げ哀願する。聞き入れられることはない。菊座を抉る肉棒はそのピストンを強める。腸がよじれる。自分のはらわたが男根によって蹂躙され、かき回されているのだ。地獄のような苦痛。それが延々と続く。ビクンと衝撃とともに熱い液汁を注ぎ込まれる。己の肉穴が精液を吐き出す器として使用されているのだ。
「嫌ぁぁぁぁっ!!こんなのはもう嫌ぁぁぁっ!!」
絶叫する綾に構うことなく腸内への射精は続く。白濁液が体内で逆流する感触に悶える。
「えへ…えへへ……綾…せんぱ…い……」
ふいに自分を呼ぶ声に気づいて視線を向ける。瞳に映るは一人の少女。後輩の絵美だ。
「あは…ははは…綾…せんぱい…だぁ……」
口から涎をたらし焦点の定まらぬ目で絵美は綾を見つめている。その姿。ひたすらアナルを犯され続ける綾以上に惨めな姿であった。膣もアナルも肉棒に貫かれ、降り注ぐ白濁は絵美の全身を白く染め上げている。
「先輩も…えへへ…絵美と…同じになるんですよ…ご主人様達の肉奴隷に…」
薄ら笑いを浮かべて絵美は告げる。その瞳に意思の光はない。
「どうせ…何も…無駄ですよ…えへへへ…諦めて…楽になりましょうよぉ。」
もうどうすることも出来ない。そんな現実を絵美は淡々と囁いてくる。もう自分達は助からない。ただ性の捌け口として酷使されるだけなのだと。
「違う…違う!違うぅぅっ!!そんなのは嫌ぁぁぁっ!!」
後背位でアナルを犯されながら、突きつけられた現実を綾は懸命に否定する。その虚しさと滑稽さを自分でも理解していながら。

「嫌ぁぁぁぁぁっ!!あぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ちょっと、綾…綾ぁっ!!」
時計の針は真夜中を示していた。疲れきって憔悴した心と身体。それを休ませるいとまもなく突然響く綾の悲鳴に夏美は飛び起きる。
「あ……あぁぁぁ……うぁぁぁぁぁっ!!!」
「止めてよっ…落ち着いてよ。綾っ!お願いだからっ!!」
叫び声と共に錯乱した綾は暴れだす。手近にあるものを掴んでは投げると今度は爪を自分の頭に食い込ませて掻き毟る。そんな綾をなんとかしてなだめようと夏美は彼女を自分の腕の中に抱き寄せる。
「もう大丈夫!もう大丈夫だからっ!!」
言いながら欺瞞に気づく。大丈夫なわけなんてない。綾が負わされた苦痛。そしてそれをこれからも繰り返されるであろうという目の前の現実。そんな中でよくもそんなことが言えるとも思う。だが今は綾をなだめることだけで精一杯だ。子供をあやす様に優しく背中をさする。腕に力を込めてギュッと抱きしめる。
「あたしが…いるから…あたしが側にいるから…だから…もう…」
そう言って夏美は綾を抱きしめ続ける。腕の中でもがく綾から次第に力が抜ける。
「…うっ…ひぐぅぅ…えぐぅぅ……」
耳を裂くような悲鳴はしゃくり上げる嗚咽へと形を変える。それと共に綾は夏美の胸にこすりつけるように顔を埋める。
「う…ぐぅ…うぁぁぁぁんんっ!!あぁぁぁんっ!!…ひぐぅぅ…うああぁぁぁっ!!」
そのまま声を上げて綾は泣きじゃくる。夏美はただ優しく彼女を抱きしめ続けた。綾につられて自分も泣き出してしまいそうになるのを堪えた。今、泣いていいのは綾だけだから。自分に出来るのはこうして綾を泣かせてあげることだけだから。

「ん…うん………」
気がつくと朝になっていた。寝ぼけ眼を擦すって目を覚ます夏美。なにか身体が重たい。ふいに見回してギョッとする。
(……綾!?…そっか…あのまま……)
気がつくと自分にもたれかかる様な形で綾がすうすう寝息を立てていた。どうやらあのまま二人とも寝てしまったらしい。安らかそうな綾の寝顔を夏美は安堵する。
(今度はちゃんと眠れてるみたい…よかった……ってそんなわけないじゃないっ!!)
胸をなでおろし掛けた夏美の脳裏に昨日の惨劇がよぎる。わけも分からぬうちに監禁されて、そして綾と出会った。彼女もまた夏美同様に拉致されたのだ。ややあって二人で協力して逃げ出そうとした矢先。そこで遭遇した綾の後輩の少女の無惨な姿。そして逃亡も虚しく二人して捕らえられた。そこで待ち受けたものは。
(どうして…どうして綾があんな目にあわなくちゃいけないのよっ!!)
感情が昂ぶるあまり夏美の涙腺が緩んだ。頬を熱い涙が伝う。思い出すのは捕らえられた後のこと。夏美と綾を拉致したキールとソルと名乗る二人の兄弟。彼らは見せしめと称して夏美の目の前で綾を陵辱した。おそらくは異性と交わる経験などなかったであろう綾に対して行われた過酷な仕打ち。思い出すだけで吐き気がする。夏美がどれだけ泣いて止めるように懇願しても、綾がどれだけ泣き叫び悶え苦しんでも彼らは許そうとはしなかった。むしろ嬉々として楽しんでいたようにさえ思える。
(許さない…あいつら…絶対に許さないっ!!)
あの二人に対して憎悪を夏美は募らせる。ボロクズのように陵辱された綾。その痛ましい姿を夏美は目にしている。風呂場で擦りきれるぐらいに一心不乱で身を洗っていた。汚された痕跡を消し去るかのように。それでも消えぬ陵辱の記憶にさいなまれる綾。声もかけることすら出来なかった。そして悪夢に襲われて荒れ狂う綾。安らかな眠りさえ綾には許されなかった。綾の痛みが、苦しみが夏美にも自分のことのように伝わってくる。
(綾…ごめんね…あたし…綾が酷いことされてるのに…何も出来なくて…ごめん…)
自分自身に対しても悔恨を募らせる。綾は自分の身代わりに、自分への見せしめにあのような目にあったのだ。何も出来なかった。一緒にここから逃げ出そうと誓い合った。後輩を助けようとする綾の力になってあげたかった。だが現実は何一つ護れず綾が無惨に犯され苦しみ泣き叫ぶのを見ているだけだった自分。恨めしい。自分の無力が。

ガチャ

「………!?」
ふいに金属音が耳に入る。咄嗟に夏美は身構える。にらむと扉はギギギときしむ音を立てて開く。そこから現れたのは予想通りの顔。今、この世でもっとも見たくない顔。
「やぁ、よく眠れたかい。ナツミ、それにアヤ。」
扉の向こう側から現れてキールは涼しげな顔を夏美に覗かせる。
「あ…あんたぁっ!!昨日はよくもっ!!」
噛み付くような勢いで吼える夏美。相手を鋭くにらみつける。キール。夏美たちを拉致し昨日、綾を陵辱した兄弟の片割れである。
「おっと寝ている人間の側でそんな大声を出すのは感心しないなあ。」
「ん……う……」
あたりの騒がしさに睡眠を阻害されたのか綾も目を覚ます。呆然とした視線で夏美を覗く。
「夏美…さん……?」
「綾っ!!」
目を覚ました綾に声をかける夏美。綾は夏美の顔を暫し見つめた後、視線を泳がす。そして視界に入る。一つの影が。
「ひっ!…い……嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
綾の瞳に映ったもの。自分を陵辱し汚した男。思わず引きつって悲鳴を上げる。
「嫌ぁぁぁぁぁっ!!来ないでっ!来ないでぇぇぇぇっ!!」
「綾っ!綾ぁぁぁっ!!」
恐怖のあまり錯乱する綾を夏美は抱きとめる。しかし落ち着く気配はない。
「嫌われたものだねえ。まあいいさ。今日はただ顔を見に来ただけだから。」
「うるさいっ!!綾の前から出てけっ!!早く出てってよっ!!」
「ふう、困ったものだね。まあいいさ。また来るよ。」
「二度と来るなぁっ!!もう綾に指一本触れさせやしないんだからぁっ!!」
そう立ち去るキールに夏美は罵声を浴びせる。彼の姿が見えなくなると今度はいまだ混乱する綾の方に注意を向ける。
「もう大丈夫だよ。あいつ…もう行っちゃったから…もういないから。」
「う…うぅ…う………」
嗚咽を漏らしながら綾は夏美の腕の中、肩を震わす。刻み込まれたばかりの生々しい陵辱の記憶は綾の心身をともに深く抉っていた。
「嫌…もう嫌です…あんなことは…もう……」
昨日の陵辱劇。それが綾の脳裏で延々と再生される。惨めに犯される自分の姿。犯され汚されただけでない。あまつさえその姿を撮られて目のまで見せ付けられた。痛い。苦しい。恥ずかしい。死んでしまいたいとさえ思える。そんな苦しみの記憶が延々と。
「嫌ぁぁ…あっ…うっ…うぅ……………?」
すすり泣く綾だったがふいに気づく。自分が力強く抱きしめられている感触に。
「夏美……さん……」
「ごめんね…綾…」
気づいて綾は夏美に顔を向ける。綾の瞳に映る夏美の顔。涙で潤んだ瞳で綾を真っ直ぐに見つめている。
「ごめん…あたしのせいで…あんな…ことに……」
そう言って綾に夏美は謝る。目からは大粒の涙が零れ落ちていた。
「ごめんね…でもあたしが守るから…綾のこと…守るから……」
泣き崩れそうな様子で夏美は言葉を紡ぐ。自分に対する夏美の真摯な気持ち。それが綾には分かる。彼女は自分のために泣いてくれているのだと。
「…夏美さんのせいじゃ…ないです…だから…泣かないで下さい……」
そういって今度は綾の方が夏美を抱きしめる。抱擁を通じて暖かい体温が伝わる。こんな絶望に包まれた闇の中で唯一つ感じられる確かな温もりが。そして互いに抱きしめあう。
「うっ…うぐぅ…夏美…さん……」
「えぐっ…えぅ…綾ぁぁ………」
そのまま二人は抱き合ったまま声を上げて泣きじゃくる。互いの心の傷痕を舐めあうようにして。ただ一人信じあえる相手の温もりを感じながら


つづく

前へ | 目次 | 次へ

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル