二人の絆編〜夏美と綾〜その6



出会いというものはいつも唐突だ。彼女との出会いもそうであったように。思い返せば特異な出会いだった。
自分と彼女とは。ひょっとしたら一生めぐり合うことさえなかったかのようにも思える。
彼女と出会わぬまま過ごす人生。その方がよかったのだろう。自分にとっても。彼女にとっても。
彼女との出会いは自分、そして彼女をとり囲む絶望の起点でもあったのだから。
(夏美さん……)
虚ろな意識で彼女の名が脳裏に浮かぶ。橋本夏美。それが彼女の名前である。
あの不可解な術を使う謎の少年達によって綾同様に拉致された少女。
綾同様この世の地獄とも言うべき苦痛と絶望を味あわせられ続けた少女。
その名を心の中でただぽそりと呟く。自分にとってかけがえのない大切な人の名前を。
(夏美さん…夏美さん……)
いつだって悲しみに包まれていた。いつだって絶望に包まれていた。夏美と共に過ごす日々は。
夏美と出合った日のこと。脱出を試みた二人がその中途で見たものは綾の後輩である絵美。
彼女の無惨に変わり果てた姿であった。胃の内容物が逆流するほどの嘔吐感と心が張り裂けるばかりの心痛を同時に覚えた。深い悲しみと絶望。自分に対する無力感。全てが綾をさいなんだ。
だがそれは始まりにすぎない。その後すぐに二人とも捕らえられた。脱走の咎による懲罰。
綾は犯された。夏美の目の前で。アナルと口。その他ヴァギナ以外の全ての箇所を。
犯される綾を見て泣き叫ぶ夏美の悲鳴。綾自身の口からこぼれる絶叫と喘ぎ。グチョグチョと響く卑猥な雑音。
そのどれもが耳障りで不快であったことを覚えている。犯されている。汚されている。穢されている。
そんな現実をいちいち実感させてくれるから。腹の中ではぜるような感触の後に流れこむ熱い液汁。
勢いよく射出され顔面に張り付く精液。フェラチオを強要されながらアナルを犯されるのが常態となっていた。
心も身体もボロボロに陵辱されそれでもまだ許されず犯され続ける。自分が犯される姿さえ見せ付けられる。
絶望した。人としての尊厳を根こそぎ奪われて。家畜以下の慰み者。精液を吐き出される肉便器にされて。
死にたい。こんな辛い現実から逃れられるのならば。早く死にたい。この世から消えてしまいたい。
そう強く思った。そう強く願った。どうして自分がこんな目に遭わなければいけないのだろう。
自分が。絵美が。そして夏美が。こんな事が現実だというのならば自分はもう死んでしまいたい。
もう生きてなんていたくない。死んでしまった方が救われる。そう信じていた。
『ごめん…あたしのせいで…あんな…ことに……』
するとふいに意識の中に蘇ってくる言葉がある。そう忘れもしない。あの言葉。
『ごめんね…でもあたしが守るから…綾のこと…守るから……』
その言葉が自分の心をここまで生きながらえさせてくれた。何物にも変えがたい。
それが二人の絆。そのはじまり。

「…はは…は…綾…綾ぁぁ…」
「あっ…くぅぅ…夏美さんっ!…ひぃっ…くぅぅ…ふぁぁっ!!」
神経をはしる刺激に耐えかね喘ぐ綾の身体を夏美はむさぼる。余りにも深すぎる絶望と悪夢。
その果てに夏美が辿り着いたのは刹那的な快楽に身をゆだねる狂気であった。
「綾ぁぁ…んっ…くっ…ひぃっ…」
「あ…ふぅ……夏美さ…あくぅぅぅっ!」
より快楽を得ようと夏美は強く身体を動かす。互いに触れ合った濡れた膣肉。それを擦り合わせるために。
愛液の絡み合う秘部の摩擦を繰り返すたびに悦楽が生み出される。お互いを感じることができる。
今自分の側に確かに相手が存在している。その実感に浸って。
「あっ…くぁぁっ…くひっ…あぁっ!」
そんな夏美にされるがままに綾は嬲られていた。夏美の口が綾の乳頭に吸い付いている。
乳肉を揉まれながら乳首に執拗な舌先による愛撫を受ける。その度に綾の身体を刺激が通り抜ける。
グチャグチャと音を立てながら絡み合う秘肉同士。その生み出す快楽に綾もまた虜となっていた。
(これで…いいんです…これで……)
押し寄せるオルガズムに悶え喘ぎながらも綾は夏美の手による陵辱を甘んじて受けていた。
これは罰だ。自分自身に課せられた。夏美の心も身体も救えなかった自分に対する。
(私…何もできませんでした…夏美さんにも…絵美ちゃんにも…だから…私…)
そう自虐に囚われる。そもそもの元凶は自分なのだ。そう綾は決め付けている。
先日、綾たちの前に現れたひとりの少女。絵美。綾の後輩。綾たち以前に拉致され辛い陵辱を受け続けた少女。
彼女との再会を綾はあるいわ喜び、あるいわ絵美を救えなかった自分を責め彼女に謝罪した。
だが過酷な陵辱の果てに絵美の心は壊れ果てていた。壊れた彼女は綾を求めた。自分と同じ惨めな肉奴隷を欲して。
(私のせいなんです…私が絵美ちゃんを追いつめて…それで…あんなことに……)
執拗に綾を求める絵美から綾をかばったのは夏美だ。綾を守ろうとして。そのために今度は夏美に矛先が向けられた。
惨劇。そうとしか言いようのない悪夢。狂気に取り付かれた絵美は夏美を嬲り尽す。執拗な折檻。
骨折さえしている箇所を更に痛めつける拷問そのものの所業。苦痛に悶える夏美の叫び。耳について離れない。
そればかりか綾の目の前で絵美は夏美を陵辱した。それを綾に見せ付けるように。
それはあの日の再現であった。綾が見せしめのために夏美の前で犯されたときの。
何もできなかった。見ていることしかできなかった。泣き叫び悶え苦しむ夏美を見殺しにすることしかできなかった。
あの日に夏美が味わった苦しみ。目の前で大切な友が陵辱されているのに何もできないという苦痛。
それを綾も味わった。泣き叫ぶ夏美。悶え喘ぐ夏美。そんな夏美を見ていることしかできない。夏美が壊される様を。
全てが終わって残されたのは残骸と化した夏美の姿。絵美によって壊された無惨な姿。目に焼きついている。
記憶から消せないほどに。
(私は助けられなかった…夏美さんを…傷ついた夏美さんの心を…だからいいんです…もう…)
陵辱を受け深く傷つけられた夏美の心。その心を癒すことは綾には叶わなかった。
ただ悪夢にうなされ苦しむ彼女の側にいる。ただそれだけで何の役にも立ってあげられない。
無力だ。どこまでも無力だ。絶望した夏美が絵美同様に壊れ果ててしまったのも当然なのだ。
すべて自分が悪いから。全部自分が無力なせいなのだから。だからもういい。夏美のされるがままで。
夏美が求めるのならば。彼女のための慰み者で。

『あ…その……あたし…橋本夏美…って言うんだけど…』
戸惑いながら告げられた彼女の名前。その後に自分もまた戸惑いながら答えた。
『その…樋口さんだっけ?あのさ…その…あたし…多分あたし達…変な奴に同じように捕まっちゃたんだと思うんだけど…そいつの仲間とか…そんなんじゃないから…さ…だから……』
しどろもどろになりながら自分は敵じゃないと訴えるその姿。その姿にほっとさせられた。
『その…夏美でいいよ…そっちの方が気楽だから…』
そう言ってくれた時嬉しかった。こんなところにいても自分は一人じゃないと感じさせてくれたから。
思えばあのときから貴女は私にとって大切な友達になったのだ。
『一緒に逃げようよ綾!その絵美って娘も助けてさ。』
今でも心に残っている。あのときの約束。それが叶うと淡い期待を抱いた。そんな甘い幻想を信じていた。
『もう大丈夫!もう大丈夫だからっ!!』
悪夢の後、叫び狂う私を貴女は抱きしめてくれた。ろくに眠ってもいない疲れ果てた身体で。
『あたしが…いるから…あたしが側にいるから…だから…もう…』
すがりついた。貴女にすがり付いて私は泣いた。泣きつづける私を抱きとめるその腕。その温もりを私は覚えている。
『二度と来るなぁっ!!もう綾に指一本触れさせやしないんだからぁっ!!』
そう貴女は言ってくれましたね。私を守るために。震える身体を押さえて必死に虚勢を張りながら。
知っていました。貴女の心が本当はとても弱いことは。傷つきやすく脆く壊れてしまう。私と同様に。
そんな脆い心を繋ぎとめて貴女は懸命に頑張ってくれた。私を守るために。私を励ますために。
貴女はそんな貴女自身をむしろ軽蔑していました。自分を保つために私をダシにしていると。
でも私はそれでよかったんです。貴女が側にいてくれたから。大好きな貴女が私を守ってくれたから。
私はそれで満たされた。貴女が側にいてくれるだけで私は満たされた。死にたい。この世から消えてしまいたい。
そんなことさえ思った私が貴女に救われたんです。生きたい。生きていたい。貴女とともに生きていたい。
そう貴女が私に思わせてくれた。私に生きる希望を貴女が与えてくれた。
『ごめんね…でもあたしが守るから…綾のこと…守るから……』
その言葉通りに懸命に頑張ってくれた。私が辛かったとき。苦しかったときはいつも。
『綾に触るなぁぁっ!!綾はあたしが守るんだからぁっ!!』
傷つきとても立ってはいられないような身体でも貴女は。私のために。私を守るために。
ありがとう。そしてごめんなさい。貴女がくれたたくさんのものに対して私はなにもお返しができない。
貴女を守ることも。貴女を癒すことも。本当に無力なんです。私は。本当に情けない。
貴女にはせめてこの私自身を差し出しましょう。好きにしてください。それで貴女が癒されるのならば。
ああ。何故でしょう。悲しい。涙がこぼれてきます。どうしてでしょう。涙が零れてしまいます。
悲しい。悲しい。悲しい。それは何故?大好きな貴女が壊れてしまったから?
苦しい。苦しい。苦しい。それも何故?そんな貴女に私は何もしてあげられないから?
誰か教えてください。私はどうすればいいのでしょう。私は彼女のためにどうすればいいのでしょう。
教えてください。誰か。答えを。その答えを。

涙がはらり。頬を伝っていた。かすかな微熱を伴った雫。それが頬を滑り落ちる。
聞こえるのは喚声。雑音。何か卑猥な響き。自分の口から漏れる喘ぎ。彼女の口から漏れる嬌声。
情欲に溺れ乱れる自分と彼女。それを冷めた瞳で見つめる。もう一つの自分。
「へへ…あはは…綾ぁぁ…綾ぁぁ……」
壊れ堕ちた彼女の顔。そこには自分の大好きだった彼女の面影はない。そうあの娘のように。あの絵美のように。
(夏美さん…絵美ちゃん……)
彼女の姿に絵美の姿が重なる。あの娘と同じなのだ。辛い陵辱を受け絶望を与えられ続けて壊れたあの娘と。
絵美を思う。可愛かった後輩。自分を慕ってくれた。そんな彼女を助けることができなかった。
想像を絶するであろう辛い陵辱。自分が受けたそれよりも遥かに過酷な。その果てにあの娘の人格は壊れた。
もう自分の知っていた絵美の面影さえ見出せぬように。彼女もそうなったのだ。絵美のように。
「あはは…綾…綾ぁぁ…はは……」
そう壊れた顔で自分の身体をむさぼる彼女にもうかつての面影はない。
自分を守ってくれた彼女。自分の側にいてくれた彼女。自分を支えてくれた彼女。
戻ってこない。二度と戻ってこないのだ。絵美のように。夏美はもどってこない。自分のもとには戻ってこない。
自分が大好きだった橋本夏美はもう二度と自分の前には戻ってこない。
「…ぁ………」
かすかに肺から空気が漏れる。わずかな響き。それとともに波が押し寄せる。心の堰を押し切る感情の波が。
「…ぁぁ…あ……」
今も自分を嬲り続ける夏美。悲しい。苦しい。夏美がこんな風に変わり果ててしまって。
虚しい。悔しい。そんな夏美に何もしてあげられない自分が。本当に何もできない。自分には何も出来ない。
彼女を守ることも癒すことも。どこまでも無力で無能な自分。そんな自分に何が出来る。
(……でも……違う!)
だが思い至る。本当に何もできないのか。その答えを。自分はまだ伝えていない。自分の想いを彼女に伝えていない。
何が彼女が癒されるのならばだ。ただ逃げていただけじゃないか。彼女と同じように刹那的な快楽へと。
ただ何もかも忘れて楽な方に流されようとしていただけではないか。そうだ。私は確かに思う。
目の前の彼女。変わり果てた夏美。こんなのは夏美じゃない。自分が大好きだった夏美じゃない。
戻ってこない。自分が大好きな夏美は。それでいいのか?それでいいのか!?
嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。そんなことは嫌に決まっている。そんなことはもう。
ならばどうすればいい。このまま彼女のされるがまま?そんな筈はない。そんな筈は。
(夏美さん…夏美さん……)
今も自分にすがり付いてくる夏美。できることはあるのだ。否、しなくてはいけないことなのだ。
それを自分は今まで出来なかった。ただ流されるままにしかできなかった。
だが違う。もう違う。自分には為さなくてはならないことがあるから。夏美のために。

「駄目ぇぇぇぇぇぇっ!!」

気がつくと、叫び声とともに綾は自分にまたがる夏美の身体を跳ね除けていた。ふいの抵抗に夏美は後ろに倒れる。
身を起すと目の前には綾が立っていた。呆然とする夏美の前に立ちふさがっていた。
「夏美さん……」
ポロリと綾の瞳から涙が零れ落ちる。いまだ呆けている夏美に対し綾はいきなり抱きつく。
「……綾……?」
分けも分からぬまま夏美は戸惑う。そんな夏美の背に綾の手が回される。
「…どって……ださい……」
それは涙でかすれて聞き取れぬような声音だった。すると綾は腕に力を込める。
ありったけの力で夏美をきつく抱きしめる。そして告げる想いを。
「戻ってくださいっ!!私の…私の大好きな夏美さんにっ!!お願いですっ!」
その瞳に大粒の涙を溜め、肺から振り絞った精一杯の大声で綾は夏美に訴えた。


つづく

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